[聖書を読んでみよう 士師記06]
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______ __ __ __ 聖書を読んでみよう
| __ |__| |--| |-----. 旧約聖書第7巻「士師記」
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|______/__|_____|__|_____| 第6回 ギデオン(2)(6章33〜8章3)
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■■■■■ ギデオンの戦い(6章33〜8章3) ■■■■■
□□□□□ ミディアン来襲(6章33〜40) □□□□
またミディアン人が、同盟する諸民族とともにやってくる季節になりました。
敵は東からやってきてヨルダン川を越え、イズレエル平野に布陣しました。
このとき、[主の霊がギデオンをおおった]と記録されています。「着た」
「とらえた」とも訳せる言葉によって、聖霊がギデオンとともにいるように
なったと言っているのです。
そんなギデオンが角笛を吹くと、ギデオンの父ヨアシュ家からは本家筋とい
えるアビエゼルが一族を連れてやってきました。このアビエゼルがマナセ族
全体に呼びかけると多数が参陣。さらにアシェル族、ゼブルン族、ナフタリ
族に檄を飛ばすとそこからも兵力が合流しました。(*1)
アビエゼルはおそらく、マナセ族の重鎮として近隣部族にも名の知れた人物
だったのでしょう。一方のギデオンはアビエゼル一族の中でもヨアシュ家の
末っ子です。主の霊がギデオンをおおっていて、それがアビエゼルにもわかっ
たからこそ、本家の頭領が支族のヒヨっ子の指揮下に参じたわけです。
イスラエルの陣容が整い決戦が間近になると、ギデオンはもう一度ヤハウェ
に求めました。「羊一匹分の羊毛を置いておきますから、その羊毛だけ夜露
で濡らして地面が乾いているようにしてください。そうすれば納得します。」
翌早朝、ギデオンがその羊毛をしぼってみると鉢にいっぱいの水が出ました。
ギデオンがさらに「今度は羊毛だけ乾いて、土には一面に夜露がくだるよう
にしてください。」と求めると、翌朝にはそのとおりになっていました。
不思議な記録です。通例、「奇跡を見せろ」という者には「見たって信じな
いでしょ」とばかりに却下されるか、「事のあとでこれこれのようになるの
が証拠だ」と後出しにされることが多いように思うのですが。(*2)
よくわかりませんが、ヤハウェがギデオンの求めに応じていることからたぶ
ん、ギデオンはすでに信じていてただ100%の確信を120%までにしたいという
ことかもしれません。
□□□□□ 敵は幾万(7章〜8章3) □□□□□
さて、ギデオン率いるイスラエルは3万2千人。ミディアンとその同盟軍は13万
5千人。敵は4倍以上です。
しかしギデオンはヤハウェから確信を与えられた上に、「自分なんかが指揮
をとるなんて」と思ってたわりには多数が指揮下に馳せ参じてくれました。
おそらくギデオン自身「4倍くらいはなんとかなる」と思ったのではないでしょ
うか。ところがその思いを見透かすように、ヤハウェは「味方が多すぎる。
これではイスラエルは『神の力ではなく自分たちの力で勝ったのだ』と言う
だろうから減らせ」と言い出したのです。そしてまず「怖がっている者を帰
らせろ」と指示しました。
臆病というものは伝染しますから、そういう者が少しでもいたら取り除いた
ほうがいいでしょう。ところがギデオンがヤハウェの言葉を告げると、「少
しでもいたら」どころか2万2千が帰ってしまったのです。
ギデオンにしてみれば「え?そんなに?」というところでしょうが、ヤハウェ
は残った1万でもまだ多いといって選り分け、300人だけを残らせたのです。
ヤハウェが、ギデオンに夜襲を命じる一方で「もし恐ろしいなら、従者プラ
とともに偵察に行け。そうすれば勇気を得て切り込むことができる」と助け
舟を出しているところを見ると、ギデオンは「え?300人?マジですか?」と
いう気分だったのではないでしょうか。
ギデオンがプラとともに敵陣にまぎれこんでみると、敵は「いなごのように
数多く、平野に横たわっていた。らくだも海辺の砂のように数多く、数えき
れなかった。」という陣容。ところが、ギデオンの耳に次のような敵兵の会
話聞こえてきました。
「わたしは夢を見た。大麦の丸いパンが我が陣営に転がり込み、本陣のテ
ントまで行って一撃を与え、ひっくり返してしまった。」
「その夢の意味はイスラエルのギデオンの剣にちがいない。神はわれわれ
をすべて彼の手に渡されたのだ。」
これを聞いたギデオンは、その場でひれ伏したと記録されています。別の訳
では「礼拝した」です。
敵陣の中で夜中にヤハウェを礼拝せずにいられなくなるくらい、「すでにミ
ディアン人には『自分たちがギデオンによって打ち倒される』ということが
啓示されている」と知った驚きは大きいものでした。
イスラエル陣に帰ったギデオンはすぐさま出撃の準備を整えました。たった
300人の軍をさらに100人ずつ3隊にわけ(*3)、松明【たいまつ】と角笛を持っ
て敵陣を包囲する作戦です。行動が敵にばれないように、松明は水がめで隠
します。そして合図とともに、角笛を吹き鳴らし、鬨【とき】の声をあげて
「主【ヤハウェ】のために、ギデオンのために」と叫ぶように指示しました。
これまでの記録からは、ギデオンの性格として「私のために戦え」と指示し
たとは考えにくいですね。増長してしまった可能性がないではないですが、
それよりも、「ヤハウェが立てた士師の名において」という意味であるか、
あるいは「伐採する者」という意味の自分の名にかけて「ヤハウェのために、
