週刊 電藝 RSSを登録する

週刊で発行している文藝ウェブマガジン。2006年8月現在、通算で370号を超えるバックナンバーがあります。掲載ジャンルは小説・詩・レビュー・エッセイなどなど。投稿も受け付けています。メルマガ掲載後はウェブに掲載します。

最新号をメルマガでお届けします    
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。
2008/09/15

週刊電藝478 [080915] 喜多|shair|村上

この記事を取り寄せる

■□ 週 刊 ■□weekly DENGEI magazine         [ウエブ電藝]
■□ 電 藝 ■□VOL.478   発行数:314 http://indierom.com/dengei/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┌ H E A D L I N E ────────────── '08年09月15日 ───┐

    私はやはり貴方のことを
    「普通じゃない」と思います        : 喜多匡希
    浪花[サバイバル]日記          : shair
    愛情乞食                : 村上みみの

└─────────────────────────────────┘


 ┌───┐ 今号は、好評連載「銀幕ナビゲーション」の筆者である喜多匡
 |月 プ |  希さんのエッセイを冒頭に掲載しました。
 |曜 レ | 
 |日 テ |  この原稿、電藝に発表するために執筆されたものではありませ
 |  ク |  ん。おそらく電藝の読者の何人かは読まれたことのある、ミッ
 |  ス | ックシの日記に書かれたものです(2008年8月11日分、元の掲載
 |  ト |  はhttp://mixi.jp/view_diary.pl?id=898141181&owner_id=430289
 |  な |  ただし今号掲載のものは上記より改稿してあります)
 └───┘ 
       要するに転載というわけですが、週刊電藝よりも読者が多そう
 な日記の一文をなぜあえて再掲載するかというと、この文章がわたしのどこか
 ルサンチマンのようなものにふれたからで(電藝なんていうものを読んでい
 る読者なら、ほとんどそうじゃないだろうかとも思います)、それが喜多さ
 んの日記(更新がとても頻繁)の中で埋もれていくのをモッタイナく感じた
 からでした。「フツーとは何か」(と書いたとたんに80年代臭が臭う錯覚を
 禁じ得ませんが)という、思春期独特の、答えのない問いをなつかしく思う
 とともに、それをとても素直に文章化した喜多さんに感動した次第です。先
 生と呼べる人との邂逅の記録としても、読者諸兄姉にもお楽しみいただけれ
 ば幸いです。

        :*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:
                ∵∵
                 ∵


 私はやはり貴方のことを
 「普通じゃない」と思います
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 喜多匡希
 
 『嫌われ松子の一生』 。
 
  僕にとってつらい映画だと、劇場公開時に友人が気遣ってくれた作品だ。
  
 
  鑑賞したとmixiの日記で書いた時も、一人のマイミクさんが「大丈夫か?」
 とTelしてくれた。 
 
  中谷美紀扮する松子がヒロイン。松子は転落人生を辿り、ボロボロになっ
 ていく。松子は美女だったが、人生の渦に巻かれて堕ちていく。それに伴っ
 て端麗だった容姿は原型を留めないほど崩れていく。同時に行為・言動も崩
 れていく。この「崩れていく」は「壊れていく」と言い換えてもいいだろう。
 終盤の松子は、一見、キ○ガイだ。 
 
  余談だが、僕はこの「キ○ガイ」という言葉をどうして伏字にしなければ
 ならないのかわからない。「狂気」という、なんとなく <ブンガク的> な響
 きをもった言葉と「キ○ガイ」では、そこに漂うニュアンスが異なる。なの
 に、「狂気」は良くて「キ○ガイ」はダメだという。語句に問題があるんじ
 ゃない。その使い方・意識の問題なんだ!! と主張すると、人は「正義」だと
 か「ご立派」だとかいう言葉を用いて、発言者を褒めているように見せかけ
 て距離を置く。ああ、こういうことがわかってしまうと、生きていくことが
 つらくなってくるよなあ…… 
 
  僕、<普通> に生きていきたいんよね。 
 
  しかし、この <普通> っていうのがクセモノなんよ。何を以って <普通> 
 とするか? <普通> の基準ってどこにあるのか? <普通> っていう概念は、
 実に曖昧模糊としたところにあると思うな。 
 
  普通、フツウ、ふつう。 
 
  <普通> ってなんだろう? 
 
  何度も考えたなあ。これまでに、何度も何度も考えた。 
 
  生い立ちからして、僕は <普通> ではない、のだろう。自分でもそう思う
 し、人からも何度となく言われたから。「ドラマみたいや♪」とか。そこで、
 それを面白おかしく伝えることで、なんとか自己の存在を悪い感じのしない
 ベクトルに向けて発信しようと思いついた。 
 
