[書評]のメルマガ vol.381
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■■ [書評]のメルマガ 2008.10.17発行
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■ vol.381
■■ mailmagazine of book reviews [ 大きな穴が 号]
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[CONTENTS]------------------------------------------------------
★近事雑報「南陀楼綾繁のホンのメド」
→本をめぐる情報+アルファの雑談です。まだまだ続く秋の本イベント。
★新連載「ふぉっくす舎のエンターテインメント玉手箱」根岸哲也
→“本棚のために家をつくった男”がずっと読み続けてきた作家たち。
★「入谷コピー文庫 しみじみ通信」堀内恭
→限定15部でオモシロ小冊子をつくる極小版元の活動報告です。
★「千駄木ドロナワ日記」川原理子
→地域雑誌『谷根千』の若手スタッフが綴る、日々のあれこれ。
★「もっと知りたい異文化の本」内澤旬子
→男のプチロマン=隠れ家体験を描いた本を憂鬱な女が読んでみたら。
★「林哲夫が選ぶこの一冊」
→「てきとうでゆるやかな統一感」を持つ湯川書房の本の魅力とは。
★「全著快読 編集工房ノアを読む」北村知之
→「全著快読」新シリーズ。大阪の文学出版社の全冊を読みます。
*本文中の価格は、表示のあるもの以外は、税抜き(本体)価格です。
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■南陀楼綾繁のホンのメド
新刊、古書、マンガ、雑誌、ウェブサイト、書店、イベントの近事雑報
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★仙台で古本市
『杜の都を本の都にする会』立ち上げ記念企画
「Book!Book!Sendai スタートイベント“古本市”」出品者募集
仙台市内のショップ3店舗合同で行われる総冊数1,500冊の古本祭り。本の
好きな人達50人が集まって自分の本に値段を付けて販売するイベントです。
スペシャルゲストに写真評論家の飯沢耕太郎さんも参加。
開催期間
2008年10月25日(土)〜11月3日(月)の10日間
開催場所
◎「book cafe 火星の庭」
http://kaseinoniwa.com/
仙台市青葉区本町1-14-30-1F 電話:022-716-5335
月・木〜土/11:00〜20:00 日・祝/11:00〜19:00 定休日/火・水
◎「書本&cafe magellan(マゼラン)」
http://magellan.shop-pro.jp/
仙台市青葉区春日町7-34 電話:022-224-7560
月・水〜金/10:00〜20:00 土・日/10:00〜19:00 定休日/火
◎「stock(ストック)」
http://www.stock-web.com/
仙台市青葉区一番町1-12-7 中川ビル201号 電話:022-342-1082
月〜水・土・日/14:00〜20:00 定休日/木・金
問合せ・連絡先
「杜の都を本の都にする会」
info@bookbooksendai.com
電話:080-6039-8581
http://bookbooksendai.com/
(関連企画)
「ナンダロウさんと本の話をしよう」
出演:南陀楼綾繁
日時:10月27日月曜日 19時〜20時30分
会場:せんだいメディアテーク 7F goban tube cafe
入場料:500円(1drink付き)
人数:30人
申し込み方法:メール予約優先 info@bookbooksendai.com
★今年もブックオカ
3年目となった福岡・ブックオカ。今年も企画が盛りだくさんです。
期間 11月1日(土)〜30日(日)
(主催イベント)
◎一箱古本市 inけやき通り
11月8日(土)11:00〜16:00
※雨天の場合は9日(日)
参加者募集中
◎竹井正和トークショー
断てへんやつは、立たれへん
11月7日(金)19:00〜
B・B・B POTTERS 5階ギャラリー(福岡市中央区薬院1-8-8)
1500円(要予約・先着70名)
◎大竹昭子トークショー
この写真がすごい!
