出たっきり邦人【欧州編】  RSSを登録する

スペイン、ギリシャ、イタリア、スイス、フランス、オランダ、ドイツ、ポーランド、イギリス、アイルランド、アイスランドからのリレーエッセイ。姉妹誌のアジア・北米オセアニア・中南米アフリカ3編と出戻り邦人もよろしく!

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2009/06/12

【出たっきり邦人 欧州編】861 ギリシャ 

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              ◇◆甲編◇◆

         
            〓ギリシャ・スパルタ発〓
            
             「田舎生活αβ(アルファ ヴィータ)」 

                         
                         第五十七回

                        そして船はゆく


あれからもう6年になるでしょうか
我が父が同行講師として引率するスケッツツアーを企画した時のことです。
頃悪しくもSARSが流行り、随分と気をもんだ旅行でした。
幸い、ツアーは好評で、再度、とのリクエストを戴き、第2弾を企画したの
が昨年。今年5月末出発という予定を立てました。
時は正しく世界的経済恐慌に陥り、旅行などしててええんかい?という雰囲
気が漂っておりました。
その上折悪く、豚インフルエンザの流行で、出航地の関西が大変なことにな
っており、ぎりぎりまで決行なるか?という状態のツアーとなりました。

旅程を考えるとき、前回の引けを取らない旅にしたいと考えました。そして、
年齢層が比較的高く、スケッチツアーという目的に適う景観地、そして慌た
だしい旅ではなく、ゆったりとした旅、ということで、3連泊を2か所、と
いう大胆な行程を考えました。

ギリシャといえば島、などといわれるほど魅力的な島々に恵まれたここギリ
シャで、前回行かなかった島巡りをせずして、旅は成り立たない、と思いま
した。ただ、その島選びに考えを巡らしました。いかにもギリシャ的な島を
選ぶか、余り知られていない島巡りをするか。

ありきたりの旅にはしたくありませんでした。普通のツアーでは出来ない魅
力的な旅を、と思い、アテネからフェリーで1時間のサロニコス諸島にあり
ますエギナ島を観光バスで巡り、エギナ島からチャーター船でポロス島を経
由し、目的の島イドラ島に辿り着きます。この島内は車での通行が出来ない
地形となっており、歩くかロバか馬、あるいはラバを借りるかなど以外に交
通手段がありません。しかし、その島の景観から芸術家が多く住み「芸術家
の島」とも呼ばれています。緩やかな階段の多い美しい町が広がっておりま
す。

ワンデークルーズの寄港地として、日本人のお馴染みの島ではありますが、
滞在するツアーはまずありません。
そこに3連泊してたっぷりと島の魅力を堪能してから、イドラ島から船で約
30分の処にあります、ペロポネソス半島側のエルミオーニに辿り着きます
と、観光バスが待機しています。そこから、古代劇場で世界的に有名なエピ
ダヴロス観光。ナフプリオン経由でわが街スパルタに3連泊。

スパルタにありますギリシャでも珍しい「オリーブの博物館」を見学後、独
特の建造群が広がるマーニ地方巡り及びスケッチをしてから、我が家のお気
に入りのお店、リメーニの「タキス」でタコの炭火焼をつまみながら、目の
前に広がる大海原に沈みゆく夕日を眺めます。
翌日は、知り合いのご好意により、彼の働く近代的なオリーブの工場見学。
その後、観光バスでモネムヴァシアへ。遺跡巡り、スケッチに海水浴。一日
たっぷり楽しんで戴けることでしょう。
この日の夕食は、連れ合いの田舎にほど近い隣村にありますベリエスで。
1830年代にオリーブの圧搾工場として作られた石造りの建物を、ワイナ
リーのオーナーがレストラン兼旅籠に改築した素敵なお店です。夕食の前に
は、用意しておいた民族衣装を、娘ともう一人モデルさんに着せて、皆さん
にクロッキーをして戴きます。

クロッキーの後には、オーナーさんにレクチャー(工具類の説明やワイナリ
ーのきき酒)をして戴き、美味しいお食事、となります。ここのお勧めは、
羊肉の炭焼きです。こちらの赤ワインを傾けながら、手づかみで食べて戴き
ます。


