2009/05/14
『電子耕』No.260-05.14号
********************************************************************* 隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」 第260号 −環境・農業・食べ物など情報の交流誌− 2009.05.14(木)発行 山崎農業研究所&編集同人 <キーワード> 環境・農業・健康・食べ物などの情報提供、高齢者と若者、農村と都市の 交流ミニコミ誌。山崎農業研究所&『電子耕』編集同人が編集・発行。 http://www.yamazaki-i.org *************************************発行部数 1217 部*************** □ 目 次 □---------------------------------------------------- <巻頭言> 新型インフルエンザの発生に思う 大山勝夫 <読者の声> 今井さんから <84歳からのメッセージ> 理想的農業と優雅な生活の夢 原田 勉 <多摩川源流を尋ねて> その6 ガス橋、丸子、二子橋 安富六郎 <編集後記> 『フード・ウオーズ―食と健康の危機を乗り越える道』を読む ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <巻頭言> 新型インフルエンザの発生に思う ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 先の大型連休はさながら、新型インフルに翻弄された一週間であった。そこ で思い出したのが、数年前にある雑誌に投稿した「自然からの逆襲」である。 当時、世界各地が襲われた猛暑の原因を地球温暖化に求めた二つの問題提起を 紹介したことである。 その一つは、科学史・科学哲学者の塚原東吾氏は、近年の世界的な気候変動 は人間活動に対する「自然からの逆襲」ではないかと。つまり人間の自然への 働きかけのリアクションであるとしている。 二つめは、哲学者、梅原猛氏は「反時代的蜜語」のなかで、これまで人類は 科学技術文明を創造し、その結果、多くの人達が便利な生活を享受してきたが、 一方では人類による無制限な自然支配が環境破壊をもたらし、やがて人間社会 の滅亡を招きかねないと警告している。 そこで、今回の新型インフル問題だが、これまで人類は病原微生物やウイル スを相手にさまざまな抗生物質やワクチンを開発してきた。しかし病原微生物 (ウイルスを含め)の側でも突然変異という武器を使って、まるで軍拡競争の ように強力な毒性を持った病原微生物(ウイルス)が登場することになる。 新型インフルの問題を通じて考えさせられることはいくつかあるが、まず、 科学技術を駆使すれば自然を完璧なまでに支配し、服従させることが可能であ るという傲慢な人間の態度に対する「自然からの警告」と受けととめたい。ま た、われわれ日本農業を守る立場から言えば、風評被害も気になる。苦しいな で、やっとブランド肉の生産にこぎつけた養豚農家の方々に悪影響のないこと を祈っている。 大山勝夫 山崎農業研究所会員 日仏農学会顧問 yamazaki@yamazaki-i.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <読者の声> ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■今井さんから:プランター稲づくりへの期待 家の事情で自分の田んぼで米をつくるのは今年で最後になりました。 来年からは庭に少しでもプランターなどでつくっていきたいと思っています。 せめてものあがきのようではありますが、これができれば、高層マンション でも21世紀の百姓がたのしめます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <84歳からのメッセージ> 理想的農業と優雅な生活の夢 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日本の中部高原の広葉樹林の中にある農村で、相思相愛の夫婦がいた。 田が1ヘクタール、畑が26アール。水田には米を作り、畑には四季おりお りに、ジャガイモ、サツマイモ、夏野菜はナス、キュウリ、メロン、トマト。 秋野菜は白菜を主とし、リンゴも作った。冬は水菜、クレソン、春は山菜とし てゼンマイ、たらの芽をとって食べた。 川にはヤマメが釣れ、干しておいて、いつでも利用できる。 作物作りは全部無農薬、自給自足で、余れば、友人や隣近所のお年寄りに分 けた。 近くに飛行場があり、軽飛行機で、全国どこにでも行ける。映画や演劇も観 るし、展覧会にも自由に行けた。 夫は小説を書き、妻は音楽教師として地方公演にも行った。収入はそれらの 印税や演奏料でまかなう。 家事は二人で、いるものが何でも料理した。掃除、洗濯も二人でわけへだて なく、手のあいたものが行う。 田には、鳥を放ち除草を兼ね水田攪拌するという。糞はそのまま肥料になる。 野菜の病害予防には木酢酸とニンニクとトウガラシの浸出液を1000倍に薄め てまく。これは無害で有効だ。 それで野菜や花つくりも楽しくやる。水田も小型トラクターで作業する。田 植機も使う。 従来の重労働、汚い概念からは遠い生活である。 (了) 山崎農業研究所会員・『電子耕』編集同人 原田 勉 tom@nazuna.com http://nazuna.com/tom/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <多摩川源流を尋ねて> その6 ガス橋、丸子、二子橋 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 多摩川大橋からガス橋に至る。都市ガスを川崎から東京側に大量に輸送する ためにこの名前は付いた。