出たっきり邦人【欧州編】  RSSを登録する

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2009/05/12

【出たっきり邦人 欧州編】854 フランス

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            〓フランス・パリ郊外発〓

               移民への道
              〜ニュアンス〜
               

みなさま、こんにちは。

暖かくなってきましたね。
こちらは、案外雨の多い5月です。
お日様が長いこの季節、もっとお天気になってくれればいいのに、と思いますが。

でも、お天気になればなったで、
特に週末は、近所がこぞって庭でバーベキューをするんですよ、
その騒音もともかく、匂いがすごい。
我が家の中まで、ソーセージや肉の焼ける匂いが入ってきます。

パリ市内では、屋内でもバルコニーやテラスでも、
煙を出す料理をすることは禁止されています。
台所で料理をしていて、部屋の外まで煙のにおいがするほど焦がしてしまった、
その程度なら、隣のおばさんに嫌味を言われる程度で済みますが
毎日、魚を網焼きしたら・・・ちょっとまずいことになるかもしれません。
こういうことは要するにご近所さん次第なのですが
警察に通報されても、文句は言えません。一応、違法ですから。

その点、我が家はパリ市内ではありません。
町の中心部でさえない。徒歩30秒で森。
煙もくもく、出し放題です。

先週末、とてもいいお天気で、
案の定、我が家の真下の住民が派手にバーベキューパーティーを開いたようで
その匂いに羨み妬んだわが家族、今週は我が家の番だ!と
張り切っていたのですが、今日9日は雨が降ったりやんだり、
はっきりしないお天気・・・
来週こそ。

ところで(ここからが本題)

ある友人ご家族の出来事。
日本人夫婦に、21歳と18歳の娘2人の4人家族です。
両親は日本生まれの日本人、娘二人はフランス生まれ。
もう少し詳しく書きますと、
フランスの場合、フランス生まれの外国人は、生まれてから16歳までは
父方(特別な事情がない場合)の国籍を有しますが、16歳−18歳の間に、
フランス国籍または子供のときに持っていた国籍のどちらかを
選択する権利があります。
そして、このご家庭のお嬢さんは現地校育ちで、
今後もフランス社会にどっぷりつかって生活する予定ですので、
2人ともフランス国籍を選択しました。

つまり、ご両親は日本人で、娘2人はフランス人だということです。
パンよりご飯がすき、マドレーヌより塩昆布が好きというお嬢様方ですが、
フランス人。

娘がフランス籍を取ったからって、親子関係に影響があるわけじゃなし。

私もその考えに賛成です。
わが息子も、本人が望むならフランス国籍をとることに何の異論もありません。

さて、そのご家庭に、ある日本人から電話がかかってきました。
「フランス人にちょっと改まった手紙を書きたいのだがうまくかけない。
ついては、お宅の、上のお嬢さんに和仏の翻訳をお願いできないだろうか。」
お母さんは、こう答えました。
「はいはい、うちの娘の頭で間に合うのだったらお好きなだけ使って頂戴」

このフレーズを読んで、何か感じましたか?
日本人的には別に問題ないでしょう?
ところが、
たまたま、そばで聞いていた下のお嬢さんが猛然と怒りだしたのです。
「どうしてママは、お姉ちゃんを馬鹿にするような言い方をするの?」

お母さんはびっくりしました。
「馬鹿になんてしてないでしょう?日本語ではこういう言い方をすることを、
あなただって知っているでしょう?」

お嬢さんはもちろん、日本人の謙譲語も使いこなせますし
謙遜の表現も知っています。
知識としては知っていますが、体には染みついていない。

彼女の言い分は、
謙遜だか何だか知らないが、なぜ自分の娘をけなし「うちの娘の頭で間に合うのなら」
こき使ってくれ「好きなだけ使って」と、頼む「頂戴」ような表現をするのだ、
というわけです。

彼女は、母親の日本語をそのまま自動的にフランス語に置き換えて
解釈してしまっているんですね。
フランス人なら、このシーンでこのような表現はしないでしょう。
たとえば、
「うちの娘があなたのお役にたてるならうれしいわ」
というような言い方をするのではないでしょうか。

