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2009/06/16

【Arts Information/Arts Calendar】2009年6月15日(月)号 コラム

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【Arts Information/Arts Calendar】2009年6月15日(月)号 コラム
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お待たせいたしました。
今週のコラムです。

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■コラム 
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(「アーツ・カレンダー」のトップページに掲載しています) 




●「死を描く」

 原爆の図を見た。丸木位里・俊夫妻による連作である。名前を知っている人は多い。しかし実際に本物
を見た人はどの程度いるだろうか。僕も広島の資料館かどこかで見たように思っていた。そしてこの日曜、
埼玉の丸木美術館を訪れた。

 絵の前に立ち、我を忘れた。特に1950年から52年にかけての絵が恐ろしいほど魅力的だ。唯一無二の
芸術である。広島出身の位里と北海道出身の俊が、原爆投下数日後に訪れたその地で見た光景、家族や
人々から聞き写真で見た姿などを元に描いた。ほとんどが死骸や傷ついた肉体でありながら、悲惨さやグ
ロテスクさというより、例えようもない美しさが伝わってくる。肉体の多くは裸で、エロティシズムも感
じとれる。それは何よりも死体を亡きがら、死んだ「もの」としてではなく、生きている存在として描こ
うとしているからではないか。

 現在80歳を超えた美術評論家ヨシダ・ヨシエは、かつてこれを背負って1950年代に巡回展を行った。
その後、作品は海外各地を巡り、反戦を訴えるという役割を50年以上果たしている。しかしそれ以上に作
品として美しく魅力的だ。破壊され、どこまで姿を壊されようと、肉体そのもののもつ美が描かれている。
最近、松井冬子などによる屍体の絵画が紹介される。しかし、これはそういったセクシュアリティや想像
力を喚起する作品ではない。肉体の美が作品の美として現前している。位里(いり)は妻、俊(とし)と
ともに、日本画の新たな表現を追求し続けた。俊(とし)はかつてミクロネシアに渡り、裸体の美しさに
惹かれてそれを描き出そうとした。この男と女、両方の視線と感覚が重なって一つの作品を生み出したと
ころに、作品の魅力があるのかもしれない。

 原爆の図の作品の力、肉体、身体の力に圧倒される体験は初めてのものだった。死を描くことの意味、
死と肉体の美しさについて、森林公園に近い川のせせらぎを聞きながら、考える休日だった。


(2009/6/15 志賀信夫)




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