2009/05/27
CRJ-tokyo Weekly Mail-Magazine 特別インタビュー号 vol.28
━━CRJ-tokyo ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Weekly Mail-Magazine 特別インタビュー号 vol.28(前編) 09/5/27 ---------------------------------------------------------------------- ■Special Artist Interview vol.28 '蓮沼執太' ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2009/4/30 渋谷 某所 interviewer:ふくちゃん、ガッキー 4月からホームページ上で「9つの音楽をダウンロードする」という月1曲の フリーダウンロード企画を開始した蓮沼執太。耳になじむメロディーラインに どこか愛嬌のある電子音がちりばめられた、とてもかわいらしい エレクトロニカ作品です。ところがライブで"蓮沼執太チーム"が放つのは、 音源からは想像のつかないエネルギーのあるサウンド! 作品のこと、ライブのこと、フリーダウンロードや、自主企画について、 お話を伺ってきました。 今回の特別インタビュー号は、前編/後編に渡ってお送りします。 本日発行の前編では、蓮沼さんの作品について、ライブについてのお話を お届けします。(ふくちゃん) ●自己紹介をお願いします。 蓮沼執太(以下H):蓮沼執太です。東京都出身、アーティストです。 アーティストって何なのかあいまいですが、音楽を中心に制作しています。 今までにCD4枚を発表しています。去年の9月にWEATHERから 発表させていただいた『POP OOGA』が一番新しいアルバムです。 ライブ活動は"蓮沼執太チーム"っていう名前で行っています。 ●『POP OOGA』は、私が一番始めに聴いた蓮沼さんの作品で、メロディアスで、 ポップな印象を持ちました。その後に聴いた3作目『HOORAY』はとても モノクロームに思える作品でした。3作目を聴いてから4作目を聴くと、4作目が よりひらけた作品に思えます。この違いはなんだろうと、とても気になる点では ありました。その経緯や心境はどうだったんでしょう。 H:2作目の『OK Bamboo』を作った後、制作をしていたメインの コンピューターが壊れてしまったんです。だけど2ndを制作した時にいっぱい 作った電子音素材だけは別のハードディスクに保存しておいたんです。 その電子音だけでアルバムを作ろうと思ったのがPROGRESSIVE FOrMから 発表させていただいた『HOORAY』なんです。 なので、2ndアルバムと比べるといわゆるメロディアスさはないですね。 いままでの作り方を全く無視して、その音源だけで作ったので、 『HOORAY』だけは他の作品の文脈から、確実に外れているんです。 『POP OOGA』の発表の経緯は、HEADZのBRAINZという塾で、 畠中実さん(ICC学芸員)の講義でお話をきいていた際に、HEADZ代表の 佐々木敦さんがぼくの音楽を聴いてくれていたことなどもあって、 アルバムを出そうってことになりました。それからどういった作品に しようかなぁと考えました。 ぼくの作品はいつも何年もあたためたアイデアをもとに作ったんじゃなくて、 その時のぼくの感じ……アイデア、考えや想いが入っているような曲作りを 心がけています。そしてそういうのも踏まえて、『POP OOGA』は 音の作り方、音楽が誕生する制作プロセス自体を素直に向き合って 作ろうって思ったんです。 ジャケットもぼくの部屋なんです。友人でもある近藤恵介くんが部屋に 描いた壁画を川村麻純さんが撮影されたアートワーク。ぼくの音楽が 生まれる制作環境を写した共同作業のうえ完成した作品です。 デザインは佐々木暁さんです。 ●『POP OOGA』のアナログ盤が海外でも発売されますね。蓮沼さんも デビューはアメリカのレーベルですし、今年3月にはシンガポールでライブを 行っていますね。海外に自分の作品が伝わることについて、どう 思われますか? H:自分の音楽がアメリカから出て、逆輸入されて日本でも発表されたって いうのは、ぼくら世代ではそんなに珍しいことではないという印象です。 