蔵元日記(獺祭の賞味期限)
◇■■■■ 蔵 元 日 記 ■■■■
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■ 旭酒造株式会社 http://asahishuzo.ne.jp/
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■ 2008年7月26日 vol.177
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目 次
◆ 蔵元日記(獺祭の賞味期限)
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蔵元日記【獺祭の賞味期限】
お客様から賞味期限についてお問い合わせがあり、それについての私の
お答えです。(一部言葉足らずのところを分かりやすく加筆修正しまし
た)
(ここから本文です)
○○様、お問い合わせありがとうございます。まず、これはあくまで旭
酒造の見解であることをご理解ください。
良い日本酒に一般的に言われるような賞味期限はありません。まず、日
本酒はワインや紹興酒と同様、醸造酒に属します。醸造酒は基本的には
どんなに時間がたっても体に害を与える成分にはなりません。時間とと
もに熟成が進行し(これは見方を変えると劣化になりますが)古酒とな
って行きます。ワインや紹興酒に賞味期限がないことはご理解いただけ
ると思います。
醸造酒の味と香りは刻々と変化します。どの時点の酒質が優れているか
と言うことは個人の味覚と、もしかすると価値観の領域に入ります。
従いまして、旭酒造としては出荷してすぐ(できますれば一ヶ月以内)
が一番私どもの意図した酒質であり美味しいと思いますが、お客様や飲
食店のなかにはもっと熟成させたほうが良いんだと言う方もおられ、そ
れはそれで皆様の個別の判断にお任せしているのが現状です。
取扱店にはお取り扱いの開始時期に「出荷したてのほうが獺祭らしい酒
質」と説明しておりますが、前述のようなご意見とともに実際には長期
間在庫されているところもあります。また、飲食店ですともっとお店の
意思が反映した貯蔵期間となります。折に触れて獺祭らしい酒質という
事の再確認としてのご説明はしますが、最終的にはお店の判断にお任せ
しております。
また、厳密に言うと、「獺祭らしい」ということと、「品質が優れてい
る」ということは必ずしも完璧に一致しているとは言い切れません。少
なくとも強制することはできないと考えています。つまり、個人の味覚
と価値観の領域であるという事はほかの異なる意見を否定することはで
きないと言うことです。
そのような前提で「獺祭」が5度以下で光の当たらない冷暗所に保存さ
れた場合、3ヶ月以内でしたらおおむね私どもの意図した酒質であると
考えられます。また、一年以内ですと、通常の一般的な純米大吟醸の熟
度のレベルにあると思われます。それ以上になりますと、古酒化してき
ますので爽やかさという面では期待できないと思いますが、熟成するこ
とによる面白さは出てくると思います。
以上のようなことで、スパッと割り切って説明できないことをお許しく
ださい。基本的に酒はその国や個人の食文化と密接に結びついていると
ころがあり、どれが正しいと言えないものなのでこのようなお答えにな
ります。よろしくお願いします。
最後に、あくまでこれは一定レベル以上のものに限った意見ということ
をご理解ください。ワインもテーブルワインクラスで通常、熟成は求め
ません。スーパーなどで一山いくらで大量陳列されている紙パック入り
の日本酒の場合も一般的な意味では熟成は無意味と思います。ですから
このあたりの商品は新しければ新しいほどいいと思います。
(ここからは本文ではありません。熟成酒に対する私見です)
実はヴィンテージを貴ぶワイン的な感覚や最後の章の紙パック酒等の例
を拡大解釈して「熟成しなければ良い酒で無い」ような話をする方もい
ます。私はこの意見にくみしません。しかし、新しいものが絶対良いと
も思っていません。あくまで、現状の「獺祭」を見たとき、弊社が出荷
しているタイミングの酒の状態の方が「より私の理想とするお酒に近い
」と考えているからにすぎません。
実際には蔵内で、20年に渡り純米大吟醸の貯蔵テストを続けています。
しかし、貯蔵期間を正当化するような品質が現状ではまだ得られていま
せん。たとえば20年貯蔵し続けている純米吟醸古酒がありますが、こ
れは三年古酒とブレンドすることにより、やっと「獺祭が出す古酒」と
言える品質になっています。(つまり「年月」より「技術」という結果
になっています)
一部からは、「もったいない」「このままブレンドせず、20年古酒を
うたって、売り出せばもっと高く売れるのに」という意見もありますが、
残念ながらどうもしっくりせず、ブレンドしてただの古酒として出して
います。
結局、旭酒造にとって大事なのは、「熟成」でも「新しさ」でもなく、
美味しさなのです。


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