空気を読まない 3月15日
「KY(空気が読めない)」というイヤな言葉が流行っている。
なぜ空気を読まなければならないのか? 理由はない。
みんなが同調してつくる「空気」などほとんど間違っている。
意識的に空気を読まず、空気に異議申し立てをする必要がある。
天皇家はどこへ行く?
JanJanで読むなら
http://www.news.janjan.jp/column/0803/0803122625/1.php
JanJanリストページ
http://www.news.janjan.jp/column/taikikengai/taikikengai.php
弱い立場に陥っている皇太子と雅子妃を昨今のマスコミがいじめ、宮中も「冷たい批判」を浴びせている風情が情けない。問題は
雅子妃の心の病であることがはっきりしている。近代最高の教育を受けた雅子妃が宮中祭祀をこなすのにわだかまりがあるのなら、
たかだか明治の「伝統」だ。思い切って簡略化すればよい。
◆文藝春秋も天皇家もの
いま書店に積んである月刊紙「文藝春秋」4月号の表紙には「総力特集・天皇家に何が起きているか」と刷り込まれている。「文
藝春秋」もとうとう女性週刊誌並みに、皇室ゴシップで稼ぐ安物雑誌になってしまったかと嘆かざるを得ない。
「総力特集」といっても、内容はいわゆる識者6人の座談会(タイトルは「引き裂かれる平成皇室」)と、女性皇室ライターの「
雅子妃、悲運と中傷の渦の中で」と題する「核心レポート」の2本だけ。焦点の雅子妃に対して、座談会は厳し目の内容になってい
る。これに対して「核心レポート」は雅子妃の立場で書いた内容。それぞれ単独では大胆な内容にして、2本でバランスをとるのが
、「売れる出版物」づくりの鉄則なのだろう。
座談会の登場者は大学教授や歴史家、そして皇室ジャーナリスト、それに精神科医、斎藤環氏。「あくまで医者の立場から発言し
ます」と断っている斎藤氏以外の発言は、あまりに低レベルで読むに耐えない。
◆低レベルな座談会
例えば
<私はここ数年間の皇太子の記者会見を熟読玩味したのですが、そこには何か大きな欠落があるような気がしてなりません。(中略
)会見の言葉で具体的なのは、愛子さんの話、雅子妃病状、それからご自身の話の三つだけなんですね。(中略)これだけ娘と妻の
ことばかり話すのには違和感を覚えます>
<将来の天皇が妻の病気だけに振り回されていいのか、という不安はどうしても拭えません>
などである。
どうしてこの人たちは、発言者である皇太子の立場に立ってものが考えられないのだろうか? 例えば天皇と同様に「拉致問題」
かなにかをテーマにして「心が痛んでいます」とでも言えば満足なのだろうか?
そんなことをしたら女性週刊誌・スポーツ紙だけでなく、テレビの安物コメンテーターどもが、
<皇太子が早くも天皇気取り>などと書き(言い)たてるに違いない。
「分を守る」というのが最優先の皇室の中で、皇太子は良く節度を守っている。専門家でも何でもないのに、何を言ってもいいと思
い違いしている人たちが、勝手なことばかり言って、弱い立場に陥っている皇太子と雅子妃をいじめている風情なのである。そのあ
たりはぜひお読みいただきたい(文藝春秋社を儲けさせたくないとお思いの方には、図書館利用をお勧めしたい)。
◆昭和天皇の緊張過剰
斎藤氏はこの中で、
<精神医学者の中井久夫氏(※注参照)に興味深い論文があります。昭和天皇を病跡学的に分析したものですが、昭和天皇の異常
な克己心について論じています。幼児期から高齢の人たちが自分につき従い、しかも自分に対して緊張している。周囲が緊張すると
自分も緊張するのが人間の生理ですから、昭和天皇は緊張の中で生活するのが当たり前になってしまった。だから昭和天皇は成人し
ても、リラックスするのが非常に苦手で、風呂も嫌いだったとか。子どものころからの常なる緊張が、常人では考えられない克己心
の強い人格を形成してきたと分析しています。>
(注)精神医学者。神戸大医学部名誉教授。現在専門は統合失調症の研究。兵庫県精神保健協会こころのケアセンター所長として
、阪神大震災の被災者の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療、臨床研究を行った。「天才の精神病理」(共著、72年、中
央公論社/2001年7月、岩波書店)など著書は多く、現代ギリシャ詩や、フランスの詩人ポール・ヴァレリーの研究でも知られ
る。「カヴァフィス全詩集」(みすず書房)の翻訳で89年2月、読売文学賞を受けた。=(注)終わり=
昭和天皇のさまざまな場面について「思い当たるところあり」であろう。
◆内奏でも緊張
じつは私は、1984−5年の2年近くにわたって外務省の取材を担当していた。そのとき分かったのは、天皇といちばん頻々と
