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2004/06/24

[Cinema Who & What Review 2004-4]

この記事を取り寄せる

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   映画                     2004年6月24日
     あの人                  感想号2004-4
        この一本 
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●目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ・はじめに
 ・映画あれ見たこれも観た
 ・投稿のお願い
 ・おわりに


●はじめに━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 こんにちは。

 北海道以外は梅雨の季節。
 雨が降ったり、中休みで晴れの暑い日が続いたり、或いは台風が来たりと
 天気が定まりませんが、読者の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

 さて、今回は「映画あれ見たこれも観た」のコーナーをお届けします。


●映画あれ見たこれも観た━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
・地獄命令(1964年,日本)
 片岡千恵蔵主演のギャング映画。
 この人は時代劇だとシリアスなのだが、
 現代劇に出て来ると滑稽味が勝って喜劇になってしまう。
 進藤英太郎との掛け合いなど漫才のようである。
 まあこれもこの人の持ち味なのだろうが…。
 (4月2日,中野武蔵野ホールにて)

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・雪の喪章(1967年,日本)
 金沢の旧家に嫁いだ若尾文子が「耐える女」を演ずる文芸映画風の作品。
 それほど格調高くもなく、かといってお涙頂戴に徹しているわけでもなく、
 やや中途半端な印象。
 若尾自体については特筆することもなく、強いて挙げれば
 夫役の福田豊士の生真面目で憎めない駄目男ぶり、
 女中役の中村玉緒のけなげさ、奉公人役の天知茂の怪しさが見どころか。
 (4月3日,ラピュタ阿佐ヶ谷にて)

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・夫婦(1953年,日本)
 成瀬巳喜男監督の夫婦三部作の2番目の映画である。
 一作目の「めし」に続き、上原謙が夫役を演っているが、
 妻役は原節子の代わりに、前作では原の妹役だった杉葉子が演じている。
 結果としてこれは正解かな、と思う。
 原節子ではこの役は脂っこくなり過ぎる。
 やや存在感の薄い杉葉子の方が合っているし、
 夫の同僚役の三國連太郎と釣り合わない。
 家を夫婦に貸したはずの三國が、逆に家を乗っ取られたように
 2階に追いやられてしまっているのが面白い。
 (4月3日,ラピュタ阿佐ヶ谷にて)

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・夜ごとの夢(1933年,日本)
 これは松竹時代の成瀬巳喜男監督の無声映画。
 主演は栗島すみ子。
 たいへん人気のあった戦前の大物スター女優だが、
 彼女の比較的若い頃の出演作を観るのはこれが初めてである。
 が、正直この映画では私にはこの人の良さが判らなかった。
 「淑女は何を忘れたか」や「流れる」ではなかなか味があると思った
 のだが…。
 この手の女性を描くのは成瀬監督は不得手なのかも知れない。
 (4月3日,ラピュタ阿佐ヶ谷にて)

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・いつか誰かが殺される(1984年,日本)
 昔、角川三人娘というのがいた。
 薬師丸ひろ子と原田知世、そしてこの映画で主演している渡辺典子である。
 最近は鳴かず飛ばずの薬師丸(ファンの方失礼!)に比べ、
 原田は助演級でそこそこ頑張っている(ただし歌手としては駄目!)が、
 それよりずっと以前にさっさと消えてしまったのが渡辺典子であった。
 実はこの映画を観るまで顔も知らなかった。
 見終わってもうよく覚えていない。
 顔かたちは他の2人より整っているのかも知れないが、
 演技も含めてあまり印象に残らない人なのである。
 この後の彼女の運命もむべなるかな。
 (4月3日,銀座シネパトスにて)

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・続社長行状記(1966年,日本)
 森繁久彌主演の社長シリーズ第22作。
 今回は外人役ではないが、フランキー堺の奇人ぶりの目立つ映画。
 (4月4日,浅草新劇場にて)

