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日本の構造問題を考え、アジアを語り、将来の処方箋も探るページです。戦前に日本最大の発行部数を誇った黒岩涙香の「萬朝報」にあやかって命名した

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2009/08/02

「萬晩報」 0090802 JAに求められる賀川、ユヌス氏の発想

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  ■萬晩報 コラム配信ジャーナリズム■  http://www.yorozubp.com/ 


 JAに求められる賀川、ユヌス氏の発想

           2009年08月02日(日) 萬晩報主宰 伴 武澄

 家の光協会が発行する月刊誌「JA教育文化」9月号に賀川豊彦とJAについ
て投稿を求められた。1日発売の同誌に掲載されたコラムを転載する。
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「賀川豊彦献身100年」の今年、ノーベル平和賞受賞者のバングラデシュのムハマ
ド・ユヌス氏を神戸市に招いた。

 昨年9月のニューヨーク発の経済危機以降、ユヌス氏のマイクロファイナンスや
ソーシャルビジネスがにわかに注目を集めている。

 利益の最大化を求めてきた資本主義の対極にあった社会主義は、すでにほとんど
消滅しており、人々が新たな経済のパラダイムを模索し始めているからである。

 ユヌス氏が実践する社会貢献

 マイクロファイナンスは1970年代、ユヌス氏がバングラデシュのチッタゴン郊外
の農村で始めた小規模金融である。貧しさゆえに高利貸の犠牲になっていた農村婦
人に、1000円単位の金を貸した。

 バングラデシュには雇用という概念がない。とくに農村は自ら機織りをしたり、
鶏を飼って卵を売ったりしなければ生活ができない。せっかくの売り上げが高い利
子に消えていた。ユヌス氏は低利でお金を貸した。条件は、子どもを学校に行かせ
るなど生活の向上をめざすことだった。

 小さな村から始めたマイクロファイナンスは、今ではグラミン(農村)銀行とな
り、その発想は途上国だけでなく先進国でも広がりを見せている。ユヌス氏の最近
の関心は、ソーシャルビジネスである。「配当のない会社だ。見返りのないものに、
だれが投資するか」

 と、反対された。ユヌス氏の考えは違った。
「金持ちや企業は社会貢献と称して多額の寄付をしている。尊いことだが、寄付は
一回限り。その金額を投資すれば利潤が上がり、その利潤を再投資することで資金
は持続性を持つのだ」

 数年前、フランスの食品会社ダノンが興味を示し、バングラデシュで貧しい子ど
もたちの栄養食としてヨーグルトの合弁製造が始まった。会社の目的は、子どもた
ちの健康である。

 続いて仏ヴィオリアとミネラルウオーターの製造販売が始まっている。この会社
も健康が目的。独フォルクスワーゲンには洪水時にエンジンを船に乗せ替えたり、
乾期にポンプに使えたりするグラミン車を開発してほしいと要請している。目的は、
災害復興である。金もうけでない、それぞれの目的を持つのがソーシャルビジネス
である。

 利益は社会貢献のために

 協同組合の父といわれる、賀川豊彦の発想とじつに似ている。
 ソーシャルビジネスと協同組合とは法人のあり方も違うが、貧困からの脱却を目
的とし、助け合いを手段とすることにおいて変わりはない。

 賀川の協同組合は、神戸新川のスラムや関東大震災後の本所から生まれた。購買
組合(生協)を創設し、組合の資金で質屋(金融)を起こし、学校を経営し、病院
を建てた。戦後のJAの共済事業や全労災も賀川に端を発する。

 人々の出資金は直接の配当として個人には還元されないが、何倍もの価値となっ
て社会や地域に還元された。

 経済を金もうけの手段にせず、利益は社会の福利厚生のために使うべきだという
のが、賀川の持論であり哲学である。世界大恐慌の後、アメリカは長い経済的危機
にあり、アメリカ政府の要請で訪米した賀川は、6か月にわたり全米を講演し、協
同組合の宣伝をした。資本主義は搾取そのもの、社会主義は暴力的として第三の道
を協同組合に求めたのである。

 その講演録が1936年、ニューヨークのハーパー社から『ブラザーフッド・エコノ
ミクス』として出版された。

 発売前に3000部を超す予約が入ったというから、いかに多くの人々が経済の新た
なパラダイムを求めていたかがわかる。

 この本は17カ国語に翻訳され、25か国で販売され。どういうわけか日本語版はな
かったが、献身100年を記念して今年6月、『友愛の政治経済学』(野尻武敏監修)
と題してようやくコープ出版から上梓された。

 地域の主役となる「協同組合」

 今、協同組合に求められるのは賀川やユヌス氏の発想である。日本ではかつての
ような貧困はなくなったが、逆に「助け合い精神」はどんどん退化している。

 協同組合は元々、「一人は万人のために、万人は一人のために」というロッチデ
ールの精神から生まれている。弱肉強食の時代でもあったから、人々は官に頼らず
助け合って自分たちの生活を守る必要があった。自助。互助である。

 今は国や自治体の責任が問われるだけで、地域が自助する精神を忘れてはいない
だろうか。農協を含めて協同組合は「経営」のみに頭を使ってはいないだろうか。

 昨年来、再び「貧困」が社会を象徴するキーワードになっている。かつての貧困
ではないが、少子高齢化で日本経済が縮小に向かい、この10年で勤労者所得は二割
も減少、格差もかつてなく広がりつつある。
 しかし、日本には農協500万世帯、生協2200万世帯といわれる層の厚い協同組合
の地盤が残っている。信用事業、共済事業を含めれば巨大な資金も抱えている。

「賀川献身100年」を迎えて残念に思うことは、協同組合が本来持っているはずの
目的を忘れ、ヒト・モノ・カネが眠ったままでいることである。監督官庁があると
はいえ、それぞれの組織が縦割りであってはいけない。

 生産から流通、消費、教育、医療、保険まで、生活にかかわるあらゆる事業がた
がいに協力しあえばいい。企業や官依存ではなく、地域の協同組合こそが経済の立
て直しの主役を果たさなくてはならないのである。
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