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イギリス人とイギリス文化について考察してみましょう。伝統・習慣から最新トレンドまで、イギリスに関するさまざまな話題を取り上げています。4年前から発信地をイギリスからスペインに移しましたが、まだまだ快調続投中。

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2003/11/24

[Anglo-bites vol.46]

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            Anglo−bites (イギリスつまみ食い)

                         		     創刊第32号 Vol.46

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□目次

  ● イギリスのトレーラーハウス事情
  ● ペドロより愛をこめて(あとがき)

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 ● イギリスのトレーラーハウス事情

    イギリスから発行した前回3号のあとがきの中で、イギリスでの拠点と
 して使っていたトレーラーハウスに触れたところ、珍しいのでぜひトレー
 ラーハウスの話を聞かせてくださいというお便りをいただきました。とい
  うわけで、今回はイギリスのトレーラーハウス事情をご紹介したいと思い
  ます。

  ここではトレーラーハウスという日本での呼称を使いますが、イギリス
 では"mobile home(s)"というのが一般的な呼び名です。しばしばキャラバ
 ン(caravan)とも呼ばれますが、ニューエージトラベラー(新時代の流
 浪の民)というポリティカリーコレクトな呼び名で最近は知られる、住所
 を定めないで生活する漂泊の人々の移動式住居という印象が強いため、こ
 の名称を避ける人もいます。保険業界では、自動車で牽引する比較的小型
 のキャラバンと区別するために、"static(動かない)caravan"と呼んだ
 りしているようです。この表現に見られるように、モーバイルとは名ばか
 りで、モーバイルホームを実際に動かす人はいません。工場から運ばれて
 くるときにも、大型トラックの荷台に積んで運び、実際に牽引されること
 はありません。税金の定義上、車輪が申し訳程度についてはいますが、
 「実際に牽引には使わないでください」と製造元の注意書きがついていま
 す。また、一度キャラバン場に設置されると、電気・上下水道(ところに
 よってはガスも)が本管に接続されるため、簡単には動かすことができま
 せん。

  日本でもトレーラーハウスはだんだんになじみが出てきているようです
 が、キャンプ場に設置されたものを数日間借りるという形が多いのではな
 いでしょうか。イギリスではトレーラーハウスを買って別荘として使う人
 が多く見られます。これは、1ヶ所滞在型がイギリス人の典型的な休暇の
 過ごしかたであることと、休暇を毎年同じところで過ごすのを好むイギリ
 ス人の保守的性格を反映しているようです。また、都会に住む人が週末を
 さほど遠くない田舎で過ごすのにもトレーラーハウスはよく使われます。
 気の向いたときにいつでも自分の家を後にして、異なった風景のもう1つ
 の自分の家でくつろぐ、それがイギリス人好みの余暇の過ごしかたのよう
 です。

  トレーラーハウスは通常キャラバン場運営者を通して購入します。まず
 どこにトレーラーハウスを買うかを決めます。キャラバン場の位置(海の
 近く、山の近く、交通の便など)や付属施設(プール、バー・レストラン、
 クラブハウス、コインランドリー、コンビニなど)などを考慮に入れます。
 わたしたちが現在のキャラバン場を選んだ理由は、鉄道の駅に近く(空港
 から電車で行ける)、電話が引けて(このようなところはあまり多くあり
 ません)、静かで、小さな子供のいる家族を対象とした休暇用のキャンプ
 場ではないという点です。

  こうしてキャラバン場を決めたら、次はその敷地内でトレーラーハウス
 を設置する場所を選びます。それから、キャラバン場を通してトレーラー
 ハウスを製造元に注文します。メーカーによっては注文に応じてデザイン
 できるところもあるようですが、大手メーカーの場合には、いくつかのモ
 デルのうちから予算に応じて選ぶという形になり、カーテンの模様やソ
 ファの柄、システムキッチンの素材など、内装は選べないところがほとん
 どです。(たいてい田舎のコテージ風というのがテーマになっているよう
 で、黄・オレンジ系の花柄が多いようです。トレーラーハウスの従来の目
 的とその典型的な利用者の趣味を考えればもっともなのですが、後に述べ
 るようにトレーラーハウスの利用目的が変わってきているため、このあた
 りも見直されるべきではないかと思われます。)