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・夜霧のブルース(1963年,日本)
 石原裕次郎主演のやくざ映画、と言っても回想シーンが全体の大部分
 を占め、謎解きに時間がかかるので、本当にどんぱちが始まるのは
 おしまいの部分になってからである。
 オルガンを弾く少女、と言う設定には何か清楚で気高いイメージがある。
 これが浅岡ルリ子。
 対するはやくざの組長の妹でバーのマダムの岩崎加根子。
 どうせならこちらの対決も強調して欲しかった。
 小池朝雄や芦田伸介が渋い。
 (4月4日,浅草新劇場にて)

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・大空の野郎ども(1960年,日本)
 佐藤允,夏木陽介主演の飛行機映画、と言えば先日観た「太平洋の翼」と
 同じ組み合わせだが、これは戦争映画ではなく現代のお話で、
 作られたのはこちらがやや古い。
 古沢憲吾監督。
 パイロットの佐藤とカメラマンの夏木の静と動のコントラストがこの映画の
 ほぼすべてである。
 落ち着いた役の多い白川由美嬢がミーハーしているのが珍しい。
 (4月6日,中野武蔵野ホールにて)

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・黒いドレスの女(1987年,日本)
 「いつか誰かが殺される」と同じく崔洋一監督の角川映画だが、
 違っているのは主演が原田知世であることである。
 だからこっちの方がずっといい。
 ちょっと背伸びをし過ぎで痛々しい気はするけれども。
 それでもいいというのがアイドル映画である。
 でもさすがに彼女に大人の女はまだ無理だと皆思ったのか、
 次の知世の主演作は「私をスキーに連れてって 」である。
 (4月7日,銀座シネパトスにて)

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・叫びとささやき(1973年,スウェーデン)
 「イングマール・ベルイマン映画祭」からの一本。
 まずディジタル映像による上映であることにがっかりした。
 大画面でみると画像が汚い。
 特にこの作品のようにカラーで、微妙なフェード・イン,
 フェード・アウトを伴うものでは尚更である。
 どうやらディジタル上映というのがこの企画の売りのようなのだが、
 邪道だと思う。
 いやしくも映画祭を名乗るのであれば、フィルム映写で上映するのが
 本筋であろう。
 閑話休題。
 誰かの油絵のような映画である。
 赤い部屋の中の白又は黒の服を着た女性。
 ルノワールかな?ボナールかな?それともアングルかな?と考えて来て、
 はたと気が付いた。
 ムンクである。
 色使いと言い、構図と言い、ムンクの絵そのものである。
 題名からすぐに気付かないなんてどうかしていた。
 音楽の使い方も面白い。
 ショパンのピアノ曲と、バッハの無伴奏チェロ組曲が、
 まるで人の言葉のように挿入される。
 (4月10日,パナソニックセンターにて)

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・第七の封印(1957年,スウェーデン)
 もっと重苦しい映画かと思っていたのだが、
 思いの外喜劇的な雰囲気だったので、やや拍子抜けの感あり。
 よく使われている死神とのチェスの場面のスチル写真の不気味な印象が
 強すぎたためだろう。
 終わりに近付くに従い、深刻な内容が徐々に伝わって来るが、
 最後はひょいとかわされたような感じである。
 この作家、「終」,「完」,"The End","Fin"に相当するクレジットは
 出さないが、この映画では代わりに「野いちご」とおなじ旋律がポロンと
 流れる。
 (4月10日,パナソニックセンターにて)

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・処女の泉(1960年,スウェーデン)
 中世の伝説をベルイマンが映画化した作品。
 根底に流れるのはキリスト教の思想であるが、
 父親が罪を犯した羊飼い達に対して行った復讐という行為、
 そしてそれを悔いて行おうとする贖罪という行為。
 その何れもがキリスト教の信仰に基づき、是認された行為なのである。
 このあたり、やや受け入れ難いものを感ずるのは私だけであろうか。
 少女の強姦場面は発表当時、残酷だとして問題になったそうだが、
 今観ると大したことはない。
 むしろ父親が羊飼い達を殺す場面の方がよほど残酷に思われた。
 この映画も全体にぼやけた感じの映像だが、
 湖に沿った道を少女が馬で進んで行く場面や、川のほとりの場面など、
 本来はたいへん美しいものだったと想像される。
 ディジタル映写のおかげで作品の魅力を減じていると思われるのは
 残念である。
 (4月10日,パナソニックセンターにて)

