2008/11/22
[書評]のメルマガ vol.386
■■----------------------------------------------------------------- ■■ [書評]のメルマガ 2008.11.20.発行 ■■ vol.386 ■■ mailmagazine of book reviews [1日1キロダイエット 号] ■■----------------------------------------------------------------- -------------------------------------------------------------------- ■コンテンツ -------------------------------------------------------------------- ★「三ツ星☆☆☆・人情馬鹿の店」/大友 慶 →実は冬こそ美味しい鰻屋さんの紹介です。 ★「ベストセラーに背を向ける」/朝日山 →自分自身でもわからない、ピンチでの真価とは…… ★「本の周りで右顧左眄(うこさべん)」/蕃茄山人 →今回はお休みでーす。 ★「ハタナカリエコの本日和」/畠中理恵子 →今回はお休みでーす。 ★「どこでも読書」/オオウラウタコ →今回はお休みでーす。 ★「こんな本をセンデンしたい」/小林圭司 →今回はお休みでーす。 -------------------------------------------------------------------- ★「三ツ星☆☆☆・人情馬鹿の店」/大友 慶 -------------------------------------------------------------------- 東京で地道に商いをする飲食店を毎回1店舗ずつ紹介―― 「三ツ星☆☆☆・人情馬鹿の店」(4) 大友 慶 愛川(あいかわ)――鰻屋(高田馬場) 数年前に惜しくも店じまいした高田馬場のイタリア料理店「イル・キャス テロ」のご主人が「いつ行っても休みなんだけど、ここの鰻は相当美味しい よ。南千住の尾花に比べたってそう劣らない。もっともタイミングが合わな いのか、僕も数回しか食べたことないんだけど……」と言っていたのを聞き つけて、早速足を運んでみたのが7年くらい前のことだ。やはり店は閉まっ ていた。まぁ、1度目で入れるなど虫の良いことは期待していなかった。そ の後、何度か様子を見に行って、鰻にありつけたのは3度目あたりだったろ うか。 高田馬場の早稲田中央口を降りて、早稲田通りを早稲田方面に歩く。早稲 田松竹のひとつ手前の道を入っていくと、すぐに「鰻」のノボリが見えてく る。平屋のこじんまりした店で、引き戸を開けると、そこには4人がけテー ブルが2つと、小上がりに掘りごたつテーブル席が2つ、こちらの方はそれ ぞれ6〜8名くらい座れるようになっているので、家族やグループ客には もってこいだ。清潔な店内には鰻を焼く香ばしい香りが漂う。壁のあちこち に掲げられた高山植物や野鳥の写真は、ご主人の手になるものと思われる。 そして曰くありげな名家の家紋とおぼしき文様が彫られた板が目に入る……。 とにかくこの店の女将が可憐なのだ。いつも真っ白な三角巾を被り、愛ら しいえくぼに少女のような眼差し、桂木洋子や香川京子がそのまま老女に なったような感じで、優しげな声といい、シャンと伸びた背筋といい、さぞ お育ちがいい方なのではないかと思わせる。例えば浅草に「初小川」という 鰻屋があるが、ここの女将は「ばばあ」と形容してしまいたくなるような人 物で、これまた堂に入っていて絵になるのだが、愛川の女将はおよそ“鰻屋 の女房”という感じがしない。 親方の方はといえば、Tシャツと腰巻エプロン姿の下に、老いてなお強靭 な体つきが感じられるのは、山好きの人ゆえなのか、可憐な妻を守ってきた という実感がこもっている。話してみるとこれがかなりひょうきんな人で、 瞳の奥には朗らかな優しさが灯っている。 恐らく70代前後とおぼしきこの夫婦であるが、店を始めたのは15年前とそ う昔のことではないらしい。しかもこの家は前も鰻屋で、居ぬきのまま始め たそうだ。そうするとご主人が50代も半ばに差しかかった頃ということにな る。それを聞くと、ますます勝手な想像力が働く。今は町にとけこんで、鰻 屋の親父と女将としてつましく暮らしているけれども、それ以前には類いま れなロマンスがあったのではないだろうかとか、壁に掛かっている家紋は、 女将の出自と関係しているのではないだろうかとか……。ちなみに、好奇心 を抑えきれず聞いたところによると、この家紋は特別な曰われのあるもので はなく、単に親父さんが趣味で彫ったものだということだった。 肝心の鰻だが、パリッと香ばしくあぶられた鰻は箸を通すと柔らかくほぐ れ、透明な油がしみだす。さらっとした醤油の濃いタレには、食べあきない 工夫がされている。そのタレが硬めに炊いたご飯に徐々に吸われ、程よい柔 らかさになる。肝吸いとお新香、ほうれん草の胡麻和えが添えられて、松で 1,890円とは良心的だ。そして最後に必ず女将が季節の果物をそっと出して くれる。 ビールを飲む場合は、肝焼きや白焼きから始めるのも良い。