  僕は、普通じゃない。 
 
  普通じゃない。 
 
  もうね、刷り込みみたいなもんよ、これ。 
 
  <普通> っていうのが、心底羨ましい。これは今でも羨ましい。 
 
  中学生の時、 <生まれ変われるとしたら何に生まれ変わりたいか> という
 テーマで作文を書く機会があった。僕は「生まれ変わっても人間がいい。男
 でも女でもいい。ただ、<普通> の家に生まれてきたい」というようなこと
 を書いた。60点だった。この60点という点数を、僕はひどく残酷なものだと
 感じた。 <普通の家> というのは <親が子を愛し、子が親を愛し、裕福では
 なくとも、健やかな家庭> のことだと、そこまで文章できっちり説明した。
 僕が思う <普通の家> というのはそういうことだからだ。 
 
  しかし、僕の理想というか、純粋な願いというか、そういうものに対して
 60点という評価が返ってきた。これは大変なショックだった。点数そのもの
 もショックではあった。しかし、それ以上にショックだったのは、大人の勝
 手な判断基準だ。 
 
  中学校3年生までの僕は文字通りの優等生だったと自負している。勉強も
 スポーツも出来た(今の僕とは大違いだ^^;)。5教科で460〜480点くらいが
 常であった。まあ、それは中学校3年生の1学期末でズガーンと成績が落ち、
 5教科で350点くらいまでに落ちた。2学期中間テストの結果も同じで、担任
 のY先生は「何があったんや?」と大変心配してくれ、相当心配してくれた
 ものである。しかし、この作文を書いた頃の僕は、まだ学年トップクラスに
 いて、少々天狗になっていた頃でもあった。<普通ではない家に生まれた> と
 いうコンプレックスを踏み台に……というの、実は小学校低学年くらいから
 意識していたものである。ヤな子どもだ。 
 
  その僕が心底から書き連ねた作文に与えられた60点という評価は、僕の心
 をグサグサと突き刺した。「イルカになりたい」と書いた友人が85点で、
 「普通の家に生まれてきたい」と書いた僕は60点。文章力でその子に決して
 劣っているとは思わなかったし、そもそもそういう問題でもないような気が
 する。 
 
  どうして60点なのか? 納得がいかず、その点数をつけた先生に尋ねると
 「夢がないから」と言われた。 
 
  いや、あるがな、夢。 
 
  ここに書いてあるがな。 
 
  これが僕の夢やねんっ!! 
 
  ほな、なにかいな。「タイムマシンを発明して恐竜と仲良しになりたいで
 ーす」って書いたら100点か? んなもん、プテラノドンに突つき倒された後、
 ティラノさんにドタマからガブっといかれて終わりじゃ、ドアホっ!! 
 
 「もっと中学生らしい明るいウンタラカンタラ……」 
 
  ほな、最初にそう言え。ほならそういう俺にとってのファンタジー・ホー
 ム・ドラマを書いたるわ。成績のために。アンタらとか、親のために書いた
 わ。本音、押さえ込んでそうせえって言うんやろ? そうしたら少なくとも
 80点以上くれはるわけや。ほんまのこと書いたら60点や。そんなもんのどこ
 が教育やねん!? アホーーーーーーっ!!
 
  というように、国語の時間は、好き勝手にやってましたなあ。いや、そう
 いう話やないか(笑)。
 
  でもね、そこをイヤーな目で見張る先生も確かにおったけれども、「そこ
 を大事にして伸ばしていきなさいね」って言ってくれはった先生もおった。
  
  高校3年生の時、選択科目で、音楽や家庭科と並んで小論文という科目が
 あった。で、小論文を採ったんよね。男の先生だった。
 
  その小論文の授業。初めてのテーマが「現代における女性の立場について」
 だかなんだか、そんなの。これ、僕、またもや60点だったの。でも、納得し
 た。まとめの部分で、それまでに展開してきた主張を曖昧にぼかしたから。
 その先生は、全員の小論文に、点数だけでなく感想も書いてくれたんよね。
 これ、大変な作業だと思う。未だにその時の文面、覚えてるもんなあ。 
 
 「前半の主張を崩さないように。なぜなら、前半の貴方の主張は、人間とし
 て真に大切なものだからです。そこを失わずにいきましょう」って。 
 
  その次のテーマ、忘れちゃった。なんかどーでもいいようなテーマだった
 ような気がする。やっつけ気分で書いて85点だったかな。「楽勝っ!」って
 思った。僕は、一発目でこの先生を全面的に信頼したから、その授業は欠か
 さず出たんだ。一回も休んでないはず。他の授業は、度々すっぽかして映画
 館行ってたけど。選択科目って、週に1回で、確か土曜日だったんよ。土曜日
 って新作映画の封切り日やん? その誘惑を振り切って、この授業を選ばせ
 るだけの魅力がその先生にはあったなあ。2時限ぶっつづけの授業で、その先
 生は、前半で色々話をしたり、授業らしい授業をしてから、後半で僕らが小
 論文を書くという。後半は、先生、ずっと本読んではった。「楽でええなあ
 ♪」なんて思った(笑)。
 
