2009/03/27
空気を読まない
「KY(空気が読めない)」というイヤな言葉が流行っている。 なぜ空気を読まなければならないのか? 理由はない。 みんなが同調してつくる「空気」などほとんど間違っている。 意識的に空気を読まず、空気に異議申し立てをする必要がある。 しばらく発行を休んで申し訳ありません。 私が「日本インターネット新聞 JanJan」にコラム【大気圏外】(ほぼ毎日掲載)を書いていることはすでにご報告ずみで す。 今回はさいきんのものを2本ほどお送りします。 なおJanJanで【大気圏外】を読む場合、 http://www.news.janjan.jp/column/taikikengai/taikikengai.php にアクセスして下さい。このURLが大気圏外の「リストページ」です。そこからタイトルごとのコラムに飛ぶことができます。 今後はできるだけ「まぐまぐ!」でお届けするようにいたします。 よろしくお願いいたします。 【大気圏外】WBC日本優勝「韓国に感謝」の原監督に敬服 http://www.news.janjan.jp/column/0903/0903250133/1.php 田中良太2009/03/26 WBCで優勝した原監督が会見で「日韓両国が切磋琢磨して、両方とも強くなった」と語ったことを特筆し たい。あの場面、敗者への配慮は必要不可欠だった。前回大会でのイチローの韓国を刺激した一言の記憶もあっただろう。両国関係 の行き違いの拡大を防いだ優れた発言だと思う。 24日は、日本中でお祭り騒ぎだったらしい。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝のテレビ中継を見ていた人た ちは、数千万人というケタになるのではないか? 「仕事にならなかった」という職場も多かったらしい。 「騒ぎすぎ」という感じもするが、たまにはこんな日があってもいい。「日本」だけではなく、「地域」とか「家庭」とか、恋人 同士という次元でも、お祭り騒ぎをやるようにすれば、それでいいのだろう。 いろいろほめられているから、私ごときが……という気もするが、なんと言っても原辰徳監督の成長ぶりを特筆したい。野球のこ とではない。決勝戦終了後のインタビューで「日本と韓国が互いに切磋琢磨することによって、両方とも強くなった。アジアの隣国 同士で優勝を争えたのは、互いに相手の存在があったからだ。韓国に感謝したい」と言ったことである。 どの新聞も記事にしていないから、私の記憶に頼った記述である。一つ一つの言葉が正確か? と問われれば困るが、全体の主旨 はこのとおりだったという自信はある。 あの場面、敗者への配慮は必要不可欠だった。延長10回表、勝ち越しの2点タイムリーを打ったのはイチローだが、韓国応援団 からのブーイングは一段と高かった。例の「二度と日本と戦おうという気が起きないほどに、徹底的に叩きのめす必要がある」とい う発言の故だろう。 この発言とブーイングがあったからこそ、韓国チームはイチローを敬遠しなかった。イチローの方はブーイングを「歓声」と解釈 し、闘志を高めていた。決勝打が生まれた背景には、3年前の発言が起こした微妙な「あや」があったのかもしれない。 しかしスポーツの試合で、言葉による挑発は邪道である。イチローも、まさか意識して挑発したわけではあるまい。結果として挑 発となってしまった事実を消すことはできないが、隣国同士で「遺恨試合」めいたものになることは避けなければならない……。こ うした配慮のうえで行われたのが原の発言で、極めて優れたものだったと思うのだ。 新聞論調を見ると、社説は以下の2紙。 読売=WBC連覇 日本を元気づける世界一だ 日経=感動を与えたWBC連覇 朝日・毎日・東京が、1面コラムのテーマとした。 どの文章にも共通しているのが<この国を元気にする野球の力の健在が何ともうれしい球春である>(毎日のコラム「余録」の結 び)という発想である。 経済は低迷し、社会では不可解な事件がひんぴんと起きる。そうした事態を救うためにあるはずの政治は、「崩壊」を加速するデ メリットをまき散らしているだけ。こうした暗い世の中は、それぞれの分野できちんとした対応策をとっていかなければ、「矯正」 することは不可能だ。 スポーツの勝利によって、国民が多少元気になるにしても、それだけのことだ。政治・経済・社会の諸問題に与える効用など限ら れているのである。そんなこともわきまえずに、スポーツでの勝利を過大に賛美する報道、論評は、マイナス効果を生むだけだ。 原の「日韓が両方とも強くなった」発言は、スポーツの世界で起きた行き違いが、両国関係全般に拡大することを防止しようとす るものだ。だからこそ優れた発言だと思うのだ。 