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2008/01/09

児童文学評論12-04

この記事を取り寄せる

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【児童文学評論】 No.120-04             2007.12.25日号
                            1998/01/30創刊    今号の発行部数3281部
                  hicota@gmail.com
〔児童文学書評〕 <http://www.hico.jp
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☆このマガジンは1行34字で改行されています。
★発行年は「原著年/訳年」です。
☆ひこが遅れて、三辺さんの原稿発行が年を越してしまいました。読者の皆
さん、三辺さん、申し訳ありません!
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 年末を迎え、一年を振り返ってみると、今年もずいぶんたくさんのファン
タジーが出版されたな、と思う。『ハリー・ポッターと賢者の石』がイギリ
スで発売されたのが1997年だから、ファンタジーブームと言われてもう十年
は経っていることになる。そのあいだに、400ページを越す長編はめずらし
くなくなり、どんどん続くシリーズを楽々と読みこなす子どもの姿も見られ
るようになった。そうしたブームが、本を読む子どもを育てることに繋がる
かどうかはいつも議論が割れるところだが、当時十歳だった子どもが今年は
成人になったわけだ。子どものころ、『ハリー・ポッター』やほかのファン
タジーに読みふけった経験が、その後の生活に少しは影響を与えているのだ
ろうか? 児童書に携わる者としては、大いに期待してしまうのだが。

 というわけで、今年最後は、そんなファンタジーブームの流れを汲む長編
作品を紹介したい。
 といっても、昨今目立つ、ブームに乗って神話や伝承の豊かな泉から手当
たり次第に材料を引っ張り出し、マーケティングを基に組み立てていったよ
うな「大作」や、逆に、読者を無視し、作者個人の思い入れ(思い込み)だ
けで形成された世界を提示する作品ともちがう、作者の「思い入れ」がきち
んと作品として昇華された物語だ。

『錬金術師ニコラ・フラメル』マイケル・スコット著 橋本恵訳 理論社 
2007年11月
 古生物学者の父と考古学者の母を持つ双子の姉弟ソフィーとジョシュは、
発掘で両親が留守にしているあいだ、サンフランシスコのおばのもとで夏休
みを過ごしていた。念願の車を買うために、ソフィーはカフェ、ジョシュは
その向かいの古本屋でアルバイトにいそしんでいる。
 そんなある日、ジョシュはバイト中に、店主のニック・フレミングと妻ペ
リーが謎の灰色のスーツの男と争っているのを目撃する。しかも、普通の争
いではない。ふたりは魔術を使っていたのだ! ジョシュは自分の目を疑い
ながらも、ニックを助けようと灰色の男に飛びかかり、男が奪いかけた古い
本から数ページを奪い返す―――この日から、双子の人生は一変した。
 ニックはソフィーとジョシュを連れて、灰色の男に破壊された店を逃げ出
した。そして、自分の正体はニコラ・フラメルという錬金術師であり、生ま
れたのは1330年だと説明する。灰色の男はジョン・ディー博士といって、
1527年生まれ、やはり錬金術師であり魔術師、呪術師、死霊術師であるらし
い。
 ニコラによれば、人類が栄える前、地球はエルダーと呼ばれる種族が支配
していた。しかし、やがて人類は鉄を発見し、エルダー族の力は弱まった。
現在では、ある者は人間にまぎれ、またある者はその大いなる力を使って異
界の「領域」を創り、そこで暮らしているという。ディー博士に奪われた古
書は『アブラハムの書』と呼ばれ、六百年前、この書を手に入れ、その謎の
一部を解き明かしたニコラと妻ペレネルは不老不死の秘密を手に入れた。だ
が、この不思議な書物にはまだ魔術や科学や歴史の秘密が山のように隠され
ている。この書物の力を使って世界を再び支配しようとしているのが、エル
ダー族のなかでもダークエルダーと呼ばれている者たちで、ディー博士は彼
らに仕えている。ニコラとペレネルは彼らから『アブラハムの書』を守るた
め、六百年の間、世界各地を転々としていたというのだ。
 そんな突拍子もない話を信じられるはずがない。おまけにニコラはまだ何
か隠している様子だ。どうやらソフィーとジョシュが双子だということに関
連しているらしい。双子というのは、太古から特別の存在と言われているの
だ……。だが、そんなことをゆっくり考える暇もなく、ソフィーとジョシュ
は三つの顔を持つ女神ヘカテや、ネコの頭を持つエジプト神バステト、カラ
スの翼を持つ妖魔モリガンらと相まみえることになる。

