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ふとした日常を哲学するエッセイ。自由や存在、幸福や死といったものをちょっとだけ考えるヒントにでもしてくれたら嬉しいです。詩や小説、映画案内なども掲載。

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2008/02/14

人生の一日・第354号

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   人生の一日   〜なにげない日常を哲学するメールマガジン〜
                         第354号              
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 こんにちは。松川亜人です。

 ずいぶん久しぶりの発行になります。

 これまでのような定期的な発行が非常に難しくなってきて、正直、発行を
やめようかと迷いましたが、まだ「言いたいこと」が少しは残っているようで
す。 

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 ●眠れぬ夜の哲学・『消費者的・教育の平等性』


 先日、某新聞の投稿欄に、東京都のある都立中学で実施されている「習
熟度の高い者に対する予備校での補習」に関して、好意的な意見が掲載さ
れていた。投稿したのは高校生だった。
 高校生が自分なりの考えを持ち、それを堂々と新聞に投稿するという、そ
れだけでも誉められるべきこと、などだろう。しかし、彼の主張である『でき
る者とできない者を分けて指導することこそ、真に平等なのではないか』と
いう一文には、いささか反論がある。
 
 結論を先に言うと、この高校生が述べている「平等」とは、消費者的発想
から生じる平等なのである。
 同一の金額を支払っている消費者に対しては、同等の「価値」あるものを
受け取る資格がある。しかし、教室という空間では、能力の「上下の開き」が
あるため、授業内容を最も「効率よく、価値あるものとして」受け取ることが
できる者は限られる。これに対し、能力別授業では、より多くの生徒(消費者)
に同等の「価値」が与えられやすくなる。それが「平等」だ、という主張だろう。

 このような発想を行うことに対して、この高校生を責めるわけにはいかない
だろう。なにせ巷は新自由主義的な効率追求の消費思想であふれかえって
いる。その考えから抜け出すことの方が難しいはずだ。そして実際、消費者
的発想から教育を見たとき、この意見は「正しい」のだ。上記の記述を読ん
で、「そのようになるべきではないか」と思われる向きも多いだろう。

 しかし、消費活動として教育を見た場合、教室内で行われるのは、教師とい
う「売り手」と、生徒という「買い手」との知識という「商品」の受け渡しになって
しまう。ここには、「他者の考えを吟味する」事や「共同作業としての学習」とい
教育の社会的な側面がすっかり抜け落ちてしまうのだ。それどころか、教育
が「消費」である以上は、消費者としては「無駄なもの」はできるだけ購入した
くない。つまり、自分自身が何らかの「購入理由」を感じることのない商品(学
習内容)には全く興味が湧かなくなる、極めて受動的な人間を育成してしまう
ことになる。
 「商品」が必要であれば授業を聞くし、必要がなければ聞かないし、その無
駄な時間は携帯電話をいじったり、マンガを読んだり、おしゃべりしたりする
ことも「消費者」としては当然の権利だ。
 つまり、生徒が「消費者」として存在する時、教師と生徒との権力構造が逆
転する。生徒は、「学ぶ必要性」を感じない限り、「学ばない」という選択をとる
ことができるのだ。

 また、自分自身が「消費者」として席に着いている生徒は、周囲の他者の
存在など気にする必要がない。それどころか、たとえば「できる」生徒にして
みれば、「できない」生徒は自分自身の「消費者としての権利」を阻害する邪
魔者でしかない。
 ここには、共同体としての意識が決定的に抜け落ちている。

 話は少し逸れるが、もう一つ根本的な疑念を呈しておこう。
 このような「学力問題」の議論を聞いているとき、たいていの場合は「子ども
にどのように学力をつけさせるか」は出てくるが、そのことによって「子どもを
どのような人間に育てるのか」は、全くといっていいほど議論されない。まるで
「学力」さえつければ、人間性はあとからついてくる、とでもいいたげである。
もしそうなら、「学力」で上り詰めた高級官僚は聖人君子ばかりのはずだが、
現実がそうではないことは言うまでもない。



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●こんな映画を観た

  『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』★★★

 ジョニー・ディップの歌声が聞けるミュージカル映画、といえば聞こえはいい
のですが、けっこうスプラッタです。それでも、残虐シーンはティム・バートン監督
らしさでうまく誤魔化されています。


  『アース』★★★

 リラックスして観たい環境映画、ですけど、それ以上のものがあると思います。
 自然界の過酷さを、中立な立場で撮影してあり、好感が持てました。 

  

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 「人生の一日」第354号、いかがでしたでしょうか。

 完全に不定期配信になってしまいましたが、これからも、何か「言っておきたいこ
と」ができたときに、思い出したように配信していくつもりです。
 

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■「人生の一日」第354号 2008/2/15

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