  トレーラーハウスの値段ですが、大手メーカーの1つ、ウィラビー社の
 例を取ると、約17,000ポンド(約316万円)から最高級モデルで34,000ポ
 ンドちょっと(約633万円)。サイズのほうは、奥行きは約3.6メートルで、
 長さは約9.6メートルから約11.7メートルまであります。ほかの大手メー
 カーのモデルには奥行き4メートルというものも見られます。間取りは、
 2LDKから3LDK、上位モデルになるとトイレが2つ、風呂場とシャ
  ワー室の両方備えたものまであります。また、最近のモデルは2重窓に
 なっており、セントラルヒーティングに暖炉までついていて、近代的な家
 並みの快適さです(ただし、外壁の構造上、やはり断熱効果はレンガ造り
 の家には劣ります)。前述の通り、家具つきですので、トレーラーハウス
 購入後の出費にはあまり大きなものはありません。

  予算としては、これに電気・水道などの接続工事費を計算に入れること
 になります。わたしたちのトレーラーハウスのある村は3年前から大雨が
 降ると洪水が起こることで有名なところです(3年前にメドウェイ川の上
 流に氾濫防止のための関を作ったのが原因で、そのすぐ下流にあるこの村
 がとばっちりを受けることになりました)。洪水対策としてここのキャラ
 バン場では、トレーラーハウスの下に発泡スチロールの塊を取り付けてい
 ます。洪水になるとこの発泡スチロールの塊がトレーラーハウスを水の上
 に浮かせることになります。1つの塊で1トンまで浮かせることができる
 そうです。しかしこれだけだと、洪水の翌朝目が覚めたら隣町にいたなど
 ということになりかねませんので、トレーラーハウスを地面に固定しない
 といけません。鋼材でコンクリートの地面に固定されています。この鋼材
 は通常「く」の字型に折りたたまれていますが、水位が上がると、それに
 あわせて徐々にまっすぐになります。こうして、トレーラーハウスは位置
 を変えずに水の上に浮くわけです。なかなかよくできた仕組みですが、そ
 の国土の大部分が海抜ゼロメートル以下というオランダで開発されたシス
 テムだそうです。水道管などは蛇腹状のものが使われていますが、これも
 トレーラーハウスが浮かんだ場合にそれに合わせて伸びるようにという配
 慮からです。ガスはここではプロパンガスのボンベを使っていますが、こ
 れも金属のかご状のものでトレーラーハウスに固定されており、トレー
 ラーハウスが浮くと一緒に浮くようになっています。パイプガスの導入も
 考えたそうですが、トレーラーハウスが浮くときにガス管が破損する可能
 性を考えると危険なため、ボンベを使っているということです。ここでは
 トレーラーハウスはもともと地面から1メートルちょっとの高さに設置さ
 れているのですが、この浮上システムのおかげでそこからさらに1メート
 ルくらいは水位が上がってもトレーラーハウスは浸水しないことになりま
 す。このシステムはすでに機能することが証明済みで、今年1月末の大雨
 のときには、このキャラバン場のトレーラーハウスが水面に浮いているの
 がニュース番組で紹介されました。

  中古のトレーラーハウスを購入する場合には、キャラバン場の事務所に
 売り物件があるかどうかを尋ね、キャラバン場を通して購入します。ある
 キャラバン場で買ったトレーラーハウスを別のキャラバン場に移動して利
 用するという例はわたしの聞いた限りではありません。このようにトレー
 ラーハウスの売買は中古にせよ、新品にせよ、すべてキャラバン場を通し
 て行われているため、普通の住宅ほど自由に流通していません。これを懸
 念する声もあります。

  一度トレーラーハウスを購入すると、後は毎年借地代を払うだけという
 ことになります。だいたい年間(12ヶ月)2,000ポンド(約37万6,000円)
  程度というのが最近の相場のようです。もっとも、休暇用のトレーラーハ
  ウスが中心のキャラバン場には12ヶ月開いているところは多くありません。
  多くが冬の期間(11月〜2月)は閉鎖されるため、借地代も8ヶ月分とな
  り、もう少し安くなります。借地代には水道代も含まれることが多いよう
  です。電気代も含まれるキャラバン場もあるようですが、わたしたちの
 キャラバン場では電気はメーター制になっています。