 作中でジョシュがインターネットで調べるシーンが出てくるが、ニコラを
はじめ、ペレネル、ディー博士などはすべて実在の人物だ。また、ヘカテや
バステトなど、異世界の登場人物もすべて、神話や伝承にそのルーツを持っ
ている。
 もちろん、神話・伝承の世界から借りてきた人(生)物を登場させたファ
ンタジーなら星の数ほどある。だが、しばしばそうした登場人(生)物が、
単に竜やゴブリンや妖精の皮をかぶっただけの人間に過ぎないのに比べ、本
書の登場人物たちは、たとえ読者がそのルーツを知らなくても、彼らが歴史
や神話に属する異世界の存在だということを肌で感じさせてくれる。
著者のスコットは百冊以上の作品を書いたベテランで、アイルランドで最も
成功した作家の一人に数えられている。ケルトの民間伝承の権威であり、深
い造詣を生かしたノンフィクションや小説などの著作も多い。錬金術師の物
語を書きたいと思ったとき、スコットは何年もかけて資料を集め、メモを書
き溜めた。そして、彼が「昔から強い興味をもっていた」ディー博士と、ニ
コラ・フラメルを核にすえ、物語を創りあげたのだ。
「書きたい」という強い思いと、実際の知識が結合したとき、「ファンタジ
ー風の」空想物語ではない、本物のファンタジーが生まれた。本を読みなが
ら、そこに書かれていないもの、実際に本に書かれているよりはるかに奥深
く広がっている世界の存在を感じる―――ファンタジーが与えてくれるこの
感覚をこよなく愛する一読者として、『錬金術師』がこのまま本物のファン
タジー世界を繰り広げていってくれることを期待している。(三辺)
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【絵本】
『かわいいサルマ』(ニキ・ダリー:作 さくまゆみこ:訳 光村教育図書
 2006/2008.01 1500円)
 南ア版赤ずきんです。
 サルマはおばあちゃんに頼まれて市場へお買い物にでかけます。たくさん
の荷物。
 帰り道、あやしげな犬に荷物を持つ手伝いをしてあげると言われ、ついつ
いお願いしてしまうのですが・・・。
 赤ずきんのパロディなのか、伝播している物語を素材にしているのかはわ
かりませんが、ヴァージョンの一つとしてぜひ記憶に留めておきましょう。
愉快な仕上がりに笑ってください。
 そして、衣装や色遣いのおもしろさも堪能。
 この作家、まだまだいい作品がありそうだぞ。

「アフリカ子どもの本プロジェクト」もよろしく!
http://www.hananotane.com/index.html(ひこ)

『はいいろねずみのフレイシェ』(アンケ・デ・フリース:作 ウィレミー
ン・ミン:え 野坂悦子:訳 ぶんけい 2001/2007.12 1300円)
 フレイシェは自分の色がきらい。ペンキを使っていろんな色に自分を塗り
ますが、みんなにあきれられるだけ。
 落ち込むフレイシェ。でもね。
 自己否定から自己肯定までの物語。シンプルな構造はすぐに見えてきます
が、それでいいんです。
 なんといっても、絵が愛おしい。複雑でも単純でもなく、ただそこに置か
れたような、何気なさ。よく見ると、生き物の配置や顔の角度など、巧みに
計算されてはいるのですが、そう思わせないのは、画家の腕。(ひこ)

『ぼくと弟はあるきつづける』(小林豊 岩崎書店 2007.06 1400円)
 まずは、『ぼくは弟とあるいた』、『ぼくの家から海がみえた』と続いた
三部作の完結を喜びたい。
 小林がこだわり続けている戦争と子どもを描いた秀作です。
 戦火を逃れて「ぼく」と弟のエルタンは祖父の元へ。両親の行方は知れな
くなってしまいます。祖父が亡くなって、保護者が誰もいなくなった二人は、
どうして生き延びていくのか。
 短い語りと、クローズアップを排除し、抑えた画で全体を押さえながら、
隅々まで心配りをした絵。
 絵本ではとても描ききれないと思われる素材を、絵本だからこそ描ける作
品に仕上げた小林の情熱に拍手です。
 もちろん、シアワセは訪れますとも!(ひこ)