11月15日(土)16:00〜18:00
警固教会(福岡市中央区警固2-11-20)
1000円(要予約)
◎福岡の書店員100名が選んだ 激オシ文庫フェア
11月1日(土)〜30日(日)(各店舗の営業時間内)
福岡県下53店舗、熊本県下2店舗
(共催イベント)
◎フリーペーパー=小さなメディアの放つ光展
11月1日(土)〜16日(日)10:00〜20:00
カフェアートリエ(博多リバレインB2F)
無料
トーク
歩かなければ出会えない〜フリーペーパーとの付き合い方〜
南陀楼綾繁(ライター、from東京)、
上原敏(「SCHOP」編集部、from名古屋)
11月9日(日)17:00〜19:00
カフェアートリエ(博多リバレインB2F)
500円(1ドリンク付・要予約)
その他、載せきれないので、サイトでご確認ください。
リーフレットも近日配布予定。
http://www.bookuoka.com/
★『ぐるり』プレゼンツ
南陀楼綾繁のトーク十番勝負 その7
『酔っぱらい読本』ができるまで
出演
徳島高義(元編集者)
南陀楼綾繁(ライター・編集者)
1978〜79年に刊行された『酔っぱらい読本』全7巻(講談社)は、酒に関す
る小説、エッセイ、詩、落語、マンガを網羅した画期的なアンソロジー。編者・
吉行淳之介と一緒に「大躁正」となってこの本をつくりあげた編集者の徳島高
義さんに、疾風怒濤の「編集ハイ」の日々をお聞きします。
日時 2008年11月14日(金) 18:30開場/19:00開始
場所 対抗文化専門古書 気流舎
世田谷区代沢5-29-17 飯田ハイツ1F
電話 03-3410-0024
http://www.kiryuusha.com/
入場料 800円(予約優先、15人限定)
予約 ビレッジプレス「ぐるり」編集部
info@village-press.net 03-3928-7699
徳島高義(とくしま・たかよし)
1934年、千葉県生まれ。58年、講談社に入社し、「群像」編集部に配属。以後、
「群像」編集長、翻訳出版部長、文芸第一出版部長などをつとめる。97年に退
社。「疾風怒濤」時代につくった本に、キングズレー・エイミス著、吉行淳之
介・林節雄訳『酒について』、ポール・セルー著、阿川弘之訳『鉄道大バザー
ル』、埴谷雄高『ドストエフスキイ全論集』などがある。
★野口冨士男文庫の講演会
「野口文学から受け継ぐもの」
講師 佐伯一麦(作家)
11月22日(土)午後1時半〜
越谷市立図書館 2階 視聴覚ホール
対象:市民50名(入場無料)
※ご本人が電話でお申し込みください。
10月30日(木曜日)午前10時から申込み受付
電話 048-965-2655(越谷市立図書館)
越谷市立図書館
http://lib.city.koshigaya.saitama.jp/
なお、ココに載せられなかった新刊、イベントなどの情報は、随時以下に
掲載しています。ときどきご覧ください。
「ナンダロウアヤシゲな日々」
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/
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■新連載 ふぉっくす舎のエンターテインメント玉手箱
(3) 商品の種類豊富で質も高い佐々木譲商店 その1
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『警官の血』(新潮社)が「このミステリーがすごい! 2008年版」(宝島社)
でベストワンになるなどで話題になり、警察小説の第一人者と言われている佐
々木譲だが、作家としての長いキャリアの中で、警察小説を書き始めたのは、
ここ数年のことにすぎない。少年犯罪を扱った『ユニット』(文春文庫)執筆
のための取材で北海道警の汚職について聞き、それがきっかけとなって初めて
の警察小説『うたう警官』(『笑う警官』と改題して文庫化・ハルキ文庫)が
生まれた。
それまで、佐々木はどのようなエンターテインメントを書いてきたか。「モ
ーターアクションでもなければ追跡サスペンスでもモダンホラーでもない、な
んと第二次大戦を背景にした航空冒険小説だと聞いて意表をつかれ」たという、
第二次大戦三部作の一作目『ベルリン飛行指令』(新潮文庫)発表時の評論家
の発言を『ストックホルムの密使』(新潮文庫)の解説で井家上隆幸が紹介し
ている。井家上は「なにをいまさら古臭い時代を背景にするのか」といった批
