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「聖書はあるけど読んでない」「読みかけたけど途中でやめた」「難しそう」など、聖書を本棚のコヤシにしている人。むずかしい神学は抜きにして、読み進めるためだけの説明をしますから、一緒に読んでみませんか。

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2008/03/25

[聖書を読んでみよう 士師記06]

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 ______ __ __    __        聖書を読んでみよう
|   __ |__|  |--|  |-----.  旧約聖書第7巻「士師記」
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|______/__|_____|__|_____| 第6回 ギデオン(1)(6章1〜32)
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■■■■■ 平凡なギデオン(6章1〜32) ■■■■■

「アブラハムには七人の子」という歌がありますが、聖書にはアブラハムの
息子が8人登場します。「一人はノッポで、あとはチビ」だったかは書かれて
いません。このうち、アブラハムが晩年に再婚してできた6人の男児(*1)の1人
ミディアンから栄えたのが、ミディアン人です。

士師デボラの時代の後、イスラエルがまたもヤハウェに背をむけたとき、ヤ
ハウェは7年間、このミディアン人によってイスラエルを圧迫しました。
イスラエルはミディアンの脅威のために「山の洞窟や、洞穴、要塞」に隠れ
住むようになりました(*2)。イスラエルが種をまいても、収穫期になればミ
ディアンとその同盟者に荒らされ、実りも家畜も残しません。[イスラエル
は、ミディアン人のためにはなはだしく衰えた]とあります。

ここにいたってイスラエルは悔い改め、ヤハウェに助けを求めました。です
が、ヤハウェは士師ではなく預言者を送って、イスラエルに告げました。
 わたしは、エジプトで奴隷の家にいたあなたたちを導き出し、エジプトや
 すべての敵から救い出し、敵を追い払ってその地をあなたたちに与えた。
 そのわたしが、アモリ人の神を畏れ敬ってはならない、と告げておいたで
 はないか。
 だがあなたたちは、わたしの声に聞き従わなかった。

この預言者が語ったのが、イスラエルが山の洞窟などから出てきて集まった
ときだとしたら、これはキツイ。
一年のうちで「ミディアン人を恐れないで集まれる時期」があるとしたら、
ミディアン人が略奪しつくして帰っていった直後くらいしかないでしょう。
打ちのめされて、それでも次の収穫のための種をまこうか、でもまいてもど
うせまた奪われるんだよなと絶望的になっているところへ、自業自得である
ことを思い出させられたわけです。

しかしヤハウェは、なぜこうなったのかイスラエルに悟らせるために預言者
を送る一方で、今回もまた士師を立ててイスラエルを救おうとしていました。

今回、ヤハウェが選んだのは、オトニエルのように実績のある者でもなけれ
ば、エフタのように豪胆な者でもありませんでした。マナセ族のギデオンと
いう、他の人と同じようにミディアン人から逃げて住んでいた男です。
彼のところに天使が現れて[勇者よ、主【ヤハウェ】はあなたと共におられ
ます。]と言うと、彼はこう答えました。「ヤハウェが共にいるなら、なぜ
イスラエルはこんな苦境に?先祖代々『ヤハウェは我々をエジプトから導き
出した』と語り伝えさせた驚くべき御業【みわざ】はすべて、どうなってし
まったんですか。」

これに対し聖書は、「天使は」ではなく「主【ヤハウェ】は」こう言ったと
記録しています。
[あなたのその力をもって行くがよい。あなたはイスラエルを、ミディアン
人の手から救い出すことができる。わたしがあなたをつかわすのではないか。]

これは、ヤハウェがモーセを派遣したときの言葉(*3)とそっくりです。モー
セの時とかわらない表現でギデオンを召し上げることで「あなたがいう『驚
くべき御業』は、私がモーセを派遣した結果ではないか。それと同じによう
に、この私があなたを派遣するのだ」ということなのでしょう。

そうは言ってもギデオンはあまりにも普通の人で、小麦を脱穀するにもミディ
アン人を恐れて物陰にこもるほどです。(彼が特に臆病なのではなく、この
時のイスラエル人はみなミディアン人を恐れて平地に出られなかったのです。)

まして特に強力というわけではないマナセ族(*4)で、大した家柄ではない一
族で、家族の中でも成人男子では一番の年下。
私なんかがどうすればイスラエルを救えるでしょうかと、これまたモーセが
イスラエル救出の任務を辞退しようとしたときのようです。(*5)

しかし、天使を遣わしたヤハウェは「わたしが共にいるのだから、ミディア
ン人がどんなに多くても、一人の敵を倒すように倒せる。」と宣言しました。

ヤハウェが一緒にいるのだから問題ない、と言われれば「普通のイスラエル
人」であるギデオンにとっては十分です。ただ、この人は本当に天使なので
しょうか?(*6)
そこでギデオンは、「供え物を持ってくるから証拠を見せてください」と頼
んで、子ヤギや、発酵させていないパンなどを持ってきました。
天使はそれらを岩の上に置かせると、杖の先でチョン。すると[岩から火が
燃え上がり、肉とパンを焼き尽くした]のです。

