2009/11/08
JOG-Mag No.622 太陽エネルギー文明と「日の本」の国
■■ Japan On the Globe(622) ■■ 国際派日本人養成講座 ■■
The Globe Now: 太陽エネルギー文明と「日の本」の国
今、生まれようとしている太陽エネルギー文明
を先導する使命が「日の本」の国にある。
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■1.わずか1ミリの大気圏■
昨平成20年春、中国の胡錦濤国家主席が来日したおりに、
総理官邸で展示されたのが、直径1.28メートルのディジタ
ル地球儀「触れる地球」だった。雲の動きや気象に関する最新
情報がインターネット経由でダウンロードされ、今この瞬間に
宇宙船から見た地球の姿を、そのまま見ることができる。
折しも死者・行方不明者13万人の被害が出たサイクロン・
ナルギスがミャンマーを襲った直後であり、ディジタル地球儀
上にここ数週間分の雲の動きを再現して見ると、巨大サイクロ
ンがミャンマーを襲う一週間以上前からインド洋上にくっきり
と姿を現していた。この予知情報がミャンマーに伝えられてい
たら、犠牲者の数も大きく減らすことができたかも知れない。
このディジタル地球儀を、せっかく中国の最高権力者に見せ
るのだったら、中国が全世界の約2割もの温室効果ガスを排出
している様子だとか、中国が占拠しているウイグル自治区での
環境破壊により、黄砂が日本にまで飛来して迷惑をかけている
様子などを見せてやれば良かったのに、と思うのだが、「人の
嫌がることはしない」と広言していた福田元首相のことだから、
そんな発想は思いつきもしなかったろう。
それはともかく、温室効果ガスにせよ、黄砂にせよ、高度約
1万メートル、ジェット機が飛ぶくらいの高さまでの空気の層
(対流圏)の問題なのだが、この地球儀上では、わずか1ミリ
の厚さでしかない。人類を護ってくれている大気とは、かほど
に、か弱い存在なのである。
■2.地球環境は大きな変動を続けてきた■
温室効果ガスの議論では、安定的な自然を、人類の文明が破
壊しつつある、という先入観をベースに語られる事がほとんど
だが、地球の自然とはもともと絶えず変動してきた。[a]
たとえば、初期の地球に酸素はなかった。光合成バクテリア
が繁殖して酸素(O2)を生み出し、酸素が大気中に飽和して
一部がオゾン(O3)に変わり、そのオゾン層が紫外線をカッ
トすることによって、はじめて生物が海から陸上に上がって進
化することができた。これがわずか4億年前のことである。地
球の誕生が46億年前と言われるので、地球の歴史を1年に換
算すると、酸素が生み出されたのはようやく11月30日頃と
いうことになる。
2万年前の最終氷河期には気温の低下のため、海面は100
メートル以上も低く、アジア大陸と日本とは陸続きだった。こ
れが12月31日午後11時58分頃のことだ。
この1万年ほどは、地球史の中でも「例外的に気候が安定し
た期間」だったと言われるが、その間でも地球の自然は絶えず
大きな変動を続けてきた。
6千年ほど前の縄文期には、温暖化により海面が現在より5
メートル以上も高く、東京湾が埼玉県の大宮あたりまで入り込
んでいた。
逆に18世紀ごろには、アイスランドの大規模な火山噴火で
放出された火山ガスが北半球を覆い、地上に到達する日射量を
減少させ、冷害による饑饉を東西で引き起こした。これがフラ
ンス革命の遠因となり、また日本でも天明の飢饉を引き起こし
たと言われている。
このように地球環境は常に大きく変動を続けてきたのであり、
現代の温室効果ガスの問題も、その前提のもとで議論されなけ
ればならない。
■3.「有り難い星」地球■
「温室効果」とは、自然を破壊する悪いイメージでしか使われ
ないが、それも偏った先入観である。そもそも大気中の二酸化
炭素や水蒸気の温室効果によって、地球の気温は生命に好適な
平均15度程度に保たれている。もし、温室効果がなかったら、
