競馬の文化村「もきち倶楽部」 No.880
競馬の文化を発信するメール・マガジン 2008 年05月14日発行
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競馬の文化村「もきち倶楽部」 No. 880
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▼目 次▼
■ 飯田正美の競馬よろず雑記帳 第20回 飯田正美
競馬は時と場所、時空を超えて人と人とを結びつけてくれる
■ 馬の名前に文化を読む 第319回 森本 健
ピーターパン S:Casino Drive 牡3歳
■ 佐藤正人著『わたしの競馬研究ノート』 第552回 編:山本一生
競馬ノート15:競馬切抜帳(52)
オグリキャップの有馬記念制覇はフロックか?
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■ 飯田正美の競馬よろず雑記帳 第20回 飯田正美
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競馬は時と場所、時空を超えて人と人とを結びつけてくれる
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パドックを見終わり、記者席に戻るとちょっとした人だかり。口々に、
「健さんも若いねえ」
「それより大川さんだよ」
「高峰三枝子、昔はホントにきれいだったんだね」
覗いてみると、机の上に広がっているのは昭和 44 年のダービーニュース臨時
増刊号、桜花賞馬ヒデコトブキが表紙を飾る「オークス特集号」だった。
「どうしたの、これ ?」
「いやあ、昨日尾形厩舎に行ったら、千波厩務員さんが出してきたんだよ。大掃
除したら出てきて、記者席でみんなに見せたら喜ぶんじゃないのって、渡してく
れたんだよ」
と言うのは、K 社の N 氏。時計班でありながら、尾形、国枝、藤沢といった
北馬場の有力厩舎に時間があればいつでも顔を出す、腕利きトラックマンだ。昔
は血統センターでアルバイトしていたこともあり、血統にも詳しく、当方とはよ
く話しをする間柄、何とかいう馬が昨日洗い場で転んだとか、厩舎の裏話なんか
もちょくちょく聞かせてもらっている。
巻頭を飾るのは、若かりしころの大川慶次郎氏。ご存じの角刈り ( 五分刈り
?) 姿で、東映の若手二枚目俳優の風貌、いきなり耳に、あの独特の声が聞こえ
てくるような気がする。
そのすぐ下、二段ぶち抜きのコラムは、今でも悪代官役などでお目にかかる灰
地順、競馬評論家顔負けの理論でオークスを読んでいる。
ページをめくると、アッと驚くタメゴロ〜。鶴田浩二に梅宮辰夫、東映の往年
のスターが勢ぞろい。高倉健さんのコラムもあった。
「ヒデコトブキ ( 不出走だった ) 、トウメイも強いけど、狙いは加賀武見のダ
ッシュウエー。セプターシローとの一点で勝負。負けてもいいから、ガンガン行
きますよ」
と、予想もドスを片手の殴り込み同様に勇ましい。
しかし結果は、1 着シャダイターキン、2 着ライトパレーの大穴決着、凄絶な
返り討ちにあった。
「とめてくれるな、おっかさん。背中の竜も泣いている」
唐獅子牡丹も泣いている。
きれいどころも盛りだくさん。昭和 27 年のオークス馬スウヰイスーの馬主で
もあった高峰三枝子に、緋牡丹お竜こと、藤純子。吉永小百合は、急なロケが入
ってごめんなさいの、顔写真入りのお断り。
検討記事も満載で、売り物はジョッキー対談。司会は「さらばハイセイコー」
の作詞で知られる小坂巌氏で、特別ゲストが、大川慶次郎、野添ひとみ、騎手は、
加賀武見、郷原洋行、増沢末夫、嶋田功、森安重勝 ( シャダイターキン騎乗 ) 、
丸目敏栄 ( この年の菊花賞馬アカネテンリュウの騎手 ) 、そして、若手のホー
プと紹介されていたのが岡部幸雄と、今見てもすごいメンバーだった。
最下段には、「フロリダ」「ミス東京」など、キャバレー、クラブの広告がズ
ラリと並び、12 ページのこれでお代は、〆て百円。今のお金で、千円強。とい
うのも、なぜかサンスポの広告があって、そこには一部 10 円、月 300 円と、
物価はこの 40 年で十倍以上上がっている。
ダービーニュースは、このころから当日版以外に「青刷り」と呼ばれる週間検
討号も刊行していて、その臨時増刊号がこの「オークス特集号」なのだが、これ
が競馬週刊誌の走りということになるのだろう。しかし、当方が日刊競馬に入社
して間もなく、その役目を終えて廃刊となった。
当方が学生時代に読んでいたのが「週間・競馬報知」。真ん中のカラーグラビ