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・仮面/ペルソナ(1967年,スウェーデン)
 これまでのオーソドックスと言ってもよい作風から一転して、
 いきなりのシュールでアヴァンギャルドなオープニングに驚いてしまった。
 しかしエンディングで同じものがもう一度出て来るものの、
 メインストーリーとは直接の関係はなさそうである。
 こけ脅しか?
 否、この意表を突く映像と音楽から受ける不健康で不愉快な感覚は
 映画全体に投影されている。
 あまり怖くはないが、一種のサイコ・ホラーとも言うべきであろうか。
 内容については何とも言い難いが、独特の雰囲気を持つ映画である。
 (4月10日,パナソニックセンターにて)

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・Aサインデイズ(1989年,日本)
 ベトナム戦争当時の沖縄のあるバンドのお話。
 当時の沖縄はまだ日本ではなかった。
 店のメニューを全部食べる話があったり、
 トラック一杯のキャベツをぶつけあったり、
 占領当時の沖縄は食料が豊富だったのだろうか?
 石橋凌はミュージシャンの時よりも、トラックの運ちゃんの時の方が
 いい顔をしていた。
 (4月10日,銀座シネパトスにて)

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・オルフェの遺言(1960年,フランス)
 タイトル通り、作者ジャン・コクトーの遺言と言うべき映画。
 コクトー自身のゆったりとした歩みに導かれて、
 観客は次々と不思議な世界に遭遇する。
 フィルムの逆回しを多用した映像と、ヘンデルのコンチェルト・グロッソ
 やバッハの管弦楽組曲のメロディーが印象的である。
 だが待てよ、コクトーの遺言とはいったい何だったのかな?
 私にはよくわからない。
 この映画がお気に召してくれなければ私は悲しい、と最後にコクトーは
 語っていたが、どうやら私はコクトーを悲しませてしまったようである。
 (4月11日,東京日仏学院にて)

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・かもめ(1970年,ソヴィエト)
 チェーホフの戯曲を忠実に(?)映画化したソヴィエトの作品。
 今年はチェーホフの没後100年ということでの特集上映である。
 情けない男達に比べ、女性の強さが目立つ映画である。
 「戦争と平和」のリュドミラ・サベーリエワが観られる数少ない映画の
 一本としても価値あり。
 最初に登場した時の愛らしさもだが、最後に出てきた時の変貌ぶりには
 うなった。
 なかなかの演技派なのである。
 この後の出演作で日本未公開のものが幾つかあるようなので、
 是非観てみたいと思う。
 (4月11日,吉祥寺バウスシアターにて)

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・アワモリ君乾杯!(1961年,日本)
 アワモリ君こと坂本九主演のドタバタ喜劇。
 途中まではいまいちという感じだったが、おしまい近く、銀行ギャングに
 追われて東宝の砧撮影所に闖入、「世界大戦争」の撮影現場に紛れ込んだり
 (松林宗恵監督,フランキー堺など特別出演)、
 モスラのぬいぐるみが動き出したりの大騒動には笑った。
 (4月11日,中野武蔵野ホールにて)

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・ガキ帝国(1981年,日本)
 こういう薄汚い連中しか出て来ない映画は私は好かない。
 頭でっかちで胴長短足の不格好な島田紳助が喧嘩をする様は、
 妙に滑稽ではある。
 何でこんな奴がそんなに強いんだ?
 上岡龍太郎が儲け役。
 (4月12日,日劇2にて)

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・津軽じょんがら節(1993年,日本)
 風の音と、波の音と、江波杏子の凄い顔と、にいちゃんの白い歯と、
 盲目の娘の目と、西村晃の焼けた肌と、寺田農のいじけた顔と。
 そして津軽三味線の音と。
 結末はこうならざるを得ないだろうなあ。
 (4月14日,日劇2にて)