捉え方も人それぞれなんですが、アメリカの人が聴いた耳と、ヨーロッパの 人が聴いた耳と、日本の人が聴いた耳は、どれも違うんだけれども、色んな 人から貰ったレスポンスの感じは、実は意外と統一感がありました。 WEATHER/HEADZスタッフ(以下W):90年代は海外で作品をリリースすること 自体がすごく話題になっていた時代で、コーネリアス、Buffalo Daughter、 BOREDOMSなどのアーティストがその基盤を作った感じでした。 H: ぼくの意識ではそういった海外への窓口があらかじめ結構ひらけていて、 その基盤があっての上で、偶然作品を発表できるチャンスがあったって 感じなので、やっぱり特別な印象とかはあまりないです。2000年以後の 現在のグローバル化を考えても日本人アーティストが海外で作品を 発表できる機会、チャンスはとても多いと思います。 ●『POP OOGA』は歌声が入っていますよね。それも新しいアプローチかなと 思いました。 H:実は自分の声を使ったボーカルは全部の作品に入っているんです。今作は 声の聴かせ方を変えました。電子音だけで作られた『HOORAY』にもぼくの 声だけは、生の音で入れています。ぼくは耳で聴いて音楽を作ってるんじゃ なくて、目を使って、見て曲を作ってるというイメージ、意識がとても 強いです。たとえば、マイクで「あ」と言うとコンピューターにその波形が 出るんです。コンピューター画面を譜面のようにして捉えて、それを目で 見て音を並べて作曲をするんです。さらに『POP OOGA』は、ポップスが 持っている音楽の構造のルールに従って作曲をしたっていう感じです。 今までは音自体の質感、肌触りを追求して作っていたんです。 魚釣りみたいに、ポイントを探していました。 ぼくのおじいちゃんおばあちゃんにも良い曲だねって感じてもらえて、尚かつ 1作目や3作目が好みのリスナーにも良い作品だと思ってもらえるような ポイントを。 それで聴きやすいボーカルの曲がピックアップされたのかな、と思います。 ポップスは好きで、普段生活していても耳を傾けなくても入ってくるから、 意識せずに曲を作る雰囲気ができていました。意外とすんなりと歌ものが できたんじゃないかなって思います。メロディーを自分自身で歌うので、 チャレンジと言えばチャレンジでしたけど、頑張って作りました。 ●目で見て曲を作ることにこだわるのはなぜでしょうか? H:"こだわり"があるわけでは無くて、そうせざるを得ない時代だって 思っています。 音楽を記録するまでの方法って、過去に色々実験がなされているんですけど、 今はもう全部出きっちゃってる時代だと思うんです。 むかしはテープにとりあえず音を録音して、切って貼付けて曲にしてたわけ ですよ。そして、MTRといった機材で、テープにどんどん音を重ねていき 音楽を作っていく方法。それからサンプラーっていう楽器が出てきて、 空っぽの箱の中に音を入れて、作り直す、構築し直すっていうやり方。 そしてコンピューターが出てきて、そこに音を録音していく方法。 ぼくが音楽を始めた2006年の時には、コンピューターしかなかったんです。 さらにコンピューターだけで作るラップトップミュージックですら。 もはや新しい音は出きってた時代っていう。だけど、フロンティアが ないからといって、その状況に不満を言っていてもしょうがないし、 やるっきゃないって。音楽を作る為に必要ないくつかの道具が コンピューターで、たまたま目で見て作るっていうものしかなくて。 ある意味受け身ですよね。 W:HEADZでもリリースしているTortoiseっていうアーティストが、 ハードディスクでの音楽制作を世に知らしめたんだけど、その後更に 自宅でも録音ができるっていうシーンがきたんですよ。 H:ひとむかし前は音楽を作る為には、物質的にも、金額的にも負担が 大きかったけども、今は小さくなってる。だから本当に誰でも音楽ができる 環境が整ってる。 たとえば、森の中を性能の良いフィールドレコーダーを持って、散歩する だけでも、録った音を聴くと結構良かったりするんですよ。それにピアノを ぽーん、ぽーんって弾くだけでも、気持ちよく聴こえるんです。 そういう音楽はむかしからあるんですが、問題はそういう事を知ってるか 否かなんです。ぼくはやっぱり新しいことをやりたいなと思っています。 いま存在しているものと少しでも違ったアプローチで、自身が新しくて いいなって思うようなものを作るというところはあって。 