つまみは枝豆、 鰻の骨揚げ、いたわさなど、ごくごく簡単なものがあるだけだが、とにかく ここは鰻を食べさせる鰻屋なので、やはり最後まで重箱1杯分入るお腹は残 しておきたい。 何度か足を運ぶうち、この店がいつも閉まっているというのは、単なる錯 覚だったということが分かってきた。定休日は水曜日、あとはわりと真面目 に店を開いている。しかし無駄に店を開くことはまずない。旗日には必ず休 むし、昼休みもきっちりとる。また夕方も6時頃までに入らないとちょっと 危ない。その日の鰻が終われば当然暖簾が外されるので、やはり予約は必要 だ。いつも席の予約だけするつもりで電話するのだが、結局は何を食べるか 全て聞き出されることが多い。先日の電話ではご主人が出た。「はい、お二 人さん18時、了解しました」と確認したあと、「で、何を食べますか?」と 聞かれた。最初にビールを飲むだろうことを想定して、「では一番小さな松 で」とお願いし、念のため「肝焼きや白焼きなんかは当日でも大丈夫ですよ ね?」と尋ねたら、「いやぁ、実はそういうのが一番時間がかかるんだよぉ」 と言われてしまった。続けてすかさず「枝豆なんかは?」と切り返すと、 「決まってるなら聞いといた方がいいなぁ」ときた。「じゃあ、お願いしま す……」といった具合で、結局電話口で鰻のみならず、つまみまで事前に注 文した次第だ。 これは、夫婦という最小限の労働力で店を回しているゆえであって、過ぎ たるサービスは求められない。しかしちゃんと注文しておいた品に対しては、 完璧な準備がなされ、気持のよいサービスが供される。そして可憐な女将が、 「いらっしゃい」と言って優しく迎え入れてくれる。この夫婦の姿勢が、慣 れてくるとなんとも心地よい。もしかすると、作家の深沢七郎が冬の間だけ 趣味で開いたという曳船の今川焼屋「夢屋」のように、この夫婦も鰻屋を やっているのは世を忍ぶ仮の姿なのかも知れないと夢想する。もしそうなら ば、私たちはその夢のような時間を、ちょっとだけお裾分けしてもらってい ることになるのだ。 (大友慶 出版関係社員) --------------------------------------------------------------------- ■「ベストセラーに背を向ける」/朝日山 --------------------------------------------------------------------- 自分の強さを発見できるかも 「道は開ける」デール・カーネギー 創元社 景気後退と円高で、1兆6千万出していた営業利益が「一兆円を下回る」ので はないかと言われていたトヨタの営業利益が6000億円と「一兆円下回った」 旨の報道があった。トヨタすらこうなのだから、他は推して知るべし。衝撃 的なニュースだし、雇用情勢の悪化も避けられないだろう。 大変なご時世だが、そんな中でも人は生きて行かなきゃならないわけで、こ んな時は今回紹介する「道は開ける」を座右に一冊!と思って、アマゾンで 検索すると販売ランキングの三ケタ台を維持しているようだ。良い本は何か、 みんな知っている。知らなかった方は、今回知れば、それでオーケーw 誰しも名著に挙げる「人を動かす」と共に、ロングセラーを続けるこの本。 「人を動かす」が対人関係を扱った本であるのに対し、「道は開ける」は悩 みの克服法を扱う。 本はかなりのボリュームなのだが、内容はシンプル。 たとえば私の場合、何度も第一章にある「苦境に陥ったとき」のノウハウに 助けられている。 1.問題が解決できなかった場合、最悪の事態は何かを自問する。 2.やむを得ない場合には、最悪の事態を受け入れる心構えをする。 3.それから落ち着いて最悪事態を好転させるよう努力すること。 最初に助けられたのは大学時代、某学内セクトからひどい中傷を執拗にされ た時だった。実名入りのビラを何度もまかれて、まいってしまって水とヨー グルトとオレンジジュースしか体が受け付けない。 中傷が始まって一週間 したある日、風呂屋の体重計に乗ると、体重が七キロ減っていた。図らずも 実現した1日1キロダイエット。その時思ったのは「この調子じゃあと、一 カ月も経たずに死ぬな.....」どうする? そこで思い出したのが、上記のノウハウだ。最悪の事態は、死ぬか、大学を 中退することだろう。ま、死ぬよりは中退の方がいい。了解、中退する覚悟 を決めよう。 では、中退を避けるにはどうすればいいのか。このままやられ続けるのを避 けるには、土下座でもして謝るか、闘うかだ。土下座は嫌だ。なら闘うしか ない。闘えば勝てるかも知れない。負けたら中退すればいい。簡単に結論が 出て、半年間の闘いの末、全面勝利。 驚いたのは、自分が勝ったことよりも、敵の面の皮の厚さ。あれだけお前達 はウソつきで薄汚い人間のクズだと公の場で証明してやったのに、退学する どころか平気で学内を闊歩している。恥知らずは最強だと思い知った(笑) それはともかく、雇用の危機に直面している方にしても、最悪の事態とは、 多くの場合収入源が断たれることで現在の生活レベルが維持できないとか、 住むところがなくなるとかいったところだと思う。生活保護を受けることに、 屈辱感を覚える方も多かろう。 しかし、家族やご近所に対する面子を失う覚悟をしてしまえば、精神的には 楽になる。