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中国内陸の省都の大学に招かれて単身赴任、題材を「中国」に変更。「お客さまーっ!」とビザの申請者に叫ぶ麻布の中国領事部に先ず仰天(2006/02/26号)。伸び盛りで目が離せない中国の実相を内側から伝えます。著者の備忘録でもあります。

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2007/09/11

中国人の血と汗の研修制度 (028)

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「追われる日本、追いつく中国」

━ 日本語教師のメガネを通して見る中国 ━

中国人の血と汗の研修制度 (028)

 中国人の日本への渡航願望は、想像以上に高い。

 稼げるという期待が信仰のようになっている。
手近な手段には日本の「外国人研修制度」があり、志願する中国人が
ゴマンといる。制度の主旨は、「諸外国の青壮年労働者を日本に受け
入れ、1年以内の期間に我が国の産業・職業上の技術・技能・知識の
修得を支援することを内容とするもの」という。つまり、日本へ行き、
農場など実務の現場で経験を積み、母国に成果を持ち帰って活かして
もらうという、いわば低開発国への技術支援策として生まれた。実は、
市中の日本語コーナー(土日、公園に集まり会話する)や商店などで、
この制度を利用して日本へ行った経験があるという若者によく出遭う。
縫製の工場で働いたとか、ホテルマンだったとか、業務は多岐に渡る。
果して、彼らの成果が中国で活かされているのかどうかは定かでない。
しかし、研修で留日した経験者が意外に周りに多い。

 この崇高な研修制度も、換骨堕胎の感が強い。
中国の若者たちが、貧しい生活から逃れる手段として、家族の期待を
担って志願すると聞くし、日本の現場の実態は、研修という名を借り、
実は、深刻になっている労働力不足を補う手段として、多くは3Kの
業界が利用、技術移転という崇高な目的が霞んでいるのだ。さすがに
政府筋で見直し論が聞かれるが、すでに日中の大きなビジネスになり、
利権構造も完成しているので、大きい声になる前にかき消されている。
とくに、中国で志願者が後を絶たず、日本でも切実な需要がある限り、
存立を脅かされる恐れがない。それをいいことに、両国の関係業界の
一部で悪質無法な仲介業者が暗躍し、研修生から不当にピンハネして
高額な収入を得ているともいわれる。この冬、千葉県で働く中国人の
研修生が、待遇の不満から雇用主を刺し殺した、という報道もあった。
にも拘らず、彼らの実質収入は、中国で稼ぐより高いのが現実のよう。
一見したところ受益者ばかりいて、被害者が見当たらないのが特徴だ。
研修生の血と汗の結晶が、存立基盤を強固に守る。

 研修生は、厳しい選抜を受け、日本語も必修だ。
仲介業者に就職したここの大学の卒業生やバイト中の学生から聞いた
話では、研修志願者たちは、2年以上の実務経験と18歳以上の年齢
(中国の就労年齢16歳+2年)でなければ日本のビザがもらえない。
仲介業者は、研修先で困らないよう日本語会話を必修として3ヶ月間
習得させるが、日本領事館の資格審査が厳しく、日本語を教えている
バイト生の話では、最近、ビザの発給を申請した彼女の生徒13人中
7人が失格だった。1日も早く日本で稼ぎたいという願望が、後述の
ように経歴や年齢を詐称する。失格した生徒は、悲嘆のあまり1日中
大泣きに泣くそうで、なだめるのもたいへんだという。志願者たちは、
家族どころか、親戚中の期待も背負う。そう簡単にあきらめられない。
この出稼ぎへの強い願望たるや、異常と思える。

 仲介業者がらみで悪質なごまかしも横行する。
早く稼ぎたい、稼がせたいとばかりに、経歴や年齢を詐称する事例が
多く、日本の領事館も対策に大童らしい。ビザ申請で1度詐称すると、
再度発給を申請しても絶対にパスできない。つまり、彼らの出稼ぎの
道が一生閉ざされてしまうというから厳しい。研修生として日本語の
会話能力が十分か、本人に直接電話してテストすることもあるそうだ。
替え玉でないかを調査することもある。晴れて日本に渡った研修生が、
実入りが大きい水商売などに研修途中で鞍替え、不法滞在をはじめる
例が続出した時期もあったようで、そんな仲介業者は責任を負わされ、
営業停止に追い込まれるそうだ。最近では、雲隠れしたりしないよう、
研修生には身代金として現金を拠出させ、予防対策に怠りないという。
これが、中国特有の現象だと考えたくはないが、どこかが狂っている。
研修制度の本来の崇高な目的は、取り戻せないのか。

 先の卒業生は、省内でも最有力の仲介業者に就職した。
日本向け研修生だけでなく、アフリカにも多数の出稼ぎ労働者を送る。
国営だった経歴があり、彼女も驚く実にのんびりした経営振りという。
日本の仲介業者とのやり取りの毎日だが、ときに方言を使われるので
困惑するともいう。地方に需要が多いことが、その話からよく分かる。
彼女は、このビジネスに疑問を持ちはじめ、何れ辞めるといいだした。
貧しい中国人同胞が異国で血と汗を流す間、中国通貨にすれば高額な
仲介料が入るものの、いかさま的な業務実態に耐えられないと訴える。
生真面目な彼女らしい結論ではあるが、せっかく見つけた仕事だろう。
老師としてどう答えるか、大いに迷うところだ。

 帰国中のある日、TVの番組を興味深く見た。
インドネシアから来た2人の若い女性が、レタスの採り入れに忙しい。
一人が、母国の両親の農場で研修の成果を実らせたい、と夢を語った。
うまく成功してほしい、と彼女のために素直に祈った。

さぶみごろう

つづく

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