判的なニュアンスをこの発言に感じている。だが、この発言は単に、佐々木が
それまでに発表した多彩なジャンルを羅列したに過ぎず、コバルト文庫をも舞
台にしていた、その小説世界の多様さに対しての単純な驚きを語っただけのも
のではないだろうか。
その後も、歴史小説、時代小説、恋愛小説、企業小説、ノンフィクションな
ど、佐々木商店の取り扱い商品は増え続けた。種類の豊富さだけでなく、どの
商品の品質も優れているのだから、たいした職人作家だ。多様さ以外に、その
特徴をあげれば、綿密な調査と取材に裏打ちされた事実の巧みな盛り込み方と、
読者へのストレートなテーマの伝え方だ。
第二次大戦三部作はもちろん、自動車業界を描き、昭和から平成への日本産
業史を描いた『疾駆する夢』(小学館文庫)、実在の政党や政治家を実名で登
場させ、社会党代議士とその秘書、権力を追い求める男たちを描いた『愚か者
の盟約』(講談社文庫)、榎本武揚の生涯を描いた『武揚伝』(中公文庫)など、
事実の挿入の巧みさが生み出すリアルさが小説の燃料になっている傑作が多数
ある。『警官の血』でも、上野五重塔炎上、大菩薩峠事件、ライブドア事件と
いった大ネタだけでなく、上野公園でおかまに警視総監が殴られるといった小
ネタの混ぜ方もうまい。
『武揚伝』の読後、職場近くの駒込吉祥寺に散歩がてら行き、榎本武揚の墓に
手を合わせた。そんなことをした自分に驚いた。三谷幸喜が「新選組!! 土方
歳三最期の一日」で描いた武揚には幻滅させられたが、佐々木が描く武揚像に、
なぜ自分はこんなにも魅かれたのだろう。(この項つづく)
〈ねぎし・てつや〉 1966年生まれ 団体職員。〈ふぉっくす舎〉の屋号で
「外市」などで古本を売る。『警官の血』の消防庁の女性救命士の悪口を語り
合いたい! 映画『笑う警官』の脚本・監督が角川春樹と知り、嫌な予感が…。
http://d.hatena.ne.jp/foxsya/
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■入谷コピー文庫 しみじみ通信 堀内恭
(21)ロマンポルノ青春時代!
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1971年11月に始まった「日活ロマンポルノ」は、1988年6月に「にっか
つロマンポルノ」として終焉しました。あれから20年の歳月が流れました……。
高校時代に友人と、神代辰巳の「四畳半襖の裏張り」のポスターにひかれて、
田舎の映画館へ出かけたことがあります。学生服を着たままだったので、当然
入館を断られました。今考えるとまるで、北野武「キッズ・リターン」のワン
シーンのような、ドジな高校生でした。
上京して、大学1年生のとき、坂口君というサークル仲間が神代辰巳の「恋
人たちは濡れた」が面白いと教えてくれました。それまでロマンポルノ作品を
観ていなかたので、さっそく名画座に足を運びました。ぶっ飛びました!
こんな邦画観たことありませんでした。それまで田舎では、東宝や松竹作品
を中心に観ていた身には、神代ワールドに衝撃を受けたのです。それからは、
日活ロマンポルノやピンク映画に目覚め、名画座をはしごする日々でした。ロ
マンポルノ=青春の始まりでした。
でも、ロマンポルノを観始めて、8年ほどでロマンポルノは終わってしまい
ました。今はなき浅草の映画館(ここは休憩にヤキソバを売っていました)で
後藤大輔の「ベッド・パートナー」という快作を観たのが最後でした。
ロマンポルノに再会したのは、それからまた数年後の下町の名画座「亀有名
画座」でした。亀有名画座はロマンポルノやピンク映画の監督特集、女優特集、
脚本家特集などを4本立てて上映していました。この古い名画座で公開時に見
逃していた多くのロマンポルノの傑作・佳作・快作を観ることができました。
そこで出会ったのが赤穂貴志君でした。
「ロマンポルノはあくまで〈女優〉が主役だが、脇で振舞う〈男優〉たちの存
在は非常に重要だ。物語である以上〈女〉だけでは成立しない。やはり傍(は
た)で〈男〉が盛り立ててこそ女優の花が開くというものだ」…と、今回映画
愛好家の赤穂君が『ロマンポルノ 嗚呼!脇で恥(はじ)けた男たち』を執筆
してくれました。男優への鎮魂歌です。
高橋明、柄本明、上田耕一、内藤剛志、小松方正ら御存知の男優から木島一
郎、桑崎晃男、酒井昭、上野淳らの隠れた男優まで存分に書き切ってくれてい
ます。お楽しみに!