  でね、この先生。授業そのものは全然面白くない(苦笑)。ものすごく丁寧
 な言葉遣いをする人でね、授業でも「〜〜でありまして」なんていう言い回
 し。生徒に対しても「貴方」という言葉を使っていたなあ。「貴方はどうし
 てそのように思うのでしょうか?」って。「かしこまった先生やなあ〜」っ
 て思ってた。ま、そのあたりは、当時の僕にとって、けっこうどうでもよい
 ことであって、「授業、おもろない〜。かったるい〜。はよ、テーマゆーて
 ー。はよ、書きたい〜!」って、そんな感じだったなあ。前半、寝てたこと
 多かったもん。一回、この先生に叱られたっけ。「寝てはいけませんよ。人
 が真剣に授業をしているのに寝るだなんて、いけないことです。貴方はしっ
 かりした良い文章を書くのに、こんなことでは私は良い評価をすることがで
 きないではないですか。今回は注意だけにしておきますから、しっかりして
 ください。自分のためですよ。では、よろしく。はい、授業を続けます」っ
 て。 
 
  この時、僕は授業が終わってから、職員室に向かって歩いていく先生を追
 いかけたんだわ。 
 
 「先生」って声を掛けたら、振り返った先生が「ん? なんですか?」と。
  
 「さっき、寝ててごめんなさい」 
 
  僕ね、聞かん坊やし、世間に対してスネてたからね。まあ、今でもかなり
 スネてる部分があるけど。だから、退屈な授業に対しては、
 
 「おもろない授業やから寝るねん!! そりゃ、寝るやろ、おもろないねんも
 ん!!」
 
  って思ってた。でも、この先生には、「あー、謝らなあかんわー」って思
 えたんよね。そしたら、先生が、
 
 「ゴマを擦っても、小論文の点数には影響しませんよ」
 
  って笑いはったんよね。
 
 「そんなんちゃうもん。悪いって思ったから謝ろうって……」って言いかけ
 たら、
 
 「冗談ですよ。わかってますよ。貴方は、せっかくの才能を態度でぶち壊し
 にしようとしている。才能と態度の総体を評価だとか結果と言います。この
 ままでは、私は良い評価や結果を貴方に与えられません。そんなもったいな
 いことを私はしたくないのです。だから貴方も、そういった部分をきっちり
 して下さい。貴方の文章、楽しみにしているんですから」
 
  そんな返事が返ってきた。

  <伸ばす>  <諭す> ということにおいて、この人以上の人物を僕は知らない。 
 
  その時の小論文のテーマが何だったかも忘れてしまったが、スタンリー・
 キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』と、つげ義春の『ねじ式』を持ち
 出して書いたのは覚えている。 
 
 【アーサー・C・クラークの原作を、スタンリー・キューブリックは、およ
 そ他の誰にも成し得ない斬新な解釈と話法を駆使して映画化してみせた。原
 人が骨を宙に放ると、その骨が次の瞬間に宇宙船ノストロモ号になる。ここ
 での目を見張る「時の跳躍」の凄まじさ!(中略)あるいは、つげ義春が傑
 作劇画『ねじ式』において繰り広げた、「メメクラゲ」(これは「××クラ
 ゲ」の誤植らしいが)に刺された男が病院を探すという物語に織り込まれた
 不条理極まりない世界観の構築とその悪夢的なストーリーテリングの妙味が
 ウンタラカンタラ】と。 
 
  これは90点だった。その点数はまあ、どうでも良い。低過ぎるとショック
 だったが、最初の60点が最低で、以後は常に80点以上だったし、一定の自信
 と言うものがあったからだ。その頃の僕には文章において「お前らには負け
 ねーよ」という些か高慢ちきな自信が周囲に対して、あった。まったくもっ
 て愚かしいことだが、「文章なんてもんは、小難しい文字を繰り出して同語
 反復を避けてそれらしく書けば、大人(それは専ら=教師であり、文章内容
 など本当はどうでも良く点数だけを求めた母であった)なんてものは簡単に
 ごまかすことができる」と思っていたからだ。 
 
  僕の書く文章に、読者なんてものは存在しなかった。教師は、ただ <仕事> 
 として、読みたくもない下手糞な文章を何十・何百人と読み続け、その中で
 点数をつけるだけだし、親は点数にしか興味がなかったからだ。 
 
  中学生の時、フランツ・カフカの『変身』の読書感想文を「中学生がこん
 な文章を書けるわけがない」=「僕が誰か <エラい人> の文章を盗作した
 (あるいは、年長者に書いてもらった)」と決め付けた教師に、僕は「んな
 盗人みたいなことするか! バカにすんな! 死ね、アホ!!」という言葉を
 叩きつけて、そのまま家に帰り、そのまま数日間登校拒否をしたことがある。
 その間、漱石の『我輩は猫である』や『こころ』など、 <モンブショウセン
 テイトショ> とかなんとかいう <らしい本> を選んで、「〜〜だと思いまし
 た」「猫がかわいらしく書かれていました」とか、「アホちゃう?」と自分
 で思うような感想文を書いた。「これでエエのん?」と投げつけたら、「今
 後、汚いことはしないように」と言われた。大人をだますというのは簡単だ
 と知った。要するに、子どもぶれば良いのである。本当の自分を見せてはい
 けないのだ。子どもは子どもらしく、稚拙な文章を書かねばならない。その
 稚拙は「微笑ましい」という感触につながり、そういった文章を書くことで
 可愛がってもらえるのだ。 
 