【大気圏外】米貨物機事故、異常気象より「速さ優先体質」に問題 http://www.news.janjan.jp/column/0903/0903240086/1.php 田中良太2009/03/25 成田空港で起きた米貨物機炎上事故で、新聞各紙の報道はいずれも「異常気象対策を確立せよ」という主張 につながるものだ。どんな気象条件でも「着陸中止」の選択はすべきでない、ということで、事故が起き続ける航空界の体質を温存 してしまう。航空会社の「速さ優先体質」を指摘し、「安全優先」への転換を求めるべきではないのか。 23日、成田空港で起きた米貨物大手フェデックスのMD11機炎上事故の映像は、繰り返しテレビで流された。<貨物機で良か った>と感じたのは、私だけではあるまい。亡くなった機長と副操縦士の生命を軽んじる訳ではないが、旅客機なら大惨事となるは ずだった。 成田空港が開港したのは1978年5月。それから40年余を経過して初めての死亡事故だから、歴史に残る「事件」だろう。し かし翌24日付朝刊で社説のテーマにとりあげたのは、以下の3紙だけだった。 ▽読売=貨物機炎上 突風に対する備えは万全か ▽東京=成田着陸失敗 解明急げ初の死亡事故 ▽産経(主張)=貨物機炎上 気象の急変に対応怠るな 1紙で代表されるのは乱暴だろうが、読売社説の結論部分は以下のとおりだ。 <安全が第一である。刻々と変わる気象状況に応じた機長や管制官の判断は、極めて重い。 気象台と空港、機長との気象情報の伝達や指示は、的確・迅速に行われているだろうか。異常気象に対処する機長らの教育訓練は 十分だろうか。この点についても総点検が重要である> タイトルから推測できるだろうが、東京、産経の主張も同じことである。原因を究明し、突風など異常気象対策を確立せよという ところにある。 社説ではなく1面コラムのテーマにしたのが2紙ある。毎日の「余録」と日経の「春秋」だ。末尾のセンテンスを紹介しよう。 <余録=成田空港では初の航空機の死亡事故というが、これから乗機の着陸のたびにこの事故の映像が頭をよぎるのはかなわない 。原因を究明して、どんな月の風であれ(※注参照)虚を突かれる余地のない対策で乗客の不安をぬぐってもらいたい> <春秋=航空機や操縦システムがいくら高性能になっても安全を脅かし続ける「気象の罠」をどう避けるのか。映像と原因の調査 で新しい教訓を得るのが、命を落とした乗員2人に報いる道でもあろう> (注)この余録は冒頭「3月の風」から書き出している。「3月の風だけでなく」「どんな月の風であれ」という意味だろう。 《(注)終わり》 どうしてこんな考え方しかできないのだろうか? とあえて論説委員諸兄に問いたい。あの場面、機長は「着陸は100%安全と は思えない」と判断して、上空での待機を続けるべきだったはずだ。 <異常気象や風対策を確立せよ>という主張は、<どんな気象条件でも、着陸中止は選択しない>という姿勢につながるのではな いか? これはむしろ、今後も事故が起き続ける航空界の体質を温存することになる。 読売社説の末尾は、 <安全が第一である。刻々と変わる気象状況に応じた機長や管制官の判断は、極めて重い。 中国の古典に「進むを知りて、退くを知らず」とある。常に進む人をほめたのではなく、逆に退くことの大切さを知らない人を愚 かだとする言葉だ。「可を見て進み、難を知りて退く」という言葉もある。 自然の力はたいへん巨大なもので、人間の知恵では克服できない場面も多い。 航空輸送のメリットは速さにある。それを犠牲にするのは忍びないのかもしれないが、あの場面は、着陸を見送り、上空での待機 を続けてほしかった> となるべきところだろう。 航空貨物の競争力は速さから生まれるのだという。例えばアフリカ西方の大西洋上で漁獲されたマグロは、ナイロビから空輸され る。船便とは比較にならないくらい早く着き、換金されるのも早い。金利を考えると航空輸送こそ合理的なのだそうだ。 着陸を断念し、上空での待機を続けることで、「速さのメリット」がちょっぴり失われる。それでも「安全優先」であるべきだと いう乗員に対する教育こそが、欠けていた。事故の背景にはこうした航空会社の体質があったはずだ。 新聞の社説やコラムでは、貨物でも露呈してしまった航空会社の「速さ優先体質」を指摘し、批判すべきだったのではないか? 登録・解除は http://search.mag2.com/reader/Magsearch?keyword=%8B%F3%8BC%82%F0%93%C7%82%DC%82%C8%82%A2 から。 ご意見はできれば http://www.news.janjan.jp/column/taikikengai/taikikengai.phpから あるいはgebata@nifty.comへ。



