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ペヨトル工房主宰・夜想編集長、今野裕一のメルマガ。プロデュースの書籍、アートイベントなどの紹介。一時、解散したときからの継続。今、夜想もペヨトル工房も復活している。

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2004/05/10

Flash*Memory[010]デジタル時代のものづくり

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Flash
Memory

今野裕一
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[no.010/05/10]

デジタル時代のものづくり   

山に囲まれている利賀村の空は少し狭く、夏の青い空に白い雲が拡がっていた。
利賀村の利賀は、科人の科。昔は流刑地だった。外とは長いトンネル一本で繋がって
いって容易に逃げられないようになっていた。冬は豪雪、その代わり夏は涼しくて過
ごしやすい。その利賀村で1982年7月、第一回国際演劇祭が開催された。
オープニングはロバート・ウィルスンの『つんぼの視線』、天井桟敷の『奴婢訓』な
どの演目だった。

寺山修司は発熱のため前日の舞台稽古を欠席し、天井桟敷のメンバーに衝撃が走っ
た。劇団結成以来、寺山修司が舞台稽古を欠席したことは一度もなかったからだ。寺
山修司は、肝硬変の症状がかなり重くなっていて、微熱の続く身体に無理をさせて演
出をしていたが、すぐ目の前の宿舎にも車で移動するほどの重病だった。

初日が明けた翌日の昼、約束の時間を待っていると、ロバート・ウィルスンが
マネージャーとともに中庭に現れた。これが生まれて初めてのインタビューだった。
朝日新聞に10分間のインタビューを受けた以外、日本では誰もインタビューを
許可されなかったので、インタビューに同席させて欲しいと、ぴあ、シティーロー
ド、
新劇など記者に頼まれ、中庭のテーブルでの公開インタビューになった。
田舎ののんびりした風景とは裏腹にボクは緊張しまくっていた。

『夜想』をはじめてからずっと「書かれたもの」を信じていたのでインタビューとい
う形式を避けていた。ロバート・ウィルスンにも書き原稿を頼んだのだが、時間がと
れず、インタビューなら応じるとの返事
だった。私としては仕方がなくのインタビューだったが、ウイルスンには、とてもよ
いインタビューだったと褒められた。ウィルスンはこの時点では、インタビュー嫌い
で有名で、ロングインタビューは世界に3本ほどしか存在していなかった。
私のインタビューは4本目となる名誉だった。朝日新聞は10分で、名も知れない
創刊誌の『EOS』に1時間半のインタビューなのは、どうしてですかとウィルスンに
聞くと、自分の仕事が知られていない国で、理解してもらうためには、前衛誌に
きちんと書かれることやそこでしっかり内容を語ることが必要だからだよと笑って
答えてくれた。

以来、『EOS』をベースに来日する現代美術の作家をインタビューし続けた。
何故かどのインタビューもうまく行って、ダニュエル・ビュレンには、
再来日のオープニングで名指しでインタビューを褒められたりもした。
インタビューが自分にあっていたということもあるだろうが、実のところ、
インタビューしたアーティストに鍛えてもらった、というのが本当のとこだろう。
それから20年以上、様々なアーティストにインタビューをしてきた。
そのインタビューの集大成とも言えるような本を出版することになった。

京都造形芸術大学の大野木啓人さんの依頼で編集した、通信制の教科書
「ものづくりの原点――クリエイティヴはこうして生まれる」は、25年間にであった
クリエーターたちの、普通には話してもらえない究極の極意が語られている。
「台本が良く分からなかったら、制作部で仕事が終わった後に本読みをする。」
元シアター・コクーンの渡辺弘は、こともなげにそう言う。渡辺弘とは、20年以上前
からの友人だ。利賀村の演劇祭には『シティーロード』の記者として取材に来てい
た。舞台のディレクター、プロデューサーを四半世紀やってきて、なお分からないと
いう謙
虚な姿勢にも、本読みを基本にするディレクションにも驚いた。勅使川原三郎の「ル
ミナス」や蜷川幸雄の「グリークス」、中村勘九郎の「コクーン歌舞伎」は、やはり
舞台に対する愛情と的確な把握力によって生まれたのだ。

演出を把握するには、演出家が出演者に駄目を出しているのを聞いていると良く分か
る。だから稽古場に足を運ぶことがすべてだね。と言うのは劇団四季創世メンバー
で、なおオペラからダンス、演劇にいたるまで数多くの照明を手がける沢田祐二。
ボクがはじめて演出したダンスの作品の照明も、天井桟敷の初期の照明も担当してい
る。畠山直哉へのインタビューは、二日間のべ6時間にも渡った。

ほとんどの人と20代前半からつきあいがあって、何度か仕事をしたりインタビューを
したりして分かっているつもりだったが、まだまだ創造には奥深い部分がある。改め
て創造の重要な部分に触れることができて有意義だった。クリエーターたちは教科書
を意識して話してくれたので、若いクリエーターやこれからものを作っていこうとす
る人たちには本当に役に立つ本になっていると思う。

この教科書は、ステュディオ・パラボリカから市販されることになったので、ぜひ書
店で手に取ってください。

「ものづくりの原点――クリエイティヴはこうして生まれる」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
http://www.2minus.com/monod_n.html
ステュディオ・パラボリカ刊
★発★売★中★
定価:2940円(税込)
現場の第一線で活躍し続けてきたクリエータの方々が、本音で創造のコツや秘密を明
らかにする。「ポケモンの誕生」から「本の身体性」まで、クリエータのための必読
書!

*サウンドアート/藤本由紀夫
*写真/畠山直哉
*ゲームプロデュース/石原恒和
*クレイアニメーション/伊藤有壱
*空間演出/大野木啓人
*舞台照明/沢田祐二
*劇場プロデュース/渡辺弘
*ブックデザイン/ミルキィ・イソベ

できあがってから改めて読んでみたが、この本は、もう一つ別の面白さをもってい
る。ここに登場しているクリエイターたちはアナログ時代からデジタル時代を通して
一線で活躍してきている。デジタルを使いこなした上で、アナログのもっている良さ
をそこに反映している。たとえデジタルの照明卓ではなかなか味のあるクロス
フェードができないのだが、沢田祐二は、フェーダーをマニュアルにして、なおかつ
フェードをかける照明機材それぞれに別々のフェードラインつくり、それを
コンピューターに打ち込んでオペレートする。これだと以前の職人芸よりも綿密で、
しかも舞台に合わせた即興性も持ち合わせている。

ミルキィ・イソベは、DTPというデジタルツールを使いながら、製版や印刷の段階を
コントロールすることで、これまでの職人技に支えられた本造りよりも精密で美しい
本を作る可能性を示している。デジタルにもかつての職人芸は生かせるし、またさら
に進化させることができるのだ。はからずもそうしたデジタル時代のクリエイティブ
のコツも明らかになっている。ぜひ読んでいただけたらと思う。

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ペヨトル工房
http://home.att.ne.jp/surf/hilon/peyotl.html
2-:+     http://www.2minus.com
Peyotlfan   http://www.thought.ne.jp/peyotl



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