2009/05/27
KIP090527「モーニング・ツーのWeb公開と漫画界の閉塞感」
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 2009年05月27日(水) 第2719号 日刊! 関西インターネットプレス ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ■本日のコラム「モーニング・ツーのWeb公開と漫画界の閉塞感」 水曜日担当:テクニカルライター 佐橋 慶信 最近は漫画学科の生徒たちに、漫画情報学という講義を行っています。 漫画に関してはKIPでもほとんど扱って来なかったのですけれど、たまに は「もう一つの本業」のネタも語らせてもらいましょう。 5月22日発売の講談社の雑誌「モーニング・ツー」がWebサイトで無料公 開されています。 モーニング・ツー無料公開 http://morningmanga.com/twofree/ ネット上では無料で読めるマンガや小説は多数公開されています。大抵 は「試し読み」や「立ち読み」という形をとっていて、物語の全話を掲載 するのではなく、ごく一部だけを掲載するものがほとんどです。 Webで読める漫画も仕込まれていますけれど、優先順位としては雑誌が 本道で、Webは雑誌や単行本(コミックス)を手助けするものでしかありま せんでした。 たとえば、同じ講談社の「モーニング」のサイトでは人気漫画の「宇宙 兄弟」や「カバチタレ」も公開されていますが、これらは第一回だけに限 定されています。つまり、人気漫画の第一回を広く読んでもらうことで、 コミックス購読層の広がりを期待するというポジションでした。 さらに、新刊の広報や新作の紹介、連載漫画の動向など、ニュース記事 を軸足にし、Web漫画や壁紙ダウンロードなどを「看板」にあてる仕組み です。大抵の漫画雑誌のサイトはこのような形になっていて、あくまでも メインは紙(本誌)なのです。 ところが、「モーニング・ツー」のサイトにはびっくりです。2008年10 月から「一冊まるごとWeb公開」というスタイルで運営されていました。 基本的に本誌に掲載されているすべての漫画が公開されています。今年4 月までは「一ヶ月遅れ」の公開でした。あくまでもWebは控えめで、本誌 をもり立てるための企画だったのです。それが、この5月号から本誌発売 と同時に公開されています。もちろん基本的にすべての連載が公開で、少 なくとも三ヶ月はこの状態が続くようです。 本来は「買いたいのに手に入らない」という読者の声を満たすためのも のだったのですが、本末転倒の様相です。もちろん本誌だけで読める「付 録」扱いの読み切りや、「間違い探し」による本誌との連動企画もありま すけれど、補助的なものにしか見えません。 そもそも、モーニング・ツーというマンガ雑誌はどういうポジションに あるのでしょうか。中綴のマンガ月刊誌で売り上げは社団法人日本雑誌協 会(JMPA)のデータ(※1)によると印刷証明付きでない部数で10万部。モー ニングの印刷証明付き部数、40万部弱(マガジンデータ2009による1号あた りの平均)と比較すると、実売はもうちょっと少ないかもしれないと思わ れます。 ※1 社団法人日本雑誌協会 http://www.j-magazine.or.jp/ しかし、モーニング・ツーの中身はなかなか濃く、マンガ大賞2009ノミ ネート、第11回手塚治虫文化賞短編賞の「聖☆おにいさん」(中村光氏)な ど、注目される作品も掲載されています。 これだけネームバリューのある作品が掲載されながら、発行部数は頭打 ち。市場に出回る量が少ないため、Web公開で読者を繋ぐしか無いという のは、雑誌の作り手側からすると、ある意味悲しい結果なのではないかと 思われます。 漫画雑誌の置かれた現状はかなり厳しく、雑誌単体で黒字を出している のはごく一部の巨大な週間誌のみ。しかもそれらもじり貧の右肩下がりで す。営業的には単行本(コミックス)に頼らざるを得ません。コミックスの 方も人気作品は何万部も刷られていますが、平均的な作品の刷り数はかな り控えめです。 原因はいろいろと考えられます。たとえばケータイの隆盛で、漫画を買 う費用が節約されて後回しにされているとか、大型の古書店が安価で大量 の漫画を売っているので、新品が売れないとかいうのも一つの原因でしょ う。再販制と委託販売が原因の一つだという識者もいます。 漫画界といえば、金銭的にもかなり派手な印象を受けますけれど、実際 に印税暮らしをしているのはごく一部の成功者だけのようです。また、旧 弊な社会ですので現在では時代の流れとの軋轢によってさまざまなトラブ ルも発生しています。 佐藤秀峰 on Web http://satoshuho.com/index.html 雷句誠の今日このごろ。/ウェブリブログ http://88552772.at.webry.info/ 上記の漫画家さんの日記では、編集部との摩擦が赤裸々に語られていま す。言葉には出さないけれど、うなづく漫画家も多いかもしれません。ま た、逆に上記の意見に真っ向から反論する漫画家さんも存在します。(※2) 真実はどうあれ、このあたりの話で議論されてしまうと、実情はかなりド ロドロしているのではないかという印象を受けてしまいます。 ※2 匿名ダイアリー いい加減にしろ佐藤秀峰 http://anond.hatelabo.jp/20090415235800 今回のモーニング・ツーのWeb公開を見て、「お得感」を感じたのは一 瞬のことです。よく考えると、比較的上質な雑誌が発売日にWeb公開され るというのは、かなり末期的な症状なのかもしれない…最近の漫画雑誌の 動向などを見ていると、そんな気がしてならないのでした。 【プロフィール】 佐橋慶信/さはし よしのぶ テクニカルライター フリーランス スポーツはウェイト・トレーニングと剣道。 どちらも数十年のキャリアを持つ。 自宅では、使えないパソコンが増殖中。 感想メールなどはこちら <kip@y384.com> まで。 【イベントカレンダーはこちらのURLからもご覧いただけます。】 http://easyurl.jp/jxk ※「EasyURL」さんのサービスを利用してURLを短くしております。 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 「日刊! 関西インターネットプレス」http://www.digipre.com/kip 発 行 関西デジタルプレス http://www.digipre.com 発行人 野々下裕子 kip@digipre.com 配信協力 まぐまぐ http://www.mag2.com/ bloguru.com http://www.bloguru.com/kip 講読の変更・解除 >http://www.mag2.com/m/0000000122.htm ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ (c) Kansai Digital Press. All rignt reserved.