〈ほりうち・やすし〉1957年生まれ。フリー編集者。
赤穂貴志君の『ロマンポルノ 嗚呼!脇で恥(はじ)けた男たち』は10月上旬
に刊行。また11月下旬には桂浜吉君のもの(内容未定)を刊行予定しています。
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■千駄木ドロナワ日記 川原理子(谷根千工房)
(10)来年も菊まつりで
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10月11日(土)
雨。谷中菊まつり。本当は9時ごろ行かなくてはいけないのだが、前日、菊
酒をつくるのが精一杯、谷根千など売り物の準備できず、あわてて揃えたが、
1時間半近く遅刻。まきちゃんと台車を押して大円寺につくと、もう、おまつ
りは始まっており(あたりまえか)菊を売る係りの人に「今日はずいぶん遅い
ね」といわれる。ほんとうに申し訳ない。
16日から千駄木の旧安田邸で行われる「花嫁のれん展」の連絡先を谷根千
工房で引き受けており、新聞数紙に案内が載ったため、うれしいことに、ここ
数日問い合わせの電話が途切れず。今日からは芸工展も始まり、昨夜は遅くま
で本部の設営をしていた。
ゆずちゃんとしゅんぼうもくる。子どもはいつも手伝わされるのだ(あたり
まえか)。
イカ焼きと焼きそばを食べる。売り物の菊酒の味見をする。谷根千も今年が
最後とばかり売る。
25年前、第一回の菊まつりで、ОMYは谷根千1号を売った。わたしたち
も毎年楽しみだった。子供のころはヨーヨーと金魚すくい。菊まつりの金魚は、
追い回されていないせいか、よい金魚なせいか、家に持ち帰ってもぜんぜん死
なない。あと、谷根千の売り場の前の石像をたわしで洗うのも好きだったなあ。
もう大人になったからしないけれど。
雑誌が来春で終刊になり、工房の菊まつり参加は今年で終わる。でも来年も
おでんと菊いなりを食べに来よう。
そうそう、毎年、雨よけのテント貼りが発達し、今年はぜんぜん濡れない。
10月12日(日)
菊まつりをさぼって、大阪へ。死刑廃止105人デモに参加する。4月に、デ
モの企画者に誘われて、絶対菊まつりと重なるなあと思ったのだけど、「大阪
で死刑廃止で105人も人を集めるのは大変なんや」といわれて、そんなら、と。
105人とは、企画した時点での死刑囚の人数。
桜川駅の近くの小さな公園から、大きなやぐらを先頭にして、アメリカ村や
御堂筋を通る。参加者は1から105までの番号札を首にかけ、歩く。結局200
人くらいの人があつまったらしい。
法務大臣の役やピエロの格好の人がいて仮装行列のようでもあり、へんな音
楽も鳴っていて、外から見ていたらおもしろかったんじゃないのかなあ。写真
とっている人もいっぱいいた。シャツにネクタイ締めたおまわりさんたちが誘
導してくれた。みんなおそろいの靴で、履き間違わないかなあ。おまわりさん
たちは大阪弁だから、優しく見える。とくだね。
死刑といえば。9月に谷中のギャラリーTENで回顧展していた、帝銀事件で死
刑判決を受けた画家の平沢貞通は、冤罪だろうといわれている。歴代の法務大
臣も冤罪だとわかっていたからか、死刑執行されず、平沢さんは28年間、閉じ
込められたままなくなったんだって。今でも冤罪多く、カレーの林さんも、保
険金詐欺はしたけど、カレー事件は関係ないらしい。
〈かわはら・さとこ〉谷根千工房社員
秋は楽しい季節だけど、行事が多くてあっという間にすぎます。
「谷根千ねっと」
http://www.yanesen.net/
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■もっと知りたい異文化の本 内澤旬子
(38)中年は難しいお年頃
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北尾トロ『男の隠れ家を持ってみた』新潮文庫、2008年
そこそこ深刻な病気になり、四回の手術を経て、気がついたら病気になる前
よりも元気になってしまった内澤です。単行本も出せて、しかも結構売れて、
良かったねえと言われます。
んが、どうにも気持ちが晴れず、プチ鬱になってます。時々発作のようにひ
とりになりたくてしかたがなくなるのです。できればだれとも口もききたくな
い。あーやれやれ。贅沢病だといわれればそれまでなんですが。
そんなときに手に取ったこの本。仕事順調家庭円満な著者がある日「本名の