さらにこの上流約2kmに中原街道の丸子橋がある。 東京湾からの潮は丸子辺りまで上ってくる。そのために防潮堤である調布取 水堰(河口から約17km)を設けて、ここから生活用水を取水していた(1970年 まで)。いまは工業用水に利用され、当時の浄水場は植物園になっている。防 潮堤下流は海水と淡水の混合域(汽水域)で、多種の魚の集まるところである。 丸子橋の左岸は田園調布で、その丘陵にある多摩川台公園には亀甲山古墳が ある。説明によれば、この亀甲山古墳は5世紀頃から奈良時代以前のもので、 全方後円の全長100mを超えるほど大きなものという。都市のど真ん中にあって、 未だに詳細は分かっていないというから魅力的だ。この辺りはその名から織物 を川で晒したところでもあ ろう。 台地から正面に富士山、眼下に多摩川を眺める景色は、多摩川八景に選ばれ るだけあって、すばらしい。富士山の夕日の影絵は特に美しいとされる。多摩 川沿岸に分布する古墳群は景色の良いところに集まるといわれているから、古 代でもここは衣食住の豊かな環境にあったと思われる。 丸子橋の上流にある新多摩川橋は第三京浜高速道路である。これから多摩川 と野川との合流点を過ぎて、さらに約1km先に二子橋の2本の橋がある。下流 に架かるのは二子橋(河口から17.8km)で、江戸日本橋と大山霊山への参詣の 道として栄えた旧玉川通り(大山街道)にある。このあたりに「二子の渡し」 もあった。上流に見えるのは玉川通りに架かる新二子橋である。この二本の橋 は約500mくらいしか離れていない。ちょっと贅沢と思うかもしれない。道路の 様子から見ると新二子橋は道路直線化のために架けられた橋であろう。 二子の河川敷はよく整備されている。この二つの橋の間の河川敷にある兵庫 島公園は小山もあって多摩川八景にもなっていたそうだ。いまは平坦で河川敷 は広い。散策にもよい。右岸(川崎側)の二橋の中間くらいにある二子神社の 境内隣に岡本かの子文学碑「誇り」が建っている。岡本太郎の作である。岡本 かの子が幼少時に過ごしたのはこの付近であるらしい。二子の地名の由来は二 子神社にあった二子塚からと言われている。あるいは、ここの「渡し」に双子 の船頭がいたことからとの話もある。 丸子、二子橋あたりは見るところも多く、川遊びには手頃なところだ。二子 玉(にこたま)という愛称で親しまれているように、多摩川名所に相応しいと ころである。 安富六郎 山崎農研会員 電子耕編集同人 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <編集後記> 『フード・ウオーズ―食と健康の危機を乗り越える道』を読む ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 食や農に関する良書の出版で知られるコモンズより、ティム・ラング/マイケ ル・ヒースマン著『フード・ウォーズ―食と健康の危機を乗り越える道』が発 行された。 本書のねらいは、訳者解説に的確に要約されている。 「食の未来の形成において、三つのパラダイム(生産主義、ライフサイエンス、 エコロジー)がせめぎあうなかで、20世紀から引き継がれてきた生産主義パラ ダイムがどのような修正と展開に向かうかが詳細に検討されている。本書でい う『フード・ウォーズ』とは、食の未来について、人びとの心理(精神世界) や市場(マーケット)、消費者としてのあり方、さらには産業社会のあり方を めぐって繰り広げられる戦いなのである」(訳者解説、p321-322) 今日の支配的なモデルである生産主義パラダイムが、ライフサイエンス・パラ ダイム(生命科学に基づいたパラダイム)やエコロジー・パラダイム(生態学 的な考え方に基づいたパラダイム)の挑戦をうけるなかで変容を迫られている というのである。そして「フード・ウォーズ」と戦争にたとえるのは、現在の 食料経済のあり方によって、現実に何百万人もの命が栄養不良や肥満で失われ ているからである。 訳者はまた次のように述べている。 「人類社会の危機的状況に対して、本書は『食と農の総合政策』こそが重要な 鍵を握ると問題提起する。それは、病気や不健康への対応という健康政策(人 間の健康の確保)にとどまらず、農業や食品関連産業などの産業政策、貿易な ど国際的枠組みを調整する経済政策、さらに生態系などの環境破壊を回避する 環境政策(環境の健全性の確保)につながる総合政策として展開すべきである という」(訳者解説、p323)。 農は農業という産業からのみとらえるのではなく、地域(コミュニティ)や食 文化や健康、自然・景観等とむすびついたものであるという認識――これこそ 日本の心ある農業関係者が一貫して持ち続けてきた視点である――にたてば、 本書の主張するところの正当性も理解できるだろう。 そして「フード・ウォーズ」を終焉させるうえで鍵となるのは「フード・デモ クラシー(食の民主主義)」である。問題の真の解決には「統制・支配」では なく、多様な見方や利害への配慮、オープンな議論、反対意見や代替案への考 慮といった民主主義的なプロセスによる改革が必要不可欠なのだ。 食と農、そして健康の未来を考えるうえで示唆に富んだ一冊である。 『フード・ウオーズ―食と健康の危機を乗り越える道』 ティム・ラング/マイケル・ヒースマン著、古沢広祐・佐久間智子訳 2009年5月 コモンズ発行 四六判/328ページ/本体2800円+税 http://www.commonsonline.co.jp/food.html 2009年05月14日 山崎農業研究所会員・田口 均 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山崎農業研究所編・発行/農山漁村文化協会発売 『自給再考――グローバリゼーションの次は何か』 (発売:2008/11 定価:1,575円 ) http://shop.ruralnet.or.jp/search_result.php?mode=detail&id=011701&b_no=01_4540082955 たくさんの書評・紹介記事をいただいています。