地球の平均気温はマイナス18度まで下がると推定されている。
さらに、地球の表面の7割を覆う海が、温度変化の激変を防
いでいる。たとえば水のない月では、昼の側は太陽熱で150
度を超え、夜の側はマイナス110度まで下がる。地球の表面
を覆う水が、「温まりにくく冷めにくい」性質によって、昼夜
や夏冬の温度差を相殺してくれるのだ。まさに「地球」という
より、「水球」である。
しかも、そもそも地球が水に覆われていること自体が、奇跡
的である。隣の金星では太陽に近すぎるために水はすべて蒸発
して水蒸気になってしまう。火星では逆に太陽から遠すぎるた
めに、ほとんど氷の状態でしか存在し得ない。
地球が太陽から適度の距離であるがために、水が液体の状態
で存在し、そしてその水の保温効果と大気の温室効果によって、
生物に適当な温度が保たれている。こう考えると、我々が生か
されているこの地球とは、奇跡的な「有り難い星」なのである。
■4.太陽エネルギーの恵み■
もう一つ有り難いことは、地球が太陽から無尽蔵のエネルギ
ーを供給されていることである。太陽から地球に届けられるエ
ネルギーの総量は、石油換算で約130兆トンであり、これは
人類が一年間に消費するエネルギーの石油換算量約90億トン
の1万4千倍以上である。言わば36分間の太陽エネルギーで、
人類の1年分のエネルギーが賄(まかな)える勘定になる。
したがって、太陽から供給されるエネルギーのほんの一部で
も活用できれば、石油も石炭も原子力も要らない事になる。本
来、地球には「エネルギー問題」など存在しないはずなのであ
る。
太陽エネルギーの利用手段というと、まず思い浮かぶのが太
陽光発電だが、それだけではない。太陽で温められた大気が上
昇気流を生み、その空隙にまわりから空気が流れ込んで風が吹
く。風力発電とは、太陽が生み出した風からエネルギーを取り
出すものである。
また、太陽熱によって蒸発した水分が、山の上まで運ばれて、
雨が降り、それが集まって川となる。水力発電も太陽エネルギ
ーがもとになっているのである。
同様に、海の温められた表層と冷たい深層の温度差を利用す
る「海洋温度差発電」も、太陽エネルギーを利用する一手段で
ある。
さらに、トウモロコシなどから燃料を作り出す「バイオマス」
も、植物が太陽エネルギーを光合成によって変換・貯蓄したも
のである。
こうして見ると、まさに地球は、太陽光の恵みをふんだんに
受けている「有り難い星」である、と言わざるを得ない。
■5.現代文明の野蛮なエネルギー利用■
欧米諸国が発展させた現代文明は、こうした「有り難さ」に
背を向けて、もっぱら石油石炭などの化石エネルギーに頼るこ
とによって温室効果ガスをまき散らし、地球環境のバランスを
崩しつつある。変動し続ける地球環境が「希に見る安定した時
代」に遭遇したという幸運にも気づくことなく。
そもそも現代の石油エネルギー文明は非効率なことこの上な
い。たとえば「文明開化」の象徴だった白熱電灯は、火力発電
でのロス、家庭への送電ロス、さらに電灯の発熱ロスを除けば、
我々が必要としている「光」になるエネルギーは、投入エネル
ギーの1%もない。
また自動車にしても、ガソリンを燃やしても発熱で失われる
ロスや、信号待ちでエンジンがムダに回っているロスを除くと、
エネルギー効率はせいぜい15%程度である。これで車体重量
1.2トンの車で体重60キロのドライバー一人を乗せて走っ
ているとすれば、15%の1/20で、これまたエネルギー効
率は1%以下となってしまう。
電灯にせよ自動車にせよ、地中から大量の石油を掘り出して、
その1%以下しか利用せず、あとは熱と排気ガスを大気中にま
き散らす。現代文明は、エネルギーの観点から見れば、なんと
も野蛮な段階なのである。
現在の地球温暖化問題に関して、二酸化炭素の排出を何パー
セント減らすか、という議論ばかりされているが、それはあま
りにも視野の狭い捉え方であって、本来は、現代文明のいかに
も野蛮なエネルギー利用をどう進化させていくか、という文明