俺を知ってる友人がいないこと」にとらわれ、迷い、知らない土地に隠れ家を
持つ。おお、中年期の原因不明瞭なプチ鬱。ちょっと似てないか?これはぜひ
とも読まねばなるまい。
妻の了解をとり、家から電車三つ乗り換えたところに小さなアパートを借り
た著者。本名で生き、友達を作ろうと奮戦する。楽しくおかしくそしてちょっ
ぴり悲しい日々。
最後まで非常に面白く読んだものの、自分の抱える憂鬱とはほとんどという
か全く共通点がないことに心の底からびっくりした。ペンネームを持つ同業種
であるし、世代も遠くはないし、なにかしら共感できるものがあるだろうと思
っていたのだが。
まず本名問題。女はよっぽど抵抗しないかぎり、結婚で名前が変わってしま
います。で、私の場合ペンネームに旧姓を残しているので実は戸籍名よりもペ
ンネームのほうが「本来の自分」ぽいのです。女性のライターはそういう人、
多いんじゃないでしょうか。
それとお友達。これはちょっとわかります。わかるけれども、女は習い事が
大好きな生き物ですんで、そこでしがらみのないゆるい友達がけっこう簡単に
できちゃうんですね、ありがたいことに。それとひとりで飲み屋に入ってもだ
れかしら話しかけてくれます。仲良くなるかは別として。
で、真剣な親友が何人いるかなんて、考えたこともないです。そんな定義付
け意味あるかなあ。たいていの女子は友情よりも恋愛結婚出産を優先させます
からねえ。環境変われば友も変わる。これ常識。
著者の涙ぐましい努力を読んでいると、わからなすぎて、なんだか申し訳な
い気分にすらなってしまう。とはいえこっちはこっちで憂鬱を抱えているわけ
なんだが。
そう、つまり、わかったことは、おそらく私の憂鬱も、まず他人には、おそ
らく特に男性には、理解されないだろうということ。ただそれだけ。くどいよ
うですが、本はすごくおもしろかったんですからね。
うっとうしく悩んでる中年が周りにいたら、ヘタに理解しようなどと思わず、
あまり感情も込めずにこう言ってやって下さい。
「まあ、そういうことも、あるのかもしれませんねえ」と。も、それで十分で
ございます。中年は難しいお年頃でございますから……。
〈うちざわ・じゅんこ〉イラストルポライター
『週刊現代』で「リレー読書日記」を担当しています。
http://d.hatena.ne.jp/halohalo7676/
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■林哲夫が選ぶこの一冊
(33)「親戚の叔父さん」が消えた日
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『政田岑生詩集』書肆季節社、1995年
湯川成一さんが去る七月十一日に亡くなられた。七十一歳。湯川書房として
一九六九年に辻邦生『北の岬』の限定版を上木して以来、小川国夫、塚本邦雄、
杉本秀太郎、永田耕衣、車谷長吉ら、当代一流の書き手たちの作品を少部数の
限定版として刊行し続けた。おそらく戦前期おける趣味的な文芸出版の流れを
汲む版元としては最後の存在だったとみなしていいかもしれない。
湯川さんは気鋭の造形作家のオリジナル作品をテキストと睦み合わせること
においても独特の直感を発揮した。望月通陽、柄澤齊、岡田露愁、山本六三、
戸田勝久……。小生の考えでは、テキストはややミーハー的に大家好みだった
が(例えば村上春樹の『中国行きのスロウ・ボート』などはどう考えても限定
版には不釣り合いではないか、敢えて逆手に取ったという気分はよく理解でき
るにしても)、造形の面では若く無名の作家をいち早く取り上げて、世に送り
出した。この功績は小さくない。その意味で、湯川さんは卓れて眼の人だった
と思う。
湯川書房に出入りするようになったのは、雑誌『sumus』4号でインタビュー
をお願いした二〇〇〇年五月の少し前あたりからである。『sumus』は創刊号
(一九九九年)で三月書房を取り上げた。その折り、当時のご主人宍戸恭一さ
んが、近くに事務所を構えていた湯川書房を紹介してくださった。京都の寺町
通りから一本西、御幸町通りにある三階建てほどの古いビルの一階に「湯川書
房」と墨書された看板が掲げられ、出版社というよりも、画廊のような雰囲気
にしつらえられていた。元来は大阪で旗揚げしたのだが、自宅を京都に移した
ことから、通勤の便を考えて事務所も同地に求めたとのことだった。
広い壁面いっぱいに手ずから色和紙を貼り、一間ほどの板材をレンガで支え