会う人物は外務省情報文化局長(情文局長=後に外務報道官)だということだった。2週間に1度「内奏」を行うのである。この場
合の内奏は、国際関係のレクチャーといった内容だ。
他に都合がなければ水曜の午後だったと記憶しているが、内奏が終わったころには必ず情文局長室を訪ねた。当時昭和天皇は元気
だったが、80歳代の半ば。
<陛下におかれては、ご機嫌うるわしくあられましたか?>
<うん元気だったよ>
という問答を繰り返した。ともかくそれで、天皇に異常はないといういうことがわかる。
そのうち<本日の内奏の項目は?>などと訊くことにした。要するに世界各国でどういうことが起きているのか、日本政府はそれ
についてどう対応するのかを報告する。この内容を聞くと、取材のうえで極めて便利なのである。
それはいいのだが、驚いたのは昭和天皇の反応である。その時々のニュースバリューに従って、レクチャーの順番はまちまちであ
る。冒頭に多いのは東アジアと北米だが、中近東のこともあるし、当時ようやくゴルバチョフ政権登場に向かっていたソ連のことも
ある。
局長の説明を終わって、天皇のご下問(質問)に移るわけだが、その順番は局長の説明どおりで、一度として狂ったことはないと
いうのである。現行憲法下で内奏は非公式な説明であるから、役人の場合も大臣等の場合も、天皇はメモをとられない。
<80代のジイさんなんだよ。どうしてそんなことができるのか、ホントに感心してしまう>
不敬にあたりそうなことも平気で口にした当時の局長(私と同じ北海道出身=故人)は、そう言って感心していた。斎藤氏のいう
異常な克己心のもたらすものだろう。
◆海峡の深さ
ここまで書いたのだから、ちょっとしたエピソードを紹介しておきたい。83年5月、中曽根康弘首相が訪米し、レーガン大統領
との間に「ロン・ヤス関係」を結ぶ。このとき米紙「ワシントンポスト」とのインタビューで
<日本列島を浮沈空母にする。緊急事態のときは4海峡(対馬海峡を2つに数えなければ3海峡)を封鎖する>などと景気のいい
発言をした。
直後の内奏では、もちろんこの件から始めた。説明の内容には盛り込まないが、質問があると思われる点はあらかじめ用意してお
く。「4海峡」の幅は調べていた。
しかし、昭和天皇の質問は「4海峡の深さ」だったのである。
<さすが陸海軍の大元帥だっただけある>と2人で感心し合ったものだ。
封鎖するのだから、潜水艦の航行を許してはならない。幅より深さが大切であることは言うまでもない。
局長は<深さを調べようとしたのですが、あいにく国土地理院の担当者が休暇を取っておりまして、次回までに必ず調べてまいり
ます>と言って切り抜けた。しかし、次回の内奏のときは、そんなこと忘れてしまった。
次回のとき、昭和天皇の質問ぶりがどうもおかしい。説明の内容と質問がずれる。説明にはなかった日米関係についても質問があ
った。
そこで局長は気付いた。
<前回、調べを怠りました4海峡の深さについては国土地理院の担当者の休みが続いておりまして、次回までには必ず調べてまい
ります>と釈明したというのである。
戦後はともかく、戦前・戦中ならば
<オマエ忘れただろう>などと言ったら、その役人はクビが飛ぶ。その感覚を昭和天皇は戦後も持ち続けたというのである。
閑話休題。皇室のメンバーの「病跡」に話をもどそう。美智子妃も皇太子妃時代に体調を崩し、精神科医、神谷美恵子さん(故人
)との対話でようやく立ち直ったことがあった。皇后になってからも言葉が出ないことがあった……。座談会で紹介されている事柄
である。してみると天皇家のメンバーは、極めて大きなストレスと同居しており、精神を病んでいるのは不思議ではないということ
になる。
◆失われている家族のフランクさ
そこまで考えてくると、「孫の愛子を連れて来ることが少ないじゃないか」と皇太子に直接言わず、宮内庁長官(羽毛田信吾)に
言わせるという今上天皇の行動もちょっと異常ではないか? 天皇も皇太子も制度の下での存在だ。だから何ごとも制度によって解
決されなければならない。親・子・孫の「率直な語らい」など宮中にない……。極論すれば宮内庁長官に言わせたということの意味
はこうなってしまう。少なくとも、私にはついて行けない。
問題は雅子妃の精神の病(やまい)であることがはっきりしている。なのに、ほか5人の出席者は斎藤氏の示唆に富む発言を発展
させようとしていない。だから実りもない座談会になってしまっている。
◆祭祀は簡略化がベスト
解決につながりそうな発言として、斎藤氏は、
<宮中祭祀の問題も大きいと思います。(中略)プライドがあって、職業的にも自立した女性は、そういう儀式に非合理なものを
感じて、拒否反応を示す傾向が高いといえるでしょう。これはなかなか理解されないことですが、本人にとってはとてもつらいこと
なのです>と言っている。
これに答えて、出席者の一人から
