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2008/05/01

[聖書を読んでみよう 士師記09]

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 ______ __ __    __        聖書を読んでみよう
|   __ |__|  |--|  |-----.  旧約聖書第7巻「士師記」
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|______/__|_____|__|_____| 第9回 トラ、ヤイル、エフタ(1)(10章〜)
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■■■■■ トラとヤイル(10章1〜5) ■■■■■

第六番目の士師は、イサカル族のプアの子トラ。
部族の祖であるイサカルにもプアとトラという息子がいたので(*1)、それに
ちなんでイサカル族にはよくある名だったかもしれません。

このトラが、ギデオンの庶子アビメレクののちに[イスラエルを救うために
立ち上がった]と記録されています。
ただ、イスラエルをどんな困難から救うためだったのかは記録にありません
し、お決まりの「イスラエルが悪を行った」もありません。アビメレクによ
る内乱で乱れたイスラエルを混乱状態から救ったということでしょうか。
彼は23年間イスラエルを裁いた(統治した)のち、死んで葬られました。

トラの次には、ギレアド人ヤイルが7人目の士師として22年間イスラエルを裁
いたと記録されています。ギレアドとはマナセ族の一氏族です。

「士師」という漢語は、日本のキリスト教界では「さばきつかさ」と訓読み
されます。ヤイルの名は「(神が)照らしだすように」という意味であるこ
と、また具体的な業績が記録されていないことから、彼も軍事面での士師と
いうより、もめごとを裁いて正義を照らし出すという意味での「さばきつか
さ」だったのかもしれません。


■■■■■ 帰ってきたエフタ(1) ■■■■■

□□□□□ エフタの帰還(10章6〜11章11) □□□□□

8人目の士師はエフタ。しかし聖書はエフタの名を登場させる前に、あ然とす
るほどのイスラエルの背信ぶりを記録しています。
[イスラエルの人々は、またも主【ヤハウェ】の目に悪とされることを行い、
 バアルやアシュトレト、アラムの神々、シドンの神々、モアブの神々、ア
 ンモン人の神々、ペリシテ人の神々に仕えた。]
[彼らは主【ヤハウェ】を捨て、主【ヤハウェ】に仕えなかった]

これまでにも時々ふれましたが、神ヤハウェと人との関係は結婚にたとえら
れます。ヤハウェとの契約にそむいて他の神々をおがむというのは、結婚の
契りにそむいて他の異性と乱れた関係を結ぶのと同じなのです。
しかもイスラエルは、一時の気の迷いではなくヤハウェを捨ててしまったの
です。
結婚の誓いに背を向け、他の異性と次々に関係し、しかも一時の気の迷いで
はなくついに家庭を捨て去った。ところが身を寄せた相手は何の支えにもな
らず、転落につぐ転落。
…サスペンスドラマにでもありそうな話ですが、この時のイスラエルはまさ
にそういう状態だったのです。ヤハウェとの契りをすててカナン人の神々に
走ったあげく、カナン人に支配されることになったのですから。

今回、ヤハウェがイスラエルを売り渡した敵は、かつて「左利きのエフド」
に追い払われたアンモン人を中心に、「牛飼いシャムガル」に討たれたペリ
シテ人が連合したものでした。以来18年もイスラエルを[打ち砕き、打ちの
めした]ため、イスラエルはようやく悔い改めてヤハウェに助けを求めまし
た。
ところがヤハウェは「何度もあなたがたを救ったのに、それでもわたしを捨
てて他の神々に仕えたではないか。もうあなたたちを救わない。あなたたち
が頼る神々に助けを求めて叫べば、その神々が救ってくれよう」と応えます。
ついにヤハウェはイスラエルを見捨てたのか?

しかし、イスラエルが異教の神々を一掃してヤハウェに仕えるようになると、
ヤハウェは[イスラエルの苦しみが耐えられなくなった]と記録されていま
す。
一方イスラエルは、アンモン人が集結してギレアドに布陣したのに応じて、
ミツパに布陣しました。でもイスラエルにはまだリーダーがいません。これ
までの戦いのように、ヤハウェが士師を擁立→その士師が軍を召集、という
パターンではないのです。イスラエルは布陣したというよりも、「ヤハウェ
はきっと、私たちの悔い改めが心からのものだとわかってくださる」と信じ
て集まるしかないほど限界だったのでしょう。

