出たっきり邦人【欧州編】  RSSを登録する

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2009/09/15

【出たっきり邦人 欧州編】885 フランス

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            ◇◆乙編◇◆
           〓フランス・パリ郊外発〓
            移民への道
           
~夏の思い出~

みなさま、こんにちは。

例年になく、残暑と呼んでもいいような日差しの強い日が続いた北フランスでしたが
ようやく本格的な秋が来たようです。

今年の夏は、お天気の日が多く、適度に暑く、本当に気持のいい夏でした。
毎年、7月末から8月半ばまではボスが休暇を取るので、
わたしはパリに残って仕事する羽目になります。
日本同様、その時期は夏休み最盛期ですから、
どこに旅行しても混雑していますし、旅行費用も最高値。
閑散としたパリにいるのも悪くないとも言えるのですが、やっぱりちょっとさびしい。
特に、猛暑の年など、今頃みんな海で泳いでいるのに、
何で私はこんなところで暑い思いしながら働いているのだろう、と、腹が立ってきます。
何より、都心から離れた所に住んでいるので、通勤電車の本数が減るのが痛い。
夏場は、1時間に4本ある電車が2本に減ってしまいますから
しっかり時間を合わせて起きなければいけません。というわけで余計に腹が立つ。

と言うのが去年までのパターンだったのですが
今年は違いました。

引っ越しして以来、すでに、若干、通勤時間は短くなったのですが
使っている電車が、観光地を通るからでしょうか、夏になっても電車の本数はほぼ同じ。
でも夏なので、乗客は確実に減っており
しかも、冷房車がある!!(パリ近辺のローカル線では珍しいことです)
がらがらの電車で冷房が効いていて、寒かったこともありましたが。

さて、その快適な通勤電車、私が乗るのはパリの南西40km程度のところで、
北に向かって2駅目がベルサイユ、そのあと高級住宅地区を通過し
やがて、大企業の集中するイッシーという町に入ります。
車窓ごしに、大手携帯会社や新聞社、テレビ局の看板が見えます。
ガラス張りの巨大ビルの玄関先にたむろして喫煙している社員の姿。
(屋内では喫煙できませんから)
そういえば、32階建てのビルの25階で働いている友人が
「煙草を吸うために1階まで下りて、2分で吸ってまた上がって。
あまりの面倒さに、ついに禁煙したよ」と言っていたのを思い出し
こんな大きなところで働いていたらたばこを吸うのも大変だな、
でも、こんなビルに毎日出勤するのって、やっぱりかっこいいな・・・
なんて、思ったり。

イッシー駅で乗客の大半は降りてしまい
ますますガラガラになった電車はパリ市内に入ります。
パリに入って2駅目が私の降りる駅。
駅前でvelib(貸自転車)を借り、これまたガラガラの道路を
すいすいと5分走れば事務所に到着。
普段は、途中のパン屋でクロワッサンやサンドイッチを買うのですが
8月は、近辺のパン屋さんはどこも休暇を取っており
スーパーの大量生産のパンを買う気にもならないので、お弁当持参です。

わが社は、本来企業相手の仕事をしているので
コピーなどの個人客は、忙しい時にはお断りしているのです。
個人のお客様にとって、我が事務所は開いていたり開いていなかったり、ですから
学生さんなどは、近くにある個人相手のコピーセンターに行くようです。
でも、大切な書類はわが社に持ってくる。
なぜなら、わが社のコピー機の方がきれいに印刷できるし、
サイズ変更、書類のレイアウトの相談にも乗るから。

あと、よそを利用せずにわが社に来るのは
近所在住のお年寄り連。
彼らは、セルフコピー機が使いこなせないから。
わが社に来れば、自分の思うように注文も付けられるし、
(わが社はセルフコピーではありません)
おしゃべりにも付き合ってくれるから。(おもにボスが)
あー疲れた、ちょっと座らせてもらってもいいかしら、とおっしゃり
10分ほど休憩していくかたもいらっしゃいます。

