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2008/06/27

[ほぼ日刊日々是映画] vol.2318 ★ 歩いても 歩いても

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================================================2008/6/27==
                        -vol.2318--
  ほぼ日刊 日々是映画         発行:cinema-today
                http://www.cinema-today.net/
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2318号です。

気になりますね、ダビング10。
でも、10回ダビングできるようになるってのもどうかと思います。
せいぜいディスクにバックアップするのと、たとえばポータブル
プレイヤーで持ち運ぶくらいのもので10回もダビングする人はい
ないんじゃないかと思いますが…
まあしかしコピーワンスよりはいいということで、新しいHDRも
欲しいところですね。
http://tinyurl.com/6halsa

今日は今週末から公開の『歩いても 歩いても』です。
いろいろな雑誌に関連記事が出ていて、これが面白いものが多い
です。
広告批評5月号「日本映画はいまpart.2」
http://tinyurl.com/5p9zap
ecocolo8月号「スペシャル対談 樹木希林×YOU」
http://tinyurl.com/63frpg


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-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 歩いても 歩いても

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − 歩いても 歩いても


--cinema2242------------

 歩いても 歩いても

 2007年,日本,114分

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<キャスト&クルー>

監督 是枝裕和
原作 是枝裕和
脚本 是枝裕和
撮影 山崎裕
音楽 ゴンチチ

キャスト 阿部寛
     夏川結衣
     YOU
     樹木希林
     原田芳雄
     高橋和也
     田中祥平
     寺島進

<評価>

☆☆☆☆1/2(満点=5)


<プレビュー>

 年老いた両親の家、娘のちなみとその家族が訪れている。そこに
息子の良多が結婚して間もない妻と連れ子を連れてやってくる。母
はみながやってきて嬉しそうだが、頑固者の元医師の父は診療室に
こもって出てこない。実はこの日は以前になくなった長男の命日、
両親が長男の思い出を語るのを良多は苦々しい思いで聞く…
 『誰も知らない』の是枝裕和監督が、ある家族のある一日を描い
たホームドラマ。淡々とした中に人間の怖さと暖かさを共存させた
秀作。


<レビュー>

 『歩いても 歩いても』という題名だから、たくさん歩く映画か
と思ったらそういうわけでもなかった。しかし、そんな題名のこと
などどうでもよくなるような本当にいい映画だった。是枝裕和監督
の実力は『ワンダフルライフ』『DISTANCE』『誰も知らない』です
でに証明されて入るけれど、この作品はそれらを軽く塗り替える出
来だった。
 年老いた老夫婦の家という限られた空間、1泊2日の限られた時
間、家族という限られた登場人物、それらのさまざまな限界の中で
展開される濃厚な物語。この淡々とした映画に非常な深みがあるの
は、このほぼ丸1日という限られた時間の背後に何十年という時間
の経過が感じられるからだろう。長男がなくなってからの十数年の
時間、夫婦が一緒になり子供たちが育った数十年という時間、そし
て家族が別々に積み重ねてきたそれぞれの時間、その長い時間がこ
の1日に凝縮されるのだ。

 この作品でまず焦点が当てられるのは父と息子の関係である。こ
のふたりの関係は徹底的な気まずさとぎこちなさからなる。まあ、
父親と息子というのはあまりコミュニケーションをとらないもので
はあるけれど、それにしてもこのふたりの関係は他人よりもぎこち
ない。その原因にはまず亡くなった長男の存在というのがあるのだ
けれど、それによって息子は父にコンプレックスを感じ父は息子を
見下している。しかし同時に息子もどこかで父親を見下すようなと
ころがあり、父親も息子にコンプレックスを感じてもいる。このふ
たりの関係から浮かび上がるのは家族と言えども、大人と大人の関
係と言うのは他人との関係と変わらないと言うことだ。「家」とい
う強く結ばれた関係の中でも、あるいは内輪だからこそ、誤解や無
理解が生じる。
 そこに存在するのは「家族」という暖かい幻想などではなく、近
いことによってより難しくなった個人と個人の確執である。家族で
あるから理解しあえることもあれば、家族であるからこそ許せない
こともある。しかしやはり家族だからそこには親しさがあり、明確
に語ることの出来ない相互理解のようなものもある。この作品が面
白いのは、そんな複雑だけれど誰もがわかる家族の関係をリアルに
描いているからだ。使わなくなった“ジョーバ”が置いてあったり、
とうもろこしのてんぷらが妙においしそうだったり、そういう小さ
な日常に家族の匂いを感じる。

 そんなことを考えながら思ったのは成瀬巳喜男のことだ。ホーム
ドラマと言えばまず思い出されるのは小津で、確かに小津も老いた
父親と娘の関係を通して“家族”のあり方を描いた。家族であって
も互いに知らない生活があり、それが家族の関係を変化させていく
ということを言っていた。しかし、小津が描いたのは“家”の中と
外との連続的な関係であり、家族はいわば社会の構成要素であった。
 一方で成瀬は女性を中心として家族そのものを描いた。『娘・妻・
母』などはそんな作品の典型(で、傑作)だと思うが、家族の中で
のさまざまな利害関係や確執を描き、人間関係の複雑を語った。成
瀬は家族を社会の縮図のように捉えていたのではないか。嫁として
外からやってきたり、外に出て行ったりということも含めて、家族
とは社会そのものであると言っているように私には思える。
 この『歩いても 歩いても』の家族の捉え方はまさに成瀬的なも
のだ。

 それは、是枝裕和という映画作家が非常に現代的/同時代的な作
家であると言うことにも起因していると思う。小津も成瀬も家族を
通して社会を描いたが、小津のほうはどこか達観しているというか
社会の根本的な部分を描こうとしていたように思える。それに対し
て成瀬は常に同時代的な問題意識を持って社会を見つめていたので
はないか。時代の変化が家族の関係を変え、それが人のあり方を変
える。成瀬の作品を見ていくとそのような主張を強く感じる。
 是枝監督は『誰も知らない』とこの『歩いても 歩いても』でまっ
たく別のかたちの家族を描いたが、どちらも非常に現代的な家族で
ある。彼の問題意識は「家族というものは」というところにあるの
ではなく、社会の中に生きる人間と家族との関係にある。
 このふたつの作品に共通するのは、何かが欠けた家族であるとい
う点だ。『誰も知らない』は親が欠け、この『歩いても 歩いても』
では長男が欠けている。家族全員がそろったいわゆる“普通の”家
族はなく、何かが欠けた家族が主題になっているのは、そのような
家族のほうが歪みを描きやすいということもあるのだろうが、同時
に“空白”というものが非常に現代に顕著な現象であるからではな
いか。“空白”は家族にも、社会にも、個人の心の中にもある。現
代人はみなどこかに空白を抱えている。





□ ヒビコレリンク

 『ワンダフルライフ』
  http://cinema-today.net/0112/04p.html

 『DISTANCE』
  http://cinema-today.net/0106/06p.html

 『誰も知らない』
  http://cinema-today.net/0409/09p.html


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:歩いても 歩いても>

 『歩いても 歩いても』公式サイト
  http://www.aruitemo.com/index.html


<今日のお勧め>

 是枝裕和監督作品です。

 『幻の光』
  http://tinyurl.com/5rn7eg

 『ワンダフルライフ』
  http://tinyurl.com/3k87m8

 『DISTANCE』
  http://tinyurl.com/5zoq9a

 『誰も知らない』
  http://tinyurl.com/5t89fq

 『花よりもなほ』
  http://tinyurl.com/3clpan



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