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2009/12/24

『電子耕』No.276-2009.12.24

隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」  第276号
-環境・農業・食べ物など情報の交流誌-
2009.12.24(木)発行      山崎農業研究所&編集同人
<キーワード>
環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の
交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。
http://www.yamazaki-i.org
*************************************発行部数 1236 部***************
□  目  次    □----------------------------------------------------
<巻頭言> 里地里山の生物多様性と農業 中川昭一郎
<山崎農業研究所 第135回定例研究会> 速報
<多摩川源流を尋ねて> その22 多摩川から見る青梅 安富六郎
<編集後記> 地域のつながりは「軽く!」から
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<巻頭言> 里地里山の生物多様性と農業
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 最近、日本農村の原風景ともいわれている「里地里山」が、人間と自然が共
生しつつ作り出してきた二次的自然であり、そこに豊かな生物多様性が保たれ
ていることが、大きな注目を集めている。里地里山とは集落を取り巻く二次林
と、それらと混在する農地・ため池・草原などで構成される地域概念であるが、
この中核をなす二次林だけで国土の約2割、周辺農地などを含めると約4割を
占める広い地域である。

 しかし、長年の営為と知恵によって育まれてきたこの二次的自然も、近年の
社会経済の大きな変化によって、かつての豊かな生物多様性が次第に失われ、
現在ではその保全・再生が各地で問題となり、様々な努力が重ねられるように
なってきた。この多様性喪失の危機の原因としては、様々な人間活動による
(1)地域環境の破壊や乱獲による種の絶滅の危機、(2)生産・生活様式の変化や
人口減少と高齢化などによる人間活動の縮小に伴う自然の質の変化、(3)外国
からの様々な生物の移入に伴う在来種への影響、などが挙げられている。この
うち(1)と(3)については、最近の各種法的規制や環境意識・技術の向上などに
よって次第に減少の方向に向かうことが期待されているが、一番解決が困難と
思われるのが、農林業生産と自然管理のための担い手確保を必要とする(2)の
問題である。

 多くの農村に共通した問題ではあるが、とくに中山間地に多い里地里山地域
では、若年層の流出と高齢化や農業収益の減少などによって、耕作放棄地の増
大が進むなど、生業としての農業自体の維持すらが困難になってきているとこ
ろも多い。本来里地里山の持つ優れた生物多様性は、地域の物質循環に配慮し
た持続的農業生産が営まれることによって維持増進してきたものであり、農業
の衰退すなわち生物多様性の劣化につながるものと考えなければならない。ま
た、里地里山の保全管理には、目立たない多くの労力が必要であり、若・中年
層の地域への定着や都市住民との永続的交流なしには不可能といわざるを得な
い。これはまさに日本農業の根幹に係わる問題であり、単なる環境問題として
だけでなく、広い視野での論議が不可欠である。

 来年10月名古屋で開かれる「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」
では、日本からはこの里地里山について多くの報告がなされることが予想され
ており、すでに関係諸学会・団体・NGOなどでは、各種の研究会・シンポジウ
ム・現地調査などが盛んに行なわれ多くの知見が集積されつつある(山崎農研
での現地研究会「前号:石川秀勇氏報告」参照)。願わくばこの国際会議での
論議が、地域の持続的農業生産なしに里地里山の生物多様性は保全し得ないこ
とを、十分に深く認識する機会になってほしいものである。

中川昭一郎
山崎農業研究所顧問、東京農業大学客員教授
yamazaki@yamazaki-i.org

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<山崎農業研究所 第135回定例研究会> 速報
期日:2009年12月12日(土)
場所:NTCコンサルタンツ(株)  参加者27名
テーマ:水田農業の持続可能性を考える
1.日本農業の永続可能性について
  小泉浩郎 山崎農業研究所事務局長
2.経営の基本は持続可能な農業
 ―交流と提携を通じ有機・環境保全型農業を推進―
  山崎正志 茨城県坂東市 (有)アグリ山崎・社長
3.これまでの取り組みと将来方向
  佛田利弘 石川県野々市町 (株)ぶった農産・社長
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1.日本農業の永続可能性について 小泉 浩郎 山崎農業研究所事務局長
 日本農業をめぐっての問題を整理して言えることは、一般行政における理念
の混乱、農業普及体制の弱体化、独立行政法人化による試験研究機関の現場か
ら離脱した方向性の喪失である。そして、政策的支援は混迷している。

 世論も混乱しており、減反と高関税が農業をダメにしているなどの識者の意
見の一方、農業バブルといわれるほどの様々な出版物が出されてはいるが、こ
うした中からは一定の方向性は見えてこない。

 農業は農業である。日本農業の強みをあげれば、水に恵まれ、四季があり、
多毛作ができ、近くに働き口があって兼業もできることだ。それを可能にして
いるシンボルが「水田」で、世界に誇れる農耕文化の装置としてみることがで
きる。そこには、米という商品、水稲作という技術、安全・安心な食べ物とし
てのご飯、地域の風土および共に生きる社会関係、といったことがある。

