児童文学評論No.125 ほそえ絵本編02
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【児童文学評論】 No.125 ほそえ絵本編02 2008.06.25日号
1998/01/30創刊 今号の発行部数3281部
kids@hico.jp
〔児童文学書評〕 <http://www.hico.jp>
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☆このマガジンは1行34字で改行されています。
★発行年は「原著年/訳年」です。
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【絵本】
『せんねんまんねん』まどみちお詩 柚木沙弥郎絵 (1972/2008.3 理論
社)
『まめつぶうた』に収録されている詩を絵本化したもの。ヤシの実が落ち、
その地響きでミミズが飛び出す、そのミミズをへびが飲み込むと物事が連な
って、そしてまたヤシの実へと戻っていく円環。いくつもの円環がまだ人が
やってこなかったころの時間やものごとを作り出す。千年万年という時間を
長い短いと表する詩人の遠い大きな視点。このなんとも不思議な感覚を具象
と抽象をつなげて描いた画家。美しく力強い絵本。
『ぼく、おへんじは?』ヤニコフスキ・エーヴァ文 レーベル・ラースロー
絵 いせきょうこ訳 (2003,2007/2008.2 ポプラ社)
ハンガリーを代表する児童文学作家とイラストレーターのコンビの絵本。『
もしもぼくがおとなだったら』(文溪堂)に続く邦訳2作目。どちらも子ど
もの目線で大人の押しつけや思い込みを困ったものだと表現する。大人は答
えにくいことばかり質問するし、ぼくが答えたくなるような質問をしてくれ
ない。質問しても時間がないと別の大人に聞きなさいって言うばかり。でも、
きちんと聞いてくれるシャルルおじさんもいるし、大人だってそれなりにぼ
くのことを考えてくれているらしい。子ども目線と大人の子どもへの願望が
うまく混じっているところがエーヴァのこのシリーズの特徴か。
『葉っぱのあかちゃん』ちしきのぽけっと6 平野隆久写真・文(2008.2
岩崎書店)
『ふゆめがっしょうだん』(福音館書店)で不思議な顔みたいな冬芽をたく
さん発見したら、こんどはこの写真絵本で冬芽がどんな風に小さな葉をのば
すのか、芽吹きの愛らしさ、様々な形をじっくりと見てほしい。産毛が柔ら
かな日の光に照らされてまぶしく光っています。まさに、赤ちゃんのよう。
身近な公園で見られる芽吹き。山の遅い春に見られた芽吹き。冬芽がほころ
び、開くさまをゆっくりと見せてくれる写真。ラストに置かれた芽吹きの春
の山の木々を見上げた写真が素敵。ぼうっとしたやわらかな少し赤みのある
山の姿を見る度に春だなあと思います。巻末にはそれぞれの木々の紹介がコ
ンパクトにわかりやすくまとめられています。オーソドックスで親しみやす
い写真絵本。
『とんがりぼうしのクロチルダ』エヴァ・モンタナーリ作 井辻朱美訳 (
2006/2008.3 光村教育図書)
イタリアの絵本作家が描く不思議な魔女と妖精の世界。魔女の帽子はまがっ
ている。妖精の帽子には星がついている。クロチルダの帽子は星はついてい
ないけど、まがってもいません。魔女でもなく、妖精でもないクロチルダ。
どちらの仲間にも入れないのがつまらなそう。けれど、ある日、クロチルダ
のせいで魔女と妖精が一緒くたになってわからなくなってから、みながすき
になったのはクロチルダごっこ。ちょっぴり妖精でちょっぴり魔女のあそび
なんですって。おもしろいテーマを扱おうとしているのだが、いまひとつ物
語にキレがなく、雰囲気に流されてしまっているのがおしい。独特な雰囲気
を持つイラストが魅力的。場面により視点が動き、いろんなアングルで描か
れるのもおもしろい。