  これまでトレーラーハウスは休暇あるいは週末用の別荘として主に利用
 されてきましたが、最近は本宅として使う人が増えてきています。やはり
 第一の理由は普通の家と比べて安いことでしょう。ここ数年来の住宅価格
 高騰の結果、イギリスの平均住宅価格は10万ポンド(約1,860万円)を超え
  ました。最近特に多く見られるのが、家を売り払い、その代金で住宅ロー
 ンを返済し、残った金でトレーラーハウスを購入してそこに移り住むとい
 うケースです。借金のない生活はだれもの夢でしょう。家の値段が購入時
 の2倍になったというケースもよく見られる現在、住宅ローンを返済して
 も手元にかなりの利益が残るようなったため、このようなことが可能に
 なったわけです。金銭的に余裕のある年配の夫婦には、トレーラーハウス
 の豪華版、パークホーム(park homes)も人気です。

  トレーラーハウスの利点は、安いというほかにもいくつかあります。ま
 ず、ほとんどのキャラバン場は風光明媚の地に位置しますので、すばらし
 い景色を楽しむことができ、広大な土地を自由に利用することができます。
 実際に土地は所有しませんが、その保守に時間と金を使うことなく、恩恵
 にあずかることができるわけです。次に、普通の家の場合には当該の地方
 自治体に住民税を納めなくてはいけませんが、トレーラーハウスの場合に
 はその必要はありません。

  短所としては、家のように価値が上がることはないという点が上げられ
 るでしょう。かつては中古となると急速に価値が下がったものですが、最
 近はトレーラーハウス人気から価値はかなり保たれているようです。また、
 製造後10年を過ぎた古いトレーラーハウスを許可しないキャラバン場も
 あったようですが、最近では、外装が見苦しくない限りは10年を超えるも
 のも許されているようです。しかし、イギリスでは普通の家が100年、200
 年ももつことを考えると、その寿命がずっと短いということは否めません。
 また、強風や火災などの災害に対しても普通の家より弱いと言えるでしょ
 う。

  トレーラーハウスを本宅として使う人が増えてきているとはいえ、法律
 上、トレーラーハウスを定住所として使うことはできないそうです。実際、
 わたしたちのキャラバン場にも、11月から2月まで間、連続28日以上続け
 てトレーラーハウスに滞在することはできないという規則があります。し
 かし、もちろん家の出入りを監督している人はいませんし、規則をきっち
 りと守りたいという奇特な人には滞在28日目に家族・知人の家に泊まりに
 行くという手があります。しかし、トレーラーハウスの住所は銀行の口座
 開設などにはまず使えないでしょう。クレジットカードの申請やローンの
 申し込みなどの時には、与信審査で確実に落ちます。残念ながら、定住所
 としての経済的信用度はないようです。

  わたしたちのお隣りのジョンとパットは、かつて同じキャラバン場でト
 レーラーハウスを本宅として住んでいました。洪水などだれも予期してい
 なかった頃です。ところが3年前の大雨でトレーラーハウスは浸水し、2
 人はホームレスとなりました。この窮状を救ってくれたのは地元の市役所
 でした。2人に公営住宅をあてがってくれたのです。住民税も払っていな
 かった夫婦に公営住宅を割り当ててくれたとは、実に恩情の深いお役人た
 ちです。ここがイギリスの社会制度のいいところでしょう(乱用する人さ
 え出てこなければ)。こうして、2人は近くの公営住宅と修復したトレー
  ラーハウスとの2つの住みかを持つこととなりました。現在はキャラバン
 場は8ヶ月契約で、冬の間は公営住宅で過ごすそうですが、夏の間は1週
 間に2日洗濯をしに家に戻るくらいで(トレーラハウスに洗濯機はないの
 で)、ほとんどをトレーラーハウスで過ごしています。しかし、彼らのト
  レーラーハウスには洪水対策の装置が設置されていません。これがないと
 保険会社は保険を引き受けてくれないのですが、ジョンは自分たちのト
 レーラーハウスには保険料を払う価値もないからと言います。洪水で大切
 にしていたものすべてを失ったときの心の痛手はよほど大きかったので
 しょう。トレーラーハウスでの生活はこの後すっかり変わってしまったと
 言います。もう1度トレーラーハウスが浸水することがあったら、彼らは
 きっとトレーラーハウスを捨て、もう2度トレーラーハウスを買うことは
 ないのでしょう。
 
