[聖書を読んでみよう 士師記05]
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______ __ __ __ 聖書を読んでみよう
| __ |__| |--| |-----. 旧約聖書第7巻「士師記」
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|______/__|_____|__|_____| 第5回 デボラ(4章〜5章)
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■■■■■ 女預言者デボラ(4章〜5章) ■■■■■
□□□□□ デボラとバラク □□□□□
次に登場するのは、女預言者のデボラです。
新共同訳では「デボラとバラク」と小見出しがついていますが、士師と呼ば
れるのはデボラだけ。しかし、これまでの3人の士師とは違って、士師みずか
ら敵軍と戦ってはいません。イスラエルの将はバラクですが、彼も勝利の立
役者ではないのです。
その頃イスラエルの人々はまたヤハウェを裏切り、その結果ヤハウェは、カ
ナン人の王の一人であるヤビンによってイスラエルをこらしめます。
ヤビンは「ハツォルで王位についていた」とあります。士師エフドの時代の
敵がエリコを占領したように、かつてヨシュアが勝利し焼き滅ぼしたハツォ
ル(*1)を、ヤハウェは敵に再建させ、そこからイスラエルを圧迫させたので
す。「ヤハウェはイスラエルの側におられない」ということがイスラエルに
は明白だったでしょう。
ヤビンは鉄の戦車900両(*2)という軍事力を背景に、将軍シセラによって20年
間イスラエルを支配しました。
民が心を入れ替えてヤハウェに助けを求めた頃、デボラは「デボラのなつめ
やし」(*3)と呼ばれた木の下を裁判所として民の訴えを裁いていたと記録さ
れています。
このデボラは、神託を受けて、ナフタリ族のバラクに告げました。
「イスラエルの神、主【ヤハウェ】がお命じになったではありませんか。
『行け、ナフタリ人とゼブルン人一万を動員し、タボル山に集結させよ。
わたしはヤビンの将軍シセラとその戦車、軍勢をお前に対してキショ
ン川に集結させる。わたしは彼をお前の手に渡す』
と。」
ところがバラクは「デボラが一緒に行かないと出陣しない」と言い出すので
す。
これにデボラは、一緒に行くことを同意しましたが同時に、「この出陣でバ
ラクは栄誉を得られず、ヤハウェは将軍シセラを女の手にかけさせる」と預
言しました。
「電光」を意味する勇ましげな名を持ちながら、バラクは臆したのか?しか
し、後の時代にサウル王が、預言者サムエルに従わずに軍事行動を起こした
ことと対比すると(*4)、預言者つまり「神の人」が戦陣に帯同してくれるこ
とを望んだバラクはむしろ「信仰の人」と言えるかもしれません。
□□□□□ 栄誉は誰に? □□□□□
4章10からの戦記とあわせて、5章に記された戦勝賛歌から、戦いの様子を知
ることが出来ます。
イスラエル軍は、ゼブルン族とナフタリ族を主力(*5)として計一万人の陣容。
近くに、モーセの義兄弟であるカイン人ホバブの子孫であるヘベル家が住ん
でいたと記録されていますが、イスラエルに加勢してはしていません。
一方のシセラは、バラクがタボル山にのぼったとの報を受けると、ヤビン王
の戦車900両を中心にキション川に向かいました。歩兵の数は不明ですが、イ
スラエルには1両もない戦車が900両もあるのですから、全体ではかなりの陣
容だったでしょう。
シセラの接近を見たデボラは、バラクに出陣を指示。バラクも、預言どおり
に敵がキション川へと進んでいくところにデボラから「主【ヤハウェ】が、
あなたに先立って出て行かれたではありませんか。」と言われ、すでに勝っ
たとばかりに1万の軍勢とともにタボル山を駆け下りました。
両軍は「メギドの流れのほとり、タナク」でまず激突。戦ううちにキション
川のほとりが主戦場となったところで、ヤハウェは預言どおり敵をバラクの
手に渡しました。シセラとそのすべての戦車、すべての軍勢をヤハウェが混
乱させたと記録されています。
5章20に
「もろもろの星は天から戦いに加わり
その軌道から、シセラと戦った。」
とあります。
ヤハウェがソドムを火で討ったとき(*6)さながら、隕石が流星雨のようにヤ
イル軍を討ったのでしょうか。それではイスラエル軍もただではすまないで
しょう。
雨中の夜戦だったのでは?という説が提案されています。常勝将軍シセラは
おそらく地形(*7)を分析して、「この戦車軍団を前にしてはイスラエルは平
原に降りて戦おうとはしないだろう」と考えていたのではないか。そこへイ
スラエルが夜襲した。「星が天からシセラと戦った」というのは、イスラエ
ルがタボル山を駆け下る間は星で照らした夜空が、星の代わりに大雨を降ら
せたのではないかと。
地面がぬかるんでしまっては、自慢の「鉄の戦車」もろくに動けないでしょ
う。それが、ヤハウェが混乱させたとの意味ではないかと。
ついにシセラは、戦車を降りて走って逃げたと記録されています。ヤビン軍
は全滅し、一人の供もなく逃げたシセラの行き先は、前述のヘベル一族でし
た。実はヘベル一族とヤビン王は友好関係にあったのです。
ヘベル家の長の妻ヤエルにテントに迎えられて、シセラはようやく息をつき、