  母は「良く書けたわねえ♪」と言いながら、点数だけを見ていた。<70点だ
 が、文章としては良いものだと僕が思っている文章> はクソミソにけなされ、
 <大人にゴマを擦って模範的にキレイゴトを並べて90点をとった文章> を母は
 「あんたには文章の才能がある!」と誉めそやした。アホかと思った。「コ
 コがだめ」「ココはもっとひねって書かないと」「この表現はもっとこう…
 …」  
 
  あー、うざい、うざい、うざい、うざい、うざい、うざい、うざい。 
 
  <うざい> という言葉はあまり好きではないため、意識して用いないように
 しているが、この時の感情は、 <うざい> という言葉がぴったりであった。
 
  ほな、大人さんが90点の文章を書いてみて下さい。それを僕にお手本とし
 て読ませて下さいと思った。 
 
  この人ら、僕を見てくれないじゃないか。点数とか文面だとかだけを見て、
 その奥を見ないじゃないか。そもそも、文章を見詰めもせずに、文章に点数
 をつけるなど言語道断である。アンタら、どんだけエラいねん!? ナンボ
 ノモンジャーーーーーーー!! 
 
  とまあ、可愛気のない僕は、教師に可愛がってもらおうなどとは、これっ
 ぽっちも思わなかった。しかし、媚れば母が喜ぶし、義父も喜ぶ。まあ、は
 っきり言ってしまえば、それもどうでも良かった。「アホやね、あんたら」
 と思いながら、どこかで <食事代> <住居代> だと思って、子どもらしさなる
 ものを装った(←ヤなヤツですね、僕ってば)。苦手な数学・科学・化学な
 どは、それこそ必死になって徹夜で勉強した。 
 
 【スイヘイリーベ ボクノフネ ナゼマガル シップスクラークカ】 
 
  元素記号を必死こいて覚えた。そして、とっくの昔に忘れた。 
 
 「なぜ曲がる?」 
 
  んなもん、こんな育ち方してたら自ずと曲がるわ、ボケーー! 
 
  そういったことに疲れて半ば投げ出したのが、先述した中学校3年生1学
 期の時だ。 
 
  高校1年生のある日、離れて住んでいたばーちゃんが我が家にやって来て
 こう言った。

 「まー君は、今、まー君やないね。しんどいね。ばーちゃんとこ来て一緒に
 住むかえ?」

  と突然言った。この時、我が家は既に大人の事情がグチャグチャで、崩壊
 しかけていたのだ。その中で、僕の成績がガクンと落ちたことを、母と義父
 が互いにその責任をなすり合い、大揉めに揉めていた。けれど、僕は「友達
 がいっぱいいる今の家の方がいいよなあ」と思ったので、
 
 「ううん。僕、ばーちゃん好きやけど、ここにおる」と答えたら、
 
 「そうかいね。でも、あれやでぇ。まー君は無理してエエ子にならんでええ
 んやで。まー君はまー君でおってええんやで。あの子ら、アホやから、大人
 の見栄でしか物事考えられへん。でも、まー君はそんなんに振り回されたら
 あかん。まー君はまー君やもんねえ。大人の顔色を伺うような歳やないねん
 でぇ。そんなんせんでええねんでぇ。つらくなって、もぉあかんと思ったら、
 ばーちゃんとこいつでも来てええからね。ばーちゃんは、まー君を突っぱね
 ることは絶対にせーへんで、いつでもおいでや」って。
 
  でも、ばーちゃんのとこには行かなかった。そこだけはグッと踏ん張った
 つもりだ。結局、しばらくして、高校在学中のまま、僕は一人暮らしを始め
 ることになるのだ。
 
  そうこうしている内に、高校3年生。小論文の授業で、先に紹介した先生
 と出会ったわけだが、その最初の時、僕はちょっと上から目線で「お手並み
 拝見♪」とばかりに真剣に書いた。真剣に書いた文章の出来が悪かったのは
 恥ずかしい限りだが、点数だけでなく、その点数と同じ赤ペン文字で批評や
 感想めいた文章が添えられていたのですっかり嬉しくなってしまったのだ。
 その赤い数行の文字を読むためだけに、僕は必死になった。映画と読書と、
 あと、それなりに旺盛な性欲に、この赤ペン先生による感想が楽しみとして
 加わった。 
 
  しかし、先述した【キューブリックとつげで90点の小論文】が戻ってきた
 時、僕は愕然とした。赤ペン先生の書き出しを目にした時、90点であるにも
 関わらず、突き落とされた気分になった。 
 