ここでようやく第8の士師エフタが登場するのですが、話は少しさかのぼりま
す。
エフタは、アンモンが布陣したギレアドの地の出身でした。エフタの父の名
がギレアドですから、父はこのギレアドの地の有力者、ことによるとギレア
ド氏の頭領かもしれません。(*2)
しかしエフタは、ギレアドが遊女に産ませた子だったたため、父の正妻の子
たちから「おまえが相続するものはない」と追い出されたのです。これにギ
レアドの人々も調子を合わせ、エフタはギレアド家からだけでなく、ギレア
ドの地から追い出されてしまいました。

もしかするとエフタが追い出されたのは、アブラハムがイサクを跡継ぎに定
めたあと側女の子らを遠方に移住させたのに倣うものでしょうか。有力者の
家に内輪争いなど起きては迷惑と思えば、一族だけでなく土地の人々も「妻
の子」ではないエフタをまず除くのに賛成したでしょう。
あるいはもしかすると、ギレアド人たちの脳裏には、前号で紹介したアビメ
レクのことがあったかも。ギデオンの正妻の子らを皆殺しにし、ついには町
ごと滅びたあのアビメレクです。「士師ギデオンの側室の子」アビメレクは、
「有力者ギレアドの庶子」エフタと重なるように思います。

追い出されたエフタがたどりついたのはトブという地でした。「ギレアド」
の意味は「岩だらけ」、「トブ」の意味は「良い」ですから、これは「住み
にくい地を出てよい地に着いた」ということかと思いきや、[エフタのもと
にはならず者が集まり、彼と行動を共にするようになった]と記録されてい
ます。ならず者どもと共にというのは、あまりよい行動ではないでしょう。

ギレアドの人々が指揮官に選んだのは、自分たちが追い出したこのエフタだっ
たのです。
エフタは「勇者であった」と記録されていますから実績はあったのでしょう。
「エフタが帰ってきて指揮をとれば自分たちはアンモン人と戦える」と口説
き始めた長老たちですが、逆に言えば「いざという時の守り」をみずから捨
てていたわけですから、まさに平和ボケ。
こんな厚顔無恥な長老たちにエフタが「わたしをのけ者にし、父の家から追
い出しておいて、困ったことになったからと言って、今ごろなぜ」と応えた
のも当然でしょう。

これに長老たちは「今だからこそだ」と答えました。
トラブルの種になりかねないと思ってエフタを追い出したのが、今や実際に
ならず者たちとともにいて、トブは悪い意味で梁山泊状態。人々にとっては、
エフタは関わりたくない存在だったでしょう。
しかしそういっていられるのも平時だけ。エフタにとっては「何を今ごろ」
ですが、人々にとっては「アンモンに蹂躙されんばかりの今だからこそ」だっ
たのです。

「乱世の英雄、治世の姦雄」という言葉がありますが、長老たちもこのよう
な有事には、毒(エフタ)をもって毒(アンモン)を制するくらいの思いが
あったかも。

だとするとエフタとしてはなおさら、「今だからというなら、仮にヤハウェ
の加護により私が敵を一掃したとして、また平時になったら追い出されるわ
けかよ」ということころでしょう。
しかし長老たちは「指揮官となって敵と戦ってくれるなら、ギレアドの全住
民の頭【かしら】に就いてほしい」と申し入れ、しかも「このやりとりの証
人はヤハウェだ」と誓いました。
この宣誓を受けてようやく、エフタは帰ることにしたのです。


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*1 創世記46章13。

*2 あるいはギレアド氏族の住むギレアドという地には、ギレアドという名は
よくあるものだったかもしれません。しかし「父ギレアドの家を追い出され
る」イコール「ギレアドの地を追い出される」となったので、少なくともエ
フタの父は有力者ではあったのでしょう。


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[〜]は聖書の引用です。本誌では特にことわりのない場合、新共同訳聖書
から引用しています。
(c)共同訳聖書実行委員会
  Executive Committee of The Common Bible Translation
(c)日本聖書協会
  Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988 

ただし以下に限り、筆者が手を加えていますので、あらかじめ御承知おきく
ださい。

  新共同訳聖書の旧約で「主」と書かれている箇所は適宜、読み方を添え
  て「主【ヤハウェ】」と表記しています。

  誤読を招きやすいと思われる漢字は、次の例のように平仮名で表記する
  場合があります。
    僕→しもべ

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