『くじらのバース この星の上で』村上康成作 (2008.2 ひさかたチャイ
ルド)
海に囲まれた小さな小さな南の島に住む少年ナリン。ナリンは冬になるとや
ってくるザトウクジラのバースと同じ年。夏の間、遠い北の海でたくさんの
さかなを食べ、嵐のなかを泳いだり、いろんな島を通り過ぎ、戻ってくるバ
ース。バースの姿を見て、遠くの海に思いをはせるナリン。野球をして、と
もだちとこの島に暮らすナリンの毎日は、たしかにバースの毎日とつながっ
ている。地球というこの星の上で、邂逅するいのちの不思議。リズムのある
絵の展開で見せる余韻ある絵本。
『14ひきのもちつき』いわむらかずお作(2007.11 童心社)
おなじみの14匹シリーズの最新刊。今回はみんな、せいぞろい、力を合わ
せた餅つきの様子が細やかに描かれます。美術館とその土地をフィールドに
米作りや自然への共感を子どもたちとともに広げてきた作家だからこそ、こ
の14ひきにどうしても餅つきをさせたかったのでしょう。餅つきに一家総
出のしきたりは現代の日本では一般的ではなく、学校や学童クラブ、地域の
催しのひとつとして、ながめるものになってしまっています。それでも、皆
で集まって食べ物を作るのは楽しいもの。いつ見てもこのシリーズは、みな
がそれぞれに自分の意志で動いているのがいい。一緒にと言いつつ、なかな
か手伝えないとっくんはおもちゃの車を引っ張って、うすの周りをうろうろ
するし、飽きてきたくんちゃんも周りで遊び始めます。おじいちゃん、おば
あちゃん、おとうさんもたのもしく、大きいお兄ちゃん、お姉ちゃんも大活
躍。こういう姿をみて、自分も大きくなったらと気持ちをふくらませるのも、
小さな読者のうれしいところでしょう。
『おふろのおふろうくん』及川賢治、竹内繭子作 (2006/2007.11 学研)
絵本っているものの面白さはページとページの間の飛び方なんだろうな。そ
んなことを思わせてくれる絵本。おふろのなかで船長になったり、つりをし
たり、大雨に降られたり、潜水艦から出てきたり。ぴょんぴょんとあら、ま
あ、こんなことをして!とびっくりさせながら、きちんとつながって、ほっ
こり楽しい終わり方をする。のんきそうな、たよりなさそうなお父さんがい
い味をだしています。コンセプトがあって、デザイン的でありながら、子ど
もの動きをとらえていて、あたたかみのある絵。湯気がとても効果的に使わ
れています。こどもとおふろにはいるって、ほんとに楽しいんだよ。
『ぼくのきいろいバス』荒井良二作 (2007/2007.11 学研)
初めて一人でバスに乗って隣町に行けるのが楽しみで、目覚ましよりも早起
きしてしまったぼく。よくみると、お部屋にはバスの絵も飾ってあるし、バ
スがとっても好きなのね。おひさまのひかりがもこもこになって、きいろい
バスが迎えにきました。ぼくは、おはようのあいさつを切符がわりに乗り込
みます。バスは、空をいきます。空から見渡す、のうじょうやまちの様子が
楽しそう。みんな楽しそうに一生懸命に自分のしたいことや、しなくてはな
らないことをやっています。だから、ぼくも楽しそうに一生懸命に絵を描く
のです。おなじみのロードムーピー系のえほんだけれど、こちらは風景より
人に焦点があっているところがちょっとちがうのかな。ぼくのわくわくした
気持ちが溢れ出て、たいようからきいろいバスが出てくるところや、また光
の束に戻っていくところなどとてもきれい。
『天の町やなぎ通り』あまんきみこ作 黒井健絵 (2007,12 あかね書房
)
短編集『おかあさんの目』にはいっている1編を絵本化したもの。今までも
『おかあさんの目』『すてきなぼうし』と絵本化されている。天の町やなぎ
通りで始まるでたらめな住所が書かれた手紙に困っている郵便局長さん。6
通目には差出人の住所があったので、その家に返しに行こうとするところか
ら始まります。家にたどり着いて、はっと気づく局長さん。そのあとの幻想
