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2009/06/08

KIP090608「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学35」

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 2009年06月08日(月)   第2726号
 日刊! 関西インターネットプレス
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■本日のコラム「源氏物語に見る 王朝貴族の失敗学35」
        40歳の光源氏に縁談が?
 月曜日月イチ担当:フリーライター 鳴川 和代

みなさまこんにちは。鳴川です。そろそろ梅雨の気配が…と思っていたら、
きょうの大阪はうって変わっていいお天気。いましばらくこんな気候が続
いてくれればと思います。

■娘の婿になってほしい

前回、光源氏の息子の夕霧が、無事に幼なじみの雲居雁と結婚し、源氏物
語は大団円を迎えたかのような区切りを付けました。今回からは「若菜」
の巻に入ります。この巻は上下2巻で構成された、源氏物語では最も長い
巻です。その内容もドラマに富み、心理描写に長けていて、あたかも近代
小説のような趣。源氏物語は長いから読みたくない、という人には「ここ
だけでも」とおすすめしたい巻です。

さて、もうじき40歳を迎えようとする光源氏は「藤裏葉」の巻で息子が結
婚し、朝廷からは准太上天皇の位を与えられました。女たちと暮らす六條
院には朱雀院や冷泉帝を迎え、まさに栄華の極み。物語はそれを引き継い
で語られます。

朱雀院は六條院を訪れたころから体調が思わしくなく、出家を考える日々
でした。光源氏より少し年上の朱雀院は40過ぎ。いまなら人生真っ盛りと
いう年代ですが、当時ならもう初老に近い雰囲気だったのでしょうか。で
きるだけ功徳を積もうと、さまざまな準備に取りかかる朱雀院には一つ、
大きな気がかりがありました。

それは愛娘の女三の宮のこと。女三の宮の母親は藤壺女御と呼ばれた人で
す。先帝、つまり桐壺帝の前の帝の皇女で源氏として臣下に下った人です
が、朱雀院が東宮のころに入内しました。しかし、それほど身分も高くな
く実家の後ろ盾も少ない上、朱雀院は朧月夜を寵愛していたため、不遇の
うちに亡くなった人でした。それだけに朱雀院は後に残された女三の宮の
行く末が心配で仕方なかったのです。

「何とか娘をいい人に縁づかせたい。私亡き後、心細い身の上になるのが
気になって仕方がない。ちゃんと娘を愛して、しかもいたらない所は影で
きちんと教え導いてくれるような、安心できる人に託したい」と考え、結
婚相手に思いを巡らせます。例えば夕霧。「将来有望な人物。独身の時に
話を持ちかけるべきだった」とちょっと悔やんでいる様子。

すると女三の宮の乳母の一人がとんでもないことを言い始めたのでした。
「六條院(光源氏)様こそ、そうした役割にはふさわしいのでは。いまだ
に恋愛には関心が深く、古いおつきあいの女性たちにも心変わりしないと
か」「あんなスケベ男、とんでもない」と一瞬思った朱雀院でしたが、
「いや、それもいいかもしれない」と考え直しました。「何人も妻はいる
が、それを考慮する必要もあるまい」と朱雀院。女三の宮が内親王という
高い身分だからこその自信かもしれません。

そのほかの婿候補については「蛍兵部卿宮は性格はいいけど、ちょっと軽
薄で、頼りなさそう。柏木(頭中将の長男)はまだ官位が低い」などと、
物足りなさを感じます。やはり婿候補には光源氏をおいてほかにないので
した。

■嘆く紫の上、悔やむ光源氏

朱雀院は使者を使わし、光源氏に事情を伝えました。光源氏は「息子の夕
霧などには似合いだろうけど、彼は試練を乗り越えてようやく結婚したば
かりだからねぇ」などと使者に語ります。光源氏自身は特に自分の結婚問
題のように取り上げていませんが、心の内ではある考えがぐるぐるぐるぐ
る巡っていました。

実は女三の宮は光源氏の初恋の人・藤壺中宮の姪に当たります。女三の宮
のお母さんは藤壺女御という名前から分かるように藤壺中宮の姉妹、藤壺
中宮に継いで美しいといわれた人でした。「きっと並大抵の人ではあるま
い」光源氏の好奇心、というかスケベ心がむくむくと動きます。しかも、
自分の妻たちの中には一人もいない内親王。藤壺中宮や六条御息所、朝顔
斎院など身分の高い女性を求め続けた光源氏にはこれまた魅力でした。そ
の後、出家した朱雀院を見舞った際、光源氏は女三の宮との結婚を正式に
引き受けたのでした。

