2003/12/25
[Anglo-bites vol.47]
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Anglo−bites (イギリスつまみ食い)
創刊第33号 Vol.47
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□目次
● キリスト抜きのクリスマス
● ペドロより愛をこめて(あとがき)
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● キリスト抜きのクリスマス
今回はイギリスからの発信です。3年ぶりにイギリスでクリスマスを迎
えます。最近は9月にクリスマス用品が店に並び始め、11月に入ったくら
いからクリスマス一色になり、12月初め頃にはクリスマス気分も中だるみ
になるようですが、まったく盛り上がりのないスペインからいきなりイギ
リスにやってくると、クリスマスを待つ興奮と気ぜわしさがとても快く感
じられます。やっぱり、クリスマスは、冬が長くて暗くて寒い北ヨーロッ
パのお祭りと言えるでしょう。冬が厳しければ厳しいほど、その最中の楽
しみを待つ気持ちは盛り上がるというものです。
この"Anglo-bites"(イギリスつまみ食い)は、もともとイギリスの伝
統と習慣をご紹介するというのがメインのテーマでした。これはわたし自
身が特に外国の伝統と習慣に興味があったためです。そこから話題を広げ
て、イギリスの最近のトレンドなどをご紹介するようになりましたが、伝
統と習慣に対するわたしの関心は変わっていません。クリスマスはその凝
縮と言えるでしょう。(クリスマスの伝統・習慣に関して興味のある方は、
ぜひホームページのバックナンバー一覧から第5回・6回・7回のクリス
マス特集をご覧下さい。URLはこのマガジンの一番下にあります。5年
前に書いたものですが、伝統ですのでもちろん内容は変わっていません。)
ところが、今年はそのクリスマスに変化が起きています。議員など公的
立場にある人たちや警察などの公的機関からのクリスマスカードから「ク
リスマス」という言葉が消えつつあります。その代わりに"Season's
Greeting"という表現が使われるようになりました。これなら、受け取っ
た人がユダヤ教徒でもイスラム教徒でもヒンズー教徒でもさしさわりがな
いというわけです。また、雇用平等法により聖母子像やキリスト降誕風景
などキリスト教色の強いクリスマスカードを職場で飾ることが禁じられま
した。ほかの宗教を信じる同僚たちの目に触れた場合、気分を害するから
ということです。以前からポリティカリーコレクトネスの行き過ぎが目
立ってきてはいましたが、クリスマスからキリスト教を除こうという動き
はばかばかしさの極地に達したようです。
もっとも、キリスト教に関係のないクリスマスカードのほうが圧倒的に
多いのも事実です。クリスマスカードを送る習慣はヴィクトリア時代に始
りましたが、その当時もキリスト教にはあまり関係ない絵柄が使われてい
たそうです。教会に行かない人が増えてきた現在となると、あまりキリス
ト教色の強いカードは敬遠され、コマツグミやクリスマスツリー、雪景色
やセイヨウヒイラギの花輪などの絵柄が主流になっています。
もともとクリスマスの土台にあったのは土着信仰のお祭りでした。冬の
厳しい北ヨーロッパには、キリスト教が伝わる以前から冬の最中に祭りが
あったようです。イギリスの場合は、冬至を境に日がのびていくのを祝っ
たドルイド教の祭りがもとになっています。キリスト教がイギリスに上陸
したときに、これにキリストの降誕を祝うという意味合いが加わり、クリ
スマスの習慣ができあがったわけです。復活祭同様、地元の土着信仰の祭
りを行事として取り込むことによってキリスト教を急速に広めるという戦
略はみごとに成功したわけですが、あまりにもうまく溶け込みすぎて、ど
の部分が異教の祭りで、どの部分がキリスト教の祭りなのかわからなって
しまったことも確かです。一方、緯度が比較的低いため夏と冬とでそれほ
ど日照時間が違わず、気候も温暖な南ヨーロッパのスペインのような国に
はこのような土着の祭りという土台がなかったのか、あるいはキリスト教
が土着信仰を圧倒するほどすっかり浸透したためか、クリスマスからキリ
スト教を除いてしまうと何も残らなくなってしまいます。
また、クリスマスの商業化もクリスマスをキリスト教から切り離しつつ
ある原因の1つでしょう。商業主義はクリスマスを、プレゼントとカード
をやり取りし、おいしいものを食べ、たくさん酒を飲むという単なるお祭
りに変えつつあります。
このような理由からクリスマスからキリスト教を取り除いても、現代の
クリスマスにはあまり影響がないのも事実です。しかし、キリスト教はや
はりイギリス伝統のクリスマスの重要な柱であり、イギリス文化の一部で
もあります。ほかの宗教を信奉する人たちに気をつかうあまり、イギリス
の伝統の一部が失われるのはたいへん残念なことです。
外国人の立場からしても、比較的新しくやってきた住民の文化を受け入
れるために、土着の文化が希釈されてしまうのは残念なことです。すべて
の国がイギリスのようにあまりに移民に気を使いすぎると、そのうちに世
界中どこの国に行っても、同様に特色のない習慣・文化があるだけという
ことになりかねません。そうなったら、地球はとてもつまらない場所にな
るでしょう。(でも、たぶん移民文化の流入に厳しいスタンスをとってい
るフランスが最後まで自国の伝統を守ってくれると思いますが。)異文化
に寛容であることは大切ですが、もともとそこにある文化・伝統を守るこ
とはもっと大切だと思います。移民の人たちも、単に経済的な豊かさを求
めて外国に移り住むのではなく、そこにある文化と伝統を尊重してもらい
たいものです。
● ペドロより愛をこめて(あとがき)
クリスマスは多くの人たちにとって一年で一番楽しい時期ではあります
が、もっとも自殺が多くて、もっとも離婚の多い時期でもあるそうです。
一人暮らしのお年寄りや、愛する人を過去12ヶ月の間に亡くし、初めての
クリスマスを迎える人々にとっては、家族の集まるクリスマスはさびしさ
を痛感する時期にあたります。また、出費のかさむこの時期には夫婦に経
済的なプレッシャーがかかります。プレゼントやクリスマスのご馳走など
の準備に追われる主婦にはストレスもたまります。そして、クリスマス当
日は夫婦どちらの両親を招くか、あるいはどちらの家を訪れるかで夫婦間
の衝突が起きたりもします。もっともわが夫に言わせると、最大の原因は
この時期に夫婦がいつもより長い時間顔を付き合わせることだそうです。
休暇旅行の後に離婚が多いのと同じ理由だとか。やっぱりイギリスでも亭
主(家内)元気で留守がよいということでしょうか。
それではまた次号でお会いしましょう。
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"Anglo-bites" (イギリスつまみ食い)
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