[聖書を読んでみよう 士師記11]
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______ __ __ __ 聖書を読んでみよう
| __ |__| |--| |-----. 旧約聖書第7巻「士師記」
| __ < | _ | | -__| 第11回 エフタ(3)、イブツァン、エロン、アブドン
|______/__|_____|__|_____| (12章)
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■■■■■ 帰ってきたエフタ(3) ■■■■■
□□□□□ 晩年(12章1〜7) □□□□□
エフタ率いるギレアド勢が敵を追い払ったあとで、エフライム族がぞろぞろ
とやってきて、「戦う時になんで俺たちを呼ばなかった!お前を家もろとも
焼き払ってやる」とエフタを脅したと記録されています。
この一族は、ギデオンのときにも同じことをしています。(*1)
でも今回は相手が悪かった。勇者とも呼ばれ、トブにいたときは周囲を圧し
ていたほど腕におぼえのあるエフタが、自分の愚かさのゆえに娘を犠牲にし
てしまったという最悪の精神状態でいたのです。そんなところへケンカを売っ
て、ギデオンの時のように低姿勢で相手してもらえるわけもありませんでし
た。
エフタが、エフライム族に何の権利もないことを宣言すると、エフライム族
はエフタを侮辱する物言い。結果、エフタが率いるギレアドとエフライム族
との間に内戦が発生し、エフライムは打ち破られて4万2千人も倒されてしま
いました。
その後エフタは、長老たちが約束したとおりイスラエルを裁く者となりまし
た。士師として6年間をつとめたのち、死んでギレアドに葬られたと記録され
ています。
■■■■■ イブツァン(12章8〜10) ■■■■■
9人目の士師はイブツァン。ベツレヘムの出身と記録されています。
ベツレヘムというと、キリストであるイエスが生まれた馬小屋のある町を思
い出される方もあるかと思いますが、ユダ族の地にあったそのベツレヘムと
は別に、ゼブルン族の地にもベツレヘムがありました。
この当時はユダ族の町の方を「ユダのベツレヘム」と呼んでいますが(*2)、
ここではただの「ベツレヘム」なので、イブツァンはゼブルン族の出身と考え
られます。
名前の意味は「速い」であろうと言われています。他には、治世が7年だった
ことと、30人の娘を一族以外の者に嫁がせ、30人の息子に一族以外から嫁を迎
えたことくらいしか、記録されていません。
一族以外といっても、ヤハウェが12部族それぞれに割り当てた土地が他の部
族に移管されてはならないので、「ゼブルン族の中の他の一族」との縁組み
でしょう。ともかく周囲に「縁組したい」と思わせるだけの有力者だったの
でしょう。
■■■■■ エロン(12章11〜12) ■■■■■
10番目の士師は、ゼブルンの人エロン。名前の意味は「テレビンの木」です。
この人はイブツァン以上に謎で、治世が10年ということのほかは埋葬地しか
記録がありません。
聖書ではテレビンの木のそばで祭事が行われることが多いのですが(*3)、門
前町のようなところこの出身だったのでしょうか。あるいは、まったくの想
像ですが、祭司ではないとしても(祭司になれるのはレビ族だけ)日本でい
う寺男のような人物だったのかもしれません。
■■■■■ アブドン(12章13〜15) ■■■■■
11番目の士師はピルアトン人のアブドン。治世は8年。埋葬地は[アマレク人
の山、エフライムの地にあるピルアトン]と記録されているとおり、エフラ
イム族の代表です。(*4)
ピルアトンという名前自体が「丘の頂上」の意味ですが、なぜそこが「アマ
レク人の山」と呼ばれているのかはわかりません。アマレク人との激戦を記
念して敵の名を冠する丘があったのでしょうか。
アブドンという名は「礼拝の場所」の意味なので、「ピルアトンのアブドン」
というと「丘の上の教会」という感じですね。会堂司のような立場だったの
かもしれません。
この人も子だくさんで、さらに70頭のロバを有していたと記録されています
から、裕福な家の出身だったのでしょう。
余談になりますが、本誌では士師を紹介するにあたって「左利きのエフド」
などとコピーを考えようとしましたが、トラとヤイルもそうでしたが、イブ
ツァン、エロン、アブドンあたりも目立った業績は記録されておらず、あだ
名のつけようがありません。
次号から紹介する12人目の士師サムソンはまた大活劇となりますが。
でも、後世の人々にとっては「ヤハウェにそむいたせいで苦しい時代があっ
て、でもヤハウェは士師を送って救ってくれた」という記録のほうが歴史の
教訓となりますけど、その時代にリアルに生きていた人々にとっては、後世
から「この時代は何もなかった」といわれるくらいの方が、平和でいい時代
だったのではないでしょうか。
たとえば日本の近代史で大正時代というのは印象が薄いですが、明治時代も
昭和時代も戦争と切り離しては語りえない激動の時代だった一方で、大正時
代こそ当時の人々にとっては大正デモクラシーの時代だったように。(*5)
対外戦争で活躍した士師たちの記録は勇ましく、後世の私たちが読み物とし
て読むにはおもしろいです。でもその時代にリアルに生きていた民にとって
は、目立った記録がなく読んでもおもしろみに欠ける士師たちの時代こそ平
穏無事な時代であり、しかも「イスラエルがヤハウェを裏切る→ヤハウェが
イスラエルをこらしめるために外国軍を侵入させる」ということがなかった
時代ということですから、宗教面でも倫理道徳の面でも安定していた時代、
ヤハウェとイスラエルとにとって幸福な時代だったわけです。
この平成の時代が、将来の日本の子供たちが現代史を学ぶ際に「この頃って、
何もなかったんだな。まるで大正時代みたい」(教会の子供たちからは「士
師エロンの時代みたい」)と言われるようであってほしいと思います。
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*1 士師記8章1〜 →http://www.nunochu.com/bible/07_judges/jdg07.html
*2 「エフラタ、すなわちベツレヘム」はヨシュア記15章59でユダ族に割り当
てられ、「ベツレヘム」はヨシュア記19章15でゼブルン族に割り当てられて
います。たぶんゼブルンの方が名前としては古いのでしょう。それと区別す
るために、士師記と同じ時代のことを記録しているルツ記などで「ユダのベ
ツレヘム」と呼んでいるのだと思います。
現在では、ユダのベツレヘムは「キリスト降誕の地」として記念され、聖誕
教会という大きな教会が建てられていますが(2002年にテロリストが立てこ
もった所です)、ゼブルンのベツレヘムはシナゴク跡があるだけだそうです。
*3 ヨシュア記24章26には、聖所にテレビンの木があったと記録されています。
天使がギデオンを士師に任じたのもテレビンの木の下(士師記6章11)、ギデ
オンの子アビメレクが王を僭称したのもテレビンの木のかたわらでした(同
9章6)。
情景としては、神社の御神木に近いものがあるように思います。(ただし、
テレビンの木自体が神聖視されていたとか、ヤハウェがこの木に降りたとい
う記録はありません。)
下記、関西学院のサイトで、テレビンの木が紹介されています。
http://www.kwansei.ac.jp/Contents_5456_0_209_0_13.html
*4 歴代誌下27章14にも[エフライムの子らの一人ピルアトン人]という記述
があります。
*5 大正時代にも米騒動、原首相暗殺、治安維持法などの面はありますが、戦
争の時代だった明治・昭和に比べると、普通選挙法の成立や婦人参政権運動
の盛り上がりなどで大正時代は注目されるのではないかと。
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[〜]は聖書の引用です。本誌では特にことわりのない場合、新共同訳聖書
から引用しています。
(c)共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
(c)日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988
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