2005/10/13
井出保夫の不動産証券化教室 第121回
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 井出保夫の不動産証券化教室 第121回 平成17年10月12日 信託法改正で何が変わるのか 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 来年に予定されている信託法の改正案に、「事業の信託」の仕組が導入される見 通しが出てきた。もしもこの事業信託が実現すれば、各企業は特定の事業のリス クを本体から分離できるほか、不振事業を他社に預けて再建することも可能に なる。具体的には、医薬品や先端技術開発など多額の費用がかかりリスクを伴う 事業分野の展開や、同業他社に競争力で劣る生産部門の再生に役立つと見られて いる。 法務省は来年の通常国会に信託の規制緩和を盛り込む信託法改正案を提出する 予定だが、改正作業をしている法制審議会は、金銭や不動産などの「財産」に限 られていた信託の対象を、「債務」にも広げる試案をまとめた。これを受けて 経済産業省が法務省と「事業を負債ごとまとめて」信託する制度作りに着手した。 事業信託の仕組みを使えば、信託する側の企業が損失のリスクを抑えながら事業 を育成できる。例えば、先端技術開発の開発部門を負債ごと信託会社に信託し、 成功した場合に利益を受け取れる受益証券を個人投資家などに販売して、資金を 調達する。失敗して損失が生じても企業本体の決算に損失は及ばない。企業が 受益証券を購入し、収益を狙うこともできる。 信託した事業は契約期間が終わると、自社に戻ってくる。売却あるいは清算する しかなかったような不採算事業でも、他社に預けて再生する手法を選べるように なる。企業は事業を信託する際の契約条項に、事業戦略に引き続き一定の発言権 を持つとの意向を盛り込むことも可能だ。 また、今回の信託法の改正では、資産運用の利益を受け取る受益者を「音楽 制作者」のように指定し、特定の事業育成などを目指す「目的信託」の導入も 検討課題になっている。さらに、資産の委託者が自ら受託者となって運用などに 携わる「信託宣言」の解禁も検討対象になっている。 信託宣言とは、財産権者がその財産権を他人のために管理・処分する旨を宣言す る方法により信託を設定することをいう。資産流動化スキームでは、倒産隔離等 の問題への対処のため、ケイマンのチャリタブル・トラストに SPCの株式を 取得させて、オリジネーターとSPCの資本関係を切断することが多い。この チャリタブル・トラストはケイマンの信託会社が信託宣言することにより作ら れる。 日本でも信託宣言を認めれば流動化が行いやすくなるとの意見が出されている。 その他、銀行が貸付債権を流動化する際に、信託宣言により信託財産にした上で 流動化するといった用途も考えられる。 この他、法制審議会では次のような検討課題があるとされる。 <1>訴訟信託の禁止について例外を認めるか 現行の信託法第11条では、訴訟行為を行わせることを主たる目的とする信託は 設定できないこととされている。この規定は、本来は他人の権利について訴訟行 為等を行うことができない非弁護士が、信託を用いて訴訟行為等を行うのを防止 することなどを目的としている。 ただし、信託法制研究会報告書では、正当な理由がある場合は、訴訟信託も可能 とすることを提案している。権利義務の帰属主体が多数で、訴訟担当を認めるこ とがこれらの者の便益に資するときや、本人又は権利の性質上、訴訟の提起又は 追行が困難であり、訴訟担当を認めないことに固執すると、実効的な権利救済に 重大な障害を与えるときなどは、訴訟信託も許容されうるというのがその理由で ある。 <2>目的信託を認めるか否か 目的信託とは、受益者を確定することができない信託である。例えば、ペットの ような権利能力の無い者の飼育のための信託を設定する行為などがこれに該当 する。現行法の下では、このような信託は、公益信託を除き、有効な信託とは認 められないと解されている。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 本教室のバックナンバーは井出不動産金融研究所のHP上で公開しています。 URL http://www.hi-ho.ne.jp/idex/ 井出保夫の不動産証券化教室の解除は下記のページからおこなえます。 http://www.kaijo.com/ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