的なシーンに子どもの頃、何度読んでも胸がしんとしました。それを端正な
絵で視覚化しています。
『うち 知ってんねん〜みんなのことば』小池昌代編 片山健絵 (2007,
12 あかね書房)
「絵本、かがやけ詩」シリーズの4巻目。本作では子どもの目線の詩が集め
られている。子ども時代を振り返った詩や子どもとはと定義した詩、学校生
活を書いた詩もある。みんなのことばというのは、みんなのつぶやき。それ
を書いた人はそれぞれ違うけれど、なぜか、はっと思い当たり、わたしのな
かのつぶやきとかさなってしまう、そんな詩が多い。低い目線の、狭い視野
の、限られた空間での思いが、どうしてこんなにみんなのものになるのだろ
うか。それが詩のもつ力なのだろう。あなただけに伝えていると思わせる親
和性。絵はそれぞれの詩のトーンを画風や画材で見極めて、独立した世界を
作り出している。
『おばあちゃんのきおく』メム・フォックス文 ジュリー・ビバス絵 日野
原重明訳 (1984/2007.11 講談社)
オーストラリアの国民的児童文学作家である、メム・フォックスの絵本。老
人と子どもとのふれあいを描く絵本はたくさんあるが、この絵本では血縁で
はなく、地縁でむすびついた老人と子どもというのが珍しい。ウィルが仲良
しの老人たちは、家の隣にあるホームにすんでいる。特に仲良しのナンシー
おばあちゃんは高齢のため、記憶をなくしてしまっているらしい。仲良しな
のにウィルの名前も覚えていられない様子。そこで。記憶とは何かという問
いに、老人たちが「あったかいもの」「ずっとまえのこと」「泣きたくなる
ようなこと」「わらわせてくれるもの」「金のように大切なもの」と答え、
それを聞いたウィルが、それぞれを表す物を自分の生活の中から選び出し、
ナンシーおばあちゃんへ持っていく。この抽象と具体の組み合わせの妙がこ
の作家のうまいところであり、子どもをよく知るところだと思う。長く、多
くの読者を獲得した絵本らしい絵本が翻訳されてよかった。
『ベスとアンガス』マージョリー・フラック作、絵 まさきるりこ訳(
1933,1960/2007,12アリス館)
福音館書店から訳されている3冊以外に「こいぬのアンガス」シリーズがあ
ったなんて。なんにでも興味津々、たしかめたくってたまらない子犬のアン
ガスと大きいのに恐がりで引っ込み思案の犬ベスが、ひょんなことからであ
って、一緒に遊ぶようになるまでを描いています。ベスはフラック家のペッ
トで、友人の飼い犬であるアンガスとのお話も実話がベースになっているら
しい。4色1色のページが交互に現れる古い型の絵本だけれど、描かれてい
ることが心の真実なので、古くは感じない。
『トプシーとアンガス』マージョリー・フラック作、絵 まさきるりこ訳(
1935,1962/2007.3 アリス館)
『ベスとアンガス』の次作。子犬のトプシーはベットショップから大きな家
に住んでいるサマンサ夫人にかわれていきます。けれど、いたずらがすぎて、
地下室に入れられてしまいました。外に出たトプシーはアンガスとベスに出
会い、ペットショップにいた時見知っていた女の子ジュディに再会!一緒に
たくさん遊んでお家に一晩泊めてもらいました。本を読んでもらう子どもの
「ああ、こうなったらいいのになあ」と思う気もちによりそって、けれども
物語の必然はないがしろにせず展開していく見事さ。物語絵本の王道をきち
んと見せてくる。
『だんまり』戸田和代文 ささめやゆき絵(2007.12 アリス館)
ぼくんちの猫のだんまりは時々ぷいといなくなる。ぼくが黙ってあとをつけ
ると、草ぼうぼうの空き地で男の人に変身して歩いていくのだ! 一生懸命
自転車でついていくと、いつのまにか不思議な雰囲気の町に。そこは猫の町
だった。画家の描く猫の町がとても魅力的。ラストは無事家に戻ってくるの
だけれど、だんまりは知らん顔しているのがおかしい。
『ソルビム2〜お正月の晴れ着(男の子編)』ペ・ヒョンジュ絵と文 ピョ