しかし、光源氏には一つどうにも気が重いことがありました。それは紫の
上のこと。長年さまざまな苦労をかけて、ようやく落ち着いた矢先のこと
です。紫の上はこれから二人むつまじく暮らせると考えているに違いあり
ません。そこへ降って湧いたような女三の宮の降嫁。並の身分の女であれ
ば、問題はないのです。相手は内親王。しかも朱雀院の依頼で正式に降嫁
するわけです。

ここで紫の上の結婚について思い出してみましょう。彼女は北山の寺で光
源氏に見いだされ、略奪同然に光源氏の元に連れてこられました。そして
14歳のあの日、光源氏は強引に肉体関係を結びました。つまり、親の許可
を得ない結婚です。私は以前このエピソードをご紹介したとき「野合」と
表現しました。ですから、紫の上はいままで妻達の中で一番重んじられて
おり、「正妻格」としては扱われてきましたが、正式な「正妻」ではあり
ませんでした。しかし、今度は内親王が正妻として光源氏に降嫁するので
す。紫の上はいくら光源氏に愛されていても「その他大勢」の一人になっ
てしまいます。

しかも紫の上は女三の宮の降嫁の噂は聞いていましたが、「そんなことは
あるまい」と光源氏を信じていました。光源氏は「朱雀院の親心に打たれ
て、断ることができなかった」と結婚の事情を伝えます。紫の上は冷静に
「お気の毒に。どうして不快に思うでしょう」と光源氏を許します。その
ふるまいはとても穏やかです。でも、心の内には嵐が吹きあられていたこ
とでしょう。いままで幸福を疑わなかったのに、これからはどんな屈辱が
待っているのだろうか。紫の上の心は憂いに満ちていたことでしょう。

そして光源氏40歳の春2月。女三の宮は華々しく六條院に輿入れしました。
贅を尽くした道具類が運び込まれ、迎える光源氏も準備万端怠りなく、盛
大に儀式を行います。紫の上はこまごまと準備を手伝います。その間の、
彼女の気持ちを思うとやるせなくなってきます。紫の上の結婚の時との差
は歴然としています。

しかし、光源氏はまた違った点でがっくりしていました。初めて出会った
ころの紫の上はわずか10歳でしたが、才気にあふれ、話をしても手応えが
ありました。しかし、女三の宮は全くの期待はずれ。確かにかわいらしい
人ですが、体も小さく14歳とはいえ、まるで子どもです。ただただおっと
りして子どもっぽいだけでした。こんな人のために、紫の上を嘆かせたの
か…。後悔が満ち潮のように光源氏の胸を浸していきました。

結婚の初めでいきなり失敗に気づいてしまった光源氏。しかしもう後戻り
はできません。女三宮と光源氏の関係は、そして紫の上との関係はどう
なっていくのでしょうか。波乱の予感を感じさせながら、物語は続きま
す。


【プロフィール】
鳴川 和代/なるかわ かずよ
大阪在住のライター。フリーランス。
手がける分野は生活一般から情報通信、医療関係まで多彩ですが、
個人的にテーマにしているのは「個人情報保護」と「源氏物語」。
脈絡なく並んでいますが、いずれもライフワークと考えとります。
「源氏物語の失敗学」も若菜の巻に入り、ますますおもしろくなります。
これからもどうぞよろしくお願いしますね!

若葉マークの源氏物語ブログ別館「千年前から恋してる!」
http://wakabagenji.cocolog-nifty.com/sennenlove/
こちらもよろしく!
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ご感想などはprimavera@digipre.comへ。


●●● お知らせ ●●●

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http://www.westjr.co.jp/fc/

京都の6月を彩るファッションイベントとして恒例となりました
「Fashion Cantata from KYOTO」を下記のとおり開催致します。

■日 時 :平成21年6月13日(土)
   1stショー:13:00〜、2ndショー:15:30〜、3rdショー:18:00〜
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■出展作品:洋装(クリスチャン ディオール)
           和装(羽田登喜男、京都コレクション協議会)

問合先:京都商工会議所 産業振興部 奥野 智香
TEL:075-212-6458 電子メールアドレス:shinkou@kyo.or.jp


【イベントカレンダーはこちらのURLからもご覧いただけます。】
http://easyurl.jp/jxk
※「EasyURL」さんのサービスを利用してURLを短くしております。

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 発行人  野々下裕子 kip@digipre.com

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