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・月はどっちに出ている(1993年,日本)
 1993年の日本の映画賞を独占した作品だが、
 それ程凄い映画というわけでもいい映画というわけでもない。
 普通の映画である。
 この頃もう普通の映画は作られなくなってしまっていたということだろうか?
 在日コリアンの話であるが、単に素材として取り上げているだけで、
 特に何が言いたいということはなさそうである。
 少なくとも私には伝わってこなかった。
 熱い昔の世代の在日とは違って、戦後世代は醒めて無気力だよということ
 だろうか。
 コニーことルビー・モレノの変な関西弁が可笑しかった。
 (4月15日,銀座シネパトスにて)

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・妻(1953年,日本)
 良家の令嬢や上流婦人役ばかり演っていた高峰三枝子が、所帯じみた
 安サラリ−マンの妻を演じているところがこの映画のミソである。
 沢庵や煎餅をかじらせたり、鯛焼き(?)を頬張らせたり、
 箸を楊枝代わりに使わせたり、お茶で口を濯がせたり、耳掃除をさせたり、
 不機嫌でも相手がお土産を持ってくると急に愛想が良くなったりと、
 これでもかとばかりにあからさまに下卑た行動をさせて笑わせてくれる。
 夫役の上原謙はだいぶん前から二枚目を転落して駄目男を演じていた
 のだが、馬鹿正直なところが妙に憎めない。
 考えてみれば、高峰・上杉を始め、高杉早苗や坪内美子など、
 戦前の松竹俳優がごっそり移籍して来たような感がある。
 ちなみに高峰の妹役の新珠三千代はまだ宝塚の所属である。
 上原のよろめき相手の丹阿弥谷津子が東京に出て来て上原に会った時に
 妙にぶりっ子風のしゃべり方になっていたのが面白かった。
 (4月17日,ラピュタ阿佐ヶ谷にて)

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・狩場の悲劇(1978年,ソヴィエト)
 チェーホフ特集からの一本。
 題名通りの悲劇であるが、本当に可哀想なのはヒロインではなく、
 若い妻を介添人に取られてしまった老執事ではないだろうか。
 ヒロインのガリーナ・ベリャーエワは、結婚後のきれいなおべべよりも、
 結婚前の貧しいぼろを着た姿の方が魅力的である。
 主人公の判事は「ノスタルジア」のオレーグ・ヤンコフスキー。
 (4月18日,吉祥寺バウスシアターにて)

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・若い季節(1962年,日本)
 化粧品会社の若い社員を中心とした集団喜劇。
 東宝サラリーマンもの(特に「無責任」シリーズ)の変形ヴァージョンと
 言える。
 出演は、淡路恵子,団令子,藤山陽子,クレージー・キャッツ,坂本九,
 ジェリー藤尾,浜美枝,松村達雄,平田昭彦,有島一郎,沢村貞子,
 青島幸男,古今亭志ん朝など。
 植木等と坂本九がお互いの持ち歌を交換して歌いっこするのが面白い。
 (4月19日,中野武蔵野ホールにて)

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・キューバの恋人(1969年,日本・キューバ)
 黒木和雄監督による日本とキューバの合作映画である。
 上映前に監督の挨拶があった。
 予算も資機材もなく随分苦労したらしい。
 ヒロインのマルシアを演じたジュリー・プラセンシアという人は、
 砂糖工場の女工か何かの全くの素人で、監督が現地で見付け、
 役所(社会主義国なので建前は全員公務員である)と交渉して、
 有給休暇ということで撮影に参加させたのだそうな。
 登場する日本人はアキラこと津川雅彦ただ一人。
 ハバナの街で見かけたマルシアに一目惚れして追いかけ回すが、
 革命の闘士であるマルシアは、結局私達は住む世界が違うのだと
 言い残して去って行く、と言うお話。
 革命思想を全く理解しないアキラの革命に否定的な言動を描いたり、
 ベッドシーンがあったりと、社会主義国でもキューバ映画は許容範囲が
 広い気がした。
 でもこれを観たキューバ人は、日本人は信念も持たず、色恋にうつつを
 抜かしているしょうもない国民だと思ったかも知れない。
 ドキュメンタリー的にカストロ首相なども登場する。
 (4月20日,東京国立近代美術館フィルムセンターにて)

