2009/11/08
☆日刊中高MM2362号◆名生修子「総合学習回顧録ー小学生ママと総合学習」(22) ★
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪ 日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)☆第2362号☆ 2009年11月8日:日曜日発行 編集・発行 梶原末廣 sukaji@po.synapse.ne.jp http://www.synapse.ne.jp/~kanoyu/sukaji/index.html http://www.synapse.ne.jp/~kanoyu/kyoushi/index.html 【中高MMは野元尚巳さんのオーストラリア自転車単独横断を応援します!】 http://kayak.synapse-blog.jp/kt/ ☆★今日に生きる私と 明日に生きる君がつながりあえるように語り合おう★☆ ≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫ ====★☆INDEX★☆========================================================== ■「総合学習回顧録ー小学生ママと総合学習」(22)名生修子(兵庫県) ===================================================◆◇==================== 【連載】 ■「総合学習回顧録ー小学生ママと総合学習」(22) 名生修子(兵庫県) ◆今、国語がおもしろい 秋とは文学と自然を結びつけてくれる季節のようで、昨年もそうだったの だが、中庭の材料を教室に持って行って授業をすることが、何度かあった。 現代文では、大岡信氏の「言葉の力」。次のような一節がある。 ”京都の嵯峨に住む染色家志村ふくみさんの仕事場で話していた折、 志村さんがなんとも美しい桜色に染まった糸で織った着物を見せて くれた。そのピンクは、淡いようでいて、しかも燃えるような強さ を内に秘め、華やかでしかも深く落ち着いている色だった。その美 しさは目と心を吸い込むように感じられた。「この色は何から取り 出したんですか。」「桜からです。」と志村さんは答えた。素人の 気安さで、私はすぐに桜の花びらを煮詰めて色を取り出したものだ ろうと思った。実際はこれは桜の皮から取り出した色なのだった。 あの黒っぽいゴツゴツした桜の皮からこの美しいピンクの色が取れ るのだという。志村さんは続けてこう教えてくれた。この桜色は、 一年中どの季節でも取れるわけではない。桜の花が咲く直前のころ、 山の桜の皮をもらってきて染めると、こんな、上気したような、え もいわれぬ色が取り出せるのだ、と。” 昨年、サイエンス部で染めたハンカチを持って行った。この話を読んでい たので、落ちていた桜の枝の樹皮で染めてみたのだ。「上気したような、 えもいわれぬ」色は無理だったが、それなりのきれいな色には染まった。 「これが、中庭の桜の樹皮で染めてみたハンカチです。えもいわれぬ、と まではいきませんが、ピンクでしょ。」教室が小さくどよめく。 生徒に中庭で拾った桜の枝を列ごとにまわしてみる。「よ~く見ると、ピ ンク色してるでしょう。」「ほんま、ほんま」「ピンクやわ。」ほんのり 桜の樹皮にはピンクが入っていることを生徒は実感する。 「でも、これは、花の咲く直前の枝ではないと思うよ。さっき中庭で拾っ たばかりやから。折れて時間が経つと、枝の表面も艶がなくなるけど、ま だ艶があるものね。大岡さんは、文学の人やからこういう表現をしてはる けど、私は、桜はいつもピンク色なんと違うかと思いますよ。それより、 樹皮をはがされた桜の枝は、どうなると思いますか?」「???」 「枯れるのですよ。そう考えると、このピンク色は、命のピンク色なんや と私は思うのですよ。桜の命をいただいて、人間は染色している・・・。 ま、サイエンス部は落ちた枝でしたけど。」 少しコースアウトしてしまうのだが、なんとなく生徒の目には納得の色がう かがえる。 ついでながら、つゆくさとさるすべりの花も持って行って、「この花は、お しべに花粉がついているのとついていないのがあるらしいよ。見える?」と まわす。「自然は植物にいろいろな不思議を持たせてくださっていますね。 そしてそんな材料が、うちの学校の中庭にいろいろあるのは、ありがたいこ とですよね。」少し、本題からはずれたが、生き生きした授業にはなった、 と思っている。 芥川龍之介の「羅生門」。羅生門の楼上で死人の髪の毛を抜いている老婆が 檜皮色の着物を着ている。檜皮色といっても、ピンと来ないので、本物の檜 の樹皮を持って行った。6枚持って行って列ごとにまわす。色を見てほしい と思って持って行ったのだが、生徒はおもしろい。 「この匂い、どっかでかいだことある。」「あ、おふろや」「ひのきのおふ ろとか入浴剤あるもんな。」匂いについてのリアクションは想定していなか ったので、驚いたが、生徒が嗅覚という生の自然に触れる感性を失っていな い証拠なので、うれしかった。 この檜皮色という設定は「今昔物語集」の原典にはない。芥川の創作である。 この色の着物を着せることで、”猿のような”という老婆の描写も生きてく るのである。私も今までこの色にこだわった授業をしたことはなかったので、 本物の檜皮を持って行ったことで新しい発見があった。檜皮とは直接関係な いが、生徒の感想の一部を以下に紹介する。 ・全体を通してハラハラして、静かな緊張感があった。 ・やはり人間はすばらしいけどひどい生き物だなあと思った。 ・人間のどろどろした部分をうまく表現していると思った。 ・次はどうなるんだろうと授業で読み進めるのが楽しみだった。 ・ただの景色だと思って読み過ごしていたところも授業を終えて読み返すと、 ちゃんとその意味があり、その雰囲気を醸し出していることを確認できた。 ・中学の時の国語に比べて、深いところまで読むのだなあと思った。 ・新聞の連載小説を読む時など授業と関係ないところで、授業で理解したこ とが役に立った。 ・国語の教科書にこれほどおもしろい話があるとは思いませんでした。 ・絵がなくても、場面が思い描けると思う。 ・最初は「この意味わからん」とか思っていたけど、授業が終わってさびし い感じ・・。 ・普通に読んだだけじゃわからない仕掛けがたくさんあって、すごくおもし ろかった。 ・今までの学校の国語の中で一番おもしろかった。 生徒にとって、高校に入って初めての本格的小説だから、それに対する感想 も多かったが、今回の「羅生門」は、自分でも初めてと言っていいほど手応 えがあった。いつもは、2年生で学習する「こころ」の方がずっとおもしろ いと感じるのに・・。檜皮に目が向いたこととも、無関係ではあるまいと思 う。 古典で今、漢詩をしている。李白の「友人を送る」。”孤蓬万里を征く”と いう句がある。”風に吹かれて転がり飛ぶ蓬は万里のかなたに旅をする”と いうのが、直訳であり、もちろん蓬は旅立つ友人をたとえている。 中庭で蓬を採取する。自転車置き場には、お誂え向きに背の高い折れた蓬が 枯れていた。 蓬を入れたビニール袋を持参して教室に行くと「先生、またなんか持って来 とう・・・。」 「これは、さきほど中庭で摘んだよもぎです。」と各列に配る。 「臭っ!」誰かが言い出すとみんな匂いを嗅ぐ。「理科の授業ではないから 匂わなくて良いですよ。さっさと後ろの人にまわして。」と言うのだが、み んな匂いを嗅ぐ。蓬を触れない子もいる。汚いものを触るように手でつまん で後ろにまわす。 でも、中にはこう言う子もいる。「あ、これ、草餅にするんやろ。知っとう で。幼稚園の時に作ったわ。」「え?草餅ってこれが入ってたん?」「え~ ?うそ~!私、今まで草餅食べとった。こんな雑草が入っとうって知らんと ・・。」「うそ~?私も蓬団子食べたことあるのに。こんなん草や。きたな ~!!」 「蓬は雑草ですが、薬にもなるし、身体にも良いのよ。よく匂い消しや毒消 しで使われますよ。」とコメントする。「仔牛は、お腹の調子が悪くなると、 蓬を食べるそうですよ。誰からも教わっていないのに不思議ですね。」と学 生時代の先輩から聞いたことをそのまま受け売りする。 次に枯れた蓬をまわす。やはりみんな匂いを嗅いでいる。「枯れても臭いわ。 (笑)」 そこで「枯れたらこのように葉っぱも丸くなってしまうでしょ。中国の蓬は これとは違うのですが、枯れて乾燥したら茎まで丸くなってしまって、風で 転がるそうですよ。だから今回”孤蓬万里を往く”で、あてどない旅に出る 友人のことを転がる蓬に例えたのですよ。」生徒は、なんとなく納得してい るように見えた。 日本人に一番有名な漢詩といえば「楓橋夜泊」。今回、その題名に出てくる 「楓」をめぐっていろいろな勉強をさせてもらった。 教科書の脚注には「江楓」とは、岸辺のカラカエデである、とある。何の疑 問もなく「岸辺のカラカエデと漁り火が・・・」と訳していた。ところが、 自然観察指導員の講習会に参加した時、ふと訊いてみた。「カラカエデって どんな植物ですか?」ところが「そんな植物はない」という返事。「トウカ エデならありますが・・。」ということだった。どなたに訊いても同じ返事。 樹木医で、ある神戸市立庭園の園長さんをしておられる方にも聞いてみた。 「カラカエデってどんな植物でしょうか?トウカエデと同じ?」「トウカエ デは、揚子江沿岸に生育とこの図鑑には載っていますね。」専門家用の植物 図鑑を見せてくださった。「楓橋」は、揚子江の近くといえば近くなので、 当たっていなくはない。やはり「トウカエデ」なのか。 するとしばらくして、自然観察指導員の講習会で一緒だった方から「中国の 植物」という本をご紹介いただいた。「楓橋夜泊」にでてくる「楓」は「ナ ンキンハゼ」だとある。別の書物には「江楓」ではなくもともとは「江村」 だった、とある。 漢字二文字で、いろいろ勉強させてもらった。授業には、自然観察指導員の 講習会で教えてもらった、紅葉した「カラカエデ」を持って行った。「これ が、岸辺にず~っと生えていたんですね。」生徒は、納得していた。 自然観察の世界を少し覗いただけで、こんなに国語の教材観が違ってくると は考えもしなかった。こだわりだしたらどんどんこだわりたくなるのである。 ============================================================================== ===編集日記=== 皆様に支えられて「日刊・中高MM」第2362号の発行です。 名生修子先生の作品を拝読して思い出したのが、昨夜就寝直前に視聴した TV番組。 ========================== 「グラン・ジュテ~私が跳んだ日~」NHK教育テレビ 土曜日 午後11:25~11:54 (再)翌土曜日 午後0:00~0:29 「グラン・ジュテ」とはバレエの跳躍のこと。 今、輝いている女性たち。彼女たちの人生のグラン・ジュテを探ります。 ===================================== 清水繭子(染織家) http://www.mayukoshimizu.jp/index.html 清水繭子さんは自分で糸を染め、自分で織り上げる、染織家。鎌倉で9年反物 を作っています。染織家の仕事は野山を歩くことから始まります。染料になる 自然の素材を探すのです。藍(あい)の生葉からは空色、春のヨモギからはう ぐ いす色、ドングリからは銀鼠(ぎんねず)色…。自然からは、さまざまな 色が生まれますが、同じ植物でも育った場所や採取の時期で色合いが異なり、 同じ色は二度と生まれません。 清水さんは東京で生まれ育ち、美大で化学染料の染め物を学んでいました。あ るとき、人間国宝の染織家・志村ふくみさんの作品に出会い、自然の生み出す 色に感動しました。卒業と同時に志村さんに弟子入りし、京都の工房で働き始 めるのです。 しかし、同じ素材で染めても、師匠と同じ色にはなりません。工程のちょっと したタイミングの違いで色が変わってしまうのです。試行錯誤の連続でした。 しかし3年後、清水さんは自信のないまま独立します。このまま師匠に甘えて いては独自性が育たないと思ったからです。 独立後の清水さんは自分の個性を追求します。布を切り刻んで貼り合わせるな どアバンギャルドなものに挑戦し、初の個展を開きました。しかし、評価は芳 しくありませんでした。そのとき自然の色合いにこだわる大切さに改めて気が つくのです。「色を追いかけるな。色はいただくもの」それは以前師匠にしか られた言葉でした。清水さんはその言葉をちゃんと理解していなかったことに 気づいたのです。あるとき、宮城の桜を使って染めたところ、東京の桜よりも ずっと濃いピンクに染め上がりました。風土の違い、寒さの中をじっと耐えて いる桜の色…。 そして彼女のグラン・ジュテ。東京の桜の淡い色と宮城の桜の力強い色を組み 合わせた着物を織り上げます。自然への感動を素直に表現した作品でした。 「自然の色を引き出せた時、それは着る人にすっとなじむものになる」清水さ んはそう考えています。 http://www.mayukoshimizu.jp/kire/index.html 志村ふくみさん文章を扱ったことがありますが、生活の色と自然の色、それと の融合。命の色、命を染める。 授業の中で実物を手にする子供達の姿が目に浮かぶ。 秋は文学と自然を結びつける授業、素敵です。 ============================================================================== 皆様のご意見・ご感想お待ちしています。 sukaji@po.synapse.ne.jp 梶原末廣【インターネット編集長】 ======◆◇==================================================================== 中・高校教師用ニュースマガジン 2000年3月26日創刊 編集・発行 梶原末廣 sukaji@po.synapse.ne.jp 【発行部数1222名】 ◎バックナンバー http://archive.mag2.com/0000027395/index.html ☆日刊「中高MM」の登録と解除 http://www.mag2.com/m/0000027395.html http://www.synapse.ne.jp/~kanoyu/kyoushi/index.html ●日刊【中高MM】●マガジンID:0000027395 ■発行システム:インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ Copyright(C),2000-2009 ChuukouMM INC 全文、または一部の記事の無断転載および再配布を禁じます。 ========================================◆◇===================================== ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆2009年☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ ◆「日刊 中・高校教師用ニュースマガジン」◆ 【11月連載予定】 09 2363 「プロジェクト志向でいこう!」(45)若槻徹(島根県) 10 2364 「読み聞かせる教室づくり」(6)石川晋(北海道) 11 2365 「僕らはみんな生きている」(25)杉山武子(鹿児島) 12 2366 「想いは南風に乗せて-あなたの心に」(41)堂園晴彦(鹿児島) 「子どもたちのわくわくアート」(71)西尾環(熊本県) 13 2367 「もう一つの学校インターナショナルスクール」(22) 壷坂宣也(兵庫県) 「薫のデジタルにっし」(66)Slotsve堀内(アメリカ) 14 2368 「生徒へ送る心のメッセージ~教師のための新しい視点~」(28) 桑原規歌(愛知県) 「モスポイントたより」(64)クニコホール(アメリカ) 15 2369 「百菜園だより」(13)木原ひろしげ(福岡県) 16 2370 「インディアナ発 ~シアワセな人生をデザインする~」(18) 倉本陽子(アメリカ) 17 2374 「知識活用力の育て方」(203) 高橋りう司(東京都) 18 2375 【休載日:発行所メンテナンスの為】 19 2376 「ITのお世話の日記」(21)山之上 卓(鹿児島県) 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