<2年前の会見で、皇太子がそれをちょっと匂わせるような発言をしていましたね。「宮中で行われる祭祀については、私たちは
大切なものと考えていますが、雅子が携わるのは、通常の公務が行われるようになってからということになると思います」。つまり
公務復帰よりも祭祀の方が高いハードルである、と。>という発言もあった。
これに対して、
<祭祀がストレスになるとしたら、これはますます難しい問題ですよ。皇室は「祈り」とともにあるのですから。>
<雅子妃の病気を離れて言うならば、祭祀を単に非合理なものとしか捉えられないというのは、日本の歴史とは何か、天皇家は何
故続いているのか、といった自問自答をしていないと同じことだと思うのです。>などの発言があり、祭祀こそ天皇家のつとめとい
う主張が通ってしまう。
村上重良著「天皇の祭祀」(岩波新書、1977年初版)という本がある。それを読むと、
<天皇家の祭祀は「万世一系」で、太古から伝えられたものである>などというのはまったく嘘っぱちであることがわかる。ほと
んどの宮中祭祀は明治のときにつくられた。日本の伝統よりもプロシャ王室の「荘厳な儀式」を模倣してつくったとみて間違いない
。
皇后・皇太子妃が旧華族から選考されるということは今後もあり得ないだろう。新憲法によって即位した天皇第1号の今上天皇は
、「良家の子女」で、良妻賢母になるべき教育を受けた美智子妃を選んだ。皇太子は東大とハーバードを出て外交官になったキャリ
アウーマンを選んだ。「時代の変遷」は誰もが認めざるを得ないのだ。
雅子妃が祭祀をこなせないなら、宮中祭祀など思い切って簡略化すべきだ。「明治の伝統」など捨てた方がすっきりするのである
。
◆注目すべき「皇統の移動」発言
注目すべきは出席者の一人(肩書き「皇室ジャーナリスト」)が、
<宮内庁の一部には、このままでは今の天皇陛下から皇太子ご夫妻に無事受け継がれるのだろうか、という危惧があるように思い
ます。場合によっては、秋篠宮への皇統の移動も視野に入れる必要があるのではないか、と。今回の羽毛田長官発言は、その警告と
いう面もあるのではないでしょうか>と発言していることである。
天皇や宮内庁長官が「皇統の移動」など毛頭考えていないなら、これは問題発言である。このジャーナリストは宮内庁で取材でき
なくなるだろう。そういう恐れはないと自信をもっているから、この発言をあえてしたというのが、私の理解だ。
ここで皇太子の身になって考えてみる。雅子妃の精神の病という難題を抱えている。病気を悪化させず、快方に向かわせるだけで
もたいへんな努力が必要だ。それなのに、メディアからも、そして宮中からも「冷たい批判」を浴びせられる。
雅子妃の病気を緩解させるためにも、自分がいま陥っている難局を解消するためにも、皇室を離れることがいちばん良い……。こ
う考えないだろうか。どうやら、その方向を向かせようという意図が宮内庁内部にあるのではないか?
いずれにせよ、天皇家のことについて過剰な騒ぎであることは間違いない。英国の夕刊紙並みに「孫娘が来てくれないで寂しがっ
ている天皇」といった軽い扱いの記事でいいのではないか。
◆「重さ」を加えたばかりの歴史
森川誠吾著「明治人ものがたり」(1998年、岩波新書)という本がある。
その冒頭でSF作家、星新一の作品「夜明けの後」が紹介されている。島崎藤村の「夜明け前」は、明治に向かう時代を書いた。
じっさいに明治になってからはどうだったか。明治のさまざまな出来事を書き連ねているという。その中に
<明治7(1974)年。天皇、23歳。新しい侍女と深い仲となり、皇后ご立腹。岩倉具視、その和解のために苦心。何とかお
さまり、酒宴となる。その帰途、岩倉は食違坂で暴徒に襲われ、危うく命を失うところだった。>という記述があるというのである
。
星は出典を書いていないが、他の記述から見て、当時の新聞報道から引っ張り出したものであろう。
森川は以下のように書いている。
<さて、明治7年のこの一項が、私に与えた衝撃とは何か。(中略)よくも皇室の秘話が、白昼堂々公にされたものよ、という驚
きである。なんという物言いの自由な時代が、それも明治の初年にあったことか。本当なのか、嘘ではあるまいな、と念をつきたく
なるほどの自由さに、思わず息をのんだほどの衝撃だった。
それというのも、明治の進むにつれ、大正の始まるにつれ、そして昭和と改まるにつれ、天皇は次第に神にたてまつられ、秘話な
どとんでもない、日常のことも下手に口に出せない重い世の中になっていったからである。>
森川のいう「重い世の中」は、第2次大戦敗戦で終わったのだろうか? 私はまだ続いていると思う。その「重さ」が雅子妃を押
しつぶし、皇太子も押しつぶそうとしているように見える。


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