2007/12/25
中国の日日合作ボタン電池 (033)
「追われる日本、追いつく中国」 ━ 日本語教師のメガネを通して見る中国 ━ 中国の日日合作ボタン電池 (033) 先日、近くの店で電池のニセモノを買った。 実は、買ったときは、それに気づかなかった。 このボタン電池のブランドはお馴染みのソニーだ。外装のデザインに 疑念はなかったが、持ち帰って仔細に見たところ真正品ではなかった。 そのことに気づくや「やられたー」と思わず叫んだ。つまり、薄型の 電池が、透明のプラスチックに覆われて台紙に固定され、その台紙の 表と裏面の上部に「SONY」のブランド名が大きく表示されている。 裏面には小さな英文字の説明もある。その限りでは、何の変哲もない。 ところが、その下部の、普通メーカー名が記されている部分を見ると 何と「松下電子工業」(英語表示)と書かれていたのだ。 ソニーと松下の両グループは、宿命のライバルのはず。 パソコンとかデジカメ、テレビ、音響製品、ケータイなど、とりわけ 先端の技術性とファッション性が高い製品分野でことごとく競合する。 わたしの知識はすでに古いかも知れないが、両社のみならず、日本の 有力な弱電関連メーカーなら、すべてが電池メーカーを傘下に抱える。 ソニー、松下(パナソニック)、日立(マクセル)、東芝、サンヨー、 三菱など、われわれの日常生活で世話になる機会が多い。そもそもは、 彼らの製品に不可欠なことが大きな理由だろう。さらに、価格競争が 激しいものの、消耗品だから、利益が安定して得られることも大きい。 グローバル化が進み、競争力をつける必要に迫られた日本の製造業の 多くが、かってのライバルと手を組んだり、何らかの提携を模索して いることは確かだろう。しかし、天下のソニーが天下の松下にボタン 電池の生産を委託する必然性は、現在のところではないように思える。 架空の日日合作電池は、中国でしかあり得ない話だ。 早速、学生に台紙やボタン電池の現物を見せた。 彼らとともに、「大発見」を大いに憂えようとの意図だった。しかし、 彼らの反応は、たったの5元(約75円)で買えれば上等ではないか、 と意外に冷淡だ。しかも、同じものを3元で買ったという学生がいて 被害者意識が毛頭なく、相手にもされなかった。この電池は、漢字の 読み引きなどに使っている簡易型の日本語電子辞書に入れるのが目的、 入れた当初は問題なく動いたが、案の定、3週間で画面がチカチカし、 電池切れを警告し始めた。試しに、別のキャンパスの電気店を覗くと、 同じものが堂々と売られている。学生たちが、これほど粗悪な電池を 疑いもなしに買うから商売になっているのだろう。日本で買う場合の 値段を忘れたが、通常、半年は十分に耐えるだけの性能を備えている。 中国で見つけた「安かろう、悪かろう」の標本だ。 気を取り直して保管してある他のボタン電池も調べた。 こちらは、授業で使っていたレーザーポインターが発光しなくなった ので、電池が切れたと思い、新しく買って試したときに使ったものだ。 ところが、一向に発光しないので、電球が切れたものと勝手に考えた。 まさか、新品の電池が粗悪品であるとは、夢にも考えなかったからだ。 このポインターは、秋葉原の路地売りのおじさんから仕入れたもので、 もともとは信頼性がある製品とは考えていなかった。そうだとしても、 ここ中国に電球があるはずはなかろうと、電池とともに放置していた。 調べると、このボタン電池も「SONY」ブランドだ。驚いたことに、 あらためて台紙を見ると、製造元は日立マクセル(英語表示)とある。 こちらは、天下のソニーと天下の日立の日日合作の電池というわけだ。 そうなると、真の原因は電球ではなくて電池にあったかも知れないと 疑心暗鬼が募る。しかし、真正品をあらためて探す気力も失せたので、 何れ帰国したときにでも、方策を考えるつもりでいる。 「SONY」のブランドの強さが、大事件を生む。 それにしても、ソニーをよりによって松下や日立と合作させる裏側に 何があるのか不可解だ。「頭隠して尻隠さず」より、頭も出して尻も 出す、つまり、日本の有名メーカーを2つも重ねておけば、消費者の 購買欲が2倍になるとでも思っているのか。商魂のなせる業とはいえ、 消費者をなめ切った何ともふざけたトリックに、笑う気さえ起きない。 日本なら、大騒ぎになって一夜にして市場から消える。 とはいえ、筒型の電池は中国ブランドの独壇場だ。 ニセモノも含めて日本製品の姿を見かけることがない。ただ例外的に、 髭剃り(シェーバー)などに多く使われる3Vのリチューム電池だと、 ショーケースの内側に納められた「Panasonic」をよく見る。 技術的に追いつけない特殊な領域だからなのか。だとしても、真贋は 外観では見分けがつかない。台紙の印刷も細かく調べる手間が必要だ。 ソニーや日立が相手の新合作を発見するかも知れない。 実は、中国ブランドのボタン電池も店頭に並んでいる。 日本語の電子辞書は商売道具として手放せないため、まともな電池を 手に入れる必要があった。教壇に立ってときどき漢字を忘れ、黒板に 書けないことがある。書く瞬間まで頭にあるが、いざ書こうとすると 手に伝わらない。原因は、パソコン依存症にある。中国の学生たちは、 漢字に強いので彼らに確かめることが多いが、作文の添削作業などを 始めると、わたし自身で辞書を引かなければならない。粗悪品でない 電池を得るため、いろいろ対策を考えたが、この際、「SONY」は 避けて中国ブランドのほうが、むしろ安全ではないかと考えて買った。 中国の消費者を「SONY」でだませても、中国産はそうはいかない。 すると、ボタン電池の本体には「インドネシア」(英文字)の刻印が あった。こちらは、ニセモノと同額の5元だが、輸入品ということだ。 そういえば、日本ブランドも、インドネシア製が多かった記憶がある。 今のところ、短い寿命のニセモノより長持ちしているところを見ると 正しい選択だったに違いない。たかがボタン電池、されどボタン電池、 疑念は今もって晴れず、どれを信じたらよいのかさっぱり分からない。 とにかく、日日合作製品だけは、ご免蒙ることにした。 さぶみごろう つづく



