週刊電藝463 [080602] アリエル | 建速 | 喜多
■□ 週 刊 ■□weekly DENGEI magazine [ウエブ電藝]
■□ 電 藝 ■□VOL.463 発行数:296 http://indierom.com/dengei/
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┌ H E A D L I N E ────────────── '08年06月02日 ───┐
シネマ・ラマン◎愛人映画の愉しみ : アリエル人魚
喇叭気味の毎日 : 建速猟奇王
銀幕ナビゲーション : 喜多匡希
└─────────────────────────────────┘
┠ C i n e m a l ' A m a n t ┨
シネマ・ラマン◎愛人映画の愉しみ【限定復活号】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ アリエル人魚
昨年秋、以前連載した本欄を読んでくださった読者からのお便りがあった
と編集長からメールがありました。さっそく続編(?)を書こうと思いつつ、
諸事情でもう春になってしまいました。
お便りを送ってくださった方が挙げていたのは「恋愛小説」。<愛人映画>
とは、もともと自分のホームページでの企画なのですが、だいぶ前のことな
ので記憶も薄れており、今見直してみたのですが、この映画は残念ながら入
っていませんでした。でも調べてみると、たしかに見た記憶がうっすらと……
DVDかな?
「恋愛小説」は94年12月公開のロシア=仏合映画で、32歳の若きロシア監督
V・トドロフスキーの作品。フィルムノワール犯罪形式のスタイルで、義母
が書く小説のタイピストである妻が愛人へ走る――という物語だそう。この
タイプシーンがうっすら残っているので、きっとどこかで見ていると思いま
す。
すっかり遅くなりましたが、お便りありがとうございました。
ということで、私事ですが、PC環境はがWindows Vistaに変わり、回線も
光に(速い!)、Wordも変わって、慣れないのですが、久しぶりに「シネマ・
ラマン〜'08年春」を書いてみます。
┠057┨ブローク・バック・マウンテン
┃2005/アメリカ/監督:アン・リー 出演:ヒース・レジャー ジェ
┃イク・ギレンホール
まずは2006年の最終回で予告していた、アン・リーのこの変形愛人映画から。
カウボーイって案外とゲイが多いのでは?と、これを見て初めて感じた。だ
って男性だけで延々と移動、寝袋世界、トイレも外で、親密になれそう。も
しソノ素養がなくても、誘われればなんとなく、という感じでは……この映
画のまさかの若き死、亡きヒース・レジャー。お相手のホントはゲイのジェ
イクも結婚しているから、二人とも既婚者同士。不自然が大自然の中では自
然に見えてしまう。相手がいなけりゃ動物でもいいわ !(^^)! みたいな。
アン・リーは一見普通でも微変形、というのを描くのがうまい。原作はピュ
リッツアー賞のアニー・ブルーの短編だそう。
ゲイかバイかははっきりしてよ系。
┠058┨ラスト・コーション
┃2007/中国=アメリカ 監督:アン・リー 出演:トニー・レオン
┃タン・ウェイ
同じくアンリー。妻、愛人承知黙認系。
若い彼女とS的性に溺れる、哀しき紳士トニー・レオン様。もっと期待して
いたが、性を意識しすぎか? アンリー、性トラウマありか?
愛人密会SM的アクロバットSEX系。
┠059┨譜めくりの女
┃2006/フランス 監督:ドゥニ・デルクール 出演:カトリーヌ・フ
┃ロ デボラ・フランソワ
小品仏映画。
私もピアノをほぼ毎日弾いているので、譜めくりっていうのはわかるが、こ
こまで相性がどうのこうので選択しなくてもな〜。もともと、レズ素養のあ
るピアニストなのだろう。試験でのサインも相手は女性だったし、不安障害
のような病気を抱えていたのか? 1日でとてつもない決意とは!!