 【私は、貴方の文章を読んでいて、いつも貴方のことをこう思います。「普
 通じゃない」。】 
 
  確かにこうあった。  
 
 「結局、コイツもか……」と思った。 
 
  続けてこうあった。 
 
 【貴方の年代で、文章につげ義春の名が登場するとは…… なんでしょうね、
 この感覚は。ちょっと私なりに考えてみます】 
 
  ここで、僕はヒネくれてしまっていたから、「ああ、コイツも僕を真っ直
 ぐ見てくれていない」と感じてしまったんだなあ。もう、物凄くねじくれて
 しまっていたから。 
 
  授業が終わって、また先生を追いかけ、「先生!」と声をかけた。 
 
 「どうしました?」 
 
  という先生に、僕はかなり怒りを露にした様子で迫った。詰め寄ったとい
 って良い。 
 
 「『普通じゃない』『普通じゃない』って、僕はちゃんと自分でこう考えて
 書きました! キューブリックもつげも、カッコつけて引用したわけじゃな
 くて、ちゃんと見て、読んでから書いてます!! ウソなんて、僕ついてへん!!! 
 『普通じゃない』ってどういうことやねん!!」 
 
  先生は途端に目を丸くしてうろたえた。当たり前である。 
 
 「今日は土曜日ですから、4限目が終わって、もし時間があるなら職員室に
 来てください。話をしましょう。もし時間がないということでしたら、一口
 で説明しますが、説明が足りなくて逆効果になってしまうかもしれないので、
 できるならお互いに時間を作りましょう。どうですか?」ということだった。
  
  僕は4限目をフけた。ま、しょっちゅうのことではあった。校舎裏で悪友
 たちとタバコ吸ったり、プロレスごっこしたり。やはり褒められた生徒では
 なかった。 
 
  4限目が終わり、職員室に行くと、先生が「ちょっと待ってて下さいね」
 と言って、教科書やらプリントやらを綺麗に片付けてから生徒指導室へ案内
 された。「あ、ココが丁度良いから使うだけであって、『生徒指導室』とい
 う言葉にあまりこだわらないで下さい」とのことだった。 
 
 「で、貴方はどうしてそんなに怒っているのですか?」と言う。 
 
  この時点で、僕は「あー、こりゃ、僕の感情が暴走した読み違いだったわ」
 と気付いていたのだが、あれだけの勢いを見せ付けてしまったものだから引
 くに引けなくなっていたのだよ。下らない意地である。 
 
  一通り説明をした。「普通じゃない」という言葉が引っかかると。僕は自
 分で思ったことを書いた。それは年不相応な文章だったかも知れない。今ま
 で何度もそう言われてきた。でも、僕は自分のことを神童だとは思わないし、
 普通の人間だと思っている。そこを「普通じゃない」と言われるとどうして
 も引っかかる。だから僕は、ずっと大人たちが言う「普通」に合わせてきた。
 合わせてきたというとエラそうだけれど、これははっきりと合わせてきた。
 演じてきた。でも、それをしなくて済むと信じた先生に「普通じゃない」と
 書かれたのが、突っぱねられた気がしてつらかった、と。 
 
  すると先生は、真面目一徹の表情で(←この先生は、悪く言えば面白みが
 皆無である)「突っぱねていたとしたら、その点数を私がつけますか?」と
 尋ねてきた。 
 
 「……でも、イヤやったねん!!……」 
 
  もう、僕はメチャクチャである。頭では理解できるが、「ここで折れたら
 男が廃る」的なクソしょーもない思いに囚われて「勘違いでした。ごめんな
 さい」と言えなかった。 
 
  しかし、先生は、
 
 「『普通じゃない』ということは何も悪いことではありませんよ。少なくと
 も、今回、私は貴方を褒めたつもりです」と落ち着いて話してくれた。そし
 て、先生はこう続けた。「けれど、その気持ちを上手く届けられずに貴方を
 傷付けてしまったみたいです。そういうつもりじゃなかったんです。これは
 本当にすみません。申し訳ないことをしました」と。 
 
  直後、僕は土下座したんだなあ。「読み違えていました。すみませんでし
 たっ!!」って。この時は心から先生に悪いと思ったのだ。 
 
  先生は、
 
 「貴方のそういうところが、貴方の文章を作っているんだと思いますね。決
 して悪いことじゃないです。でも、悪い方向に転がりだすと、多分止まりま
 せんね。ですから良い方向に伸ばしていきましょう。私はそのお手伝いがし
 てみたいな。私でできるなら。今日はこれくらいにしましょうか。来週、今
 日提出してもらったものに、今のことの返答も含めてお返事を書きます。少
 し待って下さいね」
 
  と言った。 
 
  翌週、返ってきた原稿用紙に記されていた点数は85点だか80点だかだった。
 正確には覚えていないが、少なくとも90点の時より低かったのを覚えている。
 返答がいつもよりかなり長かった。 
 
 【落ち着かれましたか? 私はやはり貴方のことを「普通じゃない」と思い
 ます。今回の文章を読んでも、やはりそう思いました。待ってくださいと言
 ったのは、この文章を読んでからお返事したかったからです。貴方は、他の
 方たちと(もちろん)同年代であるにも関わらず、色んなことを知っている。
 つげのこともそうです。そこで「ハっと」したわけです。とても感覚的な表
 現ですが、この「ハッと」という表現で貴方には伝わるはずです。きっと色
 んなものをその目で見詰めてきたのでしょう。良いものも悪いものも。けれ
 ど、悪いものを見ることが悪いことではありません。悪いものを見たことを、
 良いことにしましょう。貴方はそれができる人だと信じています。だから、
 やはり、私は貴方の文章を今週も来週も読みたいなと思います。あと、今回
 の文章。まとめの部分が少し弱いです。論旨がぼやけてしまっていますよ。
 気を付けましょう】 
 
