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2009/04/29

■Weekly Mail Journal■2009/4/29 No.481

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  2009/4/29  No.481   週刊メールジャーナル  読者数11142(前回)
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●検察報道の第一人者「立花隆と村山治」の罪と罰
(会員制経済情報誌『現代産業情報』4月15日号より転載)

『文藝春秋』(5月号)は、総選挙があれば民主党が大勝、間違いなく総理に
なると思われていた小沢一郎民主党代表に、東京地検特捜部がなぜ捜査のメス
を入れたかを、「小沢一郎の罪と罰」として、評論家の立花隆氏と朝日新聞編
集委員の村山治氏が対談するという形で報じた。

褒め殺しではないが、やはり村山氏には名実ともに司法ジャーナリズムの第一
人者としての取材力、分析力、伝達力がある。

取材現場から離れたとはいえ、立花氏には田中角栄元首相の金脈を徹底的に暴
き、金丸信自民党元副総裁の脱税事件に先鞭をつけ、その衣鉢を継ぐものとし
て小沢代表を捉えているという自負があった。

国民雑誌にふさわしい対談だろう。

だが、今回の西松建設事件において、なぜ小沢代表の秘書が政治資金規正法違
反で逮捕されなくてはならなかったかという国民の疑惑には答えていない。

立花氏の「なぜ政権交代を間近に控えたこの時期か」という質問に対し、村山
氏は数々の理由をあげた。

第一に選挙のタイミングが遠のいたと検察が判断したこと、第二に政治資金規
正法違反での時効が近づいていたこと、第三に2009年度予算案が衆院を通
過したこと、第四に外為法違反だけで西松建設事件を終焉させるわけには行か
なかったこと、第五に別ルートで捜査していた長野県の村山仁知事の元秘書が
自殺、小沢代表の秘書もそうなっては困るという思惑が働いたこと――などで
ある。

すべてその通りなのだろう。だが、違和感が残る。

それは村山氏が検察の代弁をしているだけで、ジャーナリストとしての見解を
述べないからだ。

一から五までのすべての理由を重く考えたとしても、総理の芽をつぶすほどの
事件ではないし、西松建設から献金を受けた他の十数名の政治家との整合性が
つかないという疑問も解消しない。

意地悪く捉えれば、そこには司法記者としての名声をこのまま確保、社内での
特別編集委員としての立場を揺るぎないモノにするために、法務・検察との関
係に気を配り、「代弁者」に徹する覚悟を固めたのかも知れない。

『市場検察』『特捜検察VS金融権力』といった、これまでの著書がそうであ
ったように。

あるいは幸運なことに、犯罪への感覚、政治との距離感、経済界への向き合い
方といった感性が、検察幹部とピタリと一致、修正の余地がないのかも知れな
い。

それは「検察ウォッチャー」としては幸運である。ただ、権力とはどこかで一
線を敷くべき、ジャーナリストとしての資質を欠く。

大久保隆規秘書の逮捕後に、特捜部が東北のゼネコン業者に捜査を拡大した理
由を、村山氏は、「公判で無罪を主張することが予想され、もっとガチガチに
証拠を固めないと、公判で反撃に耐えられないと判断したのでしょう」と、解
説している。

「泥縄捜査」への批判は皆無、そのうえ、小沢代表の検察批判が気にくわない
から、贈収賄に捜査を広げようとしたという「捜査権力の怖さ」には、一切、
触れない。

立花氏はむしろ聞き役。

「私は角栄の東京地裁での公判191回すべてを傍聴していますが、しばしば
小沢の姿を見かけました。彼がすべて傍聴していたという神話は事実ではあり
ません」と、歴史をさかのぼって「政治資金研究の先達」としての自負は見せ
るものの、その後、取材をしていないのだから説得力がない。

「実際には、彼のマインドはあまりに根強く旧自民党的な構造に毒されていた」

こう書くなら、小沢問題を何らかの形で継続取材、問題提起すべきではなかっ
たか。

もちろん「罪と罰」は、立花、村山の両大御所にだけあるのではない。

無批判に検察情報を垂れ流すマスコミの司法記者会にもあるし、検察捜査を追
認する雑誌ジャーナリズムは甘い。

そして弊誌もまた、「検察発」の情報と正義に依ることが少なくない。

同じ『文藝春秋』の対談の直後に、「子供の政治が国を滅ぼす」として、中西
輝政京都大学教授が日本の検察権力のおかしさを「日本ほど『官』の最たるも
のであるはずの検察が信頼されているのは珍しい」と書き、