ン・キジャ訳 (2007/2007,11セーラー出版)
昨年1月に出た『ソルビム』(女の子編)につづく2作目。展開は同じ、小
さな子が伝統の衣装を一つ一つ身に着ける様子を愛らしく描いている。動作
を表すのに小さなイラストを用い、片ページ、見開きページとイラストの大
きさで緩急をつけ、単調にならないように工夫して構成している。解説も丁
寧で、韓国ですら、このようにきちんと細かに解説を付け、お正月の盛装の
意味や意義を本という形に残して伝えていかなければならないのかと感じ入
った。
『エルフはぞうのしょうぼうし』『エルフ、がっこうへいく』『エルフのび
っくりプレゼント』ぞうのしょうぼうしシリーズ ハルメン・ファン・スト
ラーテン絵と文 野坂悦子訳 (2005,2006,2007/2008.5 セーラー出版)
オランダの人気絵本作家のシリーズ。消防署にすんでいる11頭のゾウ。で
も、いつも小さなエルフは仕事に遅れてばかり。もう、こんなことが続くな
ら消防署を出て行ってもらうぞといわれるのですが。大人の中に1頭だけ子
どものゾウがまじっているみたい。だからこそ、この絵本に子どもが入り込
めるのでしょう。ちゃんとラストは小さいからこその活躍をして、みんなの
ための消防士として認められるのです。2巻目では学校へ行くエルフ、3巻
目ではお誕生日のプレゼント(これがなるほど、おっかしいの)を用意して
くれる消防隊が描かれる。消防隊という大人の集団に1頭いる子どもという
設定だからこそ、子どもの世界である学校やお誕生日の描き方がひとひねり
され、うふふっと笑ってしまうものになっている。
『かわべのトンイとスニ』キム・ジェホン作 星あキラ、キム・スヨン共訳
(2000/2007.12 小学館)
市場へ豆やごまを売りにいったおかあさんを待つ兄妹。川辺で遊びながら過
ごします。その川辺の岩たちが、いろいろな姿に見えてくる絵本。ソウルを
流れる漢江の上流にある東江という川の実際の風景が描かれているという。
作者は子の場所を描きながら、この岩がふっと別の姿に見えてきたことから、
「絵の中に隠されて絵」の絵画展で発表し、それを絵本に仕立てたものらし
い。何が隠れているのかを解説しているページもあります。見立ての絵本は
よくあるけれど、実際の風景を元にしているのはめずらしい。
『イグアノドンとちいさなともだち』V・ベレストフ詩 松谷さやか訳 小
野かおる絵 (1987/2008.3 小学館)
阪田寛夫と長新太コンビの名作『だくちるだくちる』のもととなった詩に絵
をつけて、新たにまた別の絵本が作られた。イグアノドンとその小さな友だ
ちプテロダクチルスの様子を丁寧に具体的に描いている。古代の友情を雄大
にえがいた『だくちる だくちる』に対して、本作ではラストシーンの絵に
赤ちゃんを抱き、歌を歌っているおかあさんの姿をおくことで、歌に乗せて
何を伝えてきたかという普遍に思いを広げている。
『あ、そ、ぼ』ジャック・フォアマン文 マイケル・フォアマン絵 さくま
ゆみこ訳 (2007/2007.12 小学館)
カラーインクの魔術師マイケル・フォアマンが、華麗な色を封印し、コンテ
の線と最少の色づけでえがいた男の子の心象風景。息子が書いたいじめ体験
の詩を絵本にするには十数年の年月と、けずりにけずった表現とが必要だっ
たんだな。我が子に見舞われた不運をどんなふうに見守り、それをのりこえ
ていったのか、ひとりぼっちの男の子の表情にその苦悩が忍ばれる。糾弾で
はななく、心を開く方向へむかっていったからこそ、見つけられた現在なの
だろうと想像される。シンプルでわかりやすいけれど甘くはない。
『おんぼロボット』アキヤマレイ作 (2007.12 理論社)
長谷川集平氏のゼミで作った絵本がデビュー作になったという。窓から見え
る向こうの町に憧れて、「いつか、まちにいきたいなあ」という小さなロボ
ット、トト。ある日、博士が寝ているうちに、丘を駆け下り、町にはいり、