  律儀な先生である。こういう人を真の意味で <先生> と言うのであろう。
 
 
  この先生には、卒業式の後、直接挨拶に行った。 
 
 「先生、卒業でけたでぇ〜!」(←僕は学校をサボりまくっていたので、卒
 業できないのではと級友たちが心配してくれていたほどだ) 
 
 「あ、おめでとうございます。色んな生徒を見てきました。スポーツで記録
 に残る人もいっぱいいますが、貴方は記憶に残る人ですよ。これからも伸ば
 していってくださいね」 
 
  この先生は、確か剣道部の顧問ではなかったかなあ。僕は断然柔道派だっ
 たから、そちらではあまり意識していなかったのだけれど、武道のイメージ
 が残っている。精神的な部分で。 
 
  <普通じゃない> という言い回し、僕は今でも好きではないが、この先生の
 おかげで、自分でそのことを卑下してばかりではいけないということがわか
 った。それは、人間というものは、持っていきようによって良い方向にも悪
 い方向にも転がるということである。なんとなく、思い出したので書き残し
 ておく。 
 
             ┌─────────────────────
         ◎writer|大阪府在住。生まれも育ちも生粋の浪花っ子。
          profile|趣味は読書・プロレス&格闘技観戦・料理、そ
             |してなんと言っても映画鑑賞。映画を観る歓び
             |&語る喜びに加え、最近、広める歓びにも目覚
             |めた。将来の夢は <映画案内人> になること。 
             | 
             |ホームページ
             |[movie masa site 映画に夢を託す]
             |http://homepage2.nifty.com/m-friend/masa.htm
             |メール masa_ginnavi@yahoo.co.jp
             | 
             |[電藝 掲載作品]
             |銀幕ナビゲーション(連載中)
             |           http://kat.cc/153284
             | 

          :*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*: 
                  ∵


浪花
[サバイバル]
日記
il diario in NANIWA
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (shair)

                          □□■2007年2月×日
 
 京都に住んでる音楽家のHとなんか一緒にやろうよ、
 とゆーハナシはずっとしてたのだけど、
 何がどーできるか特に真剣に考えたりするコトなく時が過ぎていた。
 
 実は上新庄にアパートを決めて住民票を区役所に取りに行った時、
 音楽コンテストのチラシをみつけて彼に渡してあった。
 昔自分が作曲した曲を一度ちゃんと録っておこーかなとゆーコトをいつかHが
 言っていたから、
 どーせ録るならどっか送ってみるのもいーんじゃない?とゆー感じで。
 てゆーか逆にそれをキッカケにでもしないとなかなか重い腰が上がらなかっ
 たりもするし。
 
 それが最近、1つ女性ボーカル用の曲があるからそれいってみよーかとゆー
 コトになって、
 Hの住んでる所まで曲を聴きに行って来た。
 
 Hとは昔●SNの無料チャットがまだ健在だった頃に出会ったのだけど、
 色々音楽とかゲージュツのハナシとかをよくしたとゆーか、
 Hが話すのをアタシが聞くとゆースタンスだけど、
 そーゆーハナシをPCの画面上でよく交わした。
 カッコつけたり分ったよーな発言をすると、
 酷く冷たくそんなに言われたら立ち直れないんじゃないかとゆー位に反論さ
 れてしまうので、
 Hとハナシをする時はチョッピリ命懸けみたいなトコがある。
 
 Hと出会った頃、
 たまたまアタシはインナービューとゆーキースジャレットのインタビュー本
 を読んだばっかりで、
 Hの言うことがその本に出てくるグルジェフとゆー思想家(?)の言っている
 コトと同じだったからちょっと驚いた。
 アタシはグルジェフの思想に出会ったキースが、
 彼の音楽や生き方の指針みたいなモノとしてインタビュアーに語ったグルジ
 ェフの教えを極間接的部分的に読んだだけなのだけど、
 longing――熱望するコト――とゆーフレーズに痛み入ってたトコロだった。
 グルジェフ知ってる人とかそんなに多く無いよなぁと思いつつ、
 Hはほぼ初対面のアタシに本質的なハナシばかりするので、
 なんだか堪り兼ねてグルジェフって知ってる?とHに訊いたのだった。
 Hは一瞬固まったけどウンと答えた。
 それはなんとなく不思議な出会いな気がした。
 
 京都のHのやもめ暮らしの部屋はアタシが今まで訪問したコトのあるどの部
 屋よりも足の踏み場が無い所で、
 環境に染まり易いアタシは瞬く間にずっと前からアウトローなミュージシャ
 ンとして4畳半一間に暮らしてたよーな気分になる。
 
 Hがギターを弾きながらその曲を歌ってくれて、アタシは音を拾ってとりあ
 えず楽譜にした。
 
 作曲者自らが演奏するのを聴くのは常に感動的だ。
 多かれ少なかれ身を削って一つ一つの音符を生み出してゆくとゆー作業の終
 結したモノである。
 それに甲乙をつけなきゃならない審査員や評論家とゆー仕事も寂しいモノだ
 と思う。
 
