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中国内陸の省都の大学に招かれて単身赴任、題材を「中国」に変更。「お客さまーっ!」とビザの申請者に叫ぶ麻布の中国領事部に先ず仰天(2006/02/26号)。伸び盛りで目が離せない中国の実相を内側から伝えます。著者の備忘録でもあります。

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2008/02/08

中国人が日本を支える時代 (035)

「追われる日本、追いつく中国」

━ 日本語教師のメガネを通して見る中国 ━

中国人が日本を支える時代 (035)

 春節にかけた大学の冬休みを利用して帰国した。

 市立図書館から本を借り、大いに楽しんでいる。
出発の日まで1、2週間を残す頃、中国からいながらにしてネットで
予約を入れた。帰宅するや、近くの分館から電話があり、取りに来る
ようにいわれた。この時代だからこそできる芸当だ。市中の本屋へも
頻繁に出かけるが、何となく中国に関する新刊書に目が向いてしまう。
時代を反映してか、テーマが豊富で多岐に渡り、どれも読みたくなる。
中国が、日本にとって重い存在になっている証拠だ。

 中国語の通訳者が書いた2冊(後記)を買った。
2人はともに日本人、通訳という彼らの実務を通して書いた実録書だ。
1人は現役の中国語の司法通訳、ジェイジェイという中国人の同業の
口から日本の中国人社会の実態を語らせている。見直し論が高まって
いた「外国人研修・実習制度」問題についても紙数を多く割いている。
もう1人は、現在は退官したが、かつては警察の中国語の通訳捜査官、
ガサ入れの際に通訳として現場へ急行するだけでなく、取り調べでは
被疑者と相対した。2人は在日中国人社会の「裏の裏」を知るだけに
内容が生々しい。裁判所や警察署で行われる取り調べに明白なウソや
ハッタリを平気で並べ、諦めが早い日本人なら驚く粘り強さで保身に
汲々とする。その振る舞いに、日中の文化の違いだけでは片づかない
強い違和感を持ち、浪費させられる時間と税金が莫大だとも告白する。
「日本人が知らない、日本で働く中国人たち」に、真っ当な人たちが
多いのはもちろんだが、好ましからざる中国人が多いことも否めない。
平衡感覚がないと、内容から嫌中感ばかりが増幅する。

 かくも熱心に日本に来る理由についても詳しい。
日本へ行けば仕事があるからという。しかも、その稼ぎの額が大きい。
格差が広がる中国、貧しさから逃れるために稼ぎの道を求め、違法な
手段も駆使して日本に入国する。合法的な外国人研修・実習制度でも、
日中の仲介業者や受け入れ先に不当にピンハネされるリスクがあるが、
それでも、3年の満期を終えれば両親や家族が喜ぶ相当の収入が残る。
日本の受け入れ先も、格安の労働力が容易に得られるので大歓迎する。
中国側には稼ぎの手段、日本側には低賃金の雇用手段となり、双方に
損失がない。そのため、見直し論が薄らぎ、制度が消える気配もない。
中国沿岸から非合法でやって来る密航者の多くは、親や親戚縁者から
少なくない借金をし、蛇頭に莫大な手数料を払う。トラブルにも巻き
込まれ、さらには、犯罪に手を染めることになって通訳の世話になる。
取り調べの結果、強制送還になり、稼ぎの道が閉ざされてはたいへん、
罪状を頑強に否認するのは、前述の通りだ。入管に強制送還でもされ、
帰国しようものなら、借金の返済ができないため殺される恐れもある。
安全で、稼げる日本、不法滞在者の数さえつかめない。

 読んでいる間に、中国での驚いた体験を思い出した。
実は、日本へ行きたいという願望は、中国人学生の中にも根強くある。
彼らをうまく利用しようとしているのがアメリカの大手コンピュータ
メーカーだ。驚いたことに、わたしがいる省都(市)が、「先鋒軟件
職業技術学院」を郊外に建て、そこに市内の大学数校のコンピュータ
専攻の理系4年生を囲い込み、日本語が理解できるソフト開発要員を
養成している。その仕掛人が同メーカーなのだ。少子高齢化の日本は、
良質な技術者もますます不足する。日本向け需要が増えると踏んでの
事業だろうが、5年間に5万人を養成するというからすごい。中国の
大学4年生は、新学期からほとんど授業を受けることがなく、就活に
入る。その4年生を前期から集め、10ヶ月間かけて日本語を特訓し、
日本語能力試験2級を合格させ、成績優秀なものから採用するという。
1クラス約30人の構成、学費と寮費は不要というからうらやましい。
知人の中国人から請われるままに、2度ほどピンチヒッターで教えに
行ったが、3ヶ月前に始めた日本語とは思えない高い能力にも驚いた。
「稼げる、日本へ行ける」というインセンティブが強く働くのだろう。
日本のニーズを見込んだ大胆な取り組みが、地方都市で進行している。
中国人が日本を支えるという悪夢を見た気がした。

 富める外国への憧れは、自然な感情だと思う。
半世紀も前の日本人の多くは、富めるアメリカへの憧れを持っていた。
海を隔てる日米の距離は、日中の距離とは比べようもないほど遠いが、
もし、当時の日米が日中と等距離にあったとしても、日本人に敢えて
密航までしてアメリカへ渡る選択はなかったはずだ。しかし、当時の
事情と違い、情報や交通手段が大幅に改善され、距離感がなくなった。
しかも、内向きでない中国人たちは、通訳が必要であれ、不要であれ、
仕事が複雑系であれ、3K系であれ、日本側にニーズがあるのだから、
競い合うようにやって来るのは確実だ。さらには、捜査官が指摘した
「国民が帰りたがらない中国」であることも誇張ではない。中国人が
日本を支える時代などあり得ないが、対外依存を避けられない日本が、
この現実に向かってどうするのか。重い存在の中国に限らず、外国人
労働力の受け入れが必然になることは確実だが、やや排他的な心根が
災いして真のコンセンサスに乏しいのが日本の現実だ。地方自治体の
選挙権を永住外国人に認めるか、賛否が分かれる論議の先が興味深い。
逡巡する足元で、ボーダーレス化は待っていない。

森田靖郎著「司法通訳だけが知っている日本の中国人社会」祥伝社
坂東忠信著「通訳捜査官 中国人犯罪者との闘い2920日」経済界

さぶみごろう

つづく
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