アに調教師の趣味欄などがあってなかなか面白かったが、これもダービーニュー
スの「青刷り」を追うように、いつしか廃刊となった。
今は、かなり歴史のある「週間・競馬ブック」と比較的歴史の浅い「ギャロッ
プ」の2誌しかないが、おそらく 30 年ぐらい前に一番売れていたのは「週間・
馬」。資料としての使い勝手の良さから、当方もその後「競馬ブック」に鞍替え
したが、入社当初はしばらく馬誌を購読、そのころ愛読していたのが、見開き二
ページからなる井崎脩五郎の「データ教室」で、競馬のことなどお構いなしに、
山口百恵のことばっかり書いてあったような気がする。無茶苦茶面白いと思った
のは当方ばかりではなかったようで、そのちょっと後あたりから面白競馬ライタ
ーとして大ブレイクすることになる。しかし、それに反比例するかのように、逆
に馬誌はいつしかひっそり廃刊の運びとなるのであった。
その山口百恵ももう 50 歳になるとか、ならないとか。ということは、昭和
44 年はデビュー前だったのだろうか…。
我が家のカーステレオに、今もときおり鳴り響くヒット曲に「プレイバック
II」というのがある。その曲から名づけたのかどうか、船橋で走り、2 戦 2 勝
のプレイバックという名の 3 歳牝馬がいる。社台の地方版共同オーナーの馬だ
が、本人に無断で発表 ( ごめんなさい ) してしまうと、「富山の競馬」の立山
健治先生の持ち馬。実は、当方が東大の本村先生、小野寺直美さん、山本一生さ
んなどと一緒に係わっている「馬と文化の会 ( 仮称 )」のメンバーである S 氏
( ホームページ「しげさんの馬三昧」は必見 ) も、その共同オーナーの一人だ
と聞き、あまりの偶然に、ちょっと驚いた。
シャダイターキンからプレイバック、高峰三枝子から山口百恵、立山先生から
S 氏。競馬は時と場所、時空を超えて人と人とを結びつけてくれる。
競馬って、本当に面白いですねえ〜。
水野晴男さん風に、最後を締めてみました。
それでは、サヨナラ、サヨナラ…。あっ、これは違うか…。
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<編集人註>
プレイバックは、牝の三歳、父フレンチデピュティ、母プレイヤーホイール、
船橋の川島厩舎所属で、現在までのところ2戦2勝、14日(水)の大井競馬9
Rマーガレット特別に出走を予定してます。
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■ 馬の名前に文化を読む 第319回 森本 健
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ピーターパン S:Casino Drive 牡3歳
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今週はオークスを書く予定だったが、急遽ピーターパン S に変更した。オー
クスの記事は、プリークネスの翌週、元々ピーターパンを入れる予定だったとこ
ろに入れ替えて書く予定である。
急遽入れ替えた理由はお分かりだろう。今週末のプリークネスでは、ダービー
組が大方回避し、別路線組からもこれといった馬が出て来ず Big Brown の勝ち
の可能性が高くなって、「すわ 30 年ぶりの三冠獲得か」、と思われていた。そ
こに、はなから Belmont を狙った刺客のような馬が、それも予定通りに最終切
符ピーターパンを使い圧勝したことから、にわかに世上が騒がしくなってきたた
めである。その馬とはもちろん、日本調教馬の Casino Drive(カジノドライヴ)
である。
Casino Drive (牡 3 歳 父 Mine Shaft 母 Better than Honour)
日本調教馬なので、すでに馬名の意味についてはご存知かもしれない。カジノ
ドライヴとは、レッドウォリアーズという 80 年代のロックグループの代表曲の
タイトルだそうだ。残念ながら、筆者はこの方面には極めて疎いので、当時は日
本にいたはずなのだが全く知らない。
歌詞の内容は、何でもアメリカンドリームを狙うサクセスストーリーというこ
とだが、一発当ててやろうという気負いもあって、カジノという言葉を持ってき
たようだ。英語の語感としても悪くなく、実際この名のバンドが英国にいた。
Drive は「ドライブ=運転する」から派生して、自力でそのように持ってい
く、制御しながら物事を運んでいく意味になり、Casino Drive だと「カジノを
営業する」ともとれるし、「カジノのように浮き沈みがありながらも自ら乗り切
っていく」と、かなり前向きな良い意味にも取れる。実際にカジノを経営するよ
