2009/05/16
知の食卓167
フィトンチッド Phytoncide
Phytoncides are organic compounds which are secreted by plants and
inhibit the activity of other living things. Even if the word Phytoncide
is not well known in general, human beings have used Phytoncides since
ancient times. For example, mosquito stick contains pyrethrin, a type
of pesticide. Horyuji temple is famous for being the oldest wooden
building in the world. Horyuji temple was mainly built from Japanese
cypress (white cedar) 1380 years ago. Japanese cypress contains a
terpenoid compound that is a Phytoncide, and is resistant to pest.
「フィトンチッド」という言葉を聞いたことがありますか。聞いたことが
なくても利用したことはあると思います。「フィトンチッド」の「フィトン」
は、「植物」を意味するギリシャ語であり、「チッド」は、「殺す」を意味
するラテン語です。1930年代にロシアのB.P.Tohkin博士によって作られたロ
シア語の造語です。「フィトンチッド」は、「植物から放出され他の生き物
を殺す物質」という意味です。
人間は、古代からフィトンチッドを利用してきました。例えば、蚊取り線
香は、殺虫剤であるピレスリンを含んでいます。法隆寺は世界最古の木造建
築として有名で、主にヒノキによって1380年前に建造されました。ヒノキは、
テルペンを含んでおり、害虫などを寄せ付けないのです。多くの仏像は、飛
鳥時代までは、クスノキで作られ、奈良時代からはヒノキで作られるように
なりました。クスノキから抽出されたショウノウ(樟脳)は、防虫剤として
服を保存するために長い間使われてきました。スギとヒバは、ヒノキチオー
ルを含んでおり、多くの日本の木造家屋は、スギとヒバで建てられてきまし
た。ササ餅やサクラ餅は、保存に効果があることが知られています。サクラ
はクマリンを含んでおり、ササはフェノールを含んでいます。いずれも殺菌
作用があります。日本人は、ワサビやニンニクの殺菌効果を知っていたので、
食物保存に用いてきました。
ここで紹介したピレスリン、テルペン、ショウノウ、ヒノキチオール、ク
マリン、フェノールは、いずれもフィトンチッドです。
法隆寺とヒノキ
法隆寺の創建は、606年であるとされています。世界最古の木造建築とされ
る法隆寺は、約1400年前に建てられたことになります。法隆寺の宮大工であ
った西岡常一氏によれば、法隆寺の建物は、ほとんどがヒノキで、柱や梁、
桁など主要なところは、すべて樹齢1000年以上のヒノキが使われており、創
建当時のままだとのことです。それらのヒノキが1400年を過ぎてもなお健在
なのです。表面を削れば、ヒノキの香りがしたそうです。古代人は、ヒノキ
の木目がまっすぐに通り、材質が緻密で粘りがあること、虫害にも、湿気に
も強いことをよく知っていたようです。マツやケヤキ、スギも一部使われて
いるそうですが、寿命はマツやケヤキが400年程度、スギが700年程度と短く、
建て替えのたびに、取り換えられたようです。通常の家屋が数十年程度の寿
命であることを考えると、数百年持つのは素晴らしいことだと思いますが。
日本のヒノキは、古代から寺の建造のたびに使われ、近年はタイワンヒノキ
が使われるようになりました。タイワンヒノキで見つかったのがフィトンチ
ッドのヒノキチオールです。ヒバにもヒノキチオールが含まれています。日
本のヒノキにはテルペンが含まれています。これらのフィトンチッドのおか
げで法隆寺は世界遺産となれたのかもしれません。
「参考文献」
「フィトンチッドってなに?」谷田貝光克著、第一プランニングセンター、2005
「法隆寺を支えた木」西岡常一、小原二郎、NHKブックス、1978