のグランド・デザインから考え直さなければならない。
■6.石油依存のリスク■
石油エネルギー文明は、その効率の悪さ以外にもいくつか
本質的な欠陥がある。まず、石油資源は限られた産油国に集中
しており、そのために産油国と非産油国の格差を生ずる。我が
国も石油の輸入に年間17兆円も使っているが、貧しい国で石
油を輸入しなければならない場合は、経済的な負担が大きく、
それが成長の制約となる。
また石油資源の争奪が国際紛争の原因ともなる。そもそも大
東亜戦争は、アメリカが日本に対して石油輸出を禁止した事が
引き金になった[b]。現代でも石油をがぶ飲みする中国が、ア
メリカの石油覇権に挑戦している[c]。
特定の産油国からの長距離輸送もリスクを伴う。我が国の石
油輸入の80%が、ペルシア湾の湾岸諸国からであり、海賊の
跋扈や、地域紛争により、湾岸ルートが閉ざされでもしたら、
石油輸入がストップする恐れがある。
さらに石油はグローバルに取引される商品として、価格変動
が著しい。産油国が談合して石油価格を一挙に引き上げ、我が
国も「石油ショック」に襲われたことは記憶に新しい。
石油エネルギー文明は、資源の偏在性による紛争、供給・輸
送不安定、価格変動などの重大リスクを人類全体に与えている。
■7.平等で平和な太陽エネルギー■
石油に比べて、太陽エネルギーは温室効果ガスを発生させず、
またテロや事故の心配もない。
さらに、その「偏在性」ならぬ「遍在性」も大きな特長であ
る。太陽の光はどの国にも降り注ぐ。特に貧しい国の多い南方
では、より豊かな太陽エネルギーが享受できる。これは現在の
南北格差を縮小する効果を持つ。
そして「地産地消」型である事も見逃せない特長である。各
地域で太陽光発電なり、風力発電なり、その地域の特性にあっ
た形で、太陽エネルギーを取り出し、各地域が自立できる。こ
れはリスクの分散につながる。
言わば、太陽エネルギーはきわめて平等で、かつ平和的なエ
ネルギーなのである。人類の文明が、石油エネルギーから脱却
して太陽エネルギーに移行すれば、石油エネルギーに伴う紛争
やリスク、貧富格差は大きく低減される道が開ける。
■8.食糧問題や水問題にも資する海洋温度差発電■
太陽光発電の技術開発において、日本は世界をリードしてい
るが、さらにいかにも我が国らしい太陽エネルギーの利用方法
が開発されつつある。前述の「海洋温度差発電」である。
太陽によって温められた表層海水の25度から30度くらいの
温度で容易に揮発するアンモニアの蒸気がタービンを回し、そ
れが今度は深層から汲み上げられた5度前後の海水によって冷
やされて液体に戻る、というサイクルが無限に回る。
原理はフランスなどで19世紀から予言されていたが、実用
可能な段階まで漕ぎ着けたのが佐賀大学の上原春男氏を初めと
する日本の技術革新によるものである。日本のゼネシス社がプ
ロモーターとなってインドや中東、太平洋諸国に実証実験プラ
ントが建設されつつある。[1,p59]
海洋温度差発電には大きな副産物がある。第一に栄養豊かな
深層水を利用して、漁場を作り出すこと。深層水が自然に海表
面に湧き出すポイントは「湧昇」と呼ばれ、ペルー沖など世界
有数の漁場となっている。これを人工的に創り出すことができ
るので、近海で魚類の「地産地消」化が進められる。
第二に淡水の供給。発電で利用した温海水を蒸発させ、冷海
水で凝縮させれば真水ができる。
温室効果ガスの発生ゼロで、なおかつ食料問題や水問題の解
決に資するこの技術は、パラオ共和国など南洋の島嶼国家やカ
リブ諸国など30カ国以上から相談・引き合いが来ているとい
う。
■9.太陽エネルギー文明の自然観■
石油エネルギー文明から太陽エネルギー文明への進化の根底
には、実は自然観の転換がある。石油エネルギー文明とは、地
中から採掘した石油で、密閉した建物をエアコンで冷やして廃
熱を窓の外に吐き出したり、舗装した道路に自動車を走らせて
排気ガスをふりまく、という光景に見られるように、人間が自