感謝・感謝です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎日本農業新聞/書評 (2009/01/19 評者:日本農業新聞編集委員 山田優) http://yamazaki-i.org/(画面トップの「書評はこちらから」よりアクセス下さい) ◎毎日新聞/今週の本棚・新刊(2008/12/21) http://mainichi.jp/enta/book/news/20081221ddm015070022000c.html ◎小谷敏さん(大妻女子大学) 日本海新聞コラム「潮流」/「自給」の方へ(2009/01/31) http://blog.goo.ne.jp/binbin1956/e/c895f6619b30ba7725e264b4daa75219 ◎白崎一裕さん((株)共に生きるために) 月刊とちぎVネットボランティア情報vol.158/しみん文庫 http://yamazaki-i.org/(画面トップの「書評はこちらから」よりアクセス下さい) ◎大内正伸さん(イラストレーター・ライター) ブログ:神流アトリエ日記(3)「書評『自給再考』」 http://sun.ap.teacup.com/applet/tamarin/20081204/archive ◎塩見直紀さん(半農半X研究所、執筆者) ブログ:半農半Xという生き方〜スローレボリューションでいこう! 立国集。 http://plaza.rakuten.co.jp/simpleandmission/diary/200812270000/ ◎戎谷徹也さん(大地を守る会) ブログ:大地を守る会のエビちゃん日記 “あんしんはしんどい” 「自給率」の前に、「自給」の意味を http://www.daichi.or.jp/blog/ebichan/2008/12/16/ ◎吉田太郎さん(長野県農業大学校教授、執筆者) キューバ有機農業ブログ 自給再考の本が出ました http://pub.ne.jp/cubaorganic/?entry_id=1822182 ◎関良基さん(拓殖大学政経学部) ブログ:代替案 書評:『自給再考 −グローバリゼーションの次は何か』 http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/cb22650fa39384bdd22b61440fa81fa0 ◎ブログ:本に溺れたい グローバリゼーションの次は何か http://renqing.cocolog-nifty.com/bookjunkie/2009/01/post-841e.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎お願い「<読者の声>の投稿規定・メールの書き方」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1、件名(見出し)を必ず書いて下さい。「はじめまして」は省略して、言い たいことを具体的に。 2、氏名・ハンドルネームは、文末ではなく始めのほうに。 3、1回1テーマ、10行位に。 4、ホームページを持っている人は、文末にURLを。 5、JIS X0208 規格外の文字(機種依存文字)のチェックを。 http://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/networks/check/jisx0208.html インターネットで使えない丸数字や半角カタカナ、括弧入り略号などは文字化 けの原因です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎投稿アドレス変更のお知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 電子耕への投稿アドレスは、117号から発行人の変更に伴い、 yamazaki@yamazaki-i.org となっております。投稿される方はこちらのアドレスにお願いします。 ---------------------------------------------------------------------- 次回 261号の締め切りは05月25日、発行は05月28日の予定です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★『メールマガジンの楽しみ方』発売中 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 書名:岩波アクティブ新書45『メールマガジンの楽しみ方』 著者:原田 勉 定価:735円 発行日:2002年10月4日 発行所:岩波書店 ISBN4-00-700045-X まえがき・目次・著者紹介・注文方法はこちら http://nazuna.com/tom/book.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <本誌記事の無断転載を禁じます> ********************************************************************** 隔週刊「農業文化マガジン『電子耕』」 第260号 最新号・バックナンバーの閲覧 http://blog.mag2.com/m/log/0000014872 http://nazuna.com/tom/denshico.html 購読申し込み/解除案内 http://www.yamazaki-i.org 2009.05.14(木)発行 山崎農業研究所&編集同人 mailto:yamazaki@yamazaki-i.org ****************************************ここまで『電子耕』************