敵を切り倒す者のために」という意味ではないかと思います。
準備ができたイスラエル軍は、夜中に敵の歩哨が交代するころあいを見計らっ
て、角笛を吹き、水がめを割って松明をかざし、「ヤハウェのために、ギデ
オンのために剣を」と叫び声を上げました。しかし切り込むのではなく「各
自持ち場を守り、敵陣を包囲」していると、敵軍は叩き起こされて総立ちに
なり、叫び声をあげて敗走し、さらにヤハウェが同士討ちを起こさせたと記
録されています。
ここで詳細には書かれていませんが、包囲戦では完全に囲むよりも、あえて
一箇所をあけて逃げ道を示すのが得策だと言われます。完全に囲んでしまう
と「窮鼠猫を噛む」で命がけで抵抗されることもありますが、「脱出できそ
うだ」と思わせることでかえって反撃させないようにすることができるので
す。
具体的に記録されてはいませんが、算を乱した敵が同士討ちしながら壊走し
たという記録から察するに、ミディアンの陣をぐるりと囲んだ松明は3方向だ
けにあって1方向をあけていたのではないかと思います。とにかく、13万5千
の軍勢はたった300人に驚いて、まるで源氏と対峙した平家の軍勢が富士川の
水鳥の羽音に驚いて逃げたように(*4)、ヨルダン川まで逃げに逃げたのでし
た。
もう一つ気になるのは、ギデオンが偵察したときに見た「海辺の砂のように
数多くのラクダ」です。
ラクダは大きく力が強い上に気性が荒い動物で、熟練した乗り手でないと御
すのが難しいと言われています。そんなラクダが数限りなくいるところでい
きなり周囲が大騒動となったのです。驚いたラクダが興奮状態となり大暴走、
その大群に踏み殺されたミディアン兵というのもかなりいたのではないかと
思います。
一度は帰されたイスラエル北部の各部族も、戦況を見て300人に合流しミディ
アン人を追撃。
ギデオンも、戦場から近いエフライム族に「ベト・バラ(位置未詳。「渡り
場」の意味)まで追い散らせ」と檄を飛ばしました。これに応えてエフライ
ム族も出陣し、ミディアンの二人の将軍、オレブとゼエブを捕らえて倒した
のです。
ところがエフライム族は、二人の敵将の首級をギデオンのもとに持っていっ
たとき「なんで最初からわたしたちを呼ばなかったのか」と激しく詰め寄っ
たのです。
あるいはエフライム族は、マナセ族ごときのしかも枝葉の一家の出であるギ
デオンの指揮を受けたのが気に入らなかったのかもしれません。もしかする
とギデオンも「自分のような名もない者の召集に応じるだろうか」と気が引
けたのかもしれません。士師は王ではないので「ヤハウェが立てた者」とい
うことが理解されていなければ、エフライム族がそう思っても無理はありま
せん。
けれどもギデオンも、自分に手柄の一つもあったわけではありません。それ
で「神がなさったことでしょ。その結果、敵将の首をとるという第一級の名
誉がエフライム族のものになったでしょ。私なんて、何にもしてませんよ。」
と事実を整理すると、エフライム族も面子が守られて憤りをやわらげたので
した。
もしもギデオンが勇猛果敢な大勇者で、この場面で「何を言ってやがる」な
どと言えるような男だったら、エフライム族の不平によってイスラエルは分
裂したかもしれません。そう考えると、ヤハウェが今回「ただの平凡な男」
を士師として擁立したところに深遠なる知恵が示されているのかもしれませ
ん。
さて、ヨルダン川の西での戦闘で12万人の敵を討ち取りましたが、残る1万
5千が二人の王とともにヨルダン川の東へ逃れました。ギデオンの戦いはま
だ続きます。
、
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*1 アビエゼルが使者を送ったのはイスラエル北部に住む部族。南部の部族
に使者を送らなかったのは、敵が来たので散り散りに隠れているだろう各部
族を探そうとするには、イズレエル平原に陣取った敵によって南部との連絡
が分断されたためでしょうか。
*2 マタイ16章1〜4、ルカ2章12、出エジプト記3章12など。
*3 かつてアブラハムが、東方から来た王たちの連合軍と戦ったときも、
たった318人の手勢をさらに分散させて敵を襲い勝利しています。創世記14
章。→http://www.nunochu.com/bible/01_genesis/gen20.html
*4 1180年に、再挙兵した源頼朝とこれを追討に来た平家が富士川で対峙し
たときの史実。夜間、平家の背後を衝こうとした源氏の一隊が富士川に馬を
乗り入れたとき、驚いた水鳥がいっせいに飛び立ち、その羽音で大混乱に陥っ
た平家は総崩れで退却したと伝えられます。
源氏が大軍であり士気旺盛だったという点はギデオンの戦いと正反対ですが、
安房(千葉)で再挙兵した時点の頼朝勢も300騎だったとか。
→http://ja.wikipedia.org/wiki/富士川の戦い
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[〜]は聖書の引用です。本誌では特にことわりのない場合、新共同訳聖書
から引用しています。
(c)共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
(c)日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988
ただし以下に限り、筆者が手を加えていますので、あらかじめ御承知おきく
ださい。
新共同訳聖書の旧約で「主」と書かれている箇所は適宜、読み方を添え
て「主【ヤハウェ】」と表記しています。
誤読を招きやすいと思われる漢字は、次の例のように平仮名で表記する
場合があります。
僕→しもべ
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