うな人は稀だから、一般には後者の意味と捉えるだろう。
父親 Mineshaft は今年の 3 月に Cool Coalman の父親として紹介しているの
で、以下に引用する。
『 父親 Mineshaft は、炭坑の換気用竪穴のことである。
Shaft はゴルフクラブの棒の部分がそう呼ばれるので見当がつくと思うが、
棒・杖の類でクラブヘッドとグリップというように、何かを繋いでいるものであ
る。炭坑の場合は、本坑と地上とを細く掘った坑道で繋いでいるためにこう呼ば
れる。
Mineshaft の母親 Prospectors Delite は、「金鉱掘りの大いなる楽しみ」
という意味だから、本来ならばそれは「金」であるはずなのだが、Prospector
とは元々「取らぬ狸」の意味が込められており、実際に一日中当てもなく掘り続
けた人にとって、地上からの空気が届くのはこの上ない喜びであっただろう。
皮肉と現実の入り混じったなんとも捻りの効いた命名である。
その父親は言うまでもなく Mr Prospector だが、母親が Up the Flagpole「
旗竿の上へ」、その父 Hoist the Flag「旗を掲げる」だから、Shaft「竿・杖」
のイメージはここにすでに存在している。』
ベルモントでの兄弟三連覇がかかった馬であるから、当然母親は昨年一昨年の
ベルモント勝ち馬と同じである。これも以下に Rags to Riches から引用して置
く。
『 Rags to Riches は直訳すると「ぼろきれから冨へ」、つまりは「乞食の
ような生活から大金持ちになった」ということを指している。これは母系から面
白いつながりをしているので、見てみよう。
母系を辿ると、Better than Honour 、Blush with Pride 、Best in Show 、
Stolen Hour 、Late Date と連なっている。
Late Date は「遅い日付、遅れた日付」で、その結果 Stolen Hour「失われ
た(盗まれた)時間」となる。「失われた時間」は悪い意味ばかりではなく、没
頭したりはまったりして「時間を忘れてしまう」意味があり、したがって Best
in Show「ショーの見せ場(最高の場面)」につながる。
「最高の場面」を演じる事は出演者にとって誇らしいことであり、Blush with
Pride「誇らしく顔を紅潮させ」て、観客におじぎをするのである。おそらくは、
その時に受ける観客からの拍手はどんな「賞」を勝ち取ることよりも嬉しく、
「名誉以上のもの」すなわち Better than Honour と感じるであろう。
「ぼろは着てても心は錦」などという古い歌があったが、この一連の流れを見て
いてそれを思い出した。もちろんアメリカにそんな歌は無いけれども、同じ人間
で似たような感覚は当然持っているし、古典的ハリウッド映画の好むハッピーエ
ンド・ストーリーにも良く見られる。
Rags to Riches と Better than Honour の関係だけ見ると、「花より団子」
つまり「名誉より良い物」はは金(冨)だろうと簡単に結論付けてしまいそうだ
(実際兄 Jazil がベルモント S を勝ったときにそう書いた)が、それであれば
Rags「ぼろ」という言葉を持ってきた意味が薄れてしまう。ここは、「きちんと
した仕事をしていれば、冨は結果として付いてくる」と解釈したい。
そういう意味でもう一度母系に連なる名前を見ると、「時を忘れて」努力を重
ね、「最高の場面」を演じ切って「誇らしく顔を紅潮させて」観客に応える事は、
「何もの(名誉)にも替えがたいもの」であり、それは「やがて(後日)」本当
の「冨」をもたらせてくれるのである、と読める。』
改めて読んでみると、なるほど Rags to Riches と Casino Drive の意味の相
似性が理解できるように思うが、如何であろうか。
私自身はレースを見に行かなかったが、知人(日本人)でベルモントの年間チ
ケットを持っている人がいて、当然見に行った。
Casino Drive はパドックで随分暴れていたのだそうだ。場内の雰囲気は、あ
れで力が出せるのか?というものだったようで、実際スタートで出遅れた。
しかしそこからのレース振りは、どうしてどうして、僅か 2 戦目の馬とは思
えないような走りだった。好位の内で折り合い、4 コーナーでは 2 頭の間を割
って出てくる根性も見せた。知人には現地でよく顔をあわせる人たち(馬券好き
なアメリカ人、含む黒人)がいるのだが、彼らの反応は、「あれは強い、祖父
(AP Indy)を上回るかも」だったそうだ。
無敗の三冠馬誕生か、前人(馬?)未踏のベルモント兄弟三連覇なるか、今年