『フィアボ』(マイケル・グレイニエツ:さく ほそのあやこ:やく ポプ
ラ社 2007.11 1400円)
 フィアボはお話がだいすきな魚です。話し終えたら、次の日のお話を考え
るために、一匹で過ごします。さみしくないかなあとみんなは心配しますが、
そんなことはありません。むしろ幸せなひととき。
 そこに、綺麗な魚がやってきて、フィアボは一目で大好きに。
 さてどうなりますか。
 幸せな展開ですよ。
 グレイニエツの画は、これといって特徴のないものなのですが、赤の使い
方が巧くて、結局記憶に残ってしまいます。あ、それが特徴か。(ひこ)

『さとうばあさん チョコじいさん』(ジジ・ビゴ:ぶん ジョス・ゴファ
ン:え いしづちひろ:やく 主婦の友社 2002/2008.01 950円)
 二人はとっても仲良しで、キャンディの家に住んでます。
 でも、時々大げんか。
 家をでたさとうばあさんは石の家を造ります。
 う〜ん。やっぱり、チョコじいさんと一緒にいたい。でもじいさんはまだ
すねていて、家の扉を開けてくれません。
 やがて雨が降ってきて、キャンディの家は溶け始め・・・。
 シンプルなんですが、結構「人生」を描いています。でも、しっかりと幼
年絵本です。絵はカワイイ、カワイイしていなくて、でもちゃんと幼年向け
です。
 その辺りのバランスがほどよくて、いいですね。(ひこ)

『つんつくせんせいと くまのゆめ』(たかどのほうこ:さく・え フレー
ベル館 2007.11 1200円)
 『つんつくせんせい』シリーズ最新作。今回はくまのせんせい、つんくま
せんせいも登場ですよ。くまたちは冬眠に入ります。そのくまの家にやって
きたつんつくせんせいと子どもたち。くまの家だと知って、子どもたちは怖
がりますが、つんつくせんせいは平気で、ごちそうをむしゃむしゃ。でも、
くまたちが起きてきて、つんつくせんせいは仏像になったつもりでじっとし
ているのですが、んなもの、通用するはずもなく。
 さてさてどうなりますことやら。
 表紙からしてすでにワクワクします。(ひこ)

『チリとチリリ はらっぱのおはなし』(どい かや アリス館 2007.06 
1200円)
 シリーズ四作目です。
 チリとチリリはいつも自転車に乗って、「世界」を見ていくのですが、今
回は虫たちの「世界」です。みつを持って蜂たちについて行くと、巣の中を
見学。ってだけならなんのこともないのですが、チリとチリリははちみつボ
ールカステラのはなびらちゃきんづつみをもらいます。おいしそう!
 こうしたファンタジーへの自然な飛び方は、どいが、「はちみつボールカ
ステラのはなびらちゃきんづつみ」を本当に知っているからです。そんなも
のない! ですって。ええないでしょうね。私にもあなたにも。でも、どい
にはある。そして、それを、「あるように」描いて私に届けてくれる。
 他にも素敵なものが出てきますよ!(ひこ)

『飛行機にのって』(磯良一 長崎出版 2007.06 1500円)
 スクラッチ技法によるイラストがとてもクールな良作です。
 闇夜を飛ぶ双発機。乗組員も影となっています。飛行機は、マンホールを
抜け、側溝を抜け、あれれ、ネズミの乗っている小さな飛行機なんだ。
 いったいどこへ向かうのかは読んでのお楽しみ。
 どっちかというと大人向けの絵本になるのでしょうが、子どもも結構ドキ
ドキ読めるはず。(ひこ)