あと、愛人ではないと思うが、無理にやろうとした男性にあの一刺し、これ
れは凄い! チェロが狂気の凶器というのは初めて見た。できるのね、あん
なこと……。
ラスト、手紙に仰天した良き裕福夫、P・グレゴリーが哀れ。妻よ満足せよ
とお説教したい。
良き夫に同情+レズ突進系。
┠060┨向かいの窓
┃2003/イタリア=イギリス=トルコ=ポルトガル 監督:フェルザン・
┃オズペテク 出演:ジョヴァンナ・メッツォジョルノ マッシモ・
┃ジロッティ
イタリア映画。期待せず見たが、展開が面白くなかなかよかった。典型主婦
日常不満願望系。
夫がちょっとだらしないが悪い人間ではなく、子も二人。大きな不満のない
日常だが……ふとした老人の事件から窓の男性と知り合って……お決まりの
コースへ行くか?
でも冷静判断20代妻は、「譜めくりの女」のようにはならず、現実選択系。
彼も現実を見つけて生きていくのだろう。後半、あの彼がゲイだとわかって
びっくり! ミステリとしても楽しめた。
普通不倫一歩手前+ゲイだったのね系。
┠061┨スルース
┃2007/アメリカ/監督:ケネス・ブラナー 出演:マイケル・ケイン
┃ジュード・ロウ
今年になって鑑賞。リメーク作。苦手なJ・ローが愛人役、室内心理劇。寝
とられ夫M・ケインが、年下の若き妻愛人と負けじと戦う。中年のケインの
はりきりに苦笑する。
ほぼ男性二人の密室愛人心理大作戦系。
┠062┨あるスキャンダルの覚え書き
┃2006/イギリス/監督:リチャード・エアー 出演:ジュディ・デンチ
┃ケイト・ブランシェット
奇妙な物語。不満はあるが、まあ普通の生活をしている教師の妻が、年増の
女性教師と仲良くなりすぎて起こる事件。こういう年増中年レズが案外いる
の? 男性よりわかりにくいよね、レズは。男性なら、日本でもそういう場
所があるから、わかってしまうけれど、女性にはあるのか? SEXシーン
があるわけではないから、体も欲しいとは限らないような……
教師という抑圧気味の職業を持ち、淡々とした日々の日記が恐怖を呼び、ラ
ストのベンチでの会話が怖い。標的は……
J・デンチ姉御、レズ獲物確保ホラー!(^^)!系
┠063┨鰯雲
┃1958/日本/監督:成瀬巳喜男 出演:淡島千景 木村功 新珠三千代
┃
成瀬巳喜男。昭和33年。
農家長男の戦争未亡人・淡島千影と、新聞記者・木村功との愛人関係が1つ。
もう1つは、淡島の同窓で町でレストランを経営している新珠三千代の愛人、
たぶん60近いパトロンの関係。
二組の愛人関係が、何か農家の自然な風景、農作業にふさわしくないように
ある意味、堂々と映像化されているから、淡島の方は、噂が怖くないの?と
突っ込みたくなる感じ。!(^^)!
初めは東北地方と思っていたら、神奈川でびっくり! だからこそ、愛人で
も何とかなっていたのだろう。もっと田舎なら座敷牢(*^_^*)
さらに、木村は独身だと思っていたら、妻子持ちで、え!でした。妻子ある
ジャーナリストが農家の未亡人となんて、(昭和30年の週刊新潮に載ってい
そうな)スキャンダルになりそうと思ったりしたが、そういう展開もなく、
冷静な幕だった。
新珠は銀座ママパトロン風で、現代でも定番の形。
農家未亡人大胆愛人+定番高齢パトロン系。
今回は7本の愛人映画について、記憶薄れつつも書いてみた。昨年は映画
館で50〜60本を鑑賞したが、愛人映画と呼べるものはあまりなかった。思っ
たより少ないものだ。小説なら、もっと多くの愛人たちが登場するだろう。
愛人を書く作家ナンバーワンは渡辺淳一か、小池真理子か、林真理子か、小
池の夫の藤田宜永だろうか。
現在、ホームページは更新していないが、そちらでは古い愛人映画につい
ても多数書いている。興味がある方はどうぞ(トップ→更新→愛人探検)。
┌─────────────────────
◎writer|デンマーク生まれ。東京都在住、50代主婦。好
profile|きなこと:映画、DVD、音楽鑑賞。読書。楽
|器練習(ピアノ)。サッカー観戦。スキューバ・
|ダイビング。
|ホームページ[銀の人魚の海]