 こーして、Hと知り合ってから2〜3年目にして初めて彼の曲を聴かせても
 らえた。
 別にもったいぶっていたワケでもないのだろーけど、
 なんとなく信用されてないなとゆー気がしてた。
 
 音楽に限らずだけど、作り手とゆー人種には、
 きーてきーて、みてみてーと自分の作品をどんどんアピールするタイプと、
 
 腰の重い、口の重いタイプがあると思う。
 そして、きーてきーてみてみてー派の中から力のあるモノコトが陽の目を浴
 びるとゆーのも、
 至極自然なコトと思う。
 
 またハナシが反れたし。
 
 Hが他にもいくつか聴かせてくれた中で、
 彼がとっても大切に何年もかけて作りながらもまだ未完成で、
 多分それはずっとチョコチョコと手を加えられながらずっと完成するコトの
 無い作品かも知れないのだけど、
 ある人物を唄った曲があった。
 
 その人のハナシは前からよくしてくれて、
 あ…うちのダンナさんと似てるな…と密かに思っているのだけど、
 アタシはその詩を聴きながら、Hのその人に対する尊敬と愛情とその人の不
 器用さと強さと脆さみたいのに、
 涙が止まらなかった。
 
 アタシはバレないよーにボロボロ涙を流すとゆー特技を持ってるのだけど、
 
 鼻水だけはどーしてもズルズルいってしまう為に、
 相手がまさかアタシが泣いてるとは思ってないよーな状況の時は、
 え、風邪?と必ず訊かれる。
 
 曲を聴き終わって、
 え、風邪?と言われて、
 いや、ありがとー。
 と言って帰って来た。
 
 コンテストに送るかどーかは関係なく、
 楽譜にした曲をこれから一生懸命練習しよーと思う。
 
                     [photo] http://kat.cc/bfc4

                                (shair)

             ┌─────────────────────
         ◎writer|1971年生まれ。
          profile|歌う人妻。
             |次に生まれる時はギター弾きのロクデナシに飼
             |われる子猫がいいと思っている。
             |アタシの全ての動機は男であると書いていたの
             |は林真理子さんだが、はい、アタシもです、と
             |も思っている。
             |
             |[電藝 掲載作品]
             |ミラノ(サバイバル)便り
             |           http://kat.cc/15cb2c
             |浪花(サバイバル)日記
             |           http://kat.cc/156400
             |

          :*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*: 
                  ∵


 愛 情
 乞 食  3       
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 村上 みみの
                最初から読む>>>http://kat.cc/15aad8
                    前回>>>http://kat.cc/15c12b

 ほどなく、イバラは戻ってきました。
 
 「門前払いを食わされたよ。それから、真罪という女につけられた。巻いて
 やったけどね。どうでも、ペンダントは渡さないつもりらしい。今度は友だ
 ちを連れていって、強奪してきてあげるよ。」
 
 「いいの。もう、いい。それこそ、真罪のおもうツボだわ。私が危険な連中
 と付き合っていると両親におもわせる口実になって、警察が介入するわ。き
 みだって警察は嫌でしょ。」「ああ、警察にはいいおもいでがないな。」
 
 イバラはムスケルの仕事があるからと出掛けていきました。私は畳の上に寝
 転がって、ストーブ代わりの電熱器が燃えるのを眺めていました。寒かった
 ので、コートは脱ぎませんでした。
 
 イバラはセーターしか着ていませんでした。よく平気でいられるものです。
 少し感心しました。東京の冬は寒いです。私は千葉で育ったので、東京に越
 してきてからは、冬が大変寒いことに驚きました。
 
 ああ、なんのお話をしていたのかしら。ラピスラズリがない。でも、カルモ
 チンさえあれば。私はコートのポケットから卵色の箱を出し、中の薬壜から、
 ザーッと薬を口に入れました。噛み砕きます。
 
 途端に世界はパラダイスに変わりました。トパーズの霧がもやもやとし、私
 は眠りとも覚醒とも呼べぬ沼に腰まで浸かって、両腕を緩慢に動かしていま
 した。いつ、イバラが帰ってきたのか、知りません。気がつくと、イバラが
 いました。
 
 「ねえ、薬、ある。」
 
 私のカルモチンはさっきのぶんで、最後でした。
 
 「ハイミナールならあるよ。」
 
 「嫌。カルモチン。」
 
 「そんな高級品はないな。でも、金を渡して呉れたら買ってきてあげる。」
 
 
 きみは、薬は不可ないとは云わないのです。私はそれだけで、きみに縋って
 しまいました。 
 
 「これで、買えるだけ買ってきてちょうだい。」
 
 「うん。」
 
 階段を駆け下りてゆく音。
 
 私は浅く眠りました。眠りのなかで、私は傑作のよい子でした。小学生に返
 った私は、大人の号令通りに、きびきび動き、真面目で誠実であろうと狂っ
 たように努力していました。
 