て本棚を作り、三十センチもあろうかという分厚さの自然木をテーブル代わり
に部屋の中央に置いていた。焼き物や、オブジェ、額絵や書も一風変わったテ
イストで選ばれていた。本物なのか、偽物なのか、クサいところを面白がって
いる、そんな風がうかがえた。すべてが、遊びというか、その意味では本作り
も同様だったかもしれないが、湯川趣味で貫かれていた。いや、貫く、という
と、信念をもってとか、けっこう強いイメージになってしまう。そうではなく、
自然体、気に入った素材でアッサンブラージュを楽しむ、そんな、てきとうで
ゆるやかな統一感に包まれていた。
人間についても、来るもの拒まずで、べつに本を買うわけでもない客に、い
や客であろうはずもなく、むろん友人などでもなく、まずはお邪魔虫にちがい
ない小生のような者でも、どう言えばいいのか、遠縁の叔父さんでもあるかの
ような親密さをもって「やあ、いらっしゃい」と迎えてくれるのである。上等
なハバナ産の煙草をパイプでくゆらしていることもあった。上等な、というの
は湯川さん自身の言葉で、それは湯川さんが買い求めているわけではなく、知
人が都合をつけてくれるのだそうだ。そういう善き品物を配達される徳のよう
なものが湯川さんにはあった。まあ、そうでなければ、何十年も小さな出版社
など続けられるものではない。何はともあれ現金という善き品物が必要なのだ。
ときにはバッハやモーツァルトを聴きながらデスクに向かっていることもあ
った。こちらは用事がなくても、というか、湯川書房に立ち寄ることを用事に
して、ぶらりと入って一息つく。たわいもない話に興じる。邪魔をしたかなあ、
と思っても、湯川さんはたいていいつもニコニコしていたから、つい甘えて長
居してしまう。寺町あたりで買った古本を提げて行く事しばしばで、もちろん
湯川さんもその道の辛酸をひと通りはなめているから、あれこれ弁解する必要
はない。ときにはそのボロボロの本を手にとって「昔の本はええねえ。こうい
う本、作りたいなあ」などと呟くこともあった。
事務所はその後、河原町通三条を上って教会の角を東に入った場所へと移転
した。少し手狭にはなったにせよ、やはり同じような、ぬるま湯川空間であっ
た。繁華街に近い場所柄、人の出入りも多くなり、展覧会などもわりあいと頻
繁に開くようになった。すぐ裏がバーになっていて酒量が上がったという噂も
聞いた。そのころはもう年に一冊か二冊しか本を出さなかったが、それでも悠
然と、洒落た着こなしで椅子に坐っている。それがわれわれにとってどれほど
大切なことだったか、今になって思い知る。
昨年末に入院したと聞いて心配していた。ずっと腰が悪いと訴えていたので、
そちらの方かと初めは思い込んでいた。今年の三月、たまたま事務所の前を通
ってみると、湯川さんの姿が見えた。痩せてはいたが、「税金の申告をせなあ
かん」などと言いながら、せっせと事務処理に励んでいた。うれしくて戸を開
けると、手を止めて、じつはガンが見つかって手術した、とこともなげに病院
での様子を語ってくれた。抗ガン剤が辛いとこぼしていた。そしてそれが湯川
さんとの最後のひとときになった。
湯川書房の限定版は何冊か持っている、こちとらだって安い古本ばかり買っ
ているわけではないのだ、と威張ってはみたいけれど、じつは二〇〇二年に御
幸町の事務所で個展を開かせてもらったことがあり、そのときに会場の使用料
を支払うというのを、どうしても聞き入れてくれず、それでは本を買わせても
らいます、という物々交換のような恰好で数冊買ったものがあっただけ。じつ
はそれらは、たちまち生活苦のために売り払ってしまった……(売って金目に
なる本がそれらくらいしかなかったのである、嗚呼)。
だいたいが湯川書房には湯川書房の本はあまりなかった。わずかに限定版の
番外本とか、一時期手を染めていた一般書の残部とか、自費出版の詩歌の本な
どが並んでいる程度。本棚もほとんどは販売用の古書で占められていた(湯川
さんの蔵書、ご本人は「遊びだよ」と笑っていた)。ときおり「こんなん出て
きた」たと照れながら限定版の吉岡実の詩集などを棚の上に飾ったりしていた。
そういうわけで小生には湯川書房の本について語る資格はない。それでもこ
の一冊だけは手離したくないと思っているのが、本書『政田岑生詩集』(書肆
季節社、一九九五年)である。これは湯川書房の本じゃない。だが、制作は湯
川書房。政田岑生は書肆季節社を興して早くから詩誌や詩集を刊行してきた出