|http://www2.ocn.ne.jp/~mermaid/
|ブログ http://blog.goo.ne.jp/mermaid117/
|
|[電藝 掲載作品]
|成瀬巳喜男の映画をめぐって http://kat.cc/029111
|愛人映画の愉しみ http://kat.cc/02164e
|
:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:
∵
猟.記
<喇叭気味の毎日>
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 建速猟奇王
[猟 格 プ ロ 日 記]
柔道は武道であり、
スポーツとしての“JUDO”ではない
2008年5月4日(日)に視聴したNHKスペシャル『JUDOを学べ〜日本柔道金
メダルへの苦闘〜』は非常に興味深かった。内容は実に単純明快。何故、井
上康生は勝てなくなったのか? 北京オリンピックで“金”を獲る方法は何
か? ということである。
フランスの柔道登録人口は日本の3倍の60万人。ドイツでは35万人。世界
最大の競技圏を形成するヨーロッパには、従来の柔道とは技やルールの解釈
が異なり、“ジャケット レスリング”とすら呼ばれる“JUDO”が存在する。
レスリングや民族格闘技の技術をベースに、腕の付け根や背中をつかんで
柔道独特の間合いを封殺する、ほとんど柔道着をつかまずタックルや反り投
げを狙う、相手に組みついたまま自ら一回転して相手の背中を畳に叩きつけ
るといった戦術は、細かいポイントを積み重ね、僅差であっても勝ちにこだ
わる競技性を最優先したもので、もはや、我々の知っている柔道とは全く別
のものである。
それは、あの小林まこと氏の不朽の名作『1・2の三四郎』で、主人公の
東三四郎とその仲間たちが高校時代に参加した最初で最後の柔道大会で、従
来のセオリーを全く無視し、力任せに関節技をはずし、ラグビータックル、
プロレスの大技(ブレインバスターやネックブリーカードロップ)やアマレ
スを多用して、並みいる強豪を次々と撃破したシーンを想起させる。
番組は、棟田康幸(27)(警視庁)、石井慧(さとし)(21)(国士大)、井上康生
(29)(綜合警備保障)ら日本柔道を代表する選手たちが、今年2月にヨーロ
ッパの柔道大会に参戦し、日本の伝統的な柔道ではない“JUDO”に苦戦する
様子を伝えている。このサーキットは、世界基準“JUDO”を体で覚えない限
り、北京オリンピックでの“金”はないという斉藤仁監督以下首脳陣の判断
から敢行されたものであり、後の北京オリンピック代表選考にも大きな影響
を与えることになる。
前田日明がRINGS時代の'92年3月、自らの対戦相手として招聘したブザリ
アシビリ・ラマジが披露したグルジアの民族格闘技 チタオバが紹介されて
いた。試合は前田の完勝であったが、その豪快な投げ技は前田を翻弄、頭か
ら2回もマットに叩きつけた。筆者はこの試合、尼崎体育館のリングサイド
で観戦しており、とても懐かしかった。
現在の世界王者はフランスのテディー・リネール(19)で、身長203cm、体
重130kg。2月10日、井上はこのリネールと北京オリンピックの前哨戦とも言
える欧州最大級のフランス国際大会準決勝で対戦する。すでに代表が確実な
リネールは無理をせず、“一本勝ちを求める姿勢は素晴らしいが、世界はそ
れだけでは勝てない。自分は効果一つでも絶対に勝つ”と語り、井上を僅差
で下した。
VTRも紹介されたが、袖や襟を取りに行こうとする井上に対して、リネ
ールは組むことを徹底的に嫌い、井上の組手を切りにかかる。要は組まない
ことがリネールの“JUDO”なのだ。筆者はこの戦略はこれで正解だと思うし、
卑怯だとも思わない。そして井上は事実上、オリンピック代表選考から落選
したのであった。
そもそも、組んだ状態から始まるという前提で稽古をして来た日本の柔道
は甘いと言わざるを得ない。実戦が自分にとって有利な体勢から始まること
はまずない。
総合格闘技におけるグラウンドテクニックの絶対的優位性は揺らぎようも
ないが、ほとんどの試合が立った状態から始められる以上、グラップラーは
まず相手を倒す技術を磨く必要がある。ストライカーとグラップラーの試合
のスリリングなせめぎ合いは、正にこのファーストコンタクトにある。
'01年8月19日にさいたまスーパーアリーナ『ANDY MEMORIAL 2001』で開戦
したK-1と猪木軍の対抗戦のファーストマッチ“ミルコ・クロコップvs.藤
田和之”は、不用意にタックルに出た藤田の額をミルコの狙い澄ました膝が
撃ち抜き、39秒で終わった。このミルコの膝蹴りは時速40kmの自動車との正
面衝突と同じ衝撃度と言われ、藤田の額の傷は骨膜にまで達していたという。
藤田に“倒してしまえばそれで終わり”という奢りがあったことは否めな
い。藤田の単調なタックルをミルコが見切るのは実に簡単で、グラウンドで
仕留めることしか頭になかった藤田の完全な作戦ミスである。藤田の敗戦と
“JUDO”に勝てない柔道は同じミスを犯している。
本来、グラップラーである柔道家が組手を切られるというのは恥ずべきこ
とであり、相手を掴むこと自体が技になっていないという証左である。例え
ば、ヒクソン・グレーシーやアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラのような掴ん
だ時点ですでに技に入っている一線級のグラップラーなら、持ち手を切られ
るということは考えにくい。欧州の帝王・地獄の墓掘人 ローラン・ボック
は“腕が腰に回りさえすれば、いかなる体勢からでもスープレックスを出せ
る”と豪語したが、一線級の使い手と言うのはそういうものである。
リネールは井上について“子どものころから尊敬する柔道家。サムライの
心を持っている”としながらも“内またにこだわりすぎている。大きな相手
に対して、得意技が逆に弱点になっている”とコメントした。井上には一本
勝ちを狙いに行くサムライの心はあったが、残念ながらその技術はスポーツ
としての柔道のルールに守られたものでしかなかった。スポーツ化した柔道
では“JUDO”には勝てない。
しかし、リネールの言う“効果一つでも絶対に勝つJUDO”は、武道として
の柔道の前では、格闘技としてのプライドを放棄したものにしか映らないは
ずだ。それはまるで格下の選手が格上の選手にお伺いを立てるような無様で、
木刀で真剣に立ち向かうような見ていられないものに違いない。真のグラッ
プラーが操る実戦的柔道つまりストリートファイトで生き残るための格闘技
であれば“JUDO”など児戯に等しい。筆者は北京オリンピックで、柔道が
“JUDO”に勝つところを見たいのだ。本当の武道のプライドを見せて欲しい
のである。
┌─────────────────────
◎writer|喇叭とは、楽器であり、ラッパーに通じ、ファ
profile|ッションであり、また“ラッパを吹く”とは
|鱈目を吹聴すること”であり、黙示録の第七の
|“出天使が吹くラッパでもあり、戦前の教科書
|に載っていた“木口小平は死んでもラッパをは
|なしませんでした”に通ずる。単純に音の響き
|が、ひょうきんでちょいとおマヌケ・和み系と
|言うニュアンスも加味されている。
|また、頻繁に登場する “猟奇的”なる言葉は、
|筆者最愛の韓国映画『猟奇的な彼女』から拝借
|している。この作品、生意気で恐ろしく凶暴、
|でも正義感に溢れる超キュートな“彼女” と
|“彼女”に振り回される主人公“僕”を描いた
|ロマンティック コメディ。韓国では公開以降、
|“猟奇=ヨプキ”という言葉が本来の意味と異
|なり、“他とはちょっと変わってイケてる”
|“とんがった面白さ” 等々、エッジの効いた
|ヒップなニュアンスとして生まれ変わったとい
|う。なお、ペンネームの建速(たけはや)は日
|本神話のスーパーヒーロー、スサオヲのファミ
|リーネームである。
|マイブームを求めて、あらゆるジャンルを渉猟
|する猟奇心旺盛な射手座、大阪在住の男子。将
|来の希望は、古書店経営。
|
|'08年現在のマイブームは、北京オリンピック・
|車善七・フルーツサンド・ソリティア上海・放
|送事故・チョンジヒョン・相澤仁美
|
|[電藝 掲載作品]
|猟記<喇叭気味の毎日 http://kat.cc/02653b
|
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∵
【新作映画おすすめレビュー】
銀 幕 ナ ビ ゲ ー シ ョ ン
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 喜多匡希
●SFテイストで綴られる新生『猟奇的な彼女』
|
僕の彼女はサイボーグ |5/31〜
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ D| 東京:サロンパス ルーブル丸の内ほか
一見、TVドラマ的なあ A| 大阪:TOHOシネマズなんば、梅田ブルク
りきたりの青春恋愛映画か T| 7、なんばパークスシネマほか
と思いきや、これが実に奇 A| 京都:TOHOシネマズ二条、MOVIX京都ほか
想天外かつ独創的な面白さ | 兵庫:神戸国際松竹1、OSシネマズミン
に満ちた作品に仕上がって | ト神戸、109シネマズHAT神戸ほか
いて驚かされた。 | 滋賀:ユナイテッド・シネマ大津、水口
| アレックスシネマほか
本作は日本映画だが、監 | 奈良:TOHOシネマズ橿原、MOVIX橿原ほか
督を手掛けたのは、韓国人 | 和歌山:ジストシネマ和歌山、ジストシ
監督のクァク・ジヨン。日 | ネマ南紀ほか
本でも大ヒットを記録した | そのほか、全国一斉公開中
『猟奇的な彼女』や『僕の | 公式HP→<http://cyborg.gyao.jp/>
彼女を紹介します』の監督
として知られている、韓国映画界有数のヒットメイカーだ。
【未来からやって来た美しい女サイボーグと、気弱で真面目な青年が織り成
すSF仕立てのラブストーリー】という筋立てそのものは、決して目新しい
ものではない。しかし、実際に鑑賞してみると、これが今までの純正日本映
画には見られない語り口を持った作品で、実に新鮮に楽しめるのだ。 <韓国
の映画監督が単身来日し、日本映画を撮る> という斬新なアイデアは、固定
してしまったスタイルを解きほぐし、新たな血を注ぐことに成功している。
本作には徹頭徹尾のクァク・ジヨンらしさが漲っており、その作家性は他
の追随を許さない独自性を誇っているが、その一方で、大規模なオープンセ
ットを組み、大迫力のCG映像による大スペクタクルシーンを盛り込んで見
せたり、ノスタルジー溢れる感動の一幕を設けたりと、娯楽作品としてのツ
ボもきっちりと抑えているのが嬉しい。
正直なところ、序盤では綾瀬はるか扮するサイボーグのあまりに非常識な
行動に気分を害してしまい、一体、この先どうなることかと不安になったも
のだが、以降、グングン良くなる。そういえば、『猟奇的な彼女』も、本作
と同じ語り方で、まず観客の理解を求めることなく、序盤で徹底してキャラ
クターを紹介し、観客がゲンナリしきってしまう直前で物語を上昇気流に乗
せてしまう。そのタイミングが絶妙で、その後は安心して楽しめる。それが
クァク・ジヨン監督の持ち味なのだ。本作もその例に漏れず、中盤以降は、
視覚的にも感情的にも息をつかせない。笑いと涙と緊張の一大エンターテイ
ンメントが貴方を待っているのだ。
<乱暴なまでに強い女性像と、情けないまでに弱い男性像> が、やがて両者
の成長を呼び、次第にお互いがかけがえのない存在になっていく物語。即ち
【『猟奇的な彼女』SFバージョン】と言える作品なのだ。その証拠に、本
作の小出恵介は『猟奇的な彼女』のチャ・テヒョンにそっくりで、そこもま
た面白い。
『猟奇的な彼女』にハマった人、ありきたりの映画に飽きてしまったという
人に特におすすめしたい。
●1人でも多くの人に届けと願う。
あなたの宝物になる映画だから
|
ぐるりのこと。 | 6/ 7〜 東京:シネマライズ、シネスイ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ D| ッチ銀座
スーッと、心に染み入っ A| 6/21〜 大阪:シネ・リーブル梅田、シネ
てくる優しさと感動がある。 T| マート心斎橋、MOVIX八尾、MOVIX堺
劇的なものなんて何一つな A| 6/21〜 京都:京都シネマ
い。絵空事なんていらない。 | 6/21〜 兵庫:シネ・リーブル神戸
血の通った人間がいて、そ | ト神戸、109シネマズHAT神戸ほか
の周りに人間がいて、そし | 近日公開 滋賀:滋賀会館シネマホール
てさらにその周りをより多 | そのほか、全国順次公開予定
くの人間が取り巻いている。 | 公式HP→<http://www.gururinokoto.jp/>
それが社会というものだ。
そこには、それぞれのドラマがある。一人一人違った人生がある。そう、社
会とは、そんな一人一人のドラマの集合体なのだ。
心の底から平和だと思えるひとときを過ごしても、すぐ近くを歩いている
人は、その時、抱えきれない問題につぶされそうになっているかもしれない。
一見、何の変哲もないように見えて、社会は、世界は、悲喜こもごものドラ
マに満ち満ちている。そこに人間がいるからだ。
本作は、ある1組の夫婦を中心に、彼らと、彼らを取り巻くドラマを描い
ている。いや、描いているんじゃない。ただ見つめているのだ。橋口亮輔と
いう、日本映画界が誇る人間ドラマの名匠が、映画を通して、人間を見つめ
ているのだ。それはきっと、痛みと苦しさを伴なう作業だ。けれど、橋口亮
輔は逃げずに見つめ続けた。
彼がこれまでに発表した長編映画は、『二十歳の微熱』『渚のシンドバッ
ド』『ハッシュ!』の3作品。そのいずれもが、 <ゲイ> である自身の目を
通して見つめられたドラマであった。その3作品は、いずれも秀作であった。
しかも、作を重ねる毎に、よりその素晴らしさを増していた。しかし、「次
で同じことをやっていては厳しいかもなあ……」と感じた。「次は、外に一
歩出てみようよ、橋口さん」、そう思っていた。嬉しいことに、彼はその一
歩を自ずと踏み出した。
きっと苦しかっただろう。囲いの外は未知なる世界だ。己は裸同然の状態。
周囲は未知の脅威が満ち溢れている。それも社会だ。世界だ。けれど、橋口
亮輔は引っ込まなかった。うつ病になった。怖かった。けれど、人間を見つ
め続け、映画にかじりつき続けた。そして、本作が完成した。橋口亮輔は、
ここで父となり、母となった。苦しんで、傷ついて、そうしながら、本作を
産んだのだ。これほど豊かに、これほど温かく、そしてこれほど優しく人間
を見つめた映画、ほかに知らない。
この感動は、劇場で味わってこそだ。場内に入り、やがて照明が落ちる。
ほどなく映写が始まる。その後、貴方は140分、闇の中で光を放つスクリーン
を見つめ続ける。この時、貴方は、橋口亮輔が見つめたものと同じ視線にな
る。その間、様々な感情が揺さぶられることだろう。そして、上映が終わり、
明るいロビーへ足を踏み出した瞬間、貴方は観賞前より満ち足りた気分にな
っていることに気付くはずだ。その充実感を、是非味わって頂きたい。1人
でも多くの人に、本作を観て欲しいと願う。だって、これは貴方の宝物にな
る映画なのだから。
┌─────────────────────
◎writer|大阪府在住。生まれも育ちも生粋の浪花っ子。
profile|趣味は読書・プロレス&格闘技観戦・料理、そ
|してなんと言っても映画鑑賞。映画を観る歓び
|&語る喜びに加え、最近、広める歓びにも目覚
|めた。将来の夢は <映画案内人> になること。
|
|ホームページ
|[movie masa site 映画に夢を託す]
|http://homepage2.nifty.com/m-friend/masa.htm
|メール masa_ginnavi@yahoo.co.jp
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