『テンサイちゃんとロボママ』(サイモン・ジェイムズ:さく こだまとも
こ:やく 小学館 2007/2007.12 1500円)
 まず、表紙、いいっす。コテコテの昔よくあったイメージのロボットと、
ひとくせありそうな赤ん坊が、黄色い背景に置かれていて、タイトルはメタ
ルなシルバー。もう目立つこと目立つこと。でもくどくないんだなあ、これ
が。画家のセンスの良さがわかります。
 テンサイちゃんは生まれてから色んな物を発明し続けます。
 子育てに疲れている両親を見て、赤ん坊のテンサイちゃんは、家事用のロ
ボットを作るのですが、やがて自分の育児もしてくれるようになり、でも、
ロボットなものだから・・・。
 ロボママは失敗でしたが、だからといってテンサイちゃんが発明を止める
わけではないのが、とても素晴らしいですよ。
 宣伝用のキャッチは「がんばるママにエールをおくる!」ですけど、パパ
もがんばっています。(ひこ)

『おんぼロボット』(アキヤマ レイ 理論社 2007.12 1200円)
 デビュー作。
 研究者で博士のお手伝いロボットをしているトト。まちに遊びに出かけま
す。知らない少年から別の名前で呼ばれるのですが、まあいいや。二人で遊
びます。一日の冒険。
 楽しかった。
 帰ってきたトトはドロだらけ。やれやれ。そして博士は・・・。
 新しいとは言えないまでも、そのオチは今日的で、なかなかおもしろいで
すね。
 画は、巧いのですがそのためにインパクトがあまりなくて、そこが心配で
す。ここで出来上がらないで欲しい。表紙も落ち着きすぎ。主張がもっと前
に出たほうがいいのでは?
 でも、楽しみな作家のデビューに乾杯!(ひこ)

『冬の日』(今森光彦 アリス館 2007.12 1400円)
 良い!
 それ以上言う必要もないです。「宝物」って文章がいいんだなあ。
 これがシリーズ三巻目。あと一巻で完結です。そりゃそうだ、四季だもん。
でも、寂しい。(ひこ)

『おさるのまねっこ』(いとうひろし 講談社 2007.07 1500円)
 『かくれんぼ』『おいかけっこ』に続く、あそびシリーズ最終巻。今回は、
おさるたちがさまざまなもののまねをして、最後は自分のまねをし、自分に
返ります。ただまねをして楽しんで終わりでなく、自分のまねをするところ
が、この作家がこだわってきたアイデンティティのありようを、チラリとほ
の見えさせておもしろいところです。(ひこ)

『みどりのふえ』(あまんきみこ:作 おぐらひろかず:絵 フレーベル館
 2007.04 1200円)
 みどりのふえをなくした女の子、それを捜していると、子ギツネが自慢げ
に森の仲間に笛を聞かせています。わたしのだ、と思うけれど、あんまし幸
せそうなので言い出せません。子ギツネは、女の子に、ぼくのこのふえを貸
してあげるから吹いてごらん、なんて言いますからなおさらです。
 そうそう、女の子は、家にもう一本古いふえがあるのを思い出しました。
あれだってまだ使えるんだし。
 心が温かくなるあまんワールドです。おぐらの絵がその雰囲気を良く伝え
ています。
 やっぱりいいなあ、あまんちゃんは。(ひこ)

『ずっとそばに・・・』(いもとようこ 岩崎書店 2007.11 1300円)
 山が荒れた現在、くまが人間の生活圏に侵入してくるケースが増えていま
す。というか、人間が侵入していっているのですが、そのために野生動物が
生きがたくなっています。
 今作でいもとは、その現状への思いを作品化しました。
 親を人間に殺されたくまは、同じように孤児となった他の動物たちを守っ
ています、寂しさを一番良く知っていますから。
 冬、例年にも増して食料が不足し、このままでは世話をしている動物の子
ども達が飢えてしまう。
 決心したくまは人間界へと出かけるのですが・・・。
 バットエンディングですが、あえてそうして、またはせざるをえなかった
いもとの思いが伝わります。これまでのいもとの作品に親しんでいる人にと
って、この結末はかなり衝撃かもしれません。(ひこ)