 人々の価値観が多様化する中で、農業を今までのような一つの型に嵌めず、
自由な発想で今までに無い経営の転換が求められている。そして各地に、それ
に努力する農業経営者が増えてきている。その人たちは経営の発展に活かす項
目として、「作る自由」、「売る自由」、「主体的意思決定」、「有為な人材
育成」などに努めている。

 以上のことから考えられる日本農業の永続可能性の一つの方向として、また
新しい理念として、地域社会とのつながりを重視する経営であることが大切で
ある。具体的な面をいえば、生産基盤としての農地の集積・集団化を進めるこ
と。土作りと輪作・有機農業を進めること。うまい米作りで商品価値を高め、
経営の複合化によって年間雇用創出を考えること。更に、政策的支援のあり方
を提言することなどを通して、水田を基盤とするわが国農業の永続可能性を追
求することが望まれる。
(文責 安富・石川)

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<84歳からのメッセージ>
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「84歳のメッセージ」は、原稿入稿代行者の都合により、今回はお休みとさせ
ていただきます。著者・原田勉さんは元気に過ごされていますので、読者の皆
様、どうかご安心ください。(編集部)

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<多摩川源流を尋ねて> その22 多摩川から見る青梅
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 青梅一帯は鎌倉時代に畠山重忠が頼朝から与えられた土地と言われている。
その後、豪族三田氏の支配地となった。この地は古くから林業、織物 養蚕業、
青梅織物などでも知れている。青梅の成木(ナルキ)は石灰の産地として栄え
た。築城や倉造りに石灰は漆喰の建材として鎌倉時代、江戸時代の築城には大
量に用いられ、輸送には馬が用いられた。このために鎌倉や江戸への道は早く
から開け、鎌倉道や青梅街道の発展にも深く関わっている。

 農業生産は少なかったのにも拘わらず、交通・産業・奥多摩文化の要所とし
て発展した青梅はその背後に木材輸送の幹線、多摩川があったからである。江
戸幕府発足後、江戸城修築や江戸火災などによる需要の高まりで、江戸商人に
よる木材の生産、出荷の中心地となった。初期には江戸業者は直接、現地木材
を扱かった。さらに、地元に資金提供して地元業者を通して企業の充実を図っ
た。その結果、森林管理、材木業、筏師を使った木材産業は目覚ましく発展し
た。

 扇状地の要に位置する青梅の多摩川上流には河床勾配:1/200以上のところ
もある急流河川である。さらに多摩川上流の流域面積は狭いので、降雨時には
急流の河川増水する暴れ川であった。洪水によって渡し場の流失など、地域の
交通に多くの障害をもたらすことも少なくなかった。季節的な水量変動も大き
く、水運による交通は「渡し」以上には発達しなかった。通船もほとんど無か
ったので自然の流れを利用した流木輸送、筏や筏による石材、樽詰めなどの運
搬には都合がよかった。

 材木搬出には支線渓流、谷川に仮堰を設け、伐採した丸太を蓄え、その堰を
切って勢いよく流したと言われる。多摩川上流の河川沿いの集落からバラ流木
で流された丸太は取引の中心地である青梅に送られた。上流からのバラは途中
で、古里(こり)、沢井などで筏に組み直され、さらに青梅ではこれらの筏を
数個連結して、筏師たちは竹竿さばきで六郷、羽田まで運んだ。青梅の調布橋
の近くの「千ケ瀬」は出荷の大基地となった。

 筏流しは明治中期まで続いた。しかし苦情も多く、土橋や用水堰、鮎漁の場
所である瀬切り(急流)を破損するなど、沿川住民との間で問題を起こしたと
言われる。特に連結筏は取水堰、橋や舟着場などを痛めるので、争いの種とな
った。羽村の堰は筏通過の難所と言われ、明治10年ころには筏の堰への衝突を
監視する見張り役も置かれたほどである。筏組合は上流42ヶ村で持っていたの
で、この組合財源を破損修理にあてたと言われる。

 青梅から上流は農業も難しい谷底に集落の点在する交通不便なところであっ
た。このようなところでは林業のみが主たる産業であり、筏師もこの辺りから
青梅に出稼ぎに出たと思われる。ここで住民は限られた平地に農地を拓き、川
と共に生活してきたので、奥多摩には、古くからの祭り、伝統など日常生活に
も多くの文化が残されている。この様子は多摩川記録映画(*)からもうかが
える。

 江戸時代には河口の羽田や木場との木材取引も盛んになり、木材、木炭輸送
などのほか、多摩川は漁業や織物の晒しなどにも活用されて青梅産業を支える
裏方であった。筏師は河口から陸路である筏道で六郷(田園調布、二子玉
川)、狛江などを通って青梅に戻った。その宿泊場として調布、府中など多く
の場所があった。青梅は陸上のみならず多摩川上流と下流からの人々や商品流
通を通して産業・文化の中心として発展した。筏道は奥多摩の江戸との文化交
流の道でもあったと思われる。