精神的に楽になったら、冷静な思考ができて、失うことに怯えて いる段階ではできなかった、活路を見いだすことができようになる人もけっ こう出てくるのではないか? もちろん他にも悩みの分析法や、断ちきり方、批判を気にしない方法や適職 の見つけ方や経済的な悩みの解決法なども書いてある。 その全てが万人の役に立つとは思えない。一読して「当たり前のことしか書 かれていない」と思う方も少なくないだろう。他とは違う、新しさを読書に 求める人が多いであろう当メルマガの読者にとって、あまり魅力的な本には 見えない可能性もある。そんな本なら、読まなくていいかな?、と思う方に はこう申し上げたい。 役に立つ本かどうかは、あなたが土壇場に追いつめられた時しかわからない。 読者のみなさまへの失礼を顧みず、そんなことを言い出すのは、最近某組織 内での阿鼻叫喚をつぶさに見ていたから。非常に厄介な問題があって、その 対処に参加者全てがある種の犠牲をはらう必要があるとは誰もがわかってい た。 そうした問題に対する各人の対処の仕方は、本当に人間性が出るw。大きく分 けて、いざとなれば身を切る腹を決めている人と、できるだけ損をしないよ うに立ち回ろうとする人、そして逃亡をはかる人と3種類の人がいた。 もちろん、1番強いのは身を切る覚悟のできる人だ。要するに開き直れる人。 たとえば、経済的に追いつめられても、面子もなにも考えずに「じゃ、生活 保護受けよう!そうすれば少なくとも飢え死にはしないだろう」と考えを切 り替えられる人のことだ。 自分にはそんなことできないよ〜とおっしゃる方もおられよう。しかし、読 者のみなさんが、いざとなれば開き直る覚悟なんて自分にはないとお考えに なっていたとしても、果たして本当なのか? 阿鼻叫喚を目の当たりにしていると、人は見かけでは分からないことを実感 する。見かけは困難を目にして逃げ出しそうなことを言うが、実際は違う人。 当所威勢は良くとも尻すぼみになる人もいた。そんな人たちを見ていると、 いざと言う時に自分がどんな行動を取るのか、実際にはわかっていない人が 多いのだなと思うのだ....かく言う自分もそうだったw 自分なんか小心者で、能力もたいしたことない弱い人間だと思っている方の 中には、実際には大胆で、能力も高く、強い人間がいる。これまでの人生で、 そうした力を発揮する場がなかっただけなのだ。 いざと言う時に、この本が役に立つかどうかは保証はできない。しかし、五 千人もいらっしゃる当メルマガの読者の中には、この本を読んでいたがため に自分も知らなかった自分の強さを発見する人が何人か何十人か、ひよっと すれば数百人は確実におられるはずである。 ま、一度騙されたと思って、読んで下され。 (朝日山 烏書房付属小判鮫 好きなジャンル 何だろ? 最新刊『〈イラ スト図解〉コメのすべて 生産、流通から最新技術まで』(日本実業出版社 1500円税抜き)発売中。他に『最強!戦略書徹底ガイド』(ソフトバンク 1,600円税抜き)『農業に転職する』(プレジデント社 1,500円)『イラス ト図解 農業のしくみ』(日本実業出版 1,500円)も好評発売中です) --------------------------------------------------------------------- ■あとがき --------------------------------------------------------------------- >先日、ボストン美術館展にいってきました >はあはあ >岡倉天心セレクションだけあって、浮世絵とか、さすがだなーと思ったん ですが、これって現代で似たものをさがせば、やはり「Cool Japan」の象徴 であるコミックと同じなんだろうな、と思いましたねー。当時の浮世絵って 、包装紙とかにも使われていた程度の扱いだったらしいじゃないですか(笑) >ああ、北斎とか本当に漫画ちっくですもんね。 >そうそう、あと100年後にジャンプの巻頭カラーページが、額に入れら れて「少年ジャンプ 巻頭カラーの百年展」とかいって美術展で展示されて いるかも……(笑) ====================================================================== ■ 電子メールマガジン「[書評]のメルマガ 」(毎月四回発行) ■ 発行部数 5180部 ■ 発行:[書評]のメルマガ発行委員会 ■ 掲載された内容を許可無く転載することを禁じます。 ■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。 ■ ご意見・御質問はこちらまで enji1128@yahoo.co.jp ■ HPアドレスhttp://www.shohyoumaga.net/ ■ このメルマガは『まぐまぐ』を利用して発行しています。 ■ メールマガジンIDナンバー0000036518 ■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行って下さい。 ======================================================================



