中国でもらう強靭な免疫力 (036)
「追われる日本、追いつく中国」
━ 日本語教師のメガネを通して見る中国 ━
中国でもらう強靭な免疫力(036)
冬休みの帰国中に冷凍ギョウザ事件が起きた。
袋の内側などから殺虫剤が検出されたという。
中国側の捜査の結果がはっきりしないので、真相が分からないままだ。
日本国内での報道から推理する限りでは、殺虫剤は中国で入れられた
可能性が強い。その種の殺虫剤は、すでに日本では販売されておらず、
不純物が多いので、該当するものがないともいう。日本では、会社に
不満を持った社員の仕業だろうという憶測記事もあり、一連の疑惑が
中国に向けられるばかりだ。しかし、中国側の関係当局者は、自身の
カードを見せないまま、日中の合同捜査を持ち掛けてくるなど、何か
フレンドリーな装いの裏に、不可解な目論見を隠しているかに見える。
日本で騒ぎ始めて早や1ヶ月、重大な刑事事件だけに、彼らも独自に
捜査しているが、実行犯の検挙もなく、結果を公表しようともしない。
日本側がいよいよシロと確定してから、やっと腰を上げる構えなのか。
時間稼ぎで、中国側の疑惑が晴れるとは思えない。
春節明け、中国へ戻る機内で中国の英字紙を読んだ。
2月23日づけ「チャイナ・デイリー」(中国唯一の英字版全国紙)、
事件を1面右に載せたのはよいが、「責められるべきは日本」という、
日本人としては、いきなり虚を突かれる見出しが目に入った。読むと、
事件に関わった2社は「日本が全額出資」しており、さらに、両社の
製造は、日本が定めた工程と基準に準じ、日本人スタッフの監視下で
行われているから、「日本側の瑕疵」が起こした事件だ、という論旨。
このニュースソースは、AQSIQという中国の役所筋と思しき品質
監視機関とされるのだが、渦中の2社が、日本の企業による全額出資
という報道は、同紙以外で読んだ覚えがない。しかも、会社の幹部が、
中国語で「迷惑を受けたのはわれわれだ」と記者会見で泣いて訴える
映像を見た。日系の企業であれば、日本人幹部が日本語で話すだろう。
その上、責任を転嫁する如き開き直り発言も、日本人幹部なら控える。
泣けば同情されるという甘えは、日本の企業人なら上から下までない。
経営主体が日本にあるとした同紙のニュースソースは、どうも怪しい。
伝聞にかこつけたプロパガンダ記事かも知れない。
この記事から、中国側の合同捜査の狙いも推理した。
早朝にわが家を出たので、眠気が消えない脳内で描いた勝手な推理だ。
まさかとは思うが、実行犯の検挙を急ぐ以前に、できるだけ日本側の
責任を厳しく探索し、最後は「日中双方に問題があった」と結論づけ、
ケンカ両成敗を演出することで、手打ちする算段なのか。共同責任に
持ち込むことができれば、近づいた胡錦濤主席の訪日前の大きい負の
懸案の1つがなくなり、中国の面子が保てる。経済面では、日本側の
切迫する需要に応え、中国側も待ち望んだビジネスを早急に再開でき、
経済的ダメージを救い、日中のウィンウィン(互恵)の関係が築ける。
そんな道筋を推理させるチャイナ・デイリーの記事だった。
本来、今回の事件は、確信犯的であって解決が簡単だ。
しかし、中国の食品は危ないと前々からいわれ、改善へ向けた努力も
あるにせよ、とくに日本では悪名が轟き、解決への道が見えてこない。
先日読んだ「なぜ中国人は互いに憎みあうのか?」(陳恵運著、飛鳥
新社)は、低俗さのない真面目な憂国の書といえる。高濃度な農薬で
汚染された野菜などが平然と流通する社会的、歴史的背景についても
実例を挙げて克明に触れている。読む限りでは、病根は絶望的になる
ほど深く、解決にはこれからも長い歳月が必要なことを示唆している。
年2回、大学の休みに日本へ帰るとき、中国のおみやげを買うのだが、
お茶であれ、お菓子であれ、口に入れるものになると、相手に迷惑を
かけるのではないかと思って逡巡し、中国音楽のCDなどにしている。
食べるものが食べられないとすれば、生きる楽しみの大半が失われる。
中国の1つの大きな魅力が損なわれることにもなる。
中国のハードシップ(住み難さ)は意外に高い。
日本では想像もできない住み難さに、中国人たちはどうしているのか。
中国人同僚のアドバイスでは、食事は必ず大学内で取るようにという。
どんな内容と質か不明だが、学内であれば、定期的な検査が行われる
ので、外より安心なのだそうだ。ここの学生たちの話を聞いていると、
野菜などは、日本人よりも念入りに洗う習慣が身についているらしい。
いろいろな情報源をもとに、怠りなく各々で自衛策を講じているのだ。
少なくとも、彼らの日々の生活の基調を、性悪説が強く支配している。
日本から輸入された米や果物が、中国産の数倍の値段で市場に出ても、
先を争うように買われて消える。安全性を評価してのことだと聞いた。
わたしの場合は、朝を除き、ほとんど学食頼りの食生活になっている。
学食を必ずしも信頼していないのだが、だからといって逃げ道がない。
ジワジワと蝕まれても、余命短く、決定的な死因にはならないだろう。
むしろ、日本人には失われた強靭な中国的免疫力がつくかも知れない。
わたしの寿命に、微妙に影響していることは確かだ。
さぶみごろう
つづく



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