少年と出会います。少年がロボットを「トミーじゃないか」というところに
あれっとおもい、ラストでおんぼロボットがリセットされ、「メロ」という
名前になったのを見て、ああと思います。何度リセットされても、のこる憧
れの心。リセットされても、かわらずに関わってくれる少年の存在。一つの
心の有り様を形にしているという点で注目に値する。少年や博士など人間の
造形や町の様子や遊ぶ様子など、あえて、ぎくしゃくとロボットめいた描き
方になっているところも不思議な感じ。
『だから、ここにいるのさ!』バベット・コール作 せなあいこ訳 (
2006/2007.12 評論社)
バベット・コールは社会的な視点でユーモアをもって、けれどかなり辛辣に
現代社会を描く。『トンデレラ姫物語』や『ママがたまごをうんだ!』をみ
てほしい。本作でも、それは健在。新聞を開けば悪いニュース、テレビじゃ
戦争の話、子どもたちはぬすみ、たかり、やりたいほうだい。主人公はミュ
ージシャン。モヤモヤを自分の音楽でおいはらいたい。「なんでぼくはうま
れてきの?」と思い至り、それを歌にすることに。自分の生きてきた道を振
り返るといろんな人にみんなに役割があってさ、ジグゾーパズルのピースみ
たいにそれぞれぴたっとはまって誰かを助けるんだよ、という結論に達する。
それは一つの見識。
『だるまだ!』高畠那生作 (2008.1 長崎出版)
「あっ、あれはなんでしょう?」と海の向こうを眺めると、だるまだ!と扉
のタイトルが入るテンポの良さ。あとはもうシュールな那生ワールドの展開
で『おまかせツアー』と同質の力技的な展開。流れ着いただるまたちが人々
の暮らしのなかで様々に用いられ、その形態を生かした変身ぶりに、クフフ
フっと笑うだけでいい。でも、だるまだけで終われないのがこの作家の絵本
の作り方なのでしょう。こんどは空からとエンドレスをにおわせて。
『むしをたべるくさ』渡邉弘晴写真 伊地知英信文 (2008.1 ポプラ社)
食虫植物に焦点を当てて作った写真絵本。このテーマはあるようで今までな
かったなあ。表紙の怪獣の口みたいなのがまず目を引いておもしろい。とげ
とげが合わさって出られなくなってしまうハエトリグサの葉。ネバネバに捕
まってしまうと溶かされるモウセンゴケ、滑って落ちると這い上がれないウ
ツボカズラ。罠式、ネバネバ式、落とし穴式と虫を捕まえる独特な方法に目
をつけた写真。アップでじっくり見たり、ロングで群生するさまを見せたり、
工夫された構成が親切。身近ではないけれど、うごかないと思われている植
物の積極的な行動(?)を見せつけられ、ぐんっと子どもの興味を引くに違
いない。
『ちーちゃい チーチャ』パトリシア・マクラクラン&エミリー・マクラク
ラン文 ダン・ヤッカリーノ絵 青山南訳 (2004/2007.12 小峰書店)
『のっぽのサラ』で知られるマクラクランが娘とともにテキストを書いた絵
本。犬と猫がすんでいるいる家にある日、突然やって来た赤ちゃん。犬と猫
の目で描かれる赤ちゃんの姿と、いっしょに過ごす毎日をあたたかみのある
センスの良い絵でヤッカリーノが描く。最初は「赤ちゃんなんかいらないわ
!」といっていたのに、泣けば気になってあやしにいくし、眠らずにおきて
いるとうたを歌ってあげます。すっかりパパとママみたい。だからかな、チ
ーチャのはじめての言葉は「ワン」とニャー」。小さなエピソードを丁寧に
つみ上げて、ラストのおちにもっていく、マクラクランらしい物語で愛らし
い。
『オオカミ』エミリー・グラヴェット作 ゆづきかやこ訳(2005/2007.12
小峰書店)
ケイト・グリーナウェイ賞受賞作。「オオカミ」という絵本を借りてきて読
んでいるうさぎが主人公。メタ絵本というべきか。読んでいる内容と読者で
あるうさぎの姿が重なって、ラストは、本だけが残っている。次のページに
は図書館からの返却督促状が。細部まで意識された巧緻な構成。クール!
