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不動産金融アナリストの井出保夫が、難解とされる不動産証券化のしくみを基礎からやさしく解説します。ビギナークラスの不動産、金融、建設セクターに勤めるプレーヤー向きの内容です。大学生も歓迎します。

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2006/05/22

井出保夫の不動産証券化教室 第126回

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井出保夫の不動産証券化教室 第126回 平成18年5月22日


資産規模拡大の影で不動産ファンドの法令違反が矢面に

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東京証券取引所に上場する不動産投資信託(J-REIT)の値動きを示す
東証REIT指数が、今月8日の終値ベースで、2003年4月の算出開始以来の
高値を更新した。その主因は今月4日付の日本経済新聞が、「オフィスビル賃貸料
調査(上期、4月下旬実施)によると、東京と大阪で既存ビルの募集賃料が2年ぶり
に上昇に転じた」と報道したことで、J-REITの内部成長、すなわちJ-REIT
が既に組み込んでいる物件の賃料の上昇期待が高まったことだと思われる。


この日は上場不動産株も軒並み上昇し、業種別の東証株価指数(TOPIX)の
「不動産業」の値上がり率は、全33業種でトップに立った。これも「日銀が
1月1日時点の公示地価を加重平均したところ、15年ぶりのプラスに転じた」との
新聞報道が好影響を与えたらしい。


J-REITの運用資産残高は、2005年度末に4兆1000億円と、この1年間で
約6割増えたことになる。また、昨年度末の上場REITの銘柄数は、32法人と前
の年度末に比べ2倍となった。今年度はさらに10銘柄程度が上場予定といわれて
おり、来年には40〜50銘柄規模になることはほぼ確実とされている。


もっとも、個別のREITに対する評価がはっきりと分かれる傾向が定着している。
例えば、05年度に新規上場したJ-REITのうち、8銘柄の初値が公募価格を下回
っている。市場の初値が公募価格を上回らない状態が続けば、長期保有の投資家が
値上がり益を享受できない状態が続くことになり、特に個人投資家の人気が離散して
しまう懸念が出てくる。また、市場の評価が低いままだと、資金調達の選択肢が狭
まり、新規物件の購入が難しくなるという悪循環もあり得る。


そんな矢先に、日本リテールファンド投資法人がJ-REITとしては初めて証券取引
等監視委員会(SEC)から法令違反で告発された。同社は増資など経営の重要事項
について、実際に役員会で決議した日よりも遅れて公表し、その事実を隠すため役員
会議事録を書き換えていたという。重要事項の決議はその日のうちに開示するよう
証券取引所がルールを定めているが、日本リテールファンドはこのルールに違反しな
いよう役員会議事録の決議の日付を発表日と同じ日に書き換えていたという。


これを大きく報道した日経新聞の論調は、「REITは役員数が少なく、内部管理の
ノウハウが乏しいことが主因」というものだったが、組織の軽さ(最低役員数は執行
役員1名、監督役員2名の合計3名)は投資法人のメリットとして正々堂々と取り入
れられたものであり、その仕組み自体が欠陥だったとは思いたくはない。


業界関係者はJ-REITの仕組みの特性からして、外部に位置する資産運用会社の
運用能力が優れているかどうかが、J-REITの優劣を判断する最大のポイントだと
理解してきたはずだが、当局の検査によって、本来は単なる「器」に過ぎない投資
法人の法令違反の方が先に告発されるとは、意外な結果と言わざるを得ない。SEC
は別のJ-REITの検査にも既に着手しているというから、当分の間は想定外の法令
違反の類が告発される傾向が続くのではないか。


それにしても、最近不動産ファンドがこの手の法令違反に関与する事例が目立つ。
不動産信託の受託の際に、建築基準法に照らし適法かどうかの審査を怠ったことなど
を理由に、金融庁がJPモルガン信託銀行と新生信託銀行に相次いで業務停止命令を
下したのは記憶に新しいが、次は委託した不動産運用会社(J-REITも含めて)の
関与が検査によって暴かれる可能性もある。


報道によれば、国土交通省と金融庁が、拡大する不動産投資市場の適正な運営に向け
たルール作りに共同で乗り出すという。J-REITや私募ファンドが、不動産特有の
リスクの説明責任などをきちんと果たしていないケースが多いことから、両省の局長
級の連絡協議会を設置し、具体的な検討を始めるのだという。不動産投資商品は今国
会に提出済みの金融商品取引法(投資サービス法)案で、他の金融商品とともに幅広
く規制対象となっているが、不動産独自の規制が必要かどうかも論議されるという。


先月アセット・マネージャーズ(株)が、中国の専門誌「証券市場週刊」に掲載した
「J-REIT市場の現状と成長戦略について」というレポートが、日銀が昨年公表
した論文「J-REIT市場の拡大と価格形成」の盗作だったことが発覚して大騒ぎに
なったというが、これとても従来では考えられないような「軽い」ミスであり、
言い訳の仕様がない不始末と言っていいだろう。


プロの不動産ファンドにとって、ある意味で「運用で失敗するよりもはるかに恥ずか
しい失敗」の連鎖は、一体どこまで続くのだろうか。



※明日午前8:45から、TV東京の「オープニングベル」という番組に
コメンテーターとして生出演する予定です。普段は株の番組ですが、この日は
海外REITとJ-REITの特集を9:08頃 から10分程度やるそうです。
ご興味のある方はご覧ください。


※ネット環境の不具合によりしばらくメルマガの発信をお休みしていましたが、今後
はほぼ通常どおり発信できる見通しが立ちました。今後ともご愛読いただければ幸い
です。


         
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本教室のバックナンバーは井出不動産金融研究所のHP上で公開しています。
URL http://www.hi-ho.ne.jp/idex/

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