英国やドイツでは、個人が弁護士を雇って犯罪者を起訴、米国では地方検事が
選挙で選ばれるとして、官僚の検察官だけが人を起訴する権限を独占している
日本の現状に警鐘を鳴らす。

確かに、強大な権力を持つ検察に対するチェックが足りない。

ジャーナリズムがその役割を果たしていないのは由々しきことで、そういう観
点から第一人者の対談のおかしさを読み直してもいい。


●重大局面に立たされた「新潮ジャーナリズム」
(転載同前)


《「週刊新潮」は2月5日から4週にわたり、「実名告白手記 私は朝日新聞
『阪神支局』を襲撃した!」を掲載いたしました。連載終了後も追跡取材を続
けてきましたが、島村征憲氏本人が自らの手記を否定するかのような不可解な
発言をしていることが明らかになりました》

週刊新潮は4月9日発売号で上記のような「編集部告」を掲載し、「手記を掲
載するに至った経緯を16日発売号で説明する」と予告した。

9日付で『毎日』『朝日』『産経』の各紙と同日発売号の『週刊文春』が島村
氏に直当たりした記事を一斉に掲載したが、その中で島村氏は自身が朝日襲撃
の実行犯であることを明確に否定し、「手記は新潮のでっち上げ」と言わんば
かりの主張をした。

週刊新潮がこの日の誌面で異例の「編集部告」掲載に踏み切らざるを得なかっ
たのは、こうした他誌からの圧迫があったためであろう。

米国大使館職員からの依頼を受け、犯行グループを形成して自ら朝日を襲撃し
たという島村氏の「手記」には、掲載当初からその信憑性に強い疑問が投げか
けられていた。

公訴時効を迎えても、広域指定事件として真相解明を求める警察庁は、早い段
階でこの記事を「虚偽」と断定、見向きもしなかった。

警察当局よりも“証拠”を有しているといわれる被害者の『朝日』にいたって
は、事前に島村氏を取材してその怪しい体質を知っていただけに、新潮の連載
が始った段階から新潮の掲載責任をどう攻めるべきか戦術を練っていた節があ
る。

警察庁詰め記者が語る。

「新潮が4回にわたって、あの男(島村氏)の話を取り上げるとは驚いた。彼
は未解決になっている八王子のスーパー店員3人射殺事件も自分がやったと言
っては、報道機関に手紙を送りつけたりする“有名人”。

それでもあれだけ派手に新潮が取り上げたのだから、よほどいい“根拠”があ
るのだろうと思っていたら、結局は裏付けが取れているのかよく分からない島
村氏の話のみ。

それでも、誌面に載せられない“いい話”があるのだろうと予想していたが…
…」

新聞各紙から説明責任を突きつけられながらも「記事に全てを掲載している」
木で鼻をくくったような対応を続けてきた新潮が、ここへきて釈明に追い込ま
れた理由は、「新潮がでっち上げた」という島村氏の発言であろう。

新潮「編集部告」は「手記を載せた経緯を説明する」と予告しており、でっち
上げでないことを強調しているようにうかがえる。

新潮は勘違いしてはなるまい。説明すべきは、「島村氏が実行犯だと告白した」
という氏の過去の発言ではなく、新潮が氏の証言を真実と判断し掲載した根拠
=裏付けの内容なのである。

「言った」「言わない」の水掛け論に争点を摩り替えることは許されず、それ
は『週刊新潮』の存続に直結するのだと思ったほうがいい。

新潮は『週刊新潮』『新潮45』を中心に、未解決の重大事件を取り上げて、
その容疑者を断定する報道を繰り返してきた。

典型例が一橋文哉氏の「『赤報隊』の正体」であり「世田谷一家惨殺事件の恐
るべき『真実』」であろう。

“犯人”に会ったと一橋氏は書くが、事件が動いたことはない。

ネットのウィキペディアは一橋氏をこう描写する。

「毎回必ず“犯人”に会い、“新事実を発見”するなど、“世紀の大スクープ”
を連発している。しかし、その後新聞やテレビが後追い報道したことは無い」

報道機関の中では、こうした新潮の報道姿勢は、「新潮ジャーナリズム」と揶
揄されてきた。

今回の島村氏の「手記」をめぐり問われているのは、その「新潮ジャーナリズ
ム」そのものである。

これまでは、書き飛ばしても時間の経過とともになあなあにされてきたが、今
回は様相が異なる。

虚偽の取材対象に騙された日本テレビは、社長の首が飛んだし、被害者の朝日
は容易に矛を収めないであろう。

廃刊という可能性は『週刊新潮』にとって現実的なものになっているのである。

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 週刊メールジャーナル 2009年4月29日 第481号(水曜日発行)
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    編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社
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