空気を読まない=白熱の党首討論はどっちが勝った?
「KY(空気が読めない)」というイヤな言葉が流行っている。
なぜ空気を読まなければならないのか? 理由はない。
みんなが同調してつくる「空気」などほとんど間違っている。
意識的に空気を読まず、空気に異議申し立てをする必要がある。
この論評は「市民の市民による市民のためのメディア」インターネット新聞JanJanに4月8日付で掲載されたものです。
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http://www.news.janjan.jp/column/0804/0804104659/1.php
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http://www.news.janjan.jp/column/taikikengai/taikikengai.php
福田首相は党首討論で小沢民主党代表に対して、「権力の乱用」という言葉を投げつけた。これは、日本の最高権力者の首相こそが
投げつけられるべき言葉であり、首相が誰かを非難するのに使う言葉ではない。田中角栄氏と戦った父の赳夫元首相のように、戦う
自分を冷徹に見つめる「もう1人の内なる自分」がいない人なのではないか。
◆言葉の名手だった首相の父・赳夫氏
福田康夫首相の父、赳夫元首相(1905年1月14日〜95年7月5日)は、「言葉の名手」と言っていい人だった。
1968(昭和43)年、時代の様相を「昭和元禄」と表現した。この年、「3C時代」といわれた。カー=車、クーラー、カラ
ーテレビが各家庭にあるべきものとなったのである。隔週刊「少年ジャンプ」が創刊、永井豪の「ハレンチ学園」が連載され、「ハ
レンチ」が流行語となった。フォーク・クルセダーズの「帰ってきたヨッパライ」が流行った。
第1次石油ショックで消費者物価が対前年比20%以上も上昇した1973年には「狂乱物価」という言葉をつくった。
赳夫氏自身、60歳代後半に入ると「明治38歳」を自称して、働き盛りをアピールした。76年12月、念願の福田内閣がスタ
ートしたときには「さあ働こう内閣」と命名。78年11月、自民党が初めて実施した総裁予備選で、当時の大平正芳幹事長に敗れ
たときは、「天の声もたまにはヘンな声のことがある」と言って本選を辞退した。その後は「昭和の黄門」を自称した。
◆「権力の乱用」は流行語大賞?
天国の赳夫氏は「康夫もなかなかやるものだな」と目を細めているかもしれない。4月9日の党首討論で、小沢一郎民主党代表に
対して「権力の乱用」という言葉を投げつけたことである。
「日本の権力者を1人だけあげよ」という設問に対する正解は、間違いなく「内閣総理大臣」すなわち首相だ。「権力の乱用」は
、その首相が投げつけられる批判の言葉であって、首相が誰かを非難するために使うなんて想像もできなかった。そのシンジラレナ
イ言葉の使い方を編み出したのだからすごい。これからも流行って、新語・流行語大賞を受賞するかもしれない。
◆「権力の分立」知らないのでは?
康夫現首相の図太さには驚くが、<ひょっとして彼の辞書には「権力の分立」という言葉がないのではなかろうか?>という疑念
もわいてくる。
中学校でも習うのが「3権分立」だ。立法・行政・司法は本来本来独立しているのが望ましいとされる。日本は議院内閣制をとっ
ており、憲法41条で、国会を「国権の最高機関」だとしている。だから本来最上に位置するのは、立法府なのである。
国会で指名されて行政をゆだねられるのが首相。だから本来行政権の行使は、最高機関である国会が許容する範囲内で行うという
ことになる。
これまで日本の政治では、与党が衆参両院とも多数を占めていた。だから国権の最高機関である国会の意思も政府の意思と同じ。
政府の意思が国会で否定されるケースは稀だった。
◆「政府のやることを認めろ」は暴論
しかし、いまは参院が野党多数である。だから最高機関である国会の意思が、政府の意思と同一にならないケースが起きるように
なった。日銀の正副総裁人事について参院の同意が得られず、ガソリン税の暫定税率上乗せを決めた租税特別措置法が議決されない
のは、参院の議席配分からみれば当然のことなのである。
国民は昨年7月の参院選で、自公与党に独走させることはできないと考え、野党に多数を与えたのだ。民主党を中心とした野党が
、国民の負託に応えようとするなら、可能な限り政府の言いなりにならないことを目指す。
日銀人事とガソリン税暫定税率の2つの問題とも、康夫氏の言い分は、「政府がきちんと考えてやっているのだから、国会はそれ
を認めろ。認めないのは権力の乱用だ」ということにしかなっていない。政治論からしても、法律論(憲法論)からしても、成り立
たない論理だ。
◆政治家評価は「正しさ」最優先
福田赳夫氏は、「角福対決」で負け続けた。強腕とは言えないことが、政治家としての弱点だったと指摘されている。1972年
7月のポスト佐藤(栄作)の総裁選▼78年の総裁予備選▼79年9月から11月にかけての40日抗争▼84年10月の自民党総
裁選・二階堂(進)擁立構想など、いずれも負けたのは事実である。
しかし勝った田中角栄氏(1918年5月4日〜93年12月16日)が政治家の理想像かというと、それはノーである。戦いに
なると自分が勝つこと以外考えない人だったからだ。
それに対して福田赳夫氏は、戦う自分をも冷徹に見つめる「もう1人の内なる自分」を抱え込んでいた人なのではないかと推察す
る。「何が何でも勝たねばならぬ」が田中氏。福田赳夫氏は「勝たねばならぬ」という自分に対して、「そこまでやるのかい?」と
問うもう1人の自分がいた、ということだ。田中氏の方が強いことは言うまでもない。
しかし、政治家は「強さ」だけで評価されるべきではない。福田赳夫氏が言ったように「政治は最高の道徳」かどうかはともかく
、政治家評価の最優先尺度は「正しさ」でなければならない。福田赳夫氏のように「そこまでやるのかい?」と冷徹に問う、もう1
人の自分を抱え込んでいる人が力を持つ必要があるのだ。
福田康夫氏は、戦う政治家としての力量も、父赳夫氏と比較にならない。そして「そこまでやるのか?」と冷徹に問うもう1人の
自分もいないように見える。そういう内なる存在があれば、小沢氏に「権力の乱用」という言葉を投げつけることなどできないはず
だ。


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