気づくと、天使の姿は消えていました。けれど「自分がここにいる」という
ことを炎で表すのは、ヤハウェがしばしば使う手段です。(*7)
確かに天使だったのだと知ったギデオンに、ヤハウェは「シャロームがあな
たと共にある。恐れるな。あなたが死ぬことはない。」と告げました。

シャロームとは、平和という意味です。ギデオンは「絶対に安全だ。世界の
どこよりも安全だ」という保障を与えられたのです。
ところが、こうして安心を与えたヤハウェはいきなりその夜とんでもない指
令を出します。カナン人の神であるバアルにささげられた祭壇を壊せという
のです。さらに、ヤハウェにささげるいけにえを燃やすために、バアルの祭
壇のかたわらにあるアシェラ神の像を切り倒して薪にしろと。

イスラエルが口先だけでなく心から反省してヤハウェに帰ったというなら、
イスラエルの中から異教を取り除くのが当たり前です。
しかしギデオンは白昼堂々とこれを実行することはできず、召使の中から信
用できる者10人を選んで夜中にこれを実行しました。まだイスラエルの人々
は、心から異教から離れたわけではなかったようです。

ところが、人々は翌朝すぐに「犯人探し」を始めました。彼らはまだ異教か
ら離れてはいなかったのです。
そしてすぐに、ギデオンの仕業だということを突き止めると、ギデオンの父
ヨアシュに詰め寄って「息子を出せ。殺さねばならない。」と責めたてまし
た。ヤハウェはギデオンに指示するとき「あなたの父のものであるバアルの
祭壇」と言っていますから、ヨアシュはこの異教の祭壇の管理人だったので
しょう。たとえるなら、神主の息子が御神木を切り倒すようなものです。

しかし、ギデオンとは対照的に父ヨアシュは肝が据わっていました。人々に
反論し「あなたたちはバアルをかばって争うのか、バアルを救おうとでもい
うのか。もしバアルが神なら、自分の祭壇が壊されたのだから、自分で争う
だろう。」と言い放ったのです。
人々が反論することさえできずにいるのを見ると、ヨアシュはギデオンを
「エルバアル」と呼びました。新共同訳ではこれは「バアルはみずから争う」
の意味だと補注していますが、ニュアンス的には「バアルが自分で私と戦っ
てみろ」くらいなものでしょうか。このあと彼はミディアンとの戦いの先頭
に立ちますが、ギデオンと呼ばれるよりもエルバアルと呼ばれるほうが多く
なっていきます。


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*1 イサクの系統がイスラエル人。イシュマエルはアラブ人の先祖と言われ
る(イスラム教では、イシュマエルがアブラハムの嫡男であるとされる)。
アブラハムの再婚は創世記25章。
http://www.nunochu.com/bible/01_genesis/gen33.html

*2 要塞といっても、カナンに定着して日が浅いイスラエルが、長期の篭城
が可能な要塞を建設したとは考えにくい。おそらく天然の要害に、ろくな備
蓄もないまま隠れ住んだのでしょう。

*3 ヤハウェはモーセをエジプト救出に派遣したときの言葉は「今、行きな
さい。わたしはあなたをファラオのもとに遣わす。わが民イスラエルの人々
をエジプトから連れ出すのだ。」(出エジプト記3章10)でした。

*4 マナセ族は、民数記25章の記録では出陣可能人数は12部族中6位。しかも
その後、ヨルダン川の西と東に分かれ住み「マナセの半部族」と呼ばれるよ
うになります。

*5 モーセはヤハウェから召しだされたとき、なんとかして辞退しようと必
死でした。→http://www.nunochu.com/bible/02_exodus/exo03.html

*6 天使がいきなり出てきた時点でなぜギデオンは驚かなかったのでしょう。
実は天使は、頭の上に金の輪っかが浮かんで背中に翼があるという突拍子も
ない姿では聖書に出てきません。それでギデオンは「本当にヤハウェからの
天使なのか?」と確認したかったのです。(セラフィムと呼ばれる存在は六
枚の翼を持っていることが、イザヤ書6章に記録されています。)
もう一つ、イスラエル人にとって、ヤハウェの臨在(すぐそばに臨んで存在
すること)はごく普通に感じられたことだったようです。イエスの母マリア
も、大天使ガブリエルの来訪をまったく平然と受け止めています(ガブリエ
ルから告げられた内容には驚愕しますが)

*7 ヤハウェがモーセに最初に現れたときも、燃える柴という現象でした。
→出エジプト記3章。
エリヤが一人で、異教の預言者たちと対決したときも、エリヤが建てた祭壇
を(エリヤが水浸しにしておいたのに)燃え上がらせることで、自分が神で
あることを証明した。→列王記上18章。


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[〜]は聖書の引用です。本誌では特にことわりのない場合、新共同訳聖書
から引用しています。
(c)共同訳聖書実行委員会
  Executive Committee of The Common Bible Translation
(c)日本聖書協会
  Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988 

ただし以下に限り、筆者が手を加えていますので、あらかじめ御承知おきく
ださい。

  新共同訳聖書の旧約で「主」と書かれている箇所は適宜、読み方を添え
  て「主【ヤハウェ】」と表記しています。

  誤読を招きやすいと思われる漢字は、次の例のように平仮名で表記する
  場合があります。
    僕→しもべ

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