フランスにも謙遜の精神はもちろんありますが
自分(や、その身内)を卑下することにより相手を立てる、という
表現はしませんね。
愚妻、なんて表現は存在しません。(するわけない、か?)
高価なお歳暮を持参して「つまらないものですが」とは言わないでしょう。

日本人が自分の奥さまのことを他人に愚妻と表現して
いちいち、「何と失礼な旦那だろう」と腹を立てる奥さまはいませんし
「ほう、あの人の奥さんは愚妻なのか。」と信じ込む人もいません。

でも、愚妻という言葉を初めて聞いた外人さんが
愚妻イコール愚かな妻、と意味を知ったとき
あの奥さんは、ご主人に愚かな妻だといわれるような女性なのだろうか、と、
または、あのご主人は、自分の奥さんを愚かだと喧伝するのか?などと
考え込むのでしょうか。

確かに、日本の謙遜表現は、過剰と取れなくもないですけれど。

言葉が持つ意味は、一つとは限りません。
日本語でも、フランス語でも、さまざまなニュアンスをもつ言葉や表現があります。
日本人同士でも、ニュアンスの読み違いで誤解を生む時がありますよね。

まして、自分の母国語ではない言語の、微妙な表現となると。

さて、お母さんの日本語表現が理解できないお嬢さんの話でしたが
今度は、お母さんが、お嬢さんのフランス語(的日本語)表現が理解できない話。

たとえば、上のお嬢さんはネイティブ日本語に近い言葉を使えますので
「今日お友達が来るので、もしよかったら、お友達の分の夕食も作ってくれる?」と
日本語的に普通の表現をすることができます。
が、下のお嬢さんはフランス力の方が強い子ですから
「今日お友達が来るので、お友達の分の夕食も作る?ママが作りたかったら。」と、
表現してしまいます。

この2文、言わんとする内容は同じなのです。
ただ、下のお嬢さんは、フランス語をそのまま日本語に直訳しています。

フランス語で、si tu(vous) veux(voulez)という表現がありまして
直訳すれば「もし、君(あなた)が望むなら。」です。
たとえば、「もし明日仕事を休みたかったら休んでもいいよ」、など。
誘ったり、お願いするニュアンスを持つ時があります。

「もしよかったら、明日うちに来ない?」
「もしよかったら、この仕事を頼まれてくれない?」などというときの、
「もしよかったら」に、非常に近いです。

これでお分かりいただけたでしょうか、
下のお嬢さんは、「もしよかったら」という表現を使いそこない
「ママが作りたかったら」と言ってしまいました。

ママの方は、一瞬、娘の言い間違いに気づかず
「作りたかったら、って、どういうことよ?」と
食ってかかってしまいました。

娘が、婉曲にお願いしていたことには、その後気付いたらしいですが。

わたしも、このsi tu veuxには時々惑わされます。
いえ、別にやりたいってわけでもないけど・・・などと一瞬逡巡して
いや違うよ、この人、私に、やってくれ、とお願いしてるんだよ、と気づき
あー、OK、OK!と、間の抜けた返事をしてしまうことがあります。

国籍通り、娘はフランス人で私は日本人ってことよね、
と、そのお母さんは私に言うのですが
しかたないですよ。外国ネイティブの子供を持つとはこういうことです。
そんなことで、親子関係にひびが入るわけじゃなし。

今回は、友人母娘をさんざんネタにさせていただきました。
このお母さんは本当の意味で娘を馬鹿にすることなど決してない人ですが
そういえばわたしは、ところかまわず、当人の前でも、
息子をサルだのアホ息子だのと言いふらしていますので、
もしかして、本人は傷ついているのだろうか、とふと心配になりまして
オットに話してみたところ
「彼の場合は、生まれてこのかた親にからかい続けられてきたから
なーんにも感じていないでしょう」、とのこと。

・・・・
まあ、よしとするか?
(からかい言葉にいちいち傷つかれては、大阪人としてはやってられないし)

MAO@フランス
ご意見ご感想、お待ちしております。<keiko0904@hotmail.com>


◇◆次回は5月19日(火)ドイツから配信予定です◇◆
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