 クラスでいじめがあれば、率先して助けに回りました。仲間たちから、チク
 リ魔と呼ばれ、次第に誰も私を相手にして呉れなくなってゆきました。それ
 でも、私は、誠実に生きることという枷から逃れられませんでした。 
 
 私の至誠天に通ず、という正月の習字は校長室の扉に貼り出されました。翌
 日、半紙はズタズタに刻まれていました。私は、この世の悪を憎む、正真正
 銘、純心天然、よい子でした。ズタズタになった半紙を片手に、血相を変え
 て走り回り、犯人を探しました。
 
 破ったのは、私が以前に庇ってあげた身体障害者の女の子でした。誰が親切
 にして欲しいって頼んだのよ。彼女はそう云って、私の手から半紙をちぎり
 取り、足元に落として、不自由なほうの足で踏みにじりました。
 
 私はなにが起こっているのかよくわかりませんでした。それからも、よい子
 の行進は続きました。よい子は、中学でひどいいじめに遭いました。トイレ
 に入れば、水が降ってくる。教室では、授業中にコンパスの針で刺される。
 休み時間にはスカートをまくり上げて、頭の上で縄跳びの紐で縛って茶巾に
 し、パンツを脱がされる。
 
 私がようやく立ち上がると、パンツはパスにパスを重ねられ、私が疲れ切っ
 たところで窓の外に投げ棄てられる。下校時には、私の靴は、変な虫がたく
 さんいる、腐葉土のタンクの中に隠されている。
 
 それでも、よい子は行進を続けました。ついに、友人と呼べる人間がいなく
 なり、私は中学を卒業しました。
 
 リアリー・シン、真罪さんと出会ったのは、高校です。中学で三年間の刑に
 服していた私の心に、彼女はすうっと入ってきました。真夜中から朝方まで
 の長電話。一日に八枚を越す手紙。即、返事をしなければ、おもいやりがな
 いとなじられます。私は、またよい子の行進曲に組み込まれました。
 
 ススメ、ススメ、兵隊ススメ。リアリー・シンは、私に際限なく武装解除す
 ることを求めました。自分は硬い装甲に守られたまま、私に裸になれと強要
 しました。私は、脱げない鱗のことを、彼女に謝り続けました。
 
 どうすれば彼女が満足して呉れるのか訊きました。リアリー・シンは、云い
 ました。梵天瓜。それはあなたが自分で見つけることよ。ほんとうは、リア
 リー・シンにだって、自分の求めていることがわかっちゃいなかったのでしょ
 う。
 
 リアリー・シンは、私という玩具で、ヒマ潰しをしていたに過ぎないのです。
 その通りだ、とイバラが云いました。そして、
 
 「僕はきみになにも求めない。きみは、まるで脚の悪い猫みたいに、ここに
 いて呉れるだけでいいんだ。」
 
 と、云いました。
 
 私は、そんな言葉は信じませんでした。どうせ、きみも、そのうち純真な友
 情だの、愛情だので、私を責めはじめるのでしょう。それでもいいんです。
 それまでの短いパラダイスを楽しめれば、それで。
                              (以下次号)

             ┌─────────────────────
         ◎writer|雨が好きな夜想派です。指輪とピアスが好き。
          profile|ジャンガリアンハムスターと遊ぶ毎日です。
             |
             |[電藝 掲載作品]
             |愛情乞食(連載中)  http://kat.cc/15aad8
             |

          :*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*: 
                  ∵

┏━━━━━ あなたのケータイに 週2回 作品をお届けします ━━━━━┓
┃                                 ┃
┃       モバイルメールマガジン「電藝ミニ」         ┃
┃                                 ┃
┃          読者登録は以下のサイトで           ┃
┃       http://indierom.com/dengei/index.cgi        ┃
┃                                 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
                 ∵
┏━━━━━ 電藝編集部はつねに新しい書き手を求めています。 ━━━━┓
┃                                 ┃
┃         http://formmail.jp/00026730/          ┃
┃                                 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
                 ∵

|weekly DENGEI magazine
|週・刊・電・藝

|◇発行元  電藝編集部(メールはhttp://formmail.jp/00026730/
|◇編集人  吉田直平

|・本誌は等幅フォントに最適化されています。
|・本誌は以下の配信システムを利用して発行しています。
|   まぐまぐ/melma!/めろんぱん/メルマガ天国/カプライト/
|   ヤフーメルマガ
|・配送アドレス変更、読者登録解除は
|  http://indierom.com/dengei/info/reader.htm
|・ご意見、ご感想は電藝ビビエスまで
|  http://www1.rocketbbs.com/412/dengei.html
|・mixiコミュニティ「電藝 for ミクシ」にもどうぞ。
|  http://mixi.jp/view_community.pl?id=526988
|・バックナンバーはウエブ電藝 http://indierom.com/dengei/
|・各作品の著作権はそれぞれの執筆者に属します。本誌に掲載された作品
| の無断転載を禁じます。

|Copyright (C)2008 DENGEI

この記事を取り寄せる
最新号をメルマガでお届け
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。

最近の記事

上へ戻る