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 「KY(空気が読めない)」というイヤな言葉が流行っている。なぜ空気を読まなければならないのか? みんなが同調してつくる「空気」などほとんど間違っている。積極的に読まない必要がある。

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2008/08/26

空気を読まない=敗者にこそ人間味 五輪TV観戦記

「KY(空気が読めない)」というイヤな言葉が流行っている。
なぜ空気を読まなければならないのか? 理由はない。 
みんなが同調してつくる「空気」などほとんど間違っている。
意識的に空気を読まず、空気に異議申し立てをする必要がある。

 この論評は8月25日付で「インターネット新聞JanJan」のコラム【大気圏外】としてUPされたものです。
 JanJanで読むなら
http://www.news.janjan.jp/column/0808/0808245419/1.php
 です。
 なおJanJanの【大気圏外】はかなりの本数書いておりますが、【空気を読まない】には、そのうち一部を送っているだけで
す。私の書いているコラムをすべてお読みいただける方は、恐縮ですが【大気圏外】のリストページ
http://www.news.janjan.jp/column/taikikengai/taikikengai.php
 にアクセスして下さい。よろしくお願いいたします。
【JanJan編集部による要約】男子マラソンで優勝したワンジルの扱いがテレビは冷淡だった。仙台育英高、トヨタ自動車九州
で活躍した日本育ちのアスリートだ。「国籍だけがすべて」ではないはずだ。終わってみて、女子マラソン、野球、柔道男子などに
、「どうした」と問い詰めようとする声が高い。たった1人の名誉ある勝者をつくるために、他のすべてが敗者の汚名を着る「闘い
」の残酷さに注目すべきだろう。闘わない人間は敗北しない。平凡に生きる幸せを噛みしめる秋を迎えたい。

 ◆超然としてられない悲しい性(さが)
 「テレビは嫌いだ」とか「スポーツずくめの夏はうんざり」とか言っても、記者稼業をやっていた悲しさで、世間の関心事を離れ
て超然としているのが苦手。北京五輪のテレビも横目ながらしっかり見ていた。印象批評を一つ二つ。