のベルモントは異常な盛り上がりを見せるであろうことは、間違いなく当然この
2頭が1、2番人気だろう。順調に本番を迎えてくれることを祈りたい。
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「日記とはもともと、その周辺の人々の物語の集合体なのかもしれない。
有馬日記の人々について調べながら、たびたび奇妙な感覚に襲われたのは、
そのためだろうか。これは日記ではなく、創作ではないか、との感覚であり、
私が興味を抱いているのは、有馬頼寧という人間ではなく、有馬日記という
物語ではないか、との思いである」
(「あとがき」より)
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■ 佐藤正人著『わたしの競馬研究ノート』 第552回 編:山本一生
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競馬ノート15:競馬切抜帳(52)
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オグリキャップの有馬記念制覇はフロックか?
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次に紹介する記事は、週刊文春(91/1/17号)にのったものである。
オグリキャップの“奇跡の快走”に沸いた昨年の有馬記念。その有馬記念は
(時計的にきわめて低いレベルだった)と、おなじみ競馬博士の井崎脩五郎氏が、
“衝撃の事実”を明らかにした(東京中日スポーツ紙)。
当日の第5レースは有馬記念よりはるかに格下のレースだったが、距離は同じ
2500メートル。勝ったフジミリスカムは2分33秒6で走ったが、オグリの
走破タイムは2分34秒2。
もしも第5レースにオグリが出ていたら、(単純に時計だけあてはめれば5着
がやっとだった)ということになる。
つまりオグリは、極端なスローペースに恵まれ、万に一つの幸運で勝ちを拾っ
たというわけ。運も実力のうちだけどネ。
「単純に時計だけあてはめれば、5着がやっとだった」というのは、まさにその
通りだが、この第5レースにオグリキャップが出ていたら、勝っていたかもしれ
ないとも言える。
また「極端なスローペースに恵まれ、万に一つの幸運で勝ちを拾った」という
けれど、もっと早いペースになったとしても、オグリは勝ったかもしれない。だ
が、ただ一つ確かなことは、昨年の有馬記念にオグリキャップが勝ったというこ
とである。
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日本競馬史に永久に残るだろう『競馬研究ノート』シリーズのどのページ
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二着の不在、物語の空白 をみなごたちの春
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ケンタッキーの呼び声 天国に最も近い競馬場
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競馬の文化村「もきち倶楽部」 No. 880
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BACK NUMBER http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000042700
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【発行者】 安部俊彦
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【編集人】 山本一生
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【WEB】 http://www.bunkamura.ne.jp/mokichi-club
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【MAIL】 mokichiclub@bunkamura.ne.jp
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【制 作】 (有)ケーズオフィス
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