『小さなお城』サムイル・マルシャーク文 ユーリー・ワスネツォフ絵 片
岡みい子訳 (1947/2007.12 平凡社)
マルシャークの『子どものためのお芝居』からの1作。ヨーロッパなどでは
お話に仕立て直していくつかの絵本が出ているが、本作は初期の脚本仕立て
のままに翻訳されているのがめずらしい。ワスネツォフのリトグラフもみご
と。小さなお城とあるけれど、カエルが見つけ整えたお家にネズミと雄鶏と
ハリネズミが次々とやって来て、一緒に暮らしはじめる。そこへ、オオカミ
や熊、きつねが小さな動物たちを食べてしまおうとあの手この手でお城(家
)に入り込もうとする様をいきいきとした台詞回しで描いている。これは声
に出して読むか、やはり脚本として使うのが楽しい。小さい動物たちの活躍
にきっと子どもは大満足。
『屋上のとんがり帽子』折原恵写真・文 (2002/2008.1 福音館書店)
ニューヨークのビルのてっぺんにあるとんがり帽子をかぶったみたいな円筒
形のもの。何だろう、不思議不思議とカメラマンの探索が始まります。ちょ
っとしたきっかけでどんどん調べて、その調べものの世界が広がっていく様
を見るのはとてもおもしろい。一つを知れば、その先へと目が移っていくの
はとても健やかで頼もしい。そうやって見つけ、調べられたとんがり帽子の
正体は、給水塔。木で作られている理由や作り続ける会社の成り立ちなどを
見てみると、もの作りや歴史につながって、同じものを目にしても思いの広
がり方が違ってしまう。それが知るということなのだろう。こういう気もち
に連れて行ってくれる本が「たくさんのふしぎ」には多い。
『ぐーぐーぐー みんなおやすみ』イルソン・ナ作 小島希里訳 (2007/
2008.2 光村教育図書)
ソウルに生まれ、イギリスで美術を学び卒業制作で作った本作が絵本デビュ
ー作となった新人。マチエールを生かした大きな画面に装飾的なかわいらし
いイラストレーション。夜おきているみみずくが眠っている動物たちの様子
を紹介する。アニメーションを学んだ人らしくページごとにアングルの変わ
る切り替えがおもしろく、絵本のリズムを作っている。
『かわいいサルマ アフリカのあかずきんちゃん』ニキ・ダリー作 さくま
ゆみこ訳(2006/2008.1 光村教育図書)
サルマがおばあちゃんに頼まれて市場へお使いに。まっすぐいって、まっす
ぐかえってくるんだよ、しらないだれかとおしゃべりしないでね、と言われ
るんだけど、知らない犬としゃべっちゃった。犬はサルマからお買物を入れ
たかごもサンダルもこしぬのもスカーフもビーズもとりあげて、サルマのふ
りをして、家に帰り、おばあちゃんをおどして、大きなお鍋に隠れさせてし
まいます。助けにいくのはアナンシのかっこうをしているおじいちゃんとお
ばけのお面を着けたサルマと男の子でたすけにいきます。
『あかいはな さいた』タク へジョン文・絵 かみやにじ訳 (2007/
2008,1 岩波書店)
白地にポンと赤い花をつける植物を描く。そこに短い印象的な文章をおく。
見開きの展開で次々と赤い花が紹介される。かんつばき、おきなぐさ、チュ
ーリップ、まつばぼたんにカーネーション、ほうせんか身近な花もあれば、
ほうっと思う花もある。赤いとひとくくりには出来ない、朱から赤紫までの
色のバリエーション。ボタニカルアートとも違った丁寧なタッチで描かれる
花たちは、子どもが「あかいはなみーっけ」と差し出す、そのまなざしに似
ているのかもと思った。
『日本の川 たまがわ』村松昭さく (2008.2 偕成社)
奥多摩の山から東京湾に注ぐまでを空から俯瞰する視点で描き出した絵本。
細かく描かれる地形や土地の名、鎌倉時代の合戦跡や昔の人の水の分配の知
恵など要所要所をコラム的にまとめ、わかりやすく見せてくれる。俯瞰で見
ることで川のまわりの環境と人の暮らしのつながり方がよくわかる。
『てんぐのくれためんこ』安房直子作 早川純子絵 (1984/2008.3 偕成社
)
安房直子の童話はふしぎのなかから必ず子どもがかえってくる。今回はてん
ぐのくれためんこをもってきつねの世界に入って行った男の子が、きつねの
子と勝負するうちに、足を開き、腰を落とし、てを振り上げる、めんこ打ち
の姿を体得していくのです。天狗にもらった不思議な風のめんこは落ち葉に
戻ってしまいますが、体得したうでは男の子のもの。そこがいい。負け続け