版人であり詩人である(正業として東京海上火災に勤務していた)。塚本邦雄
が歌人として活躍を開始する、その強力なサポーターだったことは知られてい
るだろう。多くの塚本を刊行し、結社誌『玲瓏』の編集発行も手がけていた。
ところが惜しくも一九九四年六月に死去。五十八歳だった。
これは政田を悼む書物である。詩作品と詳細な年譜「政田岑生年誌」(河野
すみれ編、主要刊行詩書目も含む)、政田の関係した同人雑誌などの写真図版、
そして「政田岑生の編輯装訂になる塚本邦雄著書目録」(このなかに七冊の湯
川書房刊本がある)が収められている。例えば、年誌の一九九三年、体調の不
良がはっきりしたころに、こう書かれている。
《一〇月二二〜二三日、東京、精興社へ。『玲瓏』二九号校正のため。精興社
活版印刷による『玲瓏』の最終号となる。二十有余年にわたり政田岑生の本造
りをささえた精興社の活字・活版終焉に伴う断腸の思いの決断であった。》
あるいは翌九四年。
《高熱が続き不調を来たす中にあっても、歌集の制作及び『玲瓏』三二号の編
輯・校正を意欲的にこなす。京都で料紙をもとめる。二八日、意中の額匠を交
野に訪ね、仕事に感銘を受け、新たな構想を得る。[略]自宅に届いた原稿を
すべて病院へ取り寄せ、編輯・校正作業を進める。最後の編輯、装訂、造本と
なった鈴木民子歌集『花所望』を上梓。》
この二週間後に政田は他界した。
本書には、チリの入った和紙ふうの紙を貼った函があり、マーメイドかと思
われる厚手の用紙を折り畳んで、ちょうどいわゆるフランス装の三方折りのよ
うにしたジャケットが本体に掛けられている。その表面にちょうどジャクソン・
ポロックの絵画、ドリッピングのような手法で、白、黒、朱の絵具を淡い緑色
の地に垂らした抽象模様が印刷されている。これは湯川さん自らが、絵具を振
り落して作ったそうで、その原画も見せてもらったことがある。たいていの自
身の装幀には不満を鳴らしていた湯川さんも、この図柄はかなり気に入ってい
る様子だった。
印刷は精興社。ホームページで確認すると、一九九五年八月に精興社は活版
印刷を終了した、となっているから、政田の断念よりも少し後まで精興社の活
版は続いていた。そして同年六月二十九日発行の本書はまさに最後期の精興社
活版本の一冊となったわけである。活版特有の紙裏への印圧がほとんど感じら
れない。にもかかわらず印刷面はクリアーでインクの付きもいい。活版という
とデコボコを喜ぶ向きもあるようだが、このように平滑なのが優れた活版技術
というものであろう。
往くことの
還ることの
さなかで識りあった違約の心理をおさえて
いささかの間違いをただすために
腕ずくでしかけた
しきたりが空気にとりいって
気道がかゆい
区切られた水についていえば
苦しみを育てるように濁っている
生きている証拠に
ききみみたてて色彩をかくす
これから先といわねばならない刻
背中あわせになった
まあたらしい安否をたしかめながら
口ごもる
そこで終わるもののために
ふたたび口ごもる
(政田岑生「これから先」部分)
二〇〇四年、この本がきっかけで、そしてこれを頼りにして「書肆季節社と
政田岑生、そして桑島玄二」という小論を執筆した(『sumus』12号)。このと
き政田岑生にふりがなをふったのだが、湯川さんが「みねお」だと言うので、
そのまま「まさだ・みねお」とした。ところがである、刊行後に「まさだ・き
しお」と読者よりの訂正があった。確認してみると、その通りで、事前に確か
めなかった筆者の迂闊さが責められるべきだとしても、政田とは深くつき合っ
たはずの湯川さんが、その名前すら覚えていないというのは、普通には信じら
れないことである。
そんなおちゃめな、真面目そうで、いいかげんな、「親戚の叔父さん」だった。
でも掛け替えのない人だった。七月以来ずっと京都の市中に大きな穴がポッカ
リ空いたような欠落感が続いている。
〈はやし・てつお〉
現在発売中の『spin』04では「追悼 湯川書房・湯川成一さん」として緊急特集
を組んだ。インタビューの再録と湯川書房限定版刊行目録を掲載している。そし
てもうひとつ『spin』03の内容を大幅に増補した図録『佐野繁次郎装幀集成』
(みずのわ出版)も十月末には刊行の予定。これはちょっとすごいです。
デイリー・スムース http://sumus.exblog.jp/
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■全著快読 編集工房ノアを読む 北村知之
(4)手紙と手紙のすきまに