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・平成無責任一家 東京デラックス(1995年,日本)
 無責任と言っても別に植木等が出て来る訳ではない。
 「月はどっちに出ている」に続く岸谷五朗と崔洋一の組合せの映画。
 母親と、父親の全て異なる子供達(このあたりの設定は成瀬巳喜男監督の
 「稲妻」を思わせる)、そして親戚を挙げての詐欺の話である。
 馬鹿馬鹿しいと言えばそれまでだが、ちょっとほろりとさせる要素も
 含んでおり、娯楽映画としては良く出来ている。
 母親役は絵沢萠子、強烈である。
 (4月20日,銀座シネパトスにて)

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・ハロー ヘミングウェイ(1990年,キューバ)
 アメリカの作家、ヘミングウェイはその晩年、20年以上もキューバに
 住んでいた。
 これはそのすぐ隣に住む貧しい少女の物語。
 キューバ革命の少し前の話、社会は動こうとしていた。
 少女はアメリカ留学を夢見、奨学金の選考のいいところまで残っていた。
 しかし彼女の貧しい家庭事情が影を落とす。
 「老人と海」を通して、そして時折垣間見える姿でしか知らない、
 憧れの隣人に助けを求めようとする彼女だが…。
 一人の少女の甘酸っぱい物語として観るのもいい。
 キューバにとっては今では敵国と言ってもよい国の大作家に対して、
 国民は何とも言えない親しみを持っているようだ。
 そんな恥ずかしさにも似た憧憬の気持ちを、少女の眼を通して描いている
 ように思われる。
 (4月21日,東京国立近代美術館フィルムセンターにて)

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・二十世紀少年読本(1989年,日本)
 サーカスというのはどこかセピア色の郷愁を誘う見世物である。
 私も子供の頃1,2度観に行った。
 テントという異様な空間の中で、異様な扮装をした人や動物が繰り広げる
 非日常の世界だ。
 しかしサーカスの人々にとってはそれは日常、しかもつらい日常なので
 あろう。
 サーカスの話はその内容とは裏腹に暗いものが多い。
 この映画も、暗い。
 出演は三上博史ほか。
 団長役で出ている大泉滉も息の長い俳優であった。
 象のぬいぐるみ、ちょっと変だがよくできている。 
 (4月23日,ラピュタ阿佐ヶ谷にて)

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・天国の晩餐(1978年,キューバ)
 キューバの名門一家が革命後に崩壊していく様を描いた映画。
 物資をかき集めて屋敷に立て籠もった一族。
 しかし彼等は1人、また1人と命を失っていく。
 その様子は不気味であると同時に滑稽でもある。
 その皮肉なえげつなさはちょっとブニュエルの映画のよう。
 門の外に出れば楽しい世界が待っているのにね。
 (4月24日,東京国立近代美術館フィルムセンターにて)

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・ルシア(1968年,キューバ)
 キューバの異なる時代に生きた、ルシアという名を持つ3人の女性の物語。
 第一のルシアは、スペインから独立する頃の良家の令嬢。
 恋した実業家に裏切られて…。
 第二のルシアは独裁政権下のブルジョワ家庭の娘。
 家を出て恋人と共に革命運動に身を投ずるが…。
 とここまではいずれも暗い深刻な話だが、映画のトーンはここで一変する。
 唖然…。
 第三のルシアはキューバ革命後、農村で働く娘である。
 運転手の恋人と結婚するが、彼は大変な焼き餅焼き。
 何かあってはとルシアを家に閉じ込め、外に出そうとしない。
 読み書きを教えに来た若い先生にも疑いの目を向ける。
 たまりかねたルシアは家出して…。
 というこれは全くの喜劇。
 明るい農村。明るい社会。労働万歳!革命万歳!!といったところか。
 3時間近い長い映画で、最後まで冒頭の調子でやられると気が滅入って
 どっと疲れるところだったが、お陰で幸せな気持ちで帰ることが出来た。
 (4月24日,東京国立近代美術館フィルムセンターにて)

