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2006/12/21

こうのとりの願い

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              こうのとりの願い
                            2006/12/21 49号

             【 鍼灸医療による体への応援 】
      
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鍼灸師の方から≪入江FT≫について問い合わせを受けた。
そこで、今回のメルマガは鍼灸師の方々に、未妊を愁訴に来院されたケース
の一つの取り組み方を述べることにします。

まず、私が師と仰いだ入江正先生は、未妊に対して成果の一端を専門誌
≪漢方の臨床≫に1990年の11月号において、
【不妊症の診断と治療について】と、題して発表された。

論文の序文には、
『東洋医学は最後にすがる藁や蜘蛛の糸としての評価しかないのが現状であ
るが、人間の本質に根ざした医学であるから実に優れた特質もあるのである。

私は従来の東洋医学の診断・治療法と異なる方法を用いて、投薬期間1年以
内に14名中8名を妊娠させたので報告する』と述べられている。


上記の発表は漢方薬処方に於ける報告であったが、師匠は不肖の弟子を案じ
て、鍼灸医療におけるポイントを
【不妊症と女子胞と経脈の話】と題して、わざわざ図入りで教えて下さった。
その教示が、今の私にどれ程大きいものかは、私自身日々痛感している。

鍼灸医療の専門誌≪医道の日本≫に発表される直前に亡くなられ、鍼灸師の
方々が目にすることが出来ず誠に残念の極みであるが、この場で紹介するこ
とによって、日々の臨床に活かして頂ければ嬉しい限りである。


                        ☆〜☆


          【不妊症と女子胞と経脈の話】入江 正


素問の五臓別論には、女子胞を奇恒の府と定義している。

異常な府ではあっても経脈と密接に相関する事は間違いないが、経別脈診で
も経脈も臓腑にも全く異常がなく、診断に困る不妊症の患者がやって来るよ
うになって、考えを改めなければならないようになった。

そこで、経別脈診で異常がないにも拘らず、不妊だけを愁訴とする人の新し
い診断法を作る事にした。

≪掌診≫

左右いずれかの下焦にstの場合。(以下、図入りで説明を頂いている)

例えば、左掌の下焦(A)がstなら、下腹部の中央(B)・左鼠径部(C)にstの割合
が非常に高い。

≪経別脈診≫

左掌の下焦(A)がstであれば、その部位に紙包磁石のS極を当てると急に経別
脈診部にstのものが出てくる。

例えば、S極を当てるとD2肝・D3腎にstの反応が出る。
この場合、左右の肝経の太衝、腎経の築賓に施灸すると効がある。
(B)と(C)の反応が除去されることで証明出来る。

又、N極を当てるとC2などにstの反応が出る事もある。
私はS極とN極を当てて異常経脈を決定し、女子胞の灸点を決めるようにし
ている。この場合、両手のゲキ門と曲池は必ず追加している。

以上の場合は太衝・陰陵泉・築賓・曲池・ゲキ門が灸治療穴になる。


                        ☆〜☆


師匠が直々にご教示下さった診断法と治療法であるが、治療効果は女子胞へ
の応援となることが、月経周期・月経痛・月経下血・始まり方と終わり方・
頸管粘液などの改善から納得してもらうことが出来る。

尚、入江FTシステムの勉強会は、寺子屋の仲間である静岡県浜松市の
≪漢門堂≫ 森下和次 院長が昨年6月から月1回開催されている。

私も呼ばれて2回参加したが、実に和やかな雰囲気の楽しい勉強会で、2回目
の時は、最終便の新幹線の時間が過ぎて、朝一番での帰京となった。

寺子屋お産塾のHPにある≪鍼灸治療日誌≫のコーナーに臨床例を報告されて
いるが、鍼灸師の方々には大いに参考となると思うので併せて紹介しよう。


                        ☆〜☆


        症例1 ≪ 子宮口がかたい ≫   漢門堂 森下 和次


Hさんは出産予定日が9月13日となっているが、いまだに子宮口が硬いといっ
て来院される。初めてのお産を迎えられようとしている。

腹診では下腹部には異常はなく、胃の診断部にstがある。
主治経は右胃経としてIP結線30分。自宅で三陰交に5壮の灸を指示。

6日、偏頭痛が消えたとのこと。
主治経は左胃経となり、IP結線20分。至陰に5壮の灸を指示。

8日、妊婦検診にて子宮口は柔らかく、1センチ開き赤ちゃんも下がっている
と言われた。
初診時に本日の検診があることは分かっていたので間に合って良かった。
検診日までに何らかの変化をドクターに見せる事が大事であり、それが自然
分娩につながると認識している。