然を征服し、搾取する思想に立脚している。
今起こっている二酸化炭素削減の動きも、また各種のエコロ
ジー運動も、人間の自然に対する影響を最小化しようというこ
とで、根本的には人間を自然界の「異物」として捉えており、
人間による自然征服の「裏返し」なのである。
それに対して我が国の自然観は、人間は「生きとし生けるも
の」の一つとして自然と共生するものと捉える。同時に治山治
水の技術によって、荒ぶる自然をうまく制御して、森や海や川
を美しく保ちながら、災害を無くしていこうとする。
海洋温度差発電とは、まさにこの自然と人間の共生、共進化
という日本的自然観を体現する典型的な技術と言える。
我が国は、古来から天照大神、すなわち太陽神を「生きとし
生けるもの」を養い育ててくれる最高神として崇めてきた。日
本語の「ヒ」は、太陽の「日」であり、人間が使う「火」であ
り、太陽から与えられた生命力(霊)を宿したのが「霊止(ヒ
ト、人)」「日子(ヒコ、男子)」「日女(ヒメ、女子」であ
る。さらに我が国は「日の丸」を国旗に掲げる「日の本」の国
である。
今、生まれようとしている太陽エネルギー文明は、「生きと
し生けるもの」とともに豊かで平和な世の中を創り出す、とい
う自然観に基づくものとなろう。それを推し進めるのは、「日
の本」の国の世界史的使命である、と言えよう。
(文責:伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(507) 地球温暖化問題に仕組まれた「偽装」
政府やマスコミは情報をコントロールしている
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h19/jog507.html
b. JOG(513) 石油で負けた大東亜戦争
日本は石油供給をストップされて敗北したが、 現在でもその
リスクはさらに深刻化している。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h19/jog513.html
c. JOG(554) 米中石油冷戦と日本の国策
石油をがぶ飲みする中国が、アメリカの石油覇権に挑戦して
いる
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h20/jog554.html
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 竹村真一『地球の目線』★★★、PHP新書、H20
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569700861/japanontheg01-22%22
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■前号「中島知久平 ~ 『航空立国』の志」に寄せられたおたより
樵さんより
「心理的な敗北感をいつまでも持たないで、早く自分の気持ち
を復興させることだ。」正に、今の日本に日本人に必要な言葉
だと鳥肌が立ちました。
戦後半世紀以上が過ぎ、経済的には復活したにも拘らず、今
の日本の世界との関わる時の姿勢、国内の様々な問題を考える
と、戦前の日本人の伝統精神が戦後からまだ復興していないと
思います。
家族のため、社会のため、国のために自分の人生を使う。
現在は偏向された個人主義、権利の主張が善とされています。
その結果が、今の国内の悲しくなる事件や外国から軽んじられ
る状況を招いたと思います。
精神的な復興が必要だと強く感じました。
■ 編集長・伊勢雅臣より
経済的には復興しましたが、精神的な復興はこれからですね。
読者からのご意見をお待ちします。以下の投稿欄または本誌
への返信として、お送り下さい。
掲載分には、薄謝として本誌総集編を差し上げます。
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