ある日、コピーを依頼したおばあさんが、わたしこれから腰のマッサージしに行くのよ、
週に一度彼女にマッサージしてもらわなければ動けやしない、とおっしゃるので
実は私の夫も腰が悪くて、いいマッサージ師を探しているんですよ、と言うと
「ちょっと待ってらっしゃい、家に戻って彼女の電話番号を探してきてあげる。」
ついでの時で良いですよ、と言ったのですが、お年寄りは聞く耳持たず、
腰は早い方がいいのよ、すぐに来ますからね、と言って立ち去ると、本当に10分後、
電話番号を書いた紙を持ってきてくれたのです。

お年寄りのおしゃべりには嫌がらず付き合うものです。


事務所の左隣にはレバノン料理の軽食屋があります。
レバノン人のご夫婦が経営しています。
小学生の子供が2人いて、学校休暇中などは、ボスの息子と共に、
わが社で遊んだりします。そうなると託児所状態。

老人の憩いの場になってみたり、託児所になってみたり、忙しい会社です。


夏のある日、レバノンの坊やが、親に頼まれた書類を持って来ました。
コピーしてあげたら、いくらですか?と聞くので
たった2枚だもの、いらないわよ。と答えました。
こっちも、そのお店でサンドイッチを頼んだらいつも特大にしてもらっているのだから、
たった20セントのコピー料金なんてもらえないじゃないですか。
坊やは、だまって書類を持ち去った5分後、
こぼしそうになりながらコーヒーを持ってきました。
やだ、これじゃ、コピー代より高いじゃないの!と言ったのですが
パパが持って行け、と言ったから。と、坊やは言います。
一生懸命往復した坊やの顔を立て、ありがたくいただくことにしました。

同じ日、レバノン料理とは反対側の隣の、フランス料理のビストロのおかみさんが
飛び込んできて
私の印刷機ではうまく刷れないの!メニューを15枚、1時間以内に作れるかしら?
と、おっしゃるので、
書類ができあがっているのなら、印刷するだけですから簡単ですよ、
10分以内でできあがりますから、持っていきますよ。と答え
実際、レイアウトを少し調整する程度の仕事だったのであっさり出来上がり、
掃除中のビストロに持参しました。
助かったー、完璧!ありがとう!と、過剰に喜んでくださるので
じゃあ、今度デザートをサービスしてくださいね、なんて言ってみたり。


その次の日だったか、3軒隣りの、マダガスカル人の金物屋のお嬢さんが
古ぼけたブックエンドを持ってきて
これと同じものを作れないかしら?と、おっしゃる。
似たような感じにはできるけれど、金色はインクがないから不可能。
ビニールコーティングも不可能だけど、それでよければ作るわよ、と答え
これは、両面カラー印刷で、細かい作業も少々あったので、
合計100枚印刷して、普通に計算すると60ユーロのところを、
ご近所料金で45ユーロにおまけしました。
うちの息子と同じような年齢らしきお嬢さんに、
45ユーロは高いよな、とも思ったのですが、
私の一存では、それ以上下げるわけにもいかず。
できあがったブックエンドを取りに来たお嬢さん、
これ、母からです、親切にしてくださったから。と言って
ビニル袋を差し出しました。
まあ、どうもありがとう。と、遠慮なく受け取り
中身を見ると、テーブルクロスのような布と、お菓子が入っていました。
布は、よく見ると、
どうやら、イスラムの人が使う、頭から口まですっぽり隠すショールのようで、
これを私にかぶれってか?と、笑いが出てきましたが
プレゼントしてくださった気持ちがうれしかったです。


普段は、わたしは事務所の奥の方で働いていることもあり、
個人客はボスがお相手することが多く
また、わたしがお相手すると、言葉が通じにくかったり、
ややこしい注文には時間がかかってしまったりするので
私自身、故意に、個人客を避けているところもあります。

でもこうして、否応なく個人客と接する機会が増えると
ここに書いたような楽しい思いばかりでは決してないものの、

「俺は、自分の会社をハイクラスな雰囲気にしたいとはちっとも思わない、
一介の、町のアルチザン(職人)でいたい」

と、言う、ボスの気持ちが、少しわかるような気がしました。


でもさー、ガラス張りピカピカの巨大ビルにハイヒール履いて
毎朝出勤するのも、やっぱりかっこいいと思うぞ?

MAO@ふらんす

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◇◆次回は9月18日(金)スペイン・バルセロナ郊外から配信予定です◇◆
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