さて、グループのみなさんが昼過ぎアテネの空港へ着きました。父を含めて
23人。皆さん空の長旅をものともせず、夕方、アテネ考古学博物館を回り、
夜には「ドーラ・ストラトゥ舞踏団」の踊りに酔いしれました。

翌日は早朝出発となり、エギナ島行きのフェリー乗り場、ピレウス港へと
向かいます。
エギナ島は、1827年から29年まで、新ギリシャ国家の首都であったと
ころです。紀元前から海洋国家で、たいへん潤っていた島です。
アフェア神殿、アポロン神殿などの遺跡がありますことから、公認ガイドの
アレクサンドラさんと共にフェリーに乗り込みます。

フェリーの名は、ポセイドン号。何とも頼もしい名ですね。
日曜日、ということもあり、近場で海水浴を楽しもう、というギリシャ人で
満杯でした。小1時間の旅ですが、空は晴れ渡り、カモメが餌を求めてフェ
リーに横並びになって飛んでいます。カモメが上手く食べ物を摘まみますと
歓声が起こります。何とも陽気な船旅です。そのうちに、アナウンスが聞こ
え、エギナ島に接岸してまいりました。
近くにおられる皆さんに「さて、エギナ島に着きました。下船の準備に入っ
てください」と申し上げました。

何分込んでおりますので、十分把握せずに一足早く下船をして、アレクサン
ドラさんと共に今後の打ち合わせをしておりました。観光バスもようやく下
船しました。皆さんをバスの方へ誘導します。

観光バスが下りたとたん、外で待っていたトラックや車が慌ただしく乗り込
んでいきました。やけに慌ただしい乗り方だなあ、と思ったのも束の間、フ
ェリーは一笛鳴らして去って行きました。

「あれっ?あ、そうか!このフェリーは目と鼻の先にあるアギィストラ島に
寄るのか、ふむふむ」などと考えていましたら、ふと心配になって来ました。
まさか降りそこなった人が居るのではないか、と。

あの瞬間のことを思い出しますと、今でも顔が蒼くなります。23名中6名
の方が、アギィストラ島へ向けて去ってしまったのです。

アレクサンドラさんは港湾局に走り、わたしはおたおたしておりました。
フェリーがアギィストラ島へ着くと、またエギナ島に引き返してくることを
アレクサンドラさんが伝えてくれると、たまたま6名の方の中で、携帯電話
をお持ちの方がおり、連絡を取ります。間違ってアギィストラ島で降りられ
てはこれからのどうすれば良いのでしょう。

皆さん、パニックになられておりました。言葉が通じないし行き先が分から
ない。ですが、船のキャプテンが6名を纏めて下さり「心配することはない」
と、いうようなことを示してくれたそうです。

無事お戻りになられた6名の方と共に、父がどうしても見たい、という普段
は見ることの出来ない教会を見に行くことにしました。
ギリシャ語で「美しい教会」と呼ばれるこの小さな教会は、13世紀に建て
られたものだそうです。歩くこと2km。観光バスは入れません。アレクサ
ンドラさんも初めて見る、というこの美しい教会の壁画を見て、心の中で神
に感謝のことばを捧げました。「ありがとう」と。

後で知ったことですが、アギィストラ島から引き返して来たフェリーが、普
通はアギィストラ島からピレウス港に戻るのだそうです。非常に幸運なハプ
ニンングであったといえるでしょう。

こうして2回目のギリシャ旅行も、計画者であるわたしのミスが少なからず
あったのですが、最後に皆さんが「生きていてよかった。本当にありがとう」
と云って下さった一言が、おおきな励みになったことを記しておきます。

キドーニ

参考URL:
モネムヴァシア・ベリエス村のレストラン
http://www.liotrivi.info/
(とても綺麗な音楽入りです)




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『田舎生活αβ(アルファ ヴィータ)』 hazidakis@hotmail.com
 

◇◆次回は6月16日(火)イギリス・ケント州から配信予定です◇◆
 
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