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2009/09/09

[Kataro Syuwa :No.119] CLって、格フレームになるよね その4

ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ
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No. 119                                             2009年 9月 9日発行
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ

  皆さん、こんにちは。夏休み中の徳田です。

  1回休んでしまいました。夏休みを楽しみすぎてます。すみません。2回分の
原稿を書いたので、来週も引き続き配信します。その後は... 頑張ります。

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  先々週は、「彼はタイヤに付いた泥を払った」という日本語文を手話に変換
する話をしていました。

  その際、すごく単純化しました。
  まず、形態素(いわゆる単語)に区切りました。

       彼/は/タイヤ/に/付いた/泥/を/払った

  ここまでは既存の技術で出来ます。皆さんのパソコンにも入っている仮名漢
字変換(MS-IMEとかATOK)でも、同じ事をやっています。普通の話です。

  ここで、すごい仮定を入れました。変換先を「日本語対応手話」にすること
にします。「うわー、それはないんじゃない? 騙された!」と思う人もいるで
しょう。まぁ、そのあたりは、これから2回分、騙されたと思って読んで下さ
い。

  で、日本語対応手話なら、構文はほぼ日本語なので、助詞のことは考えなく
ていいだろうと言うわけです。直接的には、助詞のことを考えたくないために
日本語対応手話にしたかった、ということですが、理屈としては「構文変換を
省きたかった」ということになります。このあたり、あとで、もうちょっと説
明します。

  で、その結果、どうなるかというと、

       彼/タイヤ/付く/泥/払う

  となります。都合により、動詞は終止形にしました。この程度の変換も既存
の技術で出来ますので、なんの問題もありません。今すぐにでも、実現できる
と考えてもらって構いません。

  さて、この通り手話で順番に表現すれば、まだ手話がよくわかっていない初
心者らしい手話にはなる感じですね。

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  ただ、これは人間が話す場合のこと。私の目的は、これをコンピュータで処
理することなので、このままではすごく問題があります。

  それは、単語には、複数の意味があるからです。

  例えば「払う」。私の手元にある国語辞書では、次の5つの意味が載ってい
ました。

  1) 粉末状のものを落とす
  2) 人を去られる、いやな気分をすっきりさせる、下宿を去る
  3) 代金を渡す
  4) 心をある対象に向ける
  5) 手足や持った物を横に振る

  それぞれを手話で表現すると、直感的に1と3と4は違う動きになることがわ
かると思います。1と2は似ているかもしれないし、違う場合もありそうです。
5も、1と似ていたり、違うかもしれません。

  そう、ここが重要です。日本語では5つの意味でも、手話では同じ5個とは限
りません。一般的には、言語が違えば、意味の個数も違います。(意味をどの
程度で数をカウントするか、ということは、とりあえず後回しで考えます。)

  手話に「払う」は、どの程度あるのか。「日本語-手話辞典」を見たら、な
んと7つありました。

  一) 服の埃を払う
  二) 人を払う
  三) 駐車料金を払う
  四) 税金を払う
  五) 注意を払う
  六) 努力を払う
  七) 犠牲を払う

  説明のため、手話の方の意味は漢数字にしました。これを比較すると以下の
通りの対応になりそうです。

  1 -> 一
  2 -> 二
  3 -> 三、四
  4 -> 五、六
  5 -> 該当無し
  該当無し -> 七

  4との対応が少し無理矢理のような気がしますが、とりあえず、こんなもん
だとしておきましょう。

  また、問題が起きてしまいました。該当無しがあるんです。つまり、理屈と
しては翻訳不能です。
  この問題は、私が学生の時に、ちょっと考えた方法があるのですが、それは
来週以降の話にします。

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  では、まずは当面の問題である、意味の決定に進みます。

  「彼/タイヤ/付く/泥/払う」の「払う」は、日本語では、どの意味で、手話
では、どの意味になるのか?

  ここでは、格フレームによる解決方法を見ていきます。なぜ「格フレーム」
と言われると、今はそれがテーマだからです。他の解決方法もありますが、そ
れは別の機会にさせてください。

  格フレームは、No.116でちょっと説明しましたが、簡単に言えば、典型的な
構文の枠組みみたいなものです。これは、事前の研究により、動詞ごとに詳細
がわかっていると考えて下さい。例えば、前述の国語辞書を見てみたら、私の
手元には、こんな風になっていました。

  1) 粉末状        [人] が/は [物] を払う
  2) 去られる      [人] が/は [所から] [人・心理] を払う
  3) 代金          [人・組織] が/は [人・組織] に [金]を[金額] 払う
  4) 対象に向ける  [人・組織] が/は [人・物・事] に[心理] を払う
  5) 横に振る      [人] が/は [物・手・足] を払う

  説明文の方をちょっと短くしました。後半の部分が、ここで考える格フレー
ムと思って下さい。

  さて、元の文は「彼/は/タイヤ/に/付いた/泥/を/払った」でした。既存の
技術で、以下の構文木はすぐに作れます。どうやって作るかを説明すると長く
なるので省略しますが、情報処理学専攻で大学を卒業した人なら、楽勝で、こ
ういうプログラムは作れます。


                   /\
                 /    \
               /      / \
             /      /     \
           /      /         \
         /      /             \
       /      /\             /\
     /      /    \         /    \ 
   /\    / \     \     /\      \ 
  彼  は タイヤ に  付いた 泥   を    払った

  構文木というのは、作ってしまうと便利な物で、文の構造がわかりやすくな
ります。いわゆる係り受けです。「払った」に注目すると、この文から意味の
ある文として取り出せるのは「彼は払った」とか、「泥を払った」であること
がわかります。構文木ですと、以下の通りになるからです。

                   /\
                 /    \
               /        \
             /            \
           /                \
         /                    \
       /                        \
     /                            \ 
   /\                              \ 
  彼  は                           払った


                              /\
                            /    \ 
                          /\      \ 
                        泥   を    払った

  でも、「タイヤを払った」は取り出せません。構文木にすると、三角のきれ
いな形にならないからです。これは、日本語として、チャンチャラおかしいこ
とを示しています。

----------------------------------------------------------------------

  さて、何のためにこういうことをしているかに話を戻します。

  こういう意味のある文を片っ端から取り出していき、先ほどの格フレームと
比較していきます。片っ端からです。

  そうすると、以下の形が、うまい具合に、ある格フレームと一致します。

                   /\
                 /    \
               /        \
             /            \
           /                \
         /                    \
       /                      /\
     /                      /    \ 
   /\                    /\      \ 
  彼  は                 泥   を    払った

  これは「彼は泥を払った」という文です。以下の格フレームと比較してみま
しょう。

  1) 粉末状        [人] が/は [物] を払う
  2) 去られる      [人] が/は [所から] [人・心理] を払う
  3) 代金          [人・組織] が/は [人・組織] に [金]を[金額] 払う
  4) 対象に向ける  [人・組織] が/は [人・物・事] に[心理] を払う
  5) 横に振る      [人] が/は [物・手・足] を払う

  「彼」は[人]、泥は[物]ですから、まさに1の粉末状の物を落とすという意
味と完全に一致します。

  つまり、格フレームを使うことで、日本語での意味が決定できたわけです。

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  ちょっと長くなったので、ここで区切りましょう。

  では、次回の語ろうかをお楽しみに。

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