る子どものために、一休みさせた時間にせっせとめんこにロウを塗る親ギツ
ネたちの姿が微笑ましく、怖い面構えだけれど、子どものために手をかけめ
んこを作ったり、遊びを応援したりするのが、ちょっとうらやましくもあり
ます。
『にいさん』いせひでこ作 (2008.3 偕成社)
ゴッホと賢治を追い続けている作家が、ゴッホの弟、テオの視点でゴッホを
とらえた絵本。幼い頃、一緒に見た、歩いた風景。ゴッホの歩いた道筋をお
って、伝記的な事象をちりばめながらも、兄さんの姿を兄さんの見た風景の
中に見いだそうとする文章。それをひまわりやヒースや麦畑ゴッホへのオマ
ージュに満ちた絵がいろどる。テオの手紙を読み込み、伝記まで訳した、そ
の対象へのくるおしいまでの接近が、昇華されているようにおもう。
『100かいだてのいえ』いわいとしお作 (2008.6 偕成社)
横長の絵本をたてに使うと、本当に高くのびて行くように見える。横のもの
をたてにする。それだけでなんだかわくわくしてしまう。横長の絵本をたて
に使って、高い家のなかを見せていくというアイデアは、目新しいものでは
ない。『30かいだての30ぴき』(フレーベル館)など、探し絵の手法も使
って楽しい絵本になっている。本作では100階建てという点、見開きごと
に住んでいる動物たちが代わり、家々にも細かな仕掛けがあって、それを見
ていくのがおもしろいようにしているところだろう。
『すみれおばあちゃんのひみつ』植垣歩子作 (2008.6 偕成社)
ぬいものじょうずのおばあちゃんがかえるやちょうちょなど小さな生き物た
ちに乞われて、いろんなものを直していく。細やかな手仕事のあたたかさが
ファンタジーをしっかりと支えている。破れてしまった蓮の葉には、レイン
コートの余り布でアップリケをし、ちょうちょのはねにはレースでつぎあて
を、壊れてしまったヒヨドリの巣はありったけのはぎれでつくろいます。で
も、糸も布も使い果たしてしまったおばあちゃんは、孫娘のワンピースに刺
繍をしなくてはいけなくて。ラストはわあ、素敵!と歓声を上げたくなるよ
うな仕上がり。小さな子たちにも身近な生き物とこんふうにつきあえるおば
あちゃんって不思議。雨の日もわくわくするかも。丁寧に細々を描かれた絵
をじっくり見ていくのも楽しい。
『めでたしめでたしからはじまる絵本』デイヴィッド・ラロシェル文 リチ
ャード・エギルスキー絵 椎名かおる訳 (2007/2008.5 あすなろ書房)
昔話のはじまりは、「むかしむかしあるところに」とはじまるものだけれど、
それをおしまいから語りはじめたらどうなるか? 発想の転換ですね。する
と、結果が先に分かって、その理由はとさかのぼる展開に。どうして?とい
う疑問がページをめくる原動力になって、ありきたりの(昔話というものは
だいたいパターンになっていますからね)お話が、なんとも魅惑的に見える
というもの、という仕掛けなのです。お姫さまも騎士も、ドラゴンも大男も
出てきますが、この本の中の登場人物は、たいていの昔話とはちょっと違う
キャラになっています。現代的というか。だからこそ、このさかのぼるとい
うアイデアが生きてくるのですが。ページをめくり終わったら、もう一度最
初から(おわりの見返しから)順に読んでみてください。この物語の元々の
きっかけがわかってにんまりするはず。これこそが昔話的なのでは。
『モグとうさポン』ジュディス・カー作 三原泉訳 (1988/2008.3 あす
なろ書房)
ニッキーに小さなピンクのウサギのぬいぐるみ・うさポンをもらったモグ。
とっても気に入って、まるでおかあさんみたいに、うさポンに水を飲ませよ
うとしたり、いつでもどこでも、うさポンといっしょにいようとします。そ
のわりには、自分が忙しくなると、ポイッとほったらかして、みんなをぎょ
っとさせるのですが。忘れん坊のモグらしい展開で心配したり、ほっとした
りと、読み応えのある1冊。
『モグ そらをとぶ』ジュディス・カー作 斎藤倫子訳 (2000/2008.5
あすなろ書房)
おでぶでわすれんぼうのねこモグの絵本もこれで5冊め。本作ではモグは見
馴れた庭がすっかり変わってしまい大騒ぎ。にわで<とびきりすてきなねこ
コンテスト>をひらくので、テントが張られていたのです。デビーもニッキ
ーもモグをコンテストに出そうと思っていたのですが、モグは屋根裏に隠れ
てしまい。ご近所に住むいろんな猫が出てくるのが本作の楽しいところ。み