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・レボルシオン 革命の物語(1960年,キューバ)
 キューバ革命をドキュメンタリー風に描いた、3つの挿話からなる映画。
 各挿話は関連がありそうなないような、第2話と第3話は連続していて
 登場人物も共通だが、第1話との関連はよくわからない。
 どこまでが現実を写したフィルムでどこまでが創作なのかも区別が付き
 にくい。
 ともかく、生々しい映像の詰まった映画である。
 (4月25日,東京国立近代美術館フィルムセンターにて)

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・ワーニャ伯父さん(1970年,ソヴィエト)
 チェーホフ特集の一本。
 登場人物の関係がわかりにくく、それも物語の最初と最後では変化して
 くるため、筋がはっきりしないまま終わってしまった感じ。
 観客が既にこの本を読んで知っていることを前提としているかのような
 作りである。
 名作だから読んでいるのが当然で、なるほどと思うのかも知れぬが。
 医師役で「戦争と平和」のボンダルチュクが出演していた。
 (4月25日,吉祥寺バウスシアターにて)

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・ホラ吹き太閤記(1964年,日本)
 クレージー・キャッツ主演の立身出世時代劇。
 ハナ肇が信長、植木等が秀吉、谷啓が家康というのは御面相からいっても
 妥当なところ。
 谷啓が好きだから言うのではないが、ここでの家康は傑作である。
 参考までに他の配役。
 ねね:浜美枝,蜂須賀小六松:東野英治郎(イメージ通り),
 前田利家:藤木悠(うーん),今川義元:藤田進(可哀想に),
 家康の奥方(義元の娘):草笛光子(適役),大久保彦左衛門:青島幸男
 等々。
 秀吉が墨俣城築城のために出陣するところで終わるが、
 残念ながら続編は作られなかったようだ。
 (4月25日,中野武蔵野ホールにて)

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・音楽ホール(1958年,インド)
 サタジット・レイ監督作品。
 土地を失い、富を失い、子を失い、妻を失い、若さを失った地主が没落し、
 それでも失わなかった虚栄心のために狂気に至る様が悲惨に描かれている。
 音楽ホールでの伝統音楽の演奏と踊りの場面が素晴らしい。
 (4月28日,東京国立近代美術館フィルムセンターにて)

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・雲のかげ星宿る(1960年,インド)
 インド映画の女優さんは綺麗である。
 この映画もそう。
 でも悲惨な映画である。
 家族のために働けど働けどわが暮らし楽にならざり、である。
 恋人は妹に取られる。
 役立たずの兄が人気歌手になって大金持ちになった時には、彼女は…。
 川のほとりのシーン。
 遠くを汽車が走って行く。
 レイの「大地のうた」にも似たような場面があった。
 汽車は文明の象徴。
 そして地方と都会を結ぶ一本の線なのだ。
 (4月29日,東京国立近代美術館フィルムセンターにて)

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・お茶漬けの味(1952年,日本)
 この作品、小津安二郎の作品の中では微妙な位置にある。
 いわゆる代表作、名作としては挙がって来ない。
 前後に作られたのが「麦秋」(1951年),「東京物語」(1953年)という
 文句なしの傑作なので、それらと比べられるとたいへんに分が悪い。
 戦前にボツになった企画を焼き直しているので、筋立てにも無理がある。
 モンテヴィデオとはとんでもない場所を持ち出したものである。
 でも深刻ぶらずに気楽に楽しめる映画としては、「淑女は何を忘れたか」
 や「彼岸花」と並んで小津作品の中でも5本の指に入るのではないか。
 佐分利信のもそもそした口の利き方、木暮実千代の吊り上がった眉毛、
 パチンコの玉が入った時の津島恵子の得意そうな表情、
 お手伝いのふみやの首のかしげ方、どれもいい。
 (4月30日,新文芸座にて)