  もう一方のお隣りは20キロほど離れたやはりケントの村に住む60代のご
 夫婦。彼らも夏の間だけの自宅とトレーラーハウスとを行ったり来たりし
 ています。隣人の騒音と迷惑な近所の子供たちから逃れるために、トレー
 ラーハウスにやってくるのだそうです。ジムとアイリスは、このキャラバ
 ン場にトレーラーハウスを持って14年というふるがおです。彼らもそうで
 すが、このキャラバン場では、ほとんどの人がすばらしい庭を持っていま
 す。キャラバン横の幅4〜5メートルほどの土地が割り当てられているわ
 けですが、デッキを設けたり、敷石を敷き詰めたり、花壇を作ったりと、
 一軒一軒工夫をこらした美しい庭が見られます。中には立派なレンガ造り
 の塀に囲まれたトレーラーハウスまであります。「イギリス人の家は城」
 と言いますが、イギリス人のトレーラーハウスも城なのですね。

  このキャラバン場の50〜60パーセントはここで1年を過ごす定住者のよ
 うです。トレーラーハウスから仕事に通っている夫婦もいます。彼らは仕
 事に行っている間、1日中ドアを開けっ放しにしています。キャラバン場
 の入り口には磁気カードで操作するさくがあり、カードを持った住民か入
 り口の事務所で許可を受けた人しか出入りできないことになります。そこ
 で、鍵をかけないで出かける住民が多いのです。キャラバン場には、独特
 の地域社会意識があります。連帯感とも言えるでしょう。新参者がやって
 くると、喜んで勝手を教えてくれます。車のない人には、必ずだれかしら、
 買い物に行くときに車に乗せて行ってくれます。目が会うと挨拶が交わさ
 れ、あちこちで井戸端会議が始まります。キャラバン場には小さな田舎の
 村の精神が生きています。

  注:為替レートには1ポンド=186円を使用しています。

  ● ペドロより愛をこめて(あとがき)

  このキャラバン場のあるヨールディングという村はロンドンのイースト
 エンド出身の60代以上の人にはたいへんなつかしいところのようです。戦
 前から戦後しばらくの間、イーストエンドの労働者階級の人たちが休暇を
 過ごしたのは、ここのホップ農場でした。前の号にも書いたようにホップ
 はビールの原料です。つるになったホップの実を摘み取るというかなりた
 いへんな肉体労働ですが、それでもイーストエンドの子供たちは毎年ホッ
 プ農家から誘いの手紙が来るのを楽しみにしていたそうです。ホップの収
 穫の日が決まると、朝早くイーストエンドからロンドン・ブリッジ駅まで
 手押し車に鍋釜を含めた手荷物を積んで歩いていきました。夜は納屋の中
 に積んだわらの上で眠り、自炊をしたそうです。一日の収穫が終わると、
 摘み取ったホップの実の量に応じて賃金をもらい、その金を持って夜パブ
 に行くのが楽しみだったということです。働く休暇とは、昔の人たちの生
 活はずいぶん慎ましかったものですね。今日では考えられないことです。

    ところで、ホームページにハリー・ポッター専用の掲示板を設けました。
 まだ1件しか書き込みがないので、暇をしております。ぜひ遊びに来てく
 ださい。ハリー・ポッターについて語り合いましょう。

  http://8017.teacup.com/michie/bbs

  なお、ハリー・ポッター以外の話題については、サイト全体のゲスト
 ブックをご利用ください。このメールマガジンに対するご感想・ご意見な
 どもこちらからどうぞ(もちろん、今までどおり、このメールに返信する
 形でも結構です)。また、本誌に関係なくても、イギリスやイギリス人・
 イギリス文化に関するご質問・ご意見、楽しみにしています。

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  では、また次号でお会いしましょう。


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