2004/10/25
快適通信 No.00004 04.10.25
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 快 適 通 信 No.00004 04.10.25 ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ Contents==================================================================== ■◇■ 建築家のリフォーム ■◇■ 母のこと その2 ■◇■ 母のこと その3 ■□■ ヒーリング・ライティング〜未来への鍵 無料公開講座 ■□■ ヒーリング・ライティング〜未来への鍵 ============================================================================ ■◇■ 建築家のリフォーム 代々木上原のキヨズキッチンの内装を手がけた一級建築士の三木正博さんが、リフォ ームのためのホームページを作りました。そのホームページに書かれているお茶会に 参加してきました。家造りは奥が深いので「へぇ」の連続でした。壁や床の素材、窓 やドアの位置、空間の持たせ方など。家を建てたいとか、改築したいという人は、以 下のURLをぜひ参考にしてください。 http://www.lexds.com/ad_reform2/ ■◇■ 母のこと その2 母のマンションに着き、エレベーターで七階まで上がる。おそらく部屋の中は誰もい ないのだろう。時々友達のところに飲みに行って遅くなる、と思いながら部屋の前に 立つ。まずはドアについている来客確認用のレンズを覗く。ずっと遠くにフォーカス されて外の街灯のような灯りが見える。カーテンが開いているようだ。昼間にでかけ たか? でも母は出かけるときたいていカーテンを閉めていく。ドアの鍵はかかって いる。鍵を取り出して鍵穴に挿す。カタンといって鍵は開いた。ドアを引くとガツン と言って途中で止まる。内側のドアチェーンがしてある。 このときの感覚を僕は思い出したくなかったのだ。明らかに母は部屋にいて、返事が ない。 隙間から覗くとテレビがついている。 「母さん、母さん」と呼ぶが返事がない。耳をそばだてると水の流れる音がする。手 が震えた。どうすればいいのかわからない。額に手を当てて救急車を呼ぼうとするが このマンションの住所が思い出せない。すぐに走ってエレベーターに乗り、一階に行 って外に出て、電柱の住所表示を確認する。携帯電話で119番にかけた。 「もしもし、どうなさいました」 「母が部屋で死んでいるようです」 あとは状況を説明したが細かいことは覚えていない。 「では、こちらから110番にも連絡しておきます」 「お願いします」 電話を切ったらすぐに女房から電話がかかってきた。状況を説明する。警官がパトカ ーで到着した。 二人の警官と母の部屋へ向かう。エレベーターのなかでできる限りの説明をする。部 屋につき、ドアの隙間から警官が懐中電灯を照らした。ワンルームマンションなので 入り口のそばにキッチンがある。母はその前に倒れているという。 しばらくして救急車が着いた。隊員がチェーンをはずす。母は身体をねじるように倒 れていた。隊員が母に話しかけるが反応はない。「ちょっと待っていて下さい」と僕 は外で待たされた。 いつのまにか来ていた検死官が部屋から出てきて言う。 「まだ亡くなってそんなに時間がたっていませんね。状況からおそらく今日のお昼頃 か、その前後でしょう。背中にはまだ体温が残っていました。硬直は始まっているの でこの一、二時間ではありませんね」 部屋に入っていくとキッチンの前が少し汚れていた。 「吐瀉物ですね。胃の中身が死んでから出てきたのでしょう」 さらに進むと隊員や警官が道をあける。 母はベッドの上に横たわっていた。顔が白い。顔を下にして倒れていたので床に当た っていた部分が痕になっている。頬のあたりに角(かど)がたっている。 「テレビと電気ストーブがついていました」とテレビと電気ストーブが指さされる。 「消しますね」 「はい」 全然泣く気にもならない。感情というものがどこかへ行ってしまったようだった。 テーブルの上に前日の四時頃買い物したレシートが残されていた。タンスの脇にかけ られたカレンダーには明日の予定が書き込まれている。 「入り口の鍵はかかり、チェーンもされていたし、窓は内側からロックされているし、 部屋の中を荒らされた形跡もないので事件性はないようですね」 そう言って検死官は僕の顔を覗く。僕が泣きもせずにいるから疑っているのだろうか。 「お母様は手にコップをもって倒れていました。おそらく水を飲もうとしたんですね。 蛇口からは細々と水が流れていました。たぶん蛇口を開こうとしてその途中で倒れた のでしょう。コップには水がまだ入っていませんでした」 女房がやってきた。彼女を見ると勝手に涙があふれたが、すぐに止めた。 