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・麦秋(1951年,日本)
 久し振りに観た。
 上でも書いたし、今更言うまでもないが、これは傑作である。
 小津安二郎の最高傑作と言っても良いのではないか。
 小津自身としても自信作だったらしい。
 登場人物が多く、ややすっきりしていない面はあるものの、
 ちょいとすました「晩春」やストーリー主体の「東京物語」に比べて
 遊びの要素が多く、そのあたりが小津らしいのである。
 襖の陰で女達の会話を聞いている笠智衆は爆笑ものだし、
 杉村春子の存在に至ってはギャグそのものである。
 原節子もいい。
 他の小津作品における硬い(ある意味原節子らしい)演技と比べて
 とても自然である。
 三宅邦子との会話など、地で演っているかのよう。
 それにしてもショートケーキが1つ900円というのは、当時としては
 べらぼうに高いなー。
 父親役は、笠智衆が長男役ということで菅井一郎が演じているが、
 これもちょいと違った味があってなかなかいい。
 どこが…とは言い難いのだが、強いて言えば笠智衆程枯れていないところ
 だろうか。
 画面には登場しないが、一家には出征して帰って来ない省二という次男が
 いることが会話からわかる。
 この名前から連想するのは、「東京物語」での原節子の戦死した夫の名前、
 「昌二」である。
 更に、小津が脚本を書き、田中絹代が日活で監督した「月は上りぬ」の
 登場人物は「安井昌二」。
 この映画の舞台は奈良ということで、「麦秋」との関連は明らかである。
 そして「月は上りぬ」での役名を芸名とした、俳優安井昌二の代表作は、
 市川崑監督の「ビルマの竪琴」(後に同監督が中井貴一主演でリメイク)。
 この中で安井昌二演じる水島上等兵は、死んだ日本兵を弔って回るために
 終戦後もビルマに残る決心をするのである。
 そんなわけで私には、「麦秋」の省二は今もビルマ(ミャンマー)で
 遺骨を埋葬して歩いているような気がしてならないのである。
 そう言えば「麦秋」でも(オルゴール)「ビルマの竪琴」でも(竪琴)
 同じ「埴生の宿」が使われていたっけ。
 (4月30日,新文芸座にて)


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 誌面への掲載は、ご返答を添えたかたちでいたしますので、
 個々のメールに対する私からのご返事は省略させていただきます。
 どうかご了承下さい。


●おわりに━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 感想号いかがでしたでしょうか。
 
 フランスで行われた第57回カンヌ国際映画祭で、
 「誰も知らない」に出演した14歳の柳楽優弥さんが、
 史上最年少で最優秀男優賞を受賞し、大きな話題となりました。
 今後、期待に潰されることなく、仕事を選んで着実にいい俳優になって
 行ってもらいたいですね。

 また、山村浩二監督のアニメーション「頭山」が、
 昨年のアヌシー国際アニメーションフェスティバルに続き、
 今年の第16回ザグレブ国際アニメーションフェスティバルでもグランプリ
 を獲得しました。
 凄いですね。
 都内では昨年来何度か上映されているのですが、私はまだ観ておりません。
 今度かかったら行こうと思います。

 訃報です。
 
 俳優の三橋達也さんが亡くなりました。
 映画出演では、「愛のお荷物」,「銀座二十四帖」,「洲崎パラダイス 
 赤信号」,「グラマ島の誘惑」等の川島雄三作品や、「こころ」,
 「悪い奴ほどよく眠る」,「夜の流れ」、最近では「忘れられぬ人々」
 等での演技が印象に残ります。
 また、テレビでは「連想ゲーム」の名回答者として、
 そして西村京太郎シリーズの十津川警部役としてお馴染みでした。

 また、俳優出身で、アメリカ合衆国の第40代大統領を務めた、
 ロナルド・レーガンさんが亡くなりました。
 俳優としては必ずしも成功したとは言えませんが、
 大統領としては、良くも悪しくも現在のアメリカという国、
 そして全世界の状況を作り出した張本人の一人と言えます。
 政治家としての評価は今後歴史が決めてくれることでしょう。

 そして、撮影監督の篠田昇さんが亡くなりました。
 「ラブホテル」,「Love Letter」,「スワロウテイル」,現在話題の
 「世界の中心で、愛をさけぶ」などで撮影を担当されました。
 しっとりとした映像美に特徴のあった方ですね。

 ご冥福をお祈りいたします。

 では、次回をどうぞお楽しみに。
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 ※本文中、一部敬称は省かせていただきました。


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 発行者:熱田海之
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