11日、身体が軽いとのこと。FTをすると病的反応がうすい。

16日、お腹が張ってしんどいと言って来院。
左季肋部下と右鼠径部がst。これは頭と足と思うが左鼠径部にもstが確認さ
れた。IP結線しst消去確認後、本治法を終えるがいつもとは腹部の反応が
違う。
「間近だね」と告げ終了する。

結果的には出産一日前の身体の反応を診ることが出来た訳で、私にとっても
貴重な経験であった。病的反応を消去することには多少の自信はあるが治療
後、次第にstが出てきたので出産間近と感じたのだ。

羽生善治四冠が『直感は経験で磨く』と言っていた。
直感は当たりはずれの勘ではなく、ひらめきと理解している。

妊娠中のトラブルは一般鍼灸師にとっても難しいものではあるが、患者さん
を救うことが出来る数少ないものである。やっぱり鍼灸治療だ、と世間一般
に認めてもらえるような日が早く来るよう願っている。

16日の状態で病院に行ったらなんと言われるのだろうか?まだまだと言われ、
何等の手当てもなく帰されることになるのでは?
こんな時、鍼灸治療では正しく経絡治療が出来れば一時的にせよ対応できる。
副作用がないからであるが、誤治しないよう注意深くしなければならない。

25日、出産報告のTELあり。きのう退院したとのこと。
前回の治療翌日(17日)に陣痛のようなものがあり病院に行き、即出産
(3058グラム)。

また、Hさんにも16日の鍼灸治療後から翌日の出産までの経過を詳しく聞い
てみたい。体験者の感想は貴重なものであり、鍼灸師のみならずこれからお
産を迎えられる方々にも勉強になるだろう。


        症例2 ≪ 子宮口がかたい ≫   漢門堂 森下 和次
 

Nさんは出産予定日が6日なのに、まだ赤ちゃんが下りて来ないし子宮口も
硬いと医師に言われ、さらに19日に入院するように指示された。

助産師さんに三陰交のマッサージを勧められたことから、マッサージよりも
鍼灸のほうが効果的と考え、PCで検索し寺子屋お産塾から当院に。

「遅すぎるなぁ」
『遅すぎてごめんなさい』
「検索した努力を無駄にしないように頑張りましょう」 

会話をしながらのFT診断。

恥骨〜石門あたりまで約7センチの幅で筋緊張つよく、胃部にもstがある。
下腹部の緊張が取れれば自然なお産が期待できると思い、入江治療システム
の本治法でのIP結線。異常反応消去を確認し、座位での脊柱治療(円皮鍼)
で終了。

15日、下腹部の緊張が消えていた。
前日の治療後、ご主人にもお腹が柔らかくなっていると言われたとのこと。
同様の治療。

16日、検診にて子宮口が柔らかになっているので、19日の入院は延期になっ
たとTELあり。羊水もあるし、赤ちゃんも元気と言われたとのこと。
一安心、責任が果たせた。

19日TELあり。昨日子宮口が1.5センチ開き、一気に全開し2,722グラムの
第一子誕生。うれしい報告であり、私の役目は終了した。

HさんとNさん、二人とも妊娠中はトラブルも少なく過ごされたのだろう。
しかし、現実は綱渡りのようなお産では?と鍼灸師としては考える。

お二人にとっては初めてのお産であるゆえ仕方がないのかも・・・でも自然
なお産を望む気持ちが強かったので鍼灸治療にたどり着いたのであろう。

つまり、ご自分の状態において現代医学では自然なお産は期待できず、人工
的なお産に抵抗感があって、何とかしたいと思われたから来院されたのでは?

逆子の場合でも、32週までには自然に治ると言われ、治っていないと帝王切
開の手術予定日を決められるということがある。それからすぐに来院される
ならばまだ良い。手術間近では間に合わないケースもある。

どこに問題があるのかはそれぞれの立場で考える事が必要であろう。
鍼灸師としての私は、情報の提供が少な過ぎるのではないかと考える。

あちこちで鍼灸院の看板は見られるし、鍼灸専門学校・大学まであり、多く
の鍼灸師が誕生しているので情報が少ないことは考えづらい。
多くの鍼灸師が対応出来ていないことから情報の発信に繋がらないのだろう。

情報が少なければ一般には認知されず、人工的なお産になってしまう方も多
く、望まれたお産とは違ったと思われる方もいるだろう。
寺子屋お産塾は情報提供の大きな役割を持っているゆえ、私もその一員とし
て努力したい。
 
 
                        ☆〜☆

    
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      ■ 発行者   鍼灸師  田中 寿雄
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