「検死のために一度警察にお連れしますがよろしいですか」 「嫌だ」と言ったらどうなるんだろうと思いながら「はい」と返事する。 部屋の外に出たら若い女の子が立っていた。 「どうかしたんですか」 「母が死にました」 その子はかたまってしまった。 「つなぶちさんですよね」 「母のことご存じですか」 「はい、最近引っ越してきたんですけど、三日くらい前にお話しして、仲良くしまし ょうねって言っていたのに...」 「そうですか、それはありがとうございました」とお辞儀をした。彼女は「いえいえ、 こちらこそ...」、そして何かやさしい言葉を残してくれた。でも、その言葉をいま はもう忘れてしまった。 母はおそらく担架で運ばれたのだと思うが、よく覚えてない。いったい僕はどこを見 ていたのか。警察に行くのにパトカーに乗ったのか、タクシーに乗ったのか、それす ら曖昧だ。 警察署に着き、待たされているあいだに涙があふれる。次から次へと母のことを思い 出すのだ。 僕が三歳の頃、足でこぐ子供用の自動車に乗って一緒に散歩したこと。近所の市場に 一緒に買い物に行ったこと。庭に穴をたくさん掘ってしかられたこと。京都にふたり で旅行したときのこと...。雨が降り注ぐように湧いてくる思い出に、このときばかり は涙が止められなかった。 サンフランシスコにいる兄から電話がかかってきた。母の部屋で検死官が調べている ときに甥に電話したのだ。電波が悪かったので警察署の外で話したが、泣けてしまっ て大声で叫ぶように話した。 霊安室に安置された母に対面する。触ってもいいかと警官に聞く。「どうぞ」と言う のでおそるおそる手の甲で母の頬に触れる。冷たかった。押せばきっと硬いのだろう。 しかし、押す勇気はなかった。線香を上げた。 ■◇■ 母のこと その3 「翌日午前10時に来てください」と言われ、警察をあとにした。家についたのは確か 午前四時頃。すぐに布団に入ったが眠られなかった。たった四時間前、母は生きてい るものと思っていた。母の思い出が雨のように降ってくる。ばらばらと落ちてくる思 い出の断片が頭に取り憑く。 母がシミーズ姿で鏡台に向かっている白黒写真。父と囲んでいた食卓。笑い声。いく つかの説教。最後にデジカメで撮った写真。太って硬くなった両肩。 1月3日が母の誕生日だった。誕生日に母のマンションを訪ねた。そのとき母は言った。 「かつて都知事だった美濃部さんは大往生だった。朝食を食べようとしてテーブルに 座って、新聞を読もうとしてポックリ死んでいた。私もそういう風に死にたいねぇ」 そうだ、親父が棟方志功さんからいただいた版画をなくして探していたが、引っ越し の際に見つけて額装してもらい、それが仕上がってうちに来たばかりだった。まだ見 せていなかった。見せたら喜んだだろう。 朝になった。眠らなければと思いながら寝つくことはできなかった。女房はどうして もしなければならない仕事があると会社に行った。 10時に警察署に着くように家を出る。自転車をこいでいった。警察署に入る。受付は あるが誰もそこにはすわっていない。奥には何人かいるが自分の仕事で精一杯で誰が 入ってきても気にしない。ずいずいと奥に歩き、指定された霊安室の前に行く。誰も いない。受付まで戻るか。霊安室の鉄製の重い扉を開くか。ドアノブを取ってそっと 開けてみた。そこにはこちらに足を向け、裸にされた死体が三体、青い防水シートを 敷いた床に並んでいた。そのうち一体は母だったのだろう。驚いて扉をすぐに閉めた。 中から男がふたり飛び出してきた。 「何をしてるんですか」 「10時にここに来いと言われていたので来ました」 「ノックぐらいしてください」 当然そうすべきだったのだろうが、重い扉にノックという考えは持てなかった。男の うちひとりが受付前の待合い席に僕を導いた。 「ここでしばらく待っていてください」 だったら最初からここを待ち合わせ場所にしろよと不機嫌になった。昨晩もここで待 たされた。つい九時間前のことだ。また思い出の土砂降りがはじまった。男一人で警 察署の待合い席で泣いているというのは困ったシチュエーションだ。止めようとは思 うのだが、勝手に涙がこぼれていく。 警官がやってきて「検死室の前で待ってください」と言う。黙って従い二階への階段 を上がる。いま思うとこの警官は受付前で泣いているのが気になったのかもしれない。 役所などにありがちな茶色いペンチに腰掛けしばらく待っていると、さっき霊安室か ら飛び出してきた男が「受付前で待っていてください」と言う。「いや、さっきここ に来いと言われて来たんですが」。「ここはだめです。一階の受付前で待っていてく ださい」 腹が立った。悲しいと腹が立ちやすい。受付前でしばらく待つ。 再び呼ばれて二階に上がると茶色のベンチでまた待たされた。隣には眼鏡をかけたや せた男が肩を落として座っていた。検死室の入り口を白衣の男が何人も出たり入った りを繰り返す。 白衣の男が二人出てきた。隣の男に話しかける。 「・・さんですか。この度はどうも・・・。亡くなったのはお父様ですか? 