 ◆マラソン優勝・ワンジルの名は知っていた
 最終日の男子マラソンで優勝したサムエル・ワンジル(21歳)の名は記憶に残っていた。私は毎日新聞に在籍し、京都支局勤務
も3年間に及んだ。毎年どんづまりの日曜に行われる高校駅伝は、全員が出社して取材する。それが「仕事納め」で、翌日から年末
年始の休みを消化するのである。だから高校駅伝についての関心は人並み以上だ。
 ◆高校駅伝「花の1区」3連勝の勲章
 ワンジルは2002年来日して、仙台育英高に留学した。それまでは「駆けっこが速い少年」程度だったが、高校駅伝の1区(1
0km=「花の1区」と呼ばれる)を3年連続で走り、3年ともトップで区間賞を獲得した。高3のときには区間新を出した。
 ◆瀬古利彦が前例だが……
 「花の1区」を3年連続して走るのは、日本の長距離走者の「登竜門」というべきコースで、前例として私が知っているのは、1
970年代前半の瀬古利彦(四日市工業高)だけだ。瀬古の場合でも、2年、3年のとき区間賞だったが3連勝とはいかなかった。
「花の1区3連勝」は、ワンジルがいかに優れた素材だったかを示す記録だ。
 ◆実業団でも活躍
 同高を卒業した05年にはトヨタ自動車九州に入った。11月の九州実業団毎日駅伝で、トヨタ自動車九州チームは、12連覇を
狙った旭化成を破り、初優勝したが、その原動力がワンジルだった。 ◆初マラソン初優勝
 初マラソンに挑戦したのは07年12月の福岡国際だったが、2時間6分39秒の大会新で優勝した。今年4月のロンドンマラソ
ンではケニアのマーティン・レルに優勝を譲ったが、2時間5分24秒で2位だった。ハーフマラソンで58分33秒の世界記録を
持つスピードが特長で、北京五輪の勝利は「順当」というに尽きる。
 ◆先輩にワキウリ、ワイナイナ
 「日本育ちのケニア選手」としてはソウル五輪(1988年)銀のダグラス・ワキウリとアトランタ(96年)銅、シドニー(2
000年)銀のエリック・ワイナイナがいた。ともに高卒後来日、日本の実業団で活躍し、世界と戦える力をつけた。高校から日本
で指導されたケニアの五輪マラソン選手はワンジルが初めてだ。
 ◆冷淡だったテレビ
「日本」となれば、何ごとでも大喜びするテレビの五輪番組が、ワンジルについては「冷淡」と思えるほどのトーンだったのは何故
だろうか。ワキウリ・ワイナイナ・ワンジルと並べてみると、日本のマラソンランナー育成は、世界でも一流ということになる。「
日の丸」は上がらなくても、胸を張っていいことだろう。そうならない原因は国籍(端的にいえば「日の丸」)にあるということな
のだろうか。
 さすがに25日付朝刊では朝日・読売とも「日本育ち」を見出しにとっていたが、それが正常な感覚だろう。
 ◆プロランナーの道をスタート
 ワンジルは先月末、トヨタ自動車九州に退職通知を提出したが、円満退社ではなさそうだ。今月13日、大分県宇佐市に設立され
たスポーツマネジメント会社「HERMIT(ハーミッツ)」が、ワンジルとマネジメント契約を結んだと発表したという。
 ◆「意地悪」はやめてほしい
 同社によると、ワンジルはマラソンに専念できる環境を希望しており、今後は日本国内でスポンサーを募り、プロランナーとして
活動するという。ワンジルのスポンサー企業が集まらないなどという事態にはならないようにしてほしいものだ。それこそ日本人の
「心の狭さ」を示すものだろう。
 ◆大歓声あびたビリの佐藤
 このマラソンを完走した選手の中で最下位が、日本の佐藤敦之。2時間41分台で76位だった。佐藤がメーンスタジアム「鳥の
巣」に入り、トラックを走っている間、観客からの激励の声が続いた。マラソンでビリになったランナーが大歓声を送られるという
のは、どうやらどの国でも同じことのようだ。
 ◆日本人の反中国・反韓国感情こそ問題
 一部には、中国人の日本への反感を書きたてていたメディアもあったが、あの場面をテレビで見ていて、騒ぐほどのことではない
と思ったがどうだろうか? そんなことより、日本人の反中国、反韓国感情の方が問題ではないか。
 キューバ対韓国となった野球の決勝戦で、私の知り合いはほとんどが、「キューバ勝て」だった。キューバに親近感があるのでは
なく、単なる韓国嫌いなのである。こんなところに人々のホンネが出てくる。「近隣の国と仲良く」が通じない日本は、いったいど
こへ行ってしまうのか心配だ。
 ◆フェルプスとボルトのオリンピック
 記録面から北京五輪を見ると、米国のマイケル・フェルプスとジャマイカのウサイン・ボルトのオリンピックだったという印象だ
。水泳での金メダル8個・前大会と通算で14個というのも、陸上100m、200m、400mリレーの短距離3種目を、すべて
世界新で完全制覇したというのも、ともに素晴らしい記録だ。
 ◆「人間潜水艦」「シンカンセン」?
 1948年ロンドン、52年ヘルシンキの1万mで連覇、ヘルシンキでは5千m、1万m、マラソンの3種目に優勝したエミール
・ザトペックは「人間機関車」といわれた。2人を讃える同じような称号は? 「人間潜水艦」と「人間シンカンセン」だろうか。
 ◆ボルトのスピードも自転車並みだが……
 ちなみにボルトの200m19.30秒という記録は、時速に換算すると約37.3キロ(もちろん連続して走り続けることは不
可能だから、計算上の数値にすぎないが)。新幹線どころか、普通の電車にも及ばない。「自転車並み」というところらしいが。
 ◆「ミラクルボディー」
 五輪開始直前の6日夜「NHKスペシャル/ミラクルボディー/世界最強の男たち」というテレビ番組を見てしまった。
 主役の1人がフェルプスで、強さの秘けつ・潜水が紹介されていた。スタート直後とターンのたびにどの選手も潜水するのだが、
フェルプスの潜水は深く、かつ距離も長い。その間、波の抵抗を受けず速く泳げるから、他選手を引き離せる。その潜水を支えるの
が1.93mの巨体。肺活量が大きく、全般的な体力も強い。
 ◆15歳で世界記録
 フェルプスは15歳でシドニー五輪に初出場。01年3月に200mバタフライで世界新を出し、15歳9カ月の世界記録保持者
となった。04年アテネ五輪は、金6個、銅2個を獲得した。
 NHKスペシャルに登場していた男子短距離選手はボルトではなかったが、腰から大腿部につながる筋肉が、通常の人に比べて極
めて大きく強い。練習によって肉体そのものが変わったのだ。
 ◆ボルトの長身は短距離に不向き
 身長1.96mのボルトは、以前なら「中距離向け」とされるサイズ。短距離のスタートは、小刻みに足を動かす必要があるから
不利なのだ。スタートに失敗すれば、回復できないうちにレースが終わる。
 ボルトが世界デビューしたのも15歳。そのころは「長い手足を持て余し、足が空回りしている」と評されていた。20歳のころ
その欠点を克服。その結果が、今回の快挙だ。

 ◆伸び盛りの時期に肉体改造
 「早熟な天才」だった2人が、ともにプロのコーチにつき、伸び盛りの肉体を、トレーニングによって改造していったわけだ。
 フェルプスに記録を破られたマーク・スピッツ(1972年ミュンヘン五輪金7個)は、「記録は必ず破られる。人が心を決めて
夢を追ったら、不可能はないということだ」と語ったと報じられている。
 ◆敗者の方が人間らしい
 しかし、サイボーグ(改造人間)めいた肉体をつくることができる人間は限られている。たった1人の勝者ではなく、多数の敗者
の方が人間らしい。
 野口みずきが走れず、土佐礼子も途中棄権に終わった女子マラソン▽鳴り物入りで「最強チーム」を誇っていたのにメダルに手が
届かなかった野球▽伝統を誇っていた柔道男子、などについて、「どうした」と問い詰めようとする声が高い。
 ◆平凡に生きる幸せを噛みしめたい
 こういう時期にこそ、たった1人の名誉ある勝者をつくるために、他すべての人が敗者の汚名を着るという、「闘い」の残酷さに
注目すべきだろう。闘わない人間は敗北を知らない。平凡に生きる幸せを噛みしめる秋を迎えたいものだ。
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