『おつかい しんかんせん』(福田岩緒 そうえん社 2007.12 1200円)
 いかにも福田らしい、勢いのある物語。
 まさるが四歳の誕生日にもらったのはしんかんせんの乗り物。家でも外で
も、いつも乗って遊んでます。
 母親から、じゃがいもを買ってきてくれるように頼まれたまさおは、しん
かんせんで出かけます。
 ビューンととばすこととばすこと。途中で転覆なんかもして。でも泣かな
いぞ!
 小さな子どものドキドキお買い物体験が、活き活きと伝わります。(ひこ


『はたらくんジャー』(木坂涼:作 高畠那生:絵 フレーベル館 2007.
12 100円)
 ショベルカーから、ロードローラーまで、大型車で毎日毎日、はたらくん
ジャーははたらきますですよ。
 とにかくとにかく、はたらくはたらく、その勢いが、なんだかたまらなく
楽しい。
 高畠の絵が結構脱力っぽいのも、ますます、はたらくはたらくを楽しく見
せてくれる。
 「はたらくんジャー」ごっこをしている子どもが目に浮かんでしまいます。
(ひこ)

『じどうしゃブブブン』(冬野いちこ 岩崎書店 2007.12 600円)
 友達にプレゼントを届けに行くネズミさん。車に乗って出かけます。
 で、いろんな車を追い越したり、追い抜かれたり。
 自動車の動きとページを繰るリズムと言葉で楽しむファーストブック。
 それぞれの車に目が着いているのはとてもいいのですが、せっかくだから
サイドミラーにも表情が欲しかったです。(ひこ)

『どんぐりぞうのおはなし なんでもやのまき』(近藤薫美子 2007.12 
1300円)
 虫物というか、土物というか、それはもう、近藤さんにお任せです。
 どんぐりに穴を開けるゾウムシのどん・ぐりぞうが、なんでもやを始めま
すが、なんだかとってもとんちんかんで、失敗ばかり。
 物語はどこへ転ぶかわからない展開なのですが、それが妙に愉快。
 これまでの近藤作品とは違う世界を、ぜひ味わってください。(ひこ)

『おたまさん』(軽部武宏 長崎出版 2007.06 1400円)
 なんともヘンなのですが、それに何故か納得のナンセンス絵本。
 巨大なおたまじゃくしのおたまさん。
 雨が降って、その背中に大きな水たまりが。そこにいろんな生き物が集ま
ってくるけれど、だんだん乾いてくるから、どんどん逃げ出して、最後はぞ
ううさんが背中に乗って残りの水を飲んじゃった。
 そこに意味を見出すより、そのヘンさに身を任せるのが吉。(ひこ)

『グリンピースのあかちゃん』(カレン・ベイカー:ぶん サム・ウイリア
ムズ:え いしづちひろ:やく 主婦の友社 2003/2007.06 1400円)
 なんといっても、サム・ウイリアムズの絵がかわいい作品です。
 トマトやアーティチョークのおばさんたちに見守られながら元気に育って
いくグリンピースのあかちゃんたち三粒。
 それぞれの小さな冒険が上中下、画面を3分割して平行して語られていく
のも楽しいです。(ひこ)

『風の子ふうた』(いしだとしこ:作 おかだみほ:絵 アスラン書房 
2007.09 1200円)
 風の家族のお話です。
 秋、父親は世界を秋色に染めようと仕事に出かけます。自分もやりたいふ
うたは、風ぶくろを開けて吹かせますが、それは冬の風で・・・。
 おかだみほの絵の奔放さが光ります。見ていて楽しい。
 でも、表紙がイマイチ地味なのはどうしてか?
 タイトルも一考。(ひこ)

『もめんのろばさん』(わたりむつこ:作 降矢なな:絵 ポプラ社 
2007.10 1200円)
 けんちゃんが大好きなぬいぐるみのロバは、チョッキの端布でおかあさん
が作ってくれたもの。けんちゃんは大好きです。
 なのに、クリスマス前に行ったおもちゃ屋さんで置き忘れてしまいました。
 残されたロバさんは悲しくて、寂しくて。でも、売れ残ったクリスマス用
の人形達にはげまされます。
 よくある話ですが、とても安定した物語運びで読ませます。
 絵本と言うより、絵付き物語といった感じで、降矢の絵は自分から語ろう
とは余りしていません。そこが少しもったいないです。(ひこ)