火事の 現場検証と合わせて考えなければなりませんが、おそらくお父様は寝たまま気づかず にいたと思われます。もし気づいていたら肺の中がもっと焼けていたと思いますので」 無表情だった眼鏡の男が急に泣き出した。 「何が原因で火事になったのかまだわかりませんが、からだに石油などが付着してい たわけではありませんので自殺ではないと思われます。お父様は寝たばこなどはなさ いましたか?」 「時々」 「そうですか。まだ結論は出せませんが、それが原因だったかもしれませんね」 眼鏡の男は先生の叱られ廊下に立たされて泣きじゃくった小さな男の子のように肩を 落として一階に下りていった。しばらくすると今度はすぐ隣にある待合室に通される。 目の前に五十代の夫婦が座っていた。 「お父さん、お葬式どうするの? おじいちゃんの時は浄土宗だったけど、おばあち ゃんのうちは日蓮宗よねぇ。でもお墓は一緒でしょう?」 「葬式も一緒でええんじゃないか?」 「お墓が一緒なんだもんねぇ。この前お世話になったお坊さんにまた頼めばいいわよ ねぇ」 「日蓮宗でやったらお墓をもうひとつ作らにゃあかんとちゃうか」 「そうよねぇ、そしたら大変よねぇ」 夫婦は呼ばれて待合室の外で白衣の男達と会った。透明なガラス窓から二人の背中が 見えた。 白衣の男が待合室に入ってきた。 「つなぶちさんですか? 亡くなったのはお母様ですね。あなたは次男でいらっしゃ いますね。検死の結果お母様は心嚢血腫で亡くなったとわかりました」 「シンノウケッシュ? それはどういう病気なんですか?」 「はい、心臓の回りには薄い膜があるのですが、その膜と心臓の間に血液が流れ出し ているんです」 「血管が切れたんですか?」 「まあ、そうかもしれません。詳しくお話しすると、はっきりとした原因はわかって ないんです。胸から心臓に向かって細い管を刺して状態を調べて心臓の回りの膜と心 臓とのあいだに血液が流れ出ていることがわかりました。お母様の場合特に事件性が ないのでこれ以上詳しく調べることもないと思いまして。きれいなからだを切り開い たりはしないほうがいいでしょう?」 「母は苦しみましたか?」 「いえ、たぶん発作が起きてからすぐに亡くなったと思います。ほとんど苦しまなか ったんじゃないでしょうか。すぐに救急車を呼んでも間に合わなかったでしょう」 以上の文章は以下のblogに掲載したものと同じです。 http://homepage.mac.com/waterinspiration/iblog/index.html ■■■■■■■■■■■■■■■■イベント告知■■■■■■■■■■■■■■■■ ■□■ ヒーリング・ライティング〜未来への鍵 無料公開講座 日時 : 2004年10月26日(火) 午後7時から午後9時30分 会場 : 東京芸術劇場 会議室 地図はこちらです。 http://www.geigeki.jp/access.html 講師 : つなぶちようじ 主催 : オフィスタラーク 受講費 : 無料 お問合、お申し込みはこちらで。 http://www.t3.rim.or.jp/〜yoji-t/form/HWappli.html 詳細についてはこちらで。 http://www.tsunabuchi.com/HealingWriting.html ■□■ ヒーリング・ライティング〜未来への鍵 日時 : 2004年11月9日(火)、11月23日(火・祝)、12月7日(火) 12月21日(火)、2005年1月11日(火) すべて午後7時から午後9時30分 会場 : 東京芸術劇場 ほか、池袋近辺 地図はこちらです。 http://www.geigeki.jp/access.html 講師 : つなぶちようじ 主催 : オフィスタラーク 受講費 : 37,000円 お問合、お申し込みはこちらで。 http://www.t3.rim.or.jp/〜yoji-t/form/HWappli.html 詳細についてはこちらで。 http://www.tsunabuchi.com/HealingWriting.html ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 快 適 通 信 ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ 快適通信通信への投稿、情報提供、レス、感想などは yoji@tsunabuchi.com まで。 ホームページURL : http://www.tsunabuchi.com 快適通信は、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。 http://www.mag2.com/ 快適通信の登録、解除、アドレス変更、バックナンバー閲覧は http://www.tsunabuchi.com/kaitekitsushin.html ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪



