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2008/06/23

児童文学評論No.125 ほそえ絵本編02

この記事を取り寄せる

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【児童文学評論】 No.125 ほそえ絵本編02        2008.06.25日号
                            1998/01/30創刊    今号の発行部数3281部
                                        kids@hico.jp
〔児童文学書評〕 <http://www.hico.jp
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★まちがって、ほそえ絵本編02をほそえ絵本編01と同じ内容のものを送って
しまいました。
読者の皆様、ほそえさんに、おわびします。(ひこ)
☆このマガジンは1行34字で改行されています。
★発行年は「原著年/訳年」です。

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【絵本】
『くまとやまねこ』湯本香樹実文 酒井駒子絵 (1998/2008.4 河出書房新
社)
なかよしの小鳥が死んでしまって泣いているくま。森の木を切って、木の実
の汁で染めて、なかに花びらを敷き詰めた箱にその小鳥を入れました。どこ
へ行くにもその箱を持って出かけ、森の動物たちに見せる日々。みんな困っ
た顔をして、つらいだろうけれど、わすれなくちゃ、というのです。鍵をか
け、家に閉じこもるくま。時間が過ぎていきます。でも、くまは自分でドア
を開け、外に出て、心動かすものを見つけます。山猫と出会うのです。やま
ねこに小鳥のことを話しはじめ、楽しい思い出が目に浮かんだときから、絵
にピンクの色がのせられます。今まではモノクロの絵が続いていました。く
まの生活に色が戻ってきたのです。楽しかったこと、おもしろかったこと、
小鳥との日々の何もかもを思い出し、やと小鳥を森の中のひなたぼっこの場
所に埋めることが出来ました。小鳥のからだと離れても、思い出が残ってい
るからだいじょうぶなのね。山猫にあうまでは、小鳥との思い出もくまの心
の奥底で固まってしまって、生き生きと動き出すことが出来なかったのでし
ょう。思い出とともに生きるということは、固まった心のままではできない
ことだったのだなあと改めてこの物語で感じました。静かな、でも暖かなこ
の絵本はどうしようもない喪失と向き合う時間を描き出しています。その大
切さを幼い子にも大人にも変わらず伝えられる物語を絵が支えています。

『たねのはなし〜かしこしておしゃれでふしぎな、ちいさないのち』ダイア
ナ・アストン文 シルビア・ロング絵 千葉茂樹訳 (2007/2008.3ほるぷ
出版)
たくさんの美しい卵のイラストレーションで注目された『たまごのはなし』
のコンビの新作。次の不思議なたね。たまごとたね、丸くて秘密が詰まって
いるのは同じですね。さやのなかではずかしがっているたね、おいしい果実
で着飾るたね、空や海を旅するたね。たねはみんな眠っていて、日当りの
いい土地で栄養を取り、水を吸って、目をさます! たねの形、色のヴァラ
エティに富んだ様子、芽生えて成長したさままで見られてびっくりすること
請け合い。たまごもたねもいのちの固まり。いのちってきれいなのね。

『ちいさなあなたへ』アリスン・マギー文 ピーター・レイノルズ絵 なか
がわちひろ訳 (2007/2008.4 主婦の友社)
母になった喜び、大きくなっていく我が子とともに歩める日々は短くて、一
人で歩き出す姿を遠くから見守るしかない日がやってくる。やがて独立し、
家庭を持ち、こどもをそだて、年老いた時、いつも思いをかけていた母のこ
とを思い出してと語る絵本。母親になったからこそ、自分の子どものときに
してもらったことを、ふっと思い出すときがある。そうやって、思いがつな
がっていくのだろう。小さな子どもにというよりも、若い女性や年を重ねた
人が手に取って、心ふるわせる絵本なのだろうな。

『せんをたどって いえのなかへ』ローラ・ユンクヴィストさく ふしみみ
さを訳 (2007/2008.3講談社)
ひとふででどんどんページをつなげてのびていく線の間に、色鮮やかなもの
たちが描かれる。前作では町のいろいろなものをたどっていったが、今回は
家の中をたどっていく。グラフィックの美しさ、質問の楽しさはそのままに。
数を数えたり、さがしものをしたり、何度もたずねたくなる愉快な家。

『もりにできるいちば』五味太郎 (1979/2008.4 玉川大学出版局)
玉川こどもきょういく百科は物事の元々を見極めようとするおもしろい百科
事典だった。谷川+和田コンビの『ともだち』が掲載されたのもこのシリー
ズです。経済の元々を平易な物語に落とし込んだお話がのっていた。それが
独立して絵本になったのが本作だ。立派なブドウの木を持っているきつねが
ぶどう屋をひらき、森のみんなもそれぞれお店を持って、自分のあげられる
ものと、自分のほしい物を取り替えっこした。物々交換ね。お店を開いてい
ない時は、ぶどうの木の手入れをしたり、めずらしいものを手に入れたりし
て、工夫する。素敵なものをみんなにあげて、素敵なものを手に入れるため、
みんなどんどん集まってきて、市場は大にぎわい。顔の見える元々の経済っ
てこういうことだったんだなあ。

『かずをかぞえる』五味太郎 (1979/2008.4 玉川大学出版局)
数を数えるということを、子どもは何度も何度も実際に指さし、声をだして
数えます。数の絵本は数を数えたくなるような本がいい。本作では位取りも
10のかたまりのタイルを使って、まとまりで教えてくれるので、大きな数
になっても大丈夫。100まで数えられるようになったら、きっと大満足す
ることでしょう。

『りんごのえほん』ヨレル・K・ネースルンド作 クリスティーナ・ディー
グマン絵 たけいのりこ訳 (2002/2008.3 偕成社)
かわいらしいりんごの精が、りんごの木の1年を紹介してくれます。冬、葉
を落としたりんごの木には鳥が虫を食べにきたり、おちたりんごをつついた
りしています。春は白い花がいっぱい。ハチに手伝ってもらって、受粉をし、
りんごの実がだんだん大きくなり、おいしいパイになったりジャムになった
りする。スウェーデンではお庭に必ずはえているというりんごの木。身近だ
からこそ、1年をじっくり見ていられるのね。巻末にシンプルなアップルケ
ーキのレシピ付き。

『ニューヨークのタカ ペールメール ほんとうにあったおはなし』 ジャ
ネット・ウィンター作 福本友美子訳 (2007/2008.4 小学館)
ニューヨークのセントラルパークで狩りをし、そばの高級アパートに巣をか
けたアカオノスリという小型のタカの子育ての様子はワールドニュースでも
少し紹介されたことがあります。その実話をウィンターが絵本化しました。
野生の生き物が都会の囲われた自然に戻っていているのいうニュースは日本
でも聞くようになりました。ニューヨークでも同様なことが起こっているよ
うです。アパートの巣をかけると食べ残しの骨がふってきるのをいやがった
アパートの住人が巣を撤去すると、大騒動に。バードウッチャーたちがアパ
ートの下で抗議行動に出たのです。野生と人の暮らしのせめぎあいをなんと
か双方で折り合いを付けること。現代の問題が、この絵本からも見て取れま
す。だからこそ、ウィンターはこの出来事を絵本にせずにはいられなかった
のでしょう。

『こわがりやのクリスだっしゅつだいさくせん』メラニー・ワット作 福本
友美子訳 (2006/2008.5 ブロンズ新社)
小さいこって基本的にしらないところはきらい。自分の知っている安心でき
るところでならどんなにわがままもできるのだけれど。このリスのクリスも
そんな感じかしら。安心できるどんぐりの木からまわりを眺めて、こわいこ
とがないか、いつも確認している。なにかあっても準備万端の救急箱を持っ
ているから、大丈夫さ! というページになると、その大げさな装備に、自
分のことは棚にあげ、おかしそうに小さな子はクリスのことを笑うのだけれ
ど。ひょんなきっかけで今までとは違う自分を知り、新しい場所を自分の知
った場所に出来る楽しさ。そうやって、みんな大きくなって行くのね。

『セミ神さまのお告げ〜アイヌの昔話より』古布絵制作・再話 宇梶静江 
(2008.3  福音館書店)
『シマフクロウとサケ』に続き刺繍絵で描かれたアイヌの昔話絵本。パッチ
ワークで描かれるだけでなくアイヌ刺繍が施されることで、呪術的な雰囲気
や昔話の在る世界の意味付けなどが視覚的に受け取られるところが特徴とな
った絵本。6代の世を生き抜いたというおばあさんの歌が予言となって、村
に津波の災害がもたらされ、海に逃げたおばあさんは海の王を怒らせて、地
獄へ落とされてしまう。そのおばあさんがよみがえったのがセミの姿であり、
蝉の鳴き声はその夏の天候や秋の実りを予知するのだと考えられていたのだ
という。巻末に作者による昔の暮らしぶりや歌を歌うという意味などの解説
がある。お話の元々は暮らしぶりを伝えるものであったのだと言うことがそ
れを読むとよくわかる。本書はオーストラリアのアボリジニーのおばあさん
が手がけた絵本によく似ている。どちらも民族の文化を支えた暮らしぶりの
最後の享受者であり、その文化が暮らしの変化とともに廃れてしまうことを
危惧し、何とか絵とお話で伝えようとしている。

『みずたまレンズ』今森光彦さく (2000/2008.3  福音館書店)
雨上がりの緑の美しさにはっとする。クモの巣にたくさんの雨粒が引っかか
っている写真の見事なこと。写真家の目はその一粒一粒の雨粒に目を凝らす。
虫たちが雨粒をよけてゆっくり歩いているさま。小さな雨粒にたくさんの花
が写り込んでいるさま。カメラをのぞきながら、雨粒が周囲を映し込んでい
るのを発見した時の写真家の驚きと喜びが見えるようだ。これこそ、センス
・オブ・ワンダーであったことだろう。それを小さな子に身近な絵本で、子
どもの手に取りやすい形で構成した意気がうれしい。

『からだがかゆい』岩合日出子ぶん 岩合光昭写真(2008.3  福音館書店)
地球動物記を著した写真家ならではのショットをあつめたもの。どんな動物
もかゆいかゆいと身体を手や足でかく様は、ちょっとおまぬけで、安心感も
見えて、親しみ深い。こんなふうに、身体をメンテナンスしている時は、動
物にとって心安らぐ時でもあるのかもしれない。その表情を見るだけでなん
ともほほえましい。台詞が聞こえてきそうな写真。

『クラゲゆらゆら』楚山いさむ写真・文(2008.3  ポプラ社)
不思議な形でゆらゆらしているクラゲの写真が25種あまり紹介され、その
成長の過程もよくわかる。被写体がおもしろいし美しいので、いつまで見て
いても飽きないのだ。シンプルなテキストでクラゲの特徴を捉え、名前とと
もに紹介している。

『ぜったいわけてあげないからね』かとうまふみ作(2008.4  偕成社)
ロシアの民話から抜け出てきたようなおばあちゃんと動物たち。このおばあ
ちゃんは、外でおやつを食べるのを楽しみにしているのだけれど、声をかけ
てくる動物たちの目の前でおいしそうに食べ、ぜったいわけてあげないのだ。
誰かと一緒のおやつはうれしいけれど、ひとりぼっちのおやつはつまらない。
よって、みんなの分も作って、みんなに声かけ、おやつパーティーをするこ
とに。意地悪なキャラが改心するのはお約束なのだけれど、もうひとひねり
あってもよかったかも。でもこのシンプルさを狙ったのかな。

『ざっくん! ショベルカー』竹下文子作 鈴木まもる絵 (2008.5 偕成
社)
バスに宅配便に電車にパトカーと続いてきた身近な乗り物絵本、今回ははた
らく車の雄、ショベルカーです。月曜日から1週間かけて、ショベルカーの
お仕事を紹介します。公園でいくつも深い穴を掘って、植木を植える穴作り
をし、町で水道工事のお手伝い、山の崖崩れを防ぐ工事をしたり、古い倉庫
を取り壊したり、いろんな仕事をしています。部品を取り替えれば、すくっ
たり挟んだりと作業も変えられます。お話仕立ての中に、無理なくショベル
カーの働きや様々な形大きさがあることなどが手際よく描かれるのが、この
シリーズの楽しいところ。

『こうまのウーラ』とづかかよこ作 (2008.5  偕成社)
『すうちゃんのカッパ』でデビューした作家の第2作。子馬のウーラが大事
にしているぬいぐるみのサリーとの毎日を貼り絵の手法で楽しくかわいらし
く描いている。ぬいぐるみのサリーは布地を張り込んで質感を出し、主人公
の子馬のウーラはキャラクターのはっきりした貼り絵でくっきりと。サリー
を連れて歯医者さんに行った帰り道、みずたまりをとびこえるときに落とし
てしまってサリーをどろんこにしてしまったウーラ。でも、きょうは一緒に
おふろに入って、きれいに洗ってあげましたよかった。何気ない毎日をうま
くお話に組み込んで、前半の伏線もきちんとお話に収斂するように作り込ん
でいるところはいい。貼り絵という手法と表情のつけ方のせいなのか、物語
がどうも作りものめいて見えてしまうのが残念。

『ここにいきるみんなのもの』ジリアン・ローベル文 ダニエル・ハワーズ
絵 まつかわまゆみ訳 (2007/2008.3 評論社)
巣穴の中で1匹だけ目をさました子ねずみ、木の葉のトンネルをトコトコ進
み、知らない匂いをかいで出かけていきます。ひかりの中でであったのは、
ミツバチ、花、おひさま、ちょうちょ、空。探しにきてくれたママにここは
なんていうところなのか、と尋ねたら、これが世界というものよと教えてく
れます。大きくて美しいこの世界は誰のもの?と聞くと、ここに生きるみん
なのものよと、ママは言いました。このような世界の賛歌は幼いうちは何度
でも声に出してきかせてあげたいもの。あなたたちが生まれてきたこの世は
生きるに値する素敵な場所だということをしっかりと伝えるために大人は生
きていかなくてはならないのですから。そういう姿勢の絵本、イギリスには
多いですね。

『そのウサギはエミリー・ブラウンのっ!』クレシッダ・コーウェル文 ニ
ール・レイトン絵 まつかわまゆみ訳(2006/2008.3 評論社)
エミリーとウサギのぬいぐるみのスタンリーがいろんな冒険をしていると、
女王様の軍隊から、スタンリーを女王のぬいぐるみやおもちゃと取り替える
ようにとお使いがやってくる。いつも追い返していたエミリーだが、ある夜、
ベッドに一緒に寝ているところを、さらわれてしまった! ヘンテコな冒険
と毎回トントントンとドアをたたいてやってくる女王の家来たちがおかしい
ナンセンス絵本かと思っていたら、自分だけのお人形の作り方を女王に伝授
したページでなるほどと感心。こんなこと、小さい子どもなら誰にも教わら
ないで毎日全霊でやっていることだったわね子どもの真実を愉快に今風に見
せてくる。

『さいこうのいちにち』ジーン・ウィリス文 トニー・ロス絵 小川仁央訳
(2006/2008.5 評論社)
地上に出てきたカゲロウが過ごす喜びに満ちた、一生懸命な1日を、柔らか
なタッチの美しく色のにじんだような絵で描いている。詩のような短く印象
的なテキスト。地上に出て、ひかりの中を飛ぶうれしさ、結婚式を挙げるよ
ろこび、静かな夜に卵を池に産み落とし、月のひかりのもと充実した1日を
むねによこたわる。カゲロウをえがくことで、いのちの輝きを凝縮してみせ
ることが出来ると作家はおもったのでしょう。小さな絵本だけれど、だから
こそ、この内容に合った作りになっている。

『ともだちみつけた』森山京作 松成真理子絵 (2008.4 あかね書房)
森の近くに引っ越してきたぶたの家族。三つ子のコブタくんが外に出てみる
と、向こうの方に家が見えます。草原の中にいくつかの顔も。ようし、草原
に入ってかくれてさがしてやろうお互いにそう思ってそろそろ歩いていると、
いたい! なにかがおしりにぶつかった! かくれんぼして、みつけっこし
て、いつのまにか、ともだちになってしまう動物の子どもたちの愛らしさ。
新しいお家にみんなで出かけて、およばれしてしまうひとなつっこさ。初め
ての出会いのドキドキも、あそびながらなら、だいじょうぶ。やわらかな草
原の花々がやさしく、物語のあたたかさとともに子どもたちを包みます。


『写真で見る 世界の子どもたちの暮らし〜世界31カ国の教室から〜』ペ
ニー・スミス/ザハヴィット・シェイレブ編著 赤尾秀子訳(2007/2008.1 
あすなろ書房)
美しいグラフィカルな本作りでよく知られるイギリスの出版社ドーリング・
キンダスリー社がユニセフの活動を支援するために作った写真絵本もこれで
3冊目になる。今回は本作から約100円をユニセフに寄付し、それが災害
にあった国の小学校などに贈るスクール・イン・ア・ボックスなどの資金に
なるという。世界の子どもたちの日常的な暮らしぶりを学校生活を中心に紹
介している。学校で勉強したり、遊んでいる写真、お昼は何を食べているの
?と身近なところで世界の子どもへ目を向けるには楽しくうれしい本となっ
ている。31カ国の子どもたちの紹介でも少数民族への目配りが利いており、
自分の部族の文化をきちんと学ぶ姿を見せているのがユニセフらしい。

『だいじょうぶ どんどんいこう』まっかなちいさいきかんしゃのぼうけん
 ベネディクト・ブラスウェイト作 青山南訳 (1997/2008.2  BL出版)
真っ赤な小さい機関車の冬の冒険です。カーブを曲がると動物たちが線路を
わたっていたり、大水で道がなくなっていたり、大雪で通れなくなってしま
ったりと大変ですが、真っ赤な小さい機関車は負けません。みんなの力もか
りて無事、目的地のシラカバムラまで到着しました! 細かく描かれる様子
が楽しくて、小さい機関車が活躍するのがうれしくて、子どもはページをめ
くるでしょう。

『とってもいいひ』ケビン・ヘンクス作 いしいむつみ訳(2007/2008.2 
BL出版)
なんて悪い日なんだろう、と羽がぬけた黄色い小鳥や母さんとはぐれたきつ
ねやどんぐりを落としちゃったリスがいっています。でもね、次の瞬間、リ
スはもっと大きなどんぐりを見つけ、ふりむけばきつねのおかあさんは傍に
いて、黄色い小鳥だってずっと高く空を飛ぶなんて、いい日なんだろう! 
小さな女の子の満ち足りた声が、今日のこの一日のかけがえのなさを伝えま
す。他愛ない、でもこういう視点こそが絵本らしいと思える絵本。

『機関車シュッポと青いしんがり貨車』リディア&ドン・フリーマン作 や
ましたはるお訳 (1951/2007.12 BL出版)
『くまのコールテンくん』で人気のフリーマンが夫人とともに作った初めて
の絵本。夫人との共作は『メットのトランペット』などがあり、夫人は画家
としても活躍している。この絵本でもイラストはドン・フリーマンのもので
あり、一緒にお話を作り上げたということだろうか。絵本にしてはボリュー
ムのある48ページの本であり、お話もたくさんの汽車や貨車、操車場や駅
に働く人々を題材に盛りだくさんな感じ。線路脇に置き去りにされた青いし
んがり貨車と小さな青い機関車が皆に認められ、二人で仲良くくらしていけ
る境遇になるまでを丁寧に描いている。大きな意地悪な機関車にいじめられ
るような様子は子どもらに人気の『機関車トーマス』を思わせるが、生き生
きとした線のタッチと擬人化された汽車や貨車たちの愛らしさがフリーマン
らしい。フリーマンはアメリカで近年続々と絵本が復刊され、これ以外にも
紹介されていない絵本がたくさん手に入るようになった。日本で手に入りに
くくなっている絵本なども、ぜひ復刊してほしいな。

『こそこそこそっ、かくれよう! マグリーリさんとさむがりうさぎ』カン
ダス・フレミング文 G・ブライアン・カラス絵 石津ちひろ訳 (2007/
2008.1  BL出版)
畑の人参はわけてくれたのに、寒い夜、どうしても家の中に入れてくれない
マグリーリさん。うさぎたちは黙って家に入り込み、ぬくぬく夜を過ごしま
す。それが気に入らないマグリーリさんは、入り込んだ先をさがし、煙突を
ふさぎ、窓に板を打ち付け、ドアを塞いでしまいます。そうして、春の気配
を感じて外に出ようとするのだけれど。ブライアン・カラスの絵だからこそ
エスカレートする行動に笑ってしまう。

『ほたるの川』おおつきひとみ作 ひろいのりこ絵(2007.12  BL出版)
一番の仲良しの直樹とけんかしてしまい、気まずい慎吾。真冬に蛍が舞うの
を見たという直樹の話に笑ってしまい、信用しないのかとけんかになったの
だ。慎吾は学校を休むし、ますます仲直りしにくくなった。12歳の男の子
の友情物語。夜光石を含む岩が雪で青白く光って見える小さな川を二人で見
に行くラストが圧巻。丁寧に子どもの気持ちに寄り添う物語を誠実に絵にし
ている。

『こねずみトトのこわいゆめ』ルイス・バウム文 スー・ヘラード絵 ゆら
しょうこ訳(2006/2008.1  徳間書店)
毎晩怖い夢を見てしまうねずみのトト。おかあさんやおとうさんやおにいち
ゃんに話すとみな、心配して、いろいろ知恵を絞ってくれます。繰り返しや
丁寧に積み上げられたお話がオーソドックスで安心して読める絵本。ラスト
の落ちもかわいらしく、新しい友だちが出来てよかったね、というところ。
小さなネズミが家のなかのいろんなものを工夫して使い、生活している様を
絵から読み取るのもおもしろい。

『ママブタさん、いしになる!』アナイス・ヴォージュラード作、絵 石津
ちひろ訳 (2004/2008.2 徳間書店)
73びきのコブタのおかあさんはなんて大変なのでしょう。寝る時間が過ぎ
ても遊び回っているコブタたちにママブタさんが「おこるわよ」とどなって
も効き目なし。とうとう「ママ、いしになっちゃうからね」といって、固ま
ってしまいます。コブタたちがだんだん心配になってきて。見開きに描かれ
た73びきのコブタたちの姿が圧巻。表情豊かなブタさんたちにフランスの
カトゥーンらしい軽さと洒脱さがあって、おもしろい。怒るのと、石になっ
てるのとどっちが大変かしら?

『やっぱりしあわせ、パパブタさん』アナイス・ヴォージュラード作、絵 
石津ちひろ訳 (2006/2008.3 徳間書店)
73びきのコブタの父さん、パパブタさんがコブタたちを引き連れて散歩に出
かけ、見つけた山の上の小屋。「もしも、ママと結婚していなかったら、あ
んなところに住んでみたかったな」とつぶややくと、子どもたちはみんな小
屋に入り込んで、パパブタさんのいうとおり、朝は上る朝日を眺め、夕方は
西に沈む夕日を眺めた。なんて、幸せな気持ちになるのだろう! 子どもた
ちが浸っている間、パパブタさんは下で時計をみて、タバコを吸い、黙って
子どもたちの様子を見ている。お家に戻るのがとってもうれしい子どもたち
に「やっぱりママと結婚してよかったね」と言われても、だまって子を肩車
するパパブタさん。もの言わぬ表情の複雑さがこの絵本のおもしろいところ。
シニカルでシャイなパパブタさん。今まで絵本にいなかったタイプのパパで
おもしろいな。

『のいちごそうはどこにある?』エヴァ・ビロウ作、絵 佐伯愛子訳 (
1954,1996/2008.2 フレーベル館)
『ハリネズミかあさんのふゆじたく』でその愛らしいイラストとおおどかな
物語に魅了されたビロウの絵本、邦訳2作目。シュスリングという小人(妖
精?)が建てた4階建ての<のいちごそう>。煙突はあるけれど、階段がな
いのがおもしろい。その部屋をかりたハリネズミ、うさぎ、りす、しじゅう
からがお部屋に入ると、家ががっしゃ〜んと倒れてしまいました。まあ、な
んてこと!それから後の展開がなんともへんてこ。のいちごそうにやってく
る動物たちが多くてうるさいので、まがりくねってまよってしまうような道
を3びきと1羽は作るのです。あげくのはてに、自分たちまでのいちごそう
に戻れなくなってしまうなんて。のいちごそうへの迷路のようになってしま
った道の地図までのっていて、読者に呼びかけて終わるところが昔の絵本ら
しいなあと思います。よく考えればおかしなお話なのに3色で描き分けられ
た絵の愛らしさとおっとりした口調にはまってしまいます。

『フィリッパ・ラズベリーのうた』エファ・ビロウ作絵 石津ちひろ訳 (
1960/2008.3 フレーベル館)
森にすむ小さな妖精たちのお話をみひらきごとに紹介している。うた、とあ
るところをみると、きっと原文は韻を踏んだ詩になっているのだろう。それ
をリズミカルに日本語にしている。詩とそれをぐるりと囲むように描かれた
絵が愛らしい。この絵本を読んだあと、小さな子は、森のなかのしげみの奥
に、ぽつぽつ降る雨に、霧でかすむ夕暮れに、小さな虫や生き物に、エルフ
やニックやプック、ピュスリングを見つけるだろう。

『でんでんむし』新美南吉作 織茂恭子絵 (2998.4  ハッピーオウル社)
コラージュで描かれる小さな自然。新美南吉のことばはなんてうつくしいの
でしょう。やさしいのでしょう。小さな小さなかたつむりの子が見あげる、
葉っぱと葉っぱの間の空は、なんてきらめいているのでしょう。静かなお話
ですが、何でも答えてくれるおかあさまが、「だれがそらのなかにいるの?
」「そらのむこうになにがあるの?」と聞かれた時に「さあ、それはしりま
せん」と答える姿にはっとする。だからこそ、小さな子はその疑問を持ちづ
つけ、憧れに体いっぱいのばすのだ。この絵本にはセンス・オブ・ワンダー
がある。


『みーんな いすのすきまから』マーガレット・マーヒー作 ポリー・ダン
バー絵 もとしたいづみ訳 (2006/2007.12フレーベル館)
車のキーだってなんだって、みーんな椅子の隙間から出てくるのという愉快
なマーヒーの詩に、とってもリズミカルでチャーミングなダンバーの絵。そ
れだけでも楽しいのに、そうそうソファの隙間にいろんなものが入り込んで、
探している時には見つからないのに、ヒョンなときに、なんでこんなものが
!というものが見つかるのよねえ、と共感しきりの絵本。訳もユーモラスで
おもしろく、工夫されているなあと思った。

『さてさてきしゃははしります』ウィリアム・ビー作 もとしたいづみ訳
 (2007/2008.1 フレーベル館)
アメリカで人気の新進絵本作家の1冊。グラフィカルでお茶目なイラストが
目を引きます。駅ノホームにあふれんばかりの人たちが、それぞれの車両に
乗って出発するのを、見開きごとにたっぷり見せてくれます。たぶんコンピ
ューターで描いているのだろうけれど、あえてべた塗りで稚拙な感じに仕上
げた絵が親しみやすく、かわいらしい雰囲気を出しています。

『つんつくせんせいとくまのゆめ』たかどのほうこ作絵(2007/2007.11 フ
レーベル館)
「つんつくせんせい」シリーズの6冊目。『つんつくせんせいとつんくまえ
んのくま』ででてきたくまの幼稚園がまた登場します。おっちょこちょいで
食いしん坊なつんつく先生。そり滑りをしていて、なにかにぶつかったと思
ったら、あのつんくま園でした。くまたちが春になって冬眠から目覚めたら
食べようと用意していたおやつをつんつく先生がつまみだしたので、こども
たちはびっくり! そこへ、目を覚ましたつんくま先生がやってきたのでも
っとびっくり! でも。つんくま先生が「本当のような楽しい夢を見ながら
ねむりましょう」と言った通り、本当の、でも夢みたいに楽しい出来事が描
かれます。こんなこと、あったらいいな、楽しいなという子どもの思いを、
きちんと物語のかたちで見せてくれるシリーズ。人気があるのも納得です。

『こいぬ、いたらいいなあ〜おかしきさんちのものがたり』おのりえん文 
はたこうしろう絵 (2007,12  フレーベル館)
おかしきさんちの4人兄弟の愉快な毎日を描くシリーズ2作目。本作では、
雪の日、4人が外で雪だるまを作ったりして遊んでいたのだが、犬の足跡を
たどっていく3男のいーに気づいて一緒にいくと。大きなおなかをした犬の
ショコラや飼い主のおばあさんと知り合って、どうしてもショコラのあかち
ゃんがほしくなってしまった4人。それをちゃんと受け止める両親。いいね。
それぞれに自分を出しながら、一つの思いを強くしていく兄弟。元気いっぱ
いの鉛筆の線、気持ちがあふれる水彩の色。絵を読む楽しさにあふれていま
す。


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☆それでは次号で!

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【児童文学評論】 No.125 ほそえ絵本編02        2008.06.25日号
                       kids@hico.jp

Copyright(C), 1998-2005  甲木善久 金原瑞人 三辺律子 神宮輝夫 鈴
木宏枝 芹沢清実 西村醇子 野上暁 ひこ・田中 ほそえさちよ 堀切リエ
 目黒強 令丈ヒロ子
  許可無く転載することを禁じます。
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