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黒瀬勝巳『ラムネの日から』1978年
黒瀬勝巳『幻燈機のなかで』1981年
木山捷平『酔いざめ日記』、香月泰男の文集『私のシベリア』、寺島珠雄『わ
たしの大阪地図』、『釜ヶ崎 旅の宿りの長いまち』、小沢信男『わが忘れな
ば』、岩阪恵子『木山さん、捷平さん』、山田稔『詩人の魂』、『選ばれた一
人』、『特別な一日』、大野新『乾季のおわり』、ピエール・ガスカール『街
の草』、原章二『加藤一雄の墓』、ロジェ・グルニエ『フィッツジェラルドの
午前三時』、『洲之内徹の風景』。こんな本が一冊三百円や五百円、だいたい
千円もかからずに買えるところがあった。
元町の山手にあるブックカフェの本棚のひと隅で、一昨年の冬からこの六月
まで古本が売られていた。「百窓文庫」という名前がついていて、常連のお客
さんの蔵書らしかった。どれもはじめて見る本ばかりなのに、読みたい本しか
並んでいないのがふしぎだった。ちょうど以前のようには古本屋にいくのもま
まならないころで、百窓文庫がなければ読む本さえわからなかったかもしれな
い。それはほんとうに、百の窓にもひとしかった。
百窓文庫で買った本のひとつに、黒瀬勝巳『幻燈機のなかで』(編集工房ノ
ア) がある。三百円だった。黒瀬勝巳のことは知ったのは高橋輝次『関西古本
探検』で、ノアのもう一冊の詩集『ラムネの日から』は、その高橋さんから譲
ってもらった。
黒瀬勝巳は、処女詩集と二冊の遺稿詩集があるだけの詩人。同志社大学の学
生時代から詩を書きはじめ、大野新や河野仁昭の詩誌『ノッポとチビ』に参加
し、三十二歳で『ラムネの日から』をつくった。まえがきもあとがきもなく、
六十ページに二十篇の詩がおさめられている。天野忠は、「かるいニヒリズム
がある。ニヒリズムをたのしんでさえいるところがある」と感想をいったらし
い。黒瀬勝巳の詩はちゃかしている冗談のようなことばで書かれているけれど、
読んだあとにしんみりする。
ともあれ この歯がからだのなかで/いちばん硬いとは うれしいことだ/
だいいち 性悪なするめだって/このとおりだし/それに 眠ってからだって/
歯ぎしりが噛める
ともあれ この歯がからだじゅうで/もっとも白いとはたのしいことだ/
なにより むき出したときに/印象的だし/それに 金歯をいれても/
これならひきたつ
でも/これはなんの根拠もない言い草だが/ひとは その歯において/
ひとと訣れてきたのじゃないだろうか/朝晩二回も歯を磨いていると/
そんなふうに 俺には思えてくるんです
(「歯」)
詩集をだしてから二年八ヶ月だけ生きて、黒瀬勝巳は自殺した。三十六歳の
黒瀬には妻子がいた。その死の五ヶ月あとに、『幻燈機のなかで』が出版され
た。『ラムネの日から』と同じように小さくて軽い冊子で、二十八篇の詩と二
篇の散文、それに大野新の「黒瀬勝巳に」がおさめられている。
「ニセモノ好み」というエッセイに、「本物イコール良いもの、素晴しいもの、
価値あるものであり、ニセモノ・イコール悪いもの、劣ったもの、価値のない
ものという単純な図式に支配されるとすれば、これは貧しいことだ」「ニセモ
ノの悲惨はときに本物の栄光を超えることがあるといいたいだけなのだ」とあ
る。『幻燈機のなかで』は『ラムネの日から』よりも、さらにことば遊びのよ
うな詩がおおい。黒瀬勝巳はあえてニセモノであろうと、ふざけてみせながら
詩を書いたのだろうか。それとも本物の詩人になる自分がこわかったのか。ナ
ンセンスでユーモラスな詩は、家族と生活のことをうたっていてさびしい。
子どものつくりかたを/誰に教わったろう/谷川俊太郎のつくりかたを/
谷川さんから学んだだろうか
いままでに つくったものは/そんなに多くはない/小学生のころ/
粘土細工で灰皿ひとつと長じて娘ひとり/これは 生きて動くし/歌もうたう
〈おんなのこってなんでできてる?/おさとうとスパイスと/
すてきななにもかも〉
中年男ってなんでできてる?/中年男になにができる?/アッハ/
唯一麻婆豆腐黒瀬風
このできあがり/このグチャグチャ/お お食べ 娘
(「何でできてる何ができる」)
〈きたむら・ともゆき〉1980年生まれ 書店員
『spin』に「エエジャナイカ」を連載。いつまで書店員を続けられるのかと
思いながら働く日々。
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