んなそれぞれに自分の猫が一番という顔をしてつれてきています。そこへモ
グは思いがけない行動でみなをびっくりさせました。かわらない毎日とちょ
っとかわった1日。どちらも大事でどちらも楽しい。それをモグの絵本を読
むと感じます。
『しちどぎつね』上方落語・七度狐より たじまゆきひこ作 (2008.4 く
もん出版)
落語絵本の金字塔『じごくのそうべえ』を描いた作家が七度狐を絵本化。落
語の絵本化にはいろいろと制約があります。物語として場面が動いたり、時
間の経過がはっきりしているものが絵本化しやすく、本作の場合もお伊勢参
りの旅の道中に、きつねにばかされるふたりの男や魔物が出てきたり、お百
姓があきれたりと盛りだくさん。会話とすこしの地の文でテンポよく語られ
るので、すんなりと物語が入っていきます。落語は耳で聞いて、光景を自分
の頭に描き出すのがおもしろいところなのだけれど、絵本では、その光景を
絵で見せてしまいます。視覚化されることで、能動的な楽しみを一つ奪うこ
とになるのだけれど、時代の違う物語にすんなり入り込ませ、たくさんの人
に練り上げられた物語の楽しみを小さな子から享受できるという利点がまさ
るということなのでしょう。
『エラと眠れる森の美女』ジェイムズ・メイヒュー作 灰島かり訳 (
2007/2008. 3 小学館)
バレエを習っている女の子エラが「眠れる森の美女」のオルゴール曲を聞き
ながらバレエのお話の世界に入っていきます。ラストのオーロラ姫の結婚パ
ーティーには作曲をしたチャイコフスキーが様々な昔話の主人公たちを登場
させているとか。なるほど、絵本のシーンにもみんな描かれていますよ。巻
末の解説にはバレエのこと、バレエ曲のことなどやさしく書かれています。
バレエを習っている子が特別ではなくなってきた最近では、こういう絵本も
刊行されるようになったのね。もちろん、バレエを習っていなくてもこのバ
レエ曲の華やかさ、おとぎ話の優雅さを描くこの絵本を楽しめます。
『まあ、なんてこと!』デイビッド・スモール作 藤本朝己訳 (1985/
2008.1 平凡社)
朝、目が覚めたら、頭のうえに角が生えてしまった女の子。おかあさんはび
っくり気絶してしまうし、おとうとはおもしろがっていろいろ調べまくりま
す。角が生えていたって、かわらず女の子と接してくれるお手伝いさんたち
の頼もしいこと。つのにドーナツをいっぱいさして、小鳥たちに振る舞うシ
ーンはわくわくします。ヘンテコだけど楽しい1日だったわ、と思える女の
子のたくましさ。次の日の朝はというびっくりのラストでまた大笑い。この
作家は子供心に寄り添うしみじみとした絵本『リディアのガーデニング』な
どだしているが、こんな大笑いの絵本も出していたのね。自作の絵本のキャ
ラクターのかえるや大きな頭のお人形などもさりげなく描いていてお茶目な
人だ。
『こねこのレッテ』いちかわなつこ作 (2008.4 ポプラ社)
ゆうびんやさんのお部屋で暮らす子猫の冒険の1日をのびのびと描いた絵本。
初めて外に出るわくわく、見たことないものばかりのドキドキ、町を走り抜
け、小学校の校庭の桜の木に登ってしまったレッテ。土砂降りの雨ににびっ
くりして、みゅうみゅうなくレッテを助けてくれたのは、顔見知りのベルち
ゃんと小学校の先生。かばんのようにした上着に入って、やっとおりてきた
レッテは楽しく学校で過ごしたのでした。暖かなタッチで描かれる安心の物
語と、楽しそうな子どもたちの様子。子猫の気持ちになったり、子どもたち
の気持ちになったりして、物語を楽しめるのがいい。
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☆それでは次号で!
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【児童文学評論】 No.125 ほそえ絵本編02 2008.06.25日号
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Copyright(C), 1998-2005 甲木善久 金原瑞人 三辺律子 神宮輝夫 鈴
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許可無く転載することを禁じます。
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