飲み物をとったあとヤエルに見張りを頼むと泥のような眠りについたのでし
た。
まさかその時、「将軍シセラを女の手にかけさせる」との預言が実現すると
は。シセラが熟睡すると、ヤエルはテントを地面に固定している太く長いペ
グを一本ぬきとってシセラに近づき、こめかみにペグをあてて槌で打ち込ん
だのです。
ペグはシセラの頭を貫通して地まで突き刺さりました。
おそらくバラクも、あの預言を「シセラはデボラの手にかかる」という意味
だと思っていたのではないでしょうか。しかしシセラを追ってバラクがやっ
てくると、そこには陰惨な死にざまのシセラが横たわっていたのでした。
こうして将軍シセラと自慢の戦車軍団を失ったヤビン王は、次第にイスラエ
ルに圧倒され、ついには滅ぼされました。ハツォルはヤハウェが与えたとお
りイスラエルの手に戻ったのです。
この戦いの顛末をデボラが歌った歌が、5章に記録されています。下手に解説
するのも興ざめですので、聖書をお持ちの方は、渡り歩く吟遊詩人が竪琴を
手に歌っていると想像しながら読んでみてください。ここでは一点だけふれ
ておきます。
歌のほとんど最後で、デボラは敵将シセラの母について歌っています。母が
「どうして帰りが遅いのか」と嘆くと、女官たちが「戦利品をわけているの
で遅いのでしょう」と答えている、と。
シセラは負け知らずだったようですね。しかしシセラの母が「帰りが遅い」
と嘆くとき、敵国にはいつも「わが子が帰らぬ人になった」と嘆く母たちが
いたはずです。しかし今度はシセラの母が、「わが子が帰らぬ人になった」
と嘆く番になった。しかも油断したところを女の手にかかるという、武人に
とって不名誉な死に方で。
このくだりを歌いこんだのは、士師デボラが「主婦預言者」(*8)だからこそ
ではないかと思えてなりません。
こののちイスラエルは、40年にわたって平穏だったと記録されています。
■■■■■ おまけ ■■■■■
今週、イスラエルのオルメルト首相が来日していますが、彼のファーストネ
ームはエフドなんですね。英語では Ehud Olmert です。
前号で紹介した「左利きのエフド」も英語聖書では「Ehud」です。元首相の
バラク氏も英語だと Ehud Barak だし、エフドという名前は現代イスラエル
でもよくある、士師にちなんだ名前なのかもしれません。
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*1 ヨシュアの時代のハツォルでの勝利はヨシュア記11章。
⇒ http://www.nunochu.com/bible/06_joshua/jos11.html
*2 鉄の戦車とはもちろん現代のようなタンクではなく、馬に引かせる馬車
から弓や槍で敵を攻撃するもの。
*3 「デボラのなつめやし」は、士師デボラではなく、イスラエルの父祖ヤ
コブの第二夫人リベカの乳母のデボラにちなむもの。彼女は「ベテルの下手
にある樫の木の下」に葬られた(創世記35章8)。そこから生えたものが「デ
ボラのなつめやし」と呼ばれるようになり、それで預言者デボラは「裁きの
座」に選んだのでしょう。
*4 サウル王は、預言者サムエルがヤハウェに戦勝祈願してから出陣するべ
きところを、サムエルを待たずに自分で預言者に代わって戦勝祈願を行った。
このためにサウルは、王位を失うことを預言される。
*5 イスラエル側で参陣した部族のうち5章14に出てくるマキルは、マナセ族
を指します。マキルはヨセフの息子であるマナセの息子で、これはマナセ族を
代表してマキル家が参じたという記録。
*6 創世記19章24〜25「主はソドムとゴモラの上に天から、主のもとから硫
黄の火を降らせ、これらの町と低地一帯を、町の全住民、地の草木もろとも
滅ぼした。」 → http://www.nunochu.com/bible/01_genesis/gen26.html
*7 タボル山は、ふもとは谷からの急傾斜ですが、上のほうはなだらかなの
だそうです。どれくらい急傾斜なのかわかりませんが、守備側にとっては、
山上で軍を維持しつつ傾斜を利して守りやすい地形だったのではないかと思
います。
*8 4章の冒頭、デボラは「ラピドトの妻、女預言者デボラ」と紹介されてい
ます。
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[〜]は聖書の引用です。本誌では特にことわりのない場合、新共同訳聖書
から引用しています。
(c)共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
(c)日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988
ただし以下に限り、筆者が手を加えていますので、あらかじめ御承知おきく
ださい。
新共同訳聖書の旧約で「主」と書かれている箇所は適宜、読み方を添え
て「主【ヤハウェ】」と表記しています。
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電子メールマガジン「聖書を読んでみよう」No.0166(通算No.0266)
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