『クマノミとサンゴの海の魚たち』(大方洋二:写真・文 岩崎書店 
2007.07 1400円)
 「ちしきのポケット」シリーズの写真絵本です。
 タイトル通り、クマノミが暮らすサンゴ周辺を、大方の美しい写真によっ
て解説していきます。
 こういうのは、いかに楽しく見せてくれるかが重要なのですが、これはか
なり好感度高いです。
 生存競争必死の生き物たちなんですが、けっこうユーモラスに思えてしま
うのは、大方の目線が優しいからでしょう。
 画面の割り方や文章の置き方など、スタンダードに確実に見て読んでもら
うことを考えているのもいいなあ。(ひこ)

『コブダイ・弁慶の海』(なかむらこうじ:写真・文 そうえん社 2007.
05 1300円)
 佐渡島沿海にいるコブダイ、その名は弁慶一七歳の日々を追った写真絵本。
 ナワバリを守り、他のオスに勝ち、繁殖をする。
 とても迫力あるシーンが一杯です。
 コブダイのオスって顔が怖いけど、この絵本を繰っていくと、だんだん親
しみを感じてきます。(ひこ)

『はつゆき』(西片拓史 岩崎書店 2007.12 1300円)
 実に幻想的なお話です。
 一年ぶりに湖に船を出した「ふたり」。そらからこぼれ落ちて、湖面に浮
かんでいる星のしずくを集めます。それから、森に行って、ひかりごけをほ
んの少し手に入れて、その他季節のうつろいをお鍋でかき回し・・・。
 彼らには名前も個性もありませんし、彼らが作った「はつゆき」をよろこ
ぶ人々も「人」として描かれているだけです。
 そこに西片のファンタジーが宿っています。つまり、何かに固定されるこ
とのないイメージ。
 ただし、何かもう一つ芯が欲しいのです。難しいのはわかっているのです
が。(ひこ)

『こいぬ、いたらいいなあ』(おのりえん:ぶん はたこうしろう:え フ
レーベル館 2007.12 1200円)
 にぎやかな四人兄弟が帰ってきました。
 今回は、雪遊びをしている四人が、何かの足跡をたどっていくと、犬を飼
っている家にたどり着き、その犬ショコラは妊娠していると知ったものだか
ら、当然四人は子犬を飼いたくなって・・・。
 という展開です。
 子どもたちの犬を飼いたい気持ちがしみじみ伝わってきますし、そして、
最後はもちろん!! シアワセですよ。(ひこ)

『ベスとアンガス』(マージョリー・フラック:さく・え まさきるりこ:
やく アリス館 1933/2007.12 1300円)
 『アンガス』シリーズ最新訳。
 エアデール・テリア犬のベスは、恐がりで、散歩もままなりません。
 ある日、垣根からアヒルが飛び出してきて、びっくり。その後からはテリ
アのアンガスが! 恐がりのはずのベスですが、思わずアンガスを一緒にア
ヒルを追いかけてしまいます。
 アンガスと友達になったベスは恐怖心も薄れて行きます。
 物語も絵も、ああ、なんて優しくて暖かな絵本なのでしょう。ベスもアン
ガスも子どものメタファーなのですが、こんな風に子どもをまるまる肯定で
きる時代もありました。これを懐かしさで刳るんではいけません。失われた
物として、しっかり受け止めなければ。(ひこ)

『ちいさな ぽむさん』(シルヴィ・ポワレヴェ:ぶん エリック・バトゥ
ー:え 谷内こうた:やく 主婦の友社 2002/2008.01 950円)
 音のない国に住んでいるポムさん。
 みんなに音を聞かせようと、集めるために旅に出かけます。
 風の音、雨の音、音を聞いて幸せな気分になった自分の笑い声。
 集めてきた音をみんなに聞かせます・・・。
 音を聞くおもしろさと、それへの反応とは、まさに幼い子どもの姿ですね。
それを、一つの旅物語に仕立てた幼年絵本です。(ひこ)