そういう意識をもって取り組んでいます。 ●蓮沼さんは、他にバンドでの表現にこだわっているとのことですね。初めて 観た時は音源との違いに驚きました。 H:ライブでは、"蓮沼執太チーム"で活動しています。チームってだけあって、 ぼくはライブをスポーツ、運動みたいなものだと思っているんです。 音源ではエレクトリックギターとか、わかりやすい形で使ってないですが、 ライブだと2人がエレクトリックギターで、生ドラムをバンバン叩いています。 パフォーマンスを観てくれた多くの方がCDと違いますね、と言って くださるんです。とても嬉しいです。 ライブでは耳に残るフレーズをメンバーで再構築したんです。 数年前はコンピューターで一生懸命、数字や文字をプログラミングして、 その場で音を出す楽器だったんで、ラップトップだけでやるのは結構負荷が かかったんです。 それがいまではだんだん便利になっています。たとえば自分で手やグラスを 叩いた音を録音して、そのままオンタイムで流せたり、あらかじめ作って おいた音をそのまま再生できるんですね。 いわゆるエレクトロニカと呼ばれるようなアーティストのほとんどは素材を 流しただけのライブをしていました。自分は性格的にそういうプロセスだと 純粋に楽しめないと思っていました。 ただ、コンピューターだけでのライブパフォーマンスは、ほんとうに複雑です。 ハードディスクにある素材だけをシンプルに再生するのも決して否定的な ものだけでは無く、音が出力される環境にも重点を置かないといけないのは 日本ではとても難しいと感じています。 そういったチャレンジをしているアーティストが日本にもいらっしゃって、 ぼくは尊敬しています。 ただ、いまのぼくはドラムを叩いてくれてるd.v.d.のJimanicaさんや、ギターを 弾いてくれてる中学校からの同級生の斉藤亮輔くん、detune.の 石塚周太くんだったり、ぼくの音楽を理解してくれてる多くの仲間に恵まれて いるので、チームみんなで一緒に音楽をやることが、いまは一番やりたいこと なので、このチームのかたちになってます。 せっかくいまの時代を生きているんだから、ぼくはいま存在することを やるよりも聴いた人たちがちょっとでも新しいって思ってくれるような パフォーマンスをしたいですね。 ●蓮沼さんの作品も、ライブも流れを意識しているなと思うことも強い印象の 1つです。いつの間にか、あ、もう1枚が終わってたんだって。 H:そうですね。最初から最後まで繋がってたらいいなって思ってます。 ライブをはじめた当初は、オーディエンスに映画を観てる感じになって もらいたいなって思ってたんです。 アルバムでもライブでも、全体を通して1つの作品っていう思いでやって います。事物・現象において、"流れ"っていうものは必ずあると思います。 そういう要素があったらいいなと。 ●チームのメンバー結成の経緯ってどうだったんでしょう。 H:『POP OOGA』が完成した時に、やりたい音楽がもう1人ではできないと 感じたんです。どうしようかなって思った時にまわりに素晴らしい アーティストがいたんです。技術がある人や有名な人にお願いするっていう 意識はなくて、自然体でできる人が近くにいたっていう感じです。 仲良しですよ。 W:チーム感が出てるよね。 H:歳もみんな近いです。 (……以下、月1曲のフリーダウンロード企画「9つの音楽をダウンロードする」、 7月に開催の自主企画「音楽からとんでみる」については明日発行の 後編に続く。) [official site] http://www.shutahasunuma.com/site/top.html [MySpace] http://www.myspace.com/shutahasunuma ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□CRJ情報□■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ デモテープ・サンプル募集 / Monthly Artist Pick Up / メルマガ登録・解除 / CRJ各支部リンク等の詳しいCRJ情報は>> http://www.crj-tokyo.net/ メールマガジン発行 ふくちゃん >> mmag@crj-tokyo.net ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