 いまは多摩川の急流はレジャー舟を楽しむ場所になっている。昔の筏の時代
に戻って多摩川から青梅周辺を見るのもまた楽しいことである。

*映像クラブ「多摩川記録映画」1982年小林茂雄(東京農工大学)参加撮影、
多摩川は今…大石悌司作など。

安富六郎
山崎農研会員 電子耕編集同人
yamazaki@yamazaki-i.org

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<編集後記> 地域のつながりは「軽く!」から
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 先日、長男が所属していた少年野球団の卒団式があった。

 小学2年生の頃から参加していたので、わたしのほうも都合4年以上のおつ
きあいであった。週末の練習や試合、そして夏合宿など、家族ともどもたくさ
んのたいへんよい思い出をもらったと感じている。

 子どもたちの野球がだんだんとうまくなっていくのもうれしかったが、わた
しにとっては地域のお父さんたちのつながりができたのがうれしかった。機会
をみつけては「軽く一杯やりましょうか!」と声をかけあい、何度深夜の帰宅
になったことか。

 地域のコミュニティが大切だとういう声を聞くことが最近多い。しかしいき
なり地域で何かやろうといってもむずかしいだろう。まずは互いの顔と名前を
知ること、そして声をかけあうこと。そして地域というものを実感すること。
大切なのはこのことではないか。

 今週末は、子どもたちの卒団式にかこつけた(?)おやじたちの忘年会があ
る。子どもたち同様、このつきあいはずっと大事にしていきたいものだ。

2009年12月24日
山崎農業研究所会員・田口 均
yamazaki@yamazaki-i.org

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山崎農業研究所編・発行/農山漁村文化協会発売
『自給再考――グローバリゼーションの次は何か』
(発売:2008/11 定価:1,575円 )
http://shop.ruralnet.or.jp/search_result.php?mode=detail&id=011701&b_no=01_4540082955
 たくさんの書評・紹介記事をいただいています。感謝・感謝です。
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◎森川辰夫さん
 NPO法人 農と人とくらし研究センター/資料情報
 http://www.rircl.jp/shiryo.htm
◎日本農業新聞/書評
 (2009/01/19 評者:日本農業新聞編集委員 山田優)
 http://yamazaki-i.org/
 (画面トップの「書評はこちらから」よりアクセス下さい)
◎毎日新聞/今週の本棚・新刊(2008/12/21)
 http://mainichi.jp/enta/book/news/20081221ddm015070022000c.html
◎小谷敏さん(大妻女子大学)
 日本海新聞コラム「潮流」/「自給」の方へ(2009/01/31)
 http://blog.goo.ne.jp/binbin1956/e/c895f6619b30ba7725e264b4daa75219
◎白崎一裕さん((株)共に生きるために)
 月刊とちぎVネットボランティア情報vol.158/しみん文庫
 http://yamazaki-i.org/
 (画面トップの「書評はこちらから」よりアクセス下さい)
◎大内正伸さん(イラストレーター・ライター)
 ブログ:神流アトリエ日記(3)「書評『自給再考』」
 http://sun.ap.teacup.com/applet/tamarin/20081204/archive
◎塩見直紀さん(半農半X研究所、執筆者)
 ブログ:半農半Xという生き方~スローレボリューションでいこう!
 立国集。
 http://plaza.rakuten.co.jp/simpleandmission/diary/200812270000/
◎戎谷徹也さん(大地を守る会)
 ブログ:大地を守る会のエビちゃん日記 “あんしんはしんどい”
 「自給率」の前に、「自給」の意味を
 http://www.daichi.or.jp/blog/ebichan/2008/12/16/
◎吉田太郎さん(長野県農業大学校教授、執筆者)
 キューバ有機農業ブログ 自給再考の本が出ました
 http://pub.ne.jp/cubaorganic/?entry_id=1822182
◎関良基さん(拓殖大学政経学部)
 ブログ:代替案 書評:『自給再考 -グローバリゼーションの次は何か』
 http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/cb22650fa39384bdd22b61440fa81fa0
◎ブログ:本に溺れたい グローバリゼーションの次は何か
 http://renqing.cocolog-nifty.com/bookjunkie/2009/01/post-841e.html

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たいことを具体的に。
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電子耕への投稿アドレスは、117号から発行人の変更に伴い、
yamazaki@yamazaki-i.org
となっております。投稿される方はこちらのアドレスにお願いします。
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次回  277号の締め切りは01月11日、発行は01月14日の予定です。

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★『メールマガジンの楽しみ方』発売中
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書名:岩波アクティブ新書45『メールマガジンの楽しみ方』
著者:原田  勉  定価:735円  発行日:2002年10月4日
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隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」  第276号
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