『かっとびジャック ツリーはこびのまき』(やましたはるお:さく しま
だしほ:え ポプラ社 2007.10 1200円)
 山下、島田コンビによる、『かっとびジャック』シリーズ最新作です。
 南極に住むペンギンのジャックはなんでも運び屋。今回のご依頼はクルス
マスツリーとその飾り物。でも、セイウチやとうぞくかもめ、海には怖い連
中が待ちかまえています。
 果たして、ジャックの運命は?
 山下お得意の海の物語。たつまきでサボテンが飛んできたり、それを虫歯
のシャチが歯ブラシに使っていたりと、自由奔放に想像力が広がっていきま
す。
冒険がきちんとシアワセに溢れて終わるのは、さすが。(ひこ)

『なつのおうさま』(薫くみこ:作 ささめやゆき:絵 ポプラ社 2007.
06 1200円)
 夏休み、「ぼく」の家にかあさんの友達がやってくる。「ぼく」と同い年
の女の子「ひなこ」を連れて。ほんの二日の宿泊だから、ほんの二日付き合
ってやればいいだけのひなこ。
 でも、
 初めて知る「切なさ」。
 夏の初恋。(ひこ)

『三丁目の傘屋さん』(岡本小夜子:作 篠崎三朗:絵 そうえん社 
2007.06 1200円)
 夏祭りが近づいています。
 町の外れの古い商店街の端っこにある傘屋さん。番傘を作っています。
 夜、お月様が降りてきて、傘を一本貸して欲しいと頼みます。
 よろこんで。
 次の夜は雨降り。でも、その次の日はあがって、傘が返してありました。
 もうすぐお祭りが始まるある日の不思議な出来事です。
 インパクトはあまりなくて、そうした出来事がありそうな時期をピンナッ
プしたような作品。だからこそ、印象に残ったりするんですよね。
 表紙は、そのままでベタすぎなのが残念。(ひこ)

『このゆびとまれ』(薫くみこ:さく 久本直子:え 岩崎書店 2007.05 
1300円)
 おねしょをしてしまう「ぼく」。
 でもみんなだってきっと。
 「おねしょしちゃうこ、このゆびとまれ!」
 と、いろんな動物の子どもがやってきます。
 おねしょ世界を楽しくしてしまいますよ。
 もちろん、いつかはきっとやまるのですから。(ひこ)

『プンプンぷんかちゃん』(薫くみこ:作 山西ゲンイチ:絵 ポプラ社 
2007.05 1100円)
 ふみかちゃんはいつもプンプン怒っているので、ぷんかちゃん。
 もう小学一年生にもあきたよぉ。
 お隣の家の、飼い犬にあきたガブちゃんと出かけることに。
 出会った動物たちに、ガブちゃんは、ぷんかちゃんのことを「ともだち」
って紹介します。
 え? 「ともだち」?
 なんだかくすぐったい、不思議な気持ち。
 いつもプンプンしていないで、たまには「ともだち」っていいかもよ、ぷ
んかちゃん。(ひこ)

『家族で食育! 朝ごはん1 からだに元気! 朝ごはん』(監修:服部幸
應・服部津貴子 岩崎書店 2007.11 1300円)
 「食育」の伝道者服部の監修した「食育」シリーズです。朝ごはんに絞っ
てます。
 朝ごはんを食べない人も多いイマドキ、夜より朝にしっかり食べた方が良
いことは、子どもにとって驚きかもしれません。
 色々工夫はあって、例えば「指でおぼえる1日の食べものチェック」では、
親指を「ごはんの指」、小指を「バターの指」といった風にして、まんべん
なく摂取しやすいようにしていますが、ちょっとわかりにくい。まだまだ練
り込みが必要なようです。(ひこ)

『あいしてます』(大野圭子:文 篠崎三朗:絵 文研出版 2007.12 
1300円)
 おじいちゃんとおばあちゃんチに遊びに行った「あたし」。でも、二人の
様子がなんだかヘン。喧嘩してるんだって。
 二人を仲直りさせたい「あたし」はある作戦を練る。
 いい解決方法で、ほほえましいです。ただ、そこに持って行くまでが一直
線。もう少し言葉が少なくてもいいのでは。
 篠崎の絵は挿絵風になっていて、損。
 作者と画家で、どうバランスをとって絵本に仕上げていくかの詰めが甘い
と思います。いい素材と、個性的画家のコラボだけに惜しい。
 絵本って、難しいですね。(ひこ)

【創作】
『白いキリンを追って』(ローレン・セントジョン:作 さくまゆみこ:訳
 あすなろ書房 2007.12 1400円)
 両親が亡くなり、ロンドンから、母方の祖母のいる南アフリカへやってき
たマーティーン11歳。
 祖母の態度はなんだか冷たく、マーティーンは孤独です。祖母は鳥獣保護
区に住んでいるのですが、柵で囲まれた保護区域名はマーティーンを入れて
くれません。ある日の深夜カギを盗んでこっそり入ったマーティーンは、そ
こで伝説の白いキリンと出会います。キリンは彼女を恐れるでもなく近寄っ
てくる。白いキリンに乗った少女が動物たちを救うという伝説が今実現され
ようとしているのか?
 3巻本の冒険シリーズが始まります。マーティーンと祖母の心のふれあい、
密猟者との闘い。読みどころは満載です。説明が多いのが少し気がかりです
が、一巻目だから仕方がないかな。次作期待です。(ひこ)

『アントン-命の重さ-』(エリザベート・ツェラー:作 中村智子:訳 主
婦の友社)
 ナチス政権下のドイツで実際にあった出来事が描かれています。
 アントンは交通事故が原因で障害が残ってしまいます。右手を思うように
動かせず、言葉もうまく出ないのです。それでも彼は、両親の愛情を一杯受
けて育っていきます。
 ところがナチスの政策は。障害を負った者を不完全な人間と見なすもので
した。
 アントンがいじめられても、先生は見て見ぬふり。親友ですら、親からア
ントンと遊ぶことを禁じられてしまいます。何故? どうして? 理由のわ
からないアントンは落ち込みます。
 やがて、ナチスによって命を奪われかねない状況となり、アントンは家族
と離れて田舎に身を隠すしかなくなります。それでも危機が訪れ、アントン
を生き延びさせるために、残された方法は、偽の死亡証明書を作ることだけ
でした。
 きつい物語ですが、ぜひ知っておきたい事実が描かれています。(ひこ)

『スパイ・ガール3 見えない敵を追え』(クリスティーヌ・ハリス:作 
前沢明枝:訳 岩崎書店 2007.11 800円)
 シリーズもいよいよあと一巻を残すのみ。天才スパイとして育てられたジ
ェシー・シャープたち三人の謎が、今回のミッションで、いよいよ明らかに
なります。
 んなことあるかあ? と昔の言葉で言えば「マンガチック」なのですが、
それによって成立している、ジェシーたちの置かれた立場の切なさがそれを
上回りますから、グングン読めます。
 エンタメとしてはごくスタンダードな展開なんですが、十分な楽しさを味
わえますから、それこそ質の高さでしょう。(ひこ)
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『キャベツ』(石井睦美:作 講談社 1300円)
 大学生の「ぼく」は、母親と妹美砂のために、家事一切を引き受けていま
す。中学二年生のとき、父が亡くなってしまい、「ぼく」は家族を守る決心
をしました。その実践が、毎日仕事で疲れて帰ってくる母親の負担を少しで
も軽くすることだったのです。
 時は流れ、「ぼく」は大学生で、美砂は高校二年生。二人とも思春期真っ
盛り。でも、今も「ぼく」は母と妹のために家事にいそしんでいます。下着
の洗濯だって気にせずやっている。ヘンなヤツって思わないでくださいね。
彼にはそれが当たり前で、大切な役割なんですから。
 でも、大学の友達と積極的に遊ぶわけでもなし、家事にばかりかまけてい
て本当にいいんだろうか?
 ある日、美砂は親友のかこちゃんを紹介してくれます。「ぼく」は彼女を
好きになるけれど、妹の親友と恋愛するのはちょっとなあ。
 さて、「ぼく」はどうするのか?
 生活臭一杯なのに、何故かキラキラしていて、ちょっと切ない、不思議な
青春物語ですよ。(ひこ 読売新聞)
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☆それでは次